あちこちで火の手が上がり、先程まで文明の象徴だった物は崩壊している。無事なのは遠くに見えるのと、ボクの後ろにある建築物。
「GAAAAAA………」
二本の足で地を踏みしめ、荒々しい息を吐く巨体。尻尾は揺れ、その風圧で建物の瓦礫が舞う。鋭い瞳はこちらを睨みつけ、ボクを警戒している。
「……………」
小さな虫にように小さくなった人達いや、目の前の怪物と全長が同じぐらいになったボクを見上げ唖然と指をさす。
『……………』
目の前に佇む巨体。赤や紺の皮膚に岩石を思わせるディテール、王道的な怪獣シルエットに対してボクは両手を握り、記憶の奥底にあった構えを取る。視線自体は怪獣に向けながらも、変化した自身の肉体をチラチラと見てしまう。
パッと見は何かのスーツに思える色合いをしているが、きちんとした素肌。胸部辺りには守りとしての機能より、見た目を整える装飾に近いプロテクター。人間なら心臓が有る当たりに青く輝く発光部。巨人と呼ばれるシルエット。
長いことこの状態が続いているように感じるが、実際に目の前の怪獣とにらみ合う構図になったのは、ほんの10秒ほど前。事件の始まりは、1分経ってるか経っていないぐらいと思う。
まず最初に言うけど、ボクは転生者と呼ばれる奴だ。だからなんだと聞かれたら、何も言えなくなるから深読みでしないで欲しい。しいて一言言うなら、満足した人生だったと記憶している。
前世では男だったが今世では女として生まれた。最初は違和感ばかりだったし、男との違いに苦戦もしたが、その辺は若くしてこの世を去った両親に変わって育ててくれたお兄ちゃんや義理のお姉ちゃん、幼馴染のおかげで何とかなっている。
そんなボクが暮らしている街だが、現代より優れていて優れていな。矛盾しているように感じるが矛盾はしてない。なんせ、良く創作物とかで出る超古代文明に生まれたのだから。
住めば都とはよく言った物。現代社会だろうが、超古代文明だろうが、住み慣れてしまえば大して変わらない。例えるなら、海外に移住するのと同じ感覚だ。移住した事無いけど。
前世で言う中学校の授業を終え、夕日が沈む地平線を眺めながらボーっと座っていたボク。そこに近づく一つの影。
「お待たせ!」
今年で15歳の幼馴染でボクより身長が少し高い少女《ルナ》、その妹で13歳の《フレア》の姉妹だ。彼女達を視界に入れたボクは立ち上がり、鞄を肩から掛け彼女達と共に帰路につく。
「それでね!」
いつも通り、たわいのない会話を広げるボクら。あの子とあの子が良い雰囲気だの、今日はこんな事を学んだだの、最近流行っている物とかホントに現代社会の学生と変わらない会話。途中、ルナとフレアが口喧嘩を始めてボクがなだめる。これもいつもじゃないが、普段の日常だ。
そろそそ二人と別れる道に差し掛かったころだった。突然激しい揺れに襲われのは……
「な、なに!?」
咄嗟に近くにいたフレアを抱きかかえるボクの横でルナがパニックに陥っている。周りに視線を向ければ通行人が、子供も大人も関係なくルナと同じようにパニック良くて困惑していた。
それもそうだろう。なぜなら、ボクらが暮らすこの街は地震に襲われない土地にあるのだから。いや、地震自体はあるが、その影響を受けない装置がボクここに生まれる大分前に確立されており、地震の被害に遭う筈がないのだから。
オーバーテクノロジーの分、服がお粗末なのはこのさい目を瞑るが、地震と言う未知の災害に遭い辺りは混乱する。揺れが収まって直ぐにフレアに目を向けと、ボクの服袖をめいっぱい握り締めていた。そんな彼女の頭を撫でながら、今だパニックなっているルナに声をかける。
「ルナ」
「やばいやばい!世界の終わりだ、今日で私の人生が終わるんだ。まだ初恋すらしてないのに!」
「ルナってば」
「もうダメ。私は死ぬの…」
「ルナ!」
膝から崩れ落ちたルナ。彼女の呟く言葉を聞きフレアも顔を曇らせる。そんな二人の姿を見たら無意識に声を荒げるボク。普段大声を出さないボクが、声を荒げた子に驚いたルナが残像が見えるぐらいの速度でこちらを振り向く。…首を痛めて無いか心配。
「色々思う事はあるけど、今は……」
言いたい事を押しとどめてフレアに視線を向けると、ルナもフレアを見つめる。視界に映るのはボクらの視線すら気にせず、ただ小刻みに震えている少女。再び視線をルナに向けると目と目が合う。どちらから何かを言う訳でも無いけど、同じタイミングで頷き合う。
お兄ちゃんより短く、お姉ちゃんより長い付き合いの
下手したら、残酷な現実が彼女達を襲うかもしれない。それでも、分からないよりかは心の持ちようが変わってくるから。最悪な状況を何度も頭に浮かべながら、それを振り払う様に息が上がるのを無視してひたすら走る。そんな時だった………
「キャーーーーーーッ!!」
広報からやけにクリアに聞こえた悲鳴。その声を聞いたボクは思わず足を止める。
「はぁ、はぁ… どうしたのリマ?」
息を整えながらボクの名を呼ぶルナ。なにか答えなきゃと思うと同時に、何とも言えない寒気を感じ微かに震える。
「………リマお姉ちゃん?」
それに気づいたのはボクに抱きかかえられているフレアだけ。表情は俯いているから二人には見られてないはずだけど、何かに怯えているような表情になっているのが何となく分かる。
直後、大地が割れる音が聞こえ、それと同時に再び大地が揺れた。
逃げろと本能が叫ぶ。助けを求める声をハッキリと聴覚が拾う。汗が頬を伝い地面へと落ちる。助けの手を伸ばせと心が叫ぶ。大地が揺れるたびに寒気を感じる。何かが崩れ落ちる音が聞こえてきた。頭が彼女達だけでも思考を巡らせる。
「なにアレ……」
ルナの怯えた声が聞こえた。
「…………ッ!」
息を吞むフレアの姿が見えた。
「GAAAAAA!」
ナニカの雄叫びが聞こえた瞬間、身体が反応する。
後ろを振り向くとそこには頭部から紫色の光線を放ち、手当たり次第に建物を破壊する巨大な影。遠くから見ているだけだがその容姿には覚えがある。
《 超古代怪獣ゴルザ 》
口から出かかった言葉を何とか飲み込む。ゴルザは前世では空想上の生命体で怪獣。
現実では存在しないゴルザが大地を揺るがしながら、文明の象徴を瓦礫の山へと変え、近くの命の炎を消して逝く。
自分達では決して敵わないこと示しながら我が物顔で更地に変えてゆくのを後目に、ボク達は再び走り出した。後ろから聞こえてくる声に耳を塞ぎたい気持ちを抱きながら……
結論から言えば、ボク達は家に辿り着くことは出来なかった。
ゴルザが額から放つ超音波光線によって、目の前の建物が崩壊。そこから広がる火の手によって、道が塞がった。すぐさま別の道に向かうも気が付いたら、普段は現代言う自衛隊や軍隊によく似た組織によって、立ち入り禁止となっている森の中にいた。
『………■』
更に最悪な事に人混みに流される中、ルナとはぐれてしまい現在はフレアと二人きり。周囲を見渡しても花や木と言った植物だけで、人影は無い。前から何となく気になっていた場所だが、当然入ったことなどなく、土地勘のないので何処をどう通ればいいのかすら分からない。
『……■…』
今の僕に出来るのは泣き崩れたフレアを優しく抱きしめることぐらいだ。
吹く風は草花を揺らし、空では星が輝く。辺りには光源は無く、この森に住まう野生生物はゴルザに怯えてどこかに行ったのか、姿を現さない。
『…■……』
光源が
野生動物の影や足音が一切聞こえないという事は、飢えた獣に出くわさないという事。
人影や人声が聞こえないのは、助けを期待できないという事。
『■………』
風が体温を奪う中、耳を澄ます。嫌と言うほど聞こえていた悲鳴は聞こえず、胸元で泣き続ける少女の声と風によって触れる葉の音、そして耳にこびりつく耳鳴り。せめて水の音でも聞こえればと思ったが現実はとことん厳しいようだ。
『……■…』
ホントは焦らなきゃいけない状況なのだが、変に冷静になっている………いや、諦めているんだと思う。いくらオーバーテクノロジーを持っている超古代文明でも、戦闘兵器に関しては現代の戦車や戦闘機を超えるものは無い。良くてなんかすごい固定大砲ぐらいだ。
『………■』
日本人以上に平和ボケをしているぐらい、戦いと無縁の文明。険しい戦いが人の味を覚えた肉食獣ぐらいには平和化けをしている。そんな文明が
ゴルザが出るなら《 ウルトラマン 》も出て来いよ!と叫びたいよ。なんなら、一人なら叫んでいた。
『…■……!』
そんなボク代わりに耳鳴りが大きくなる。…………と言うか、ボクを求めている?
なんとなく、そんな感じがして思わず立ち上がった。
「ヒック!……リアお姉ちゃん?」
『■…■…!』
突然立ち上がったボクに困惑の表情を浮かべるフレア。それとは別に語り掛けてくる声。
フレアの手を取り、立ち上がらせ、声が聞こえてくる方向に向かって歩みを進める。
『…■…■!』
森の奥に行けば行くほど大きくなる声。時々フレアとはぐれて無いか確認しながら険しい森の中を進む。
「ふぁ~……」
「ここで待ってて」
辿り着いたのは遺跡の入り口らしき門とその奥に続く洞窟。唖然とするフレアに一声かけ奥に進む。光源が無いから真っ暗な闇が広がるがお構いなしに奥へと続く道を歩く。どうやら、整備どころか人の手が全くついて無い天然の洞窟のようだ。
『■■■■!』
ハッキリと聞こえてきた声。理解できない言語だが、ボクを導くような不思議な感覚。
温かくて、優しくて、安心する声。けれど力強くて、今にも消えそうなほど弱々しい声。
気が付くと自分の影がある事に気が付き足を止め、上を見上げる。何処までも広がっているかのように錯覚するほど暗闇が広がる中、青色に輝く宝石。宝石から放たる光によって周囲が照らされているが、ボクが目に行くのは宝石が埋まっている壁………いや、巨人像。
体に模様が有るのが薄っすらと見える。それ以外は暗くてよく見えないが、これがウルトラマンの体だと言うのは何となく分かった。
さっきから言っているウルトラマンはゴルザと言うキャラクターが出てくるシリーズであり、光の巨人の事を指す言葉。ほとんどが宇宙規模の今日に立ち向かう光の使者と描かれており、日本で製作されている特撮ヒーロー作品だ。
前世のボクはこの作品群に小さいころからどっぷりとハマっていた。だから知っている、この世界が後にネオフロンティアスペースと呼ばれるウルトラマンの世界の一つだと。この世界では人間同士の紛争が無くなった時代、人々は宇宙へと進出を始めようとするが、そこに立ちふさがる闇の支配者や宇宙に生きる高次元的生命体の数々。
そんな人類の盾になるかのように現代に蘇り、力を受け継いだ二人の光の巨人。それぞれが同じ悩みを持ちながら正反対の答えに辿り着き、未来へと進んだ。その物語はボクが今生きている時代から約三千万年後の出来事。この超古代文明は作品内で内乱で対抗する力も意志も失い、闇に滅びる。
だからどうした!
ボクはこの時代に生きている。血の繋がったお兄ちゃんがいる。これから義理の姉になるお姉ちゃんがいる。幼馴染がいる。妹分がいる。学友がいる。無関係と言い張るには、見捨てるにはもう大切な物が多すぎる、だから!
「ボクを呼んだのはそう言う事なんだよね?」
目を瞑り深呼吸をする。すると先程の問いに応えるかのように、耳鳴りが聞こえた。
『
ゆっくりと腕を伸ばし、巨人像に触れる。その次の瞬間、ボクは光に変わり巨人と一つになった。
キャラ設定「リマ」
本作の主人公で14歳の少女。
今世の両親が死んだのと同時に前世の記憶を思い出すと同時に、ここが「ウルトラマンティガ」の超古代文明だと知る。どうせ文明ごと滅びるならと感情の全てを封じ引きこもるが、兄やその彼女に兄の職場先の娘(ルナ)の手によって、徐々に人と交流するように。(なお、周りの人達は引きこもった理由が両親の死のショックだと思っている)
性格は引っ込み思案で、自分の意見より他人の意見を優先する。
また一度死んだ記憶が有るからか、自分の目の前で死にそうになっている人(命)には親身になり助けの手を伸ばす。(リマの中で助ける優先順位はある)
そんな彼女の様子に周りの大人や親しい人達からはよく心配されてるいが、本人は気づいて無い。その過激すぎる行動から助けられた人達に、いつか大変な事件に巻き込まれそうと新たな悩みの種を植え付けているのも自覚無し。
裏設定として、前世はウルトラマンにバイト代のほとんどをつぎ込んでいた青年。