超古代の戦 ~最年少の巨人~   作:火野ミライ

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光の巨人

火の手が上がる街中を必死に駆け抜けれる。後方では巨大な怪物が家や店を踏みつぶし、中央の城に向けて進撃。王都の戦士達が怪物に攻撃を仕掛けていいるが効果は無く、怪物は気にも留めてない。

 

フレア!リマ!

 

私は逃げる人々の波の中から、はぐれてしまった妹と親友を必死に探す。いくら視線を巡らせても、どこかですれ違った事のある大人やよく行く店の店員、知らない人ばかりで探し人の影も形も無い。

 

最悪な瞬間が脳内に浮かぶが、リマの事だ。きっとフレアと一緒に生きている。

そう思う事でなんとか平常心を保つも、後ろから来る確かな脅威に自然と目に水が溜まり、雫が頬をつたり地面へと溶け込む。

 

「ふざけんなよ!なんで私達がこんな目に………」

 

妹の前では隠していた本音がついに零れる。

瞼から止めども無く涙が流れ、その場でしゃがみ込む。

 

「親父、お袋、フレア……」

 

親父は今頃、王都の戦士としてあの怪物と戦っているけど、この状況が続けばきっと。

お袋はきっと私達を探して外に出ている。幸いな事に家からは距離が有るから最悪は無いだろう。

フレアは多分、リマに引っ付いていってるよな。昔からリマ大好きっ子だし。

 

「リマァ……」

 

《リマ》

初めて会った時は親父につれられて彼女の家に行った時だ。その時の彼女は部屋に引きこもっており、必要最低限の事すらしてるのか怪しいくらいに弱っていた。それこその生きた屍の様に。

 

当時の彼女は王都批判の宗教団に命を狙われ、両親を目の前で失った。両親が彼女を守ったから。

だが宗教団はお構いなく、彼女に牙を向けた。王都の戦士が現場に辿り着いた時には既に彼女は血まみれで気絶しており、ギリギリのところで戦士が止めたそうな。

 

その後、彼女は治療を受け無事に日常生活が出来るぐらいに回復した。けれど回復したのは身体で、心の方は全くのようで自宅につきしだい直ぐに部屋に引きこもったそう。

 

正直、まだ子供だった私は全部を理解できず、また妹が生まれそうな時期でもあったため、彼女の気持ちを考える事なく、只々初めて会った家族以外の子と遊びたがってた。と言うか、それしか考えてない。

 

そんな私は彼女の事などお構いなしに突撃したのは覚えている。正直、その後どうやって今の関係になったかは忘れたが、何度も彼女に怒鳴って無茶言って駄々こねて泣きついて甘えて……

 

悲しい時には何も言わずに傍にいてくれるリマ。妹の成長に共に喜んだリマ。

母親が病気で父が王都の外で仕事した時は、お兄さんと一緒に止まりにに来てくれた。お兄さんがデートしているのを発見した時は無理やり尾行に同行させたっけ……

 

「リマァァ……」

 

膝に顔を埋め、彼女の名を呼ぶ。

 

『大丈夫だよ』

 

何時もどうりの優しく包み込んでくれる彼女の声が聞こえた。

思わず顔を上げると、入らずの森の方から一筋の光が夜空への浮かび上がり、そのままゴルザを吹き飛ばした。

 

「今度はなんだ!」「あの光は一体?」

 

光は徐々に巨大な人型を取り、巨人へと変わって行く。

銀色の赤色のラインが入った皮膚、鉄仮面のような顔に白色に輝く瞳?胸には青く輝くクリスタルにV字を模った金縁銀色のプロテクター。額にはひし形のクリスタル。

 

「GAAAAAA!!!」

 

怪物が体勢を立て直し吠える。それをよぞに巨人はしゃがみ、こちらに光の玉をゆっくりと差し向ける。すると光の玉が独りでに浮かび、私のそばにやって来た。

 

「フレア!?」

 

光が晴れるとそこに居たのは逼迫した現状と真逆、安らかな寝息を立てて寝ている妹の姿。瞳に溜まっていた涙を服袖で拭い、フレアに近づく。

 

「フレア!フレア!!」

 

「う~ん…?ルナ、目赤いよ?」

 

体を揺らし起こすと、寝ぼけた彼女の言葉が返ってくる。

そんな私達のやり取りを見守っていた巨人は立ち上がり、立ち上がり後ろへと振り向く。視線の先には警戒してい低く唸る怪物。巨人は両手を握り締めて構えを取る。

 

怪物と自信を観察する巨人。その様子に何となくだけど、普段着ない服を着せた時の彼女(リマ)の困惑した様子を脳裏に浮かべた。

 

『テッャ!』

 

巨人の掛け声と思わしき音が聞こえたかと思うと、巨人は怪物にタックルを仕掛ける。突然動きを見せた巨人に反出来ず、もろに喰らった怪物は後退。巨人はチャンスと思い追撃を仕掛けたが尻尾による反撃を受け、今度は巨人がもろに喰らい吹き飛ばさた。

 

前触れも無く始まった巨体同士の戦い。彼らの戦闘に介入する王都の人はおらず、私を含めた一般市民を含めて只々見つめる。

 

「GAAAAAA」

『ハァー!』

 

怪物が額にエネルギーを溜めると、巨人が右手を顔の横に持っていきエネルギーを溜める。

巨人はそのまま腕を怪物へと向けると水色の光線を放ち、怪物も光線を放つ! 水色と紫色の光がぶつかり合い、相手の攻撃を押し出そうと力を込める。最終的に決着はつかず、小爆発を起こした。

 

今度は怪物の方から巨人に近づき、爪による一撃を放つ。巨人は腕の下をくぐり抜け回避し、横腹に蹴りを入れる。痛みに悶えながらも怪物は振り向きざまに頭突きを決めた。その一撃を正面から受け、後退る巨人。

 

『ウゥゥゥ……』ティコン!ティコン!ティコン!……

 

互いに体勢を立て直し、激突!押し合いによる力比べ。勝負は体系通りで、巨人の方が押されている。巨人はうめき声をあげる中、胸のクリスタルが赤く点滅し始め警告音が鳴り響く。その姿はあり得ないけど、怪物を私達に近づけないようにしているみたいだと私は一人思う。

 

「GAAAAAA」

『グァァァ……!』ティコン!ティコン!ティコン!……

 

自身の怪力を自慢するように吠える怪物、どこか苦しそうな声をあげながらも足腰に力を入れ押しとどめようとする巨人。あまりにも非現実的な光景に力なく座り込む人も出てくる。

 

「もうおしまいよ。」「俺たちはあの化け物の争いに巻き込まれて死ぬんだ。」

 

中には泣き言を呟く人達。誰もが恐怖とか焦りより、今まで目にした事の無い膨大な力の前に絶望していた。私だってそうだ。地面へと座り込み只々、フレアを抱き寄せる。

 

こんな時、リマが居たら何をしてるかな?

何も言わずに胸を貸してくれる?もしくは私たち姉妹を抱き寄せる?この場のみんなが元気付くような事を言うのかも………

 

『大丈夫、ルナさんは死なせないから。』

 

いや違う! きっとあの時と同じで、目の前の脅威を遠ざけようとする。

たとえ自分がより危険な目に合うとしても。たとえ自分が死ぬかもしれない手段だとしても。

 

そこまで考えついて、思わず巨人たちへと目を向ける。

視界に入ってくるのは吹き飛ばされる巨人。胸の点滅が激しさを増すのも気に留めず立ち上がり、怪物にタックルを仕掛けて後退させた。

 

『ハ!ハ!ハ!ハ!』ティコン!ティコン!ティコン!……

 

すぐに距離を詰めて怪物の腹部に向けて連続パンチで攻撃していく。徐々に押されていく怪物と、死に物狂いで連撃を放つ巨人。巨人の動きは素人それであり、親父やリマのお兄さんのようでもあった。

 

『………………………テッャ!』ティコン!ティコン!ティコン!……

 

怪物を蹴り飛ばした巨人は腕を十字に組み、静かにタイミングを計っている。

怪物が起き上がった瞬間、足腰に力を入れなおしたかと思うと、白色の光線が右腕から放たれた。

その一撃を受け、強固な肉体を誇っていた怪物はあっという間に爆発とともに絶命。

 

「うっ…………!」

 

それを見届けた巨人は強烈な光と共に姿を眩ませた。

 

「消えた…………」

 

「俺たち、助かったのか?」

 

自分たちが助かった。その真実が人々に笑顔を戻していく。この瞬間、誰もが生き散ることに喜びを覚えていた。

 

 

 

 

 

____でも、この時はまだ知らなかった。

 

「……………………」

 

人気の無い場所で倒れこんでいるリマ。どの額には誰が見ても異常だと分かるほど、汗をかいている。

 

____動き始めたリマの運命。

 

「君!大丈夫か!?」

 

起き上がる気配のないリマに気が付いたのは、王都の戦士に飲み切ることを許された若き戦士。自身の額から血が流れてもいるのにも関わらず、リマへと近づく。彼の声を聴き、ほかの戦士もこの場へと駆け付け、少女は運び出される。

 

____先の怪物は始まりの1ページにしか過ぎなかった事を……

 

「kyaaaaaaaaaaa!」

 

夜空が輝く中、無人島では巨大な翼をもつ赤き巨体が目を覚ましていた。




キャラ設定「ルナ」

リマの幼馴染の15歳の少女。
リマとクラスは違うが一緒に帰るほど仲がいい。男勝りな口調をしているが内面はと相応の女の子で普通の恋愛を夢見てる。悩みの種は妹のフレアで、自分のことを「お姉ちゃん」と呼んでくれないこと。

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