超古代の戦 ~最年少の巨人~   作:火野ミライ

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嵐の前の平穏

青々とした木々が地平線の向こうまで広がるジャングルの中、ぶつかり合う二つの巨大な影。一つはカブトムシとクワガタムシを合わせたかのような【昆虫怪獣ノコギリン】。対する影は名前も知らないボクが変身したウルトラマン。

 

__夢だ。

第三者の視点で彼らの戦いを見つめる中で自然とそう思った。同時に巨人の記憶だと思う。視線を少し横にずらすと様々な昆虫怪獣と戦う光の巨人の姿。戦闘が続く中、どこともなく降り注ぐ闇。それを受け昆虫怪獣軍は力を増し、苦戦する巨人達。

 

胸のカラータイマーが赤く点滅を始めた中、ボクに力を与えた彼が胸部のプレテクターを隠すかのように腕をクロスさせ光を溜める。その光を頭部のクリスタへと持っていき、体内へ取り込むと赤白いオーラとも呼べる光に身体を包んだ。

 

すると先程まで苦戦が嘘かの様にノコギリンを押していく。拳の一撃はノコギリンの外骨格をへこませた。痛みからかもだえるノコギリンの隙を狙い彼は必殺の一撃を放つ。

 

胸の前でクロスさせた腕を左右に広げながら円を描き球体を生成。身体に纏う輝きよりも濃い赤の輝き ……茜色の光球をノコギリン向けて投げ飛ばす。その一撃はノコギリンの身体に穴を開け木端微塵に吹き飛ばした。

 

周囲で戦っていたウルトラマン達もまた、必殺技を放ちそれぞれの相手を撃破していく。あちこちで爆炎が上がる中、夢は静かに幕を閉じる___

 

 

 

 

 

「__っう!う、う~~ん……」

 

目を覚ましたボクの視界に広がる石造りの天井。淡く部屋を照らす光源を視線だけで探すと窓 ……っと言って良いのか今だに分からない風の通り道となる穴の向こうに広がるの紫の空。身体中に駆け巡る痛みに表情が歪むのを我慢しながら首を動かし、腹部に感じる重みの正体を確かめる。

 

「スゥー……リマ、おねぇちゃん………」

 

「……フレア」

 

そこにいたのはボクのお腹を枕の代わりにして眠るフレアの姿。ボクの名前を呼びながら魘されている彼女の頭をなでようと布団から腕を出そうとしたその時、ゴルザとの戦闘で受けた傷が痛みベットに倒れこんだ。

 

「っい! ふ~、はぁ~」

 

全身から回る激痛を逃がすように荒い息を吐く。その度に傷が疼きベットの上で藻掻くボク。

 

「___リマお姉ちゃん!!」

 

そんなボクの様子を掛け布団越しにボクのお腹を枕代わりにしていたフレアが気が付かないはずもなく、慌ててボクの手を握りしめてくる。その人肌の暖かさが自覚した痛みから気を逸らさせてくれた。

 

ウルトラマン時の受けた傷がそのまま身体に刻まれている。まるで絆のバトンで輝く希望の巨人へ変身する【デュナミスト】の様に。彼らと違い、傷を治癒するアイテムは無いけど。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、 _____ありがとうフレア」

 

「うん。看護師を呼んでくるから待ってて」

 

荒い息を整え、目元に涙を浮かべるフレアへお礼の言葉を告げる。ボクの様子が落ち着いたのを確認した彼女は部屋を去って行く。その後ろ姿を眺めながら痛みで熱帯びる傷口を優しく手で押さえるのだった。

 


 

目覚めてから待ち時間を含めて小一時間後、診察を終え再びベットの上に寝ころぶ。争いがない超古代な現代ではあるが、人は疫病との戦いが合わる時代。岩造りの建物から想像のつかないか化学力を有している事もあり、医学もかなりのレベルで発展してる。

 

その恩恵はすさまじくゴルザの爪に引き裂かれた左肩の痛みを今は感じない。だけど勘違いしてはいけない、傷はいまだ塞ぎ切っておらず下手に動けは気が付かぬうちに再び血を流す事だろう。要は物凄く高性能な痛み止めの薬の効果だ。そのおかげで服 ……いや、包帯がこすれる度に痛みに悶えなくなった。

 

それでも下手に動く事は出来ず、誰もいない部屋でベットの上で安静にするのみ。そうすると自然と昨日の出来事について考えを巡らせていく事となる。

 

ゴルザが現れ、フレア達と逃げるも途中でルナと逸れ、頭に響く声に従い洞窟の中へ入ると見た事ないウルトラマンの像を発見。気が付けばウルトラマンとなって、フレアを連れて町へと戻っていた。その後はフレアを降ろしてゴルザと無我夢中で戦って、気が付いたら王宮の一室…

 

うん、濃い一日だ。でも結局アレは始まりでしかない。詳しい流れは分からないんだけどこの後には、巨人同士の戦い、快楽花の取り合いと人類の諦め、邪神復活からの超古代文明が滅ぶんだろ?あれ、ウルトラマンは滅びを受け入れた人類の元から肉体だけ置いて去ったんだっけ?じゃあなんで、入らずの森の奥深くの洞窟の中にウルトラマン像が眠っていたんだ??

 

「ん~~~~??」

 

「リマお姉ちゃん、朝ご飯貰って来たよ」

 

悩みのドツボにはまっていたボクを現実へ引き戻したのは、フレアの声と彼女の持つ朝食の匂いだった。そう言えば昨日の昼から何も食べてない。あ、腹の虫が鳴った……

 

 

 

 

 

「リマッ!!」

 

「っわ、びっくりした……」

 

朝食を食べ終えてフレアと談笑していたら扉が行き良く開け放たれ、大きな声が部屋中に響き渡る。部屋に入って来たのは日の光に焼かれた素肌に汗を流す今年で17歳になる彼女持ちのイケメン。リマとしての血のつながった家族であり、ルナやフレアの父親の元で近衛兵をやっている。

 

「ティガさん」

 

「良かった~~ 血まみれのリマが運び込まれたとダーラムに聞いた時は血の気が引いたよ」

 

近衛兵用の鎧の下に着るインナー姿のお兄ちゃんがベットに座る僕の手を両手で優しく握りしめて、膝から崩れ落ちる。フレアから受け取った未使用のタオルで汗を拭きながら、ベットの近くに置かれていた椅子の座り話しかけてくる。

 

「お前の事だから誰かを助けて怪我したんだろ?その事に関しては何も言わないけどさ、もうちょっと自分の身を大切にしてくれよ。全く誰に似たんだか…」

 

溜息と共にボクに苦言を零す彼の名は【ティガ】。

そう、ティガ。ボクの生きる世界が在りし日のネオフロンティアスペースである事に気が付く要因となった人物でもある。

 

「…………」

 

ふと視線をずらすと上の空でこちらを見つめるフレアの姿が視界に入る。そんな彼女の様子に同じく気が付いたお兄ちゃんが声をかけるのだった。

 

「ん?どうしたんだフレアちゃん?」

 

「っあ、いえ…… ティガさんも大分ボロボロだなっと」

 

「あぁ、さっきまで怪物のいた辺りで救助活動を行っていたからな」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるお兄ちゃんの身体には大きな怪我こそないが、確かに細々とした傷が見受けられた。インナーを着たままの姿と言い、ほんのさっきまで近衛兵として働いていたのが容易に想像できる。

 

「無茶してお姉ちゃんを泣かせちゃダメだよ」

 

「リマこそ無茶して星になった親父とお袋を泣かすなよ」

 

「___二人共、似た者同士だよ」

 

小言を言い合う僕らに呆れたようにフレアが言葉を零す。それにより見つめ合っていた僕らは笑い、それに釣られてフレアも笑う。今この瞬間だけは、昨日の不運を忘れたかのように普段通りの平和な日常が流れている。

 

だけどこうして笑い合えるのは、この日この瞬間が最後であった……………




キャラ設定「ティガ」

王宮に使える近衛兵のイケメン男性。歳は16(今年の誕生日で17歳)でリマの血の繋がった兄。
両親との別れに気持ちが整理が付かないがまま、妹・リマの為に学校をやめ戦士の道を選んだ。その実力はベテラン戦士であるルナ達の父親を師としてるのもあるが、天性の才により同年代を寄せ付けず、ベテラン戦士にも引けを取らない。

作中にて言及は無いがその容姿は「マドカ・ツバサ」に酷似している。
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