ヒーローに憧れていた話 作:緋色
「君はヒーローになれる人材だ。どうだい?是非とも公安の下で社会を守るヒーローを目指さないか?」
思えばあの言葉が
私、
人の規格が崩れて『個性』と呼ばれる異能が当たり前に巣食った超人社会。力を自由に使って名声と喝采を得ているヒーローは多くの人間にとって憧れだ。
でも私の個性『ライフル』は威力が高く、幼い自分と授業の一環で大雑把に個性を使わせるだけの学校では使いこなせるようになるものじゃなかった。
『強い個性ね。でもそれを人に向けては駄目。強い個性は人を簡単に殺せるの。あの時代は終わったのだから
だから私はヒーローの道を諦めた。
よくある話だ。
ここで終わっていれば私は世の中にいるその他大勢として、普通に生きて普通に幸せになっていたはずだろう。いや、どうかな?普通に生きる私なんてうまく想像できないな。
でもそうはならなかった。
ある日、訪ねてきた大人たちは私にヒーローになれるとスカウトしに来た。
ヒーロー公安委員会。
いろんなヒーローを見てきた大人が私をヒーローになれるとスカウトしに来たのだ。
舞い上がらないわけがないだろう?
辛い訓練があろうとヒーローになれる。いやなる!そう思って止める親を根負けするまで説得し、ヒーローになるための道を歩み始めた。
「私がみんなを守るヒーローになる!」
始めてしまったのさ。
ヒーローとは何か。
社会を守るための歯車さ。
がむしゃらに訓練していった時は良かったよ。
でも免許を取って
ヒーローを憎みテロを計画する
一般人を唆し
ヒーローの資格を得てしまった
どいつもこいつもクズばかりだった。
信じてた世界は張りぼてで、張りぼてを守るために血に汚れた。
あいつと出会ったのはそんな時だった。
誰かって?旦那だよ。
熱心なファンで追っかけの一人だった。
猛烈に口説かれても相手にしてなかったんだが、しつこくてね。
気が付いたら結婚してて、子供まで出来てた。
私も人間さ。好きだと言われてうれしくなってたんだ。
そして生まれた子供がヒィ──
あの子を抱いた時、何でも出来る気がしたよ。
幸せ過ぎて死ぬかと思ったね。
だからこそヒーローなんてやめて一般人になる事にしたのさ。公安とは揉めに揉めたな。
そんな中――あいつは死んだ。
大したことじゃない。ヒーローを恨んでた
そこからは大した話じゃない。持てる力やれること何でも使ってそいつらを
息子には真っ当に生きて欲しいから公安には入らないようにしたかったしね。
順調に育ったヒィはいつの間にかヒーローに憧れるようになった。
公安のせいかと疑ったけどなんてことはない。メディアや友人に影響されて真っ当にヒーローに憧れるようになった。
「お母さんカッコいい」
うれしかったよ。ちょろいって言われるかもしれないが綺麗な面を見ているヒィの為に色々頑張ったさ。
気が付いたらイメージ戦略の一環なのかメディアで取り上げられることも増えてたしね。
有名になってヒーローとしての人気もランキングTOP10を狙えるんじゃないかってくらいはね。
子供達にファンサービスを求められることも増えた。
あんまりファンサービスはしないんだがヒィぐらいの歳だったからつい甘くなってね。握手しようとしたんだ――……握手しようとしたんだ
――小さくて綺麗な手に握手しようとして
自分の手が血塗れに見えたんだ。
気が付いてからはもう駄目だった。
見ないように見ないようにしていた現実が私を追いかけていて追いつかれたのさ。
――私はヒーローじゃない
強い個性持ちは狙われる。
張りぼての社会を守ってきたからこそ、いざという時に逃げれる力は付けさせないといけない。
ヒーローには敵が多い。特に強い個性のヒーローはその分だけアンチがいる。
あいつだって逆恨みで死んだんだ。楽観的にはなれないし、公安の思い通りになっているようで情けない。
「ねえヒィ」
「なに?」
「ヒーローなら他にもいっぱいいるし他のヒーローに憧れたりしないの?オールマイトとか…」
個性訓練の休憩中、ふと疑問に思った事を聞いてみる。
なんだかんだでこのヒーロー社会の象徴であり柱であるオールマイトに憧れない子供は少ない。
だからこそ。
「お母さんが一番カッコいい!」
「そう?」
「うん!」
「そっか…。じゃあ頑張らないとな」
違うんだ。
私はヒィが憧れるようなヒーローじゃ――
「お母さんお疲れ?」
「え?」
「泣きそうだよ?」
「いやちょっとしんみりしちゃってね。続きしようか?」
「もーいい。帰ろ?」
「いつもはもっとやりたいって駄々こねるのにどうした?」
「んー?お母さん元気ないし今日はお休み!」
「そう」
いい子に育った。
この子の為にも張りぼての社会を守るのは私の――
「お母さん」
「なに?」
「大きくなったらお母さんを守れるくらい強くなるからね!」
その綺麗な笑顔はあの時の私が。
何かが崩れる音がした。
「――彼らは
――なあ。そいつらを殺れば社会が良くなるのか?
――綺麗な面だけ見せ続けるのは洗脳じゃないのか?
「……ナガン。これは必要な事だ。君の息子だって綺麗な社会で生きていくべきだと思っているんだろう?」
――思ってるさ。
――でもこれは綺麗なのか?
「ゴミを掃除してゴミ箱に入れるだけじゃ綺麗にならんさ。ゴミを処分してはじめて綺麗になるんだ」
――なあそれってヒーローの仕事か?殺し屋じゃないのか?
「…………君の仕事だ」
――そうか。
ごめんなヒィ。どうやら私は最初からヒーローなんかじゃなかったみたいだ。
でも最後ぐらい。
ヒーローらしいことをしよう。
社会の闇と戦うのはヒーローらしいだろ?
キャラエミュ難しいですね
続きを書く気になったら続きを書きます