足元に
果てしなく続く草原に俺は立っていた。
「…………」
こんな晴れ晴れとした気持ちは生まれて初めてかもしれない。なにせ常日頃耳元で喚き立てていた『声』が一切聞こえないのだから。
だが、そんな時間もすぐに終わる。
「…………」
『…………』
突っ立っている俺の目の前に突如顕現し始めた黒いモヤ。散り散りになっていたそれは一つに纏まってゆき、やがて────
『走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ──』
「────」
果たして現れたのは一人の男を苦しめ続けた『声』の群れ。
ウマ娘に人間が勝てるわけがない。
誰が言ったのか。その事実を俺は深く恨んでいる。
全力で駆け出したのもつかの間。俺は簡単に追いつかれ、サラサラとした草地の上に引き倒された。
「モ、ガ────!」
目から、鼻から、口から、爪の間から、ありとあらゆる箇所から俺の中に黒いモヤが滑り込んでくる。
『走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ──』
ふざけるな。俺の体も、俺のレースも、俺だけのものだ。お前らなんぞに一片たりともくれてやるものか……!
「が、あ゛ぁあア゛ぁあ゛ァあッ────!!」
『──────』
叫びながら影を振り払う。表情なんて無い筈なのに、何故か一瞬黒い少女の瞳が悲しげに揺れた──気がした。
「あ゛アああ゛ぁあアあァあ゛っっ!!!」
無我夢中で起き上がり駆け出す。まだ諦めないのか、黒い少女は再び追跡を始めてきた。
無限に広がる草原の中でひた走る。駆け巡る。這い回る。そして転ばされ、押し倒され、組み敷かれた。
その都度黒いモヤは俺を侵食しようと抱きすくめるように体を覆う。入り込まれかける度に意識が遠くなるが振り払ってまた走り出す。
何度も繰り返す。いつかは捕まると知っていながらも抗い続けるうちに────一つ思い出した。
それはなんてことない、ただの日常の一部分だった。それでも俺にとっては大切な記憶。
足が悪い祖母を背に、近所の図書館を往復した日のこと。あの時は蝉がイラつくぐらいによく鳴いていた。道沿いに打ち捨てられた鼠の死体、少し効きすぎた冷房、どれもハッキリと覚えている。
祖母は読書が趣味だった。俺も『声』を忘れる為に内容が全く頭に入ってこない文字列を何度もなぞった。
気の狂いそうな攻防の中でその思い出だけが唯一、心の支えとなっていた。
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「…………」
目に入ったのは薄暗い天井だった。
夢と呼ぶにはあまりにも感覚が鮮明だった。内容も寸分の狂いなく覚えている。それでもあの思い出のおかげで──────なんの記憶だ?
「……待て、いや、待て、待て」
あんなに意識が冴え渡っていたんだ。覚えていない筈がない。俺は『奴ら』に何度も侵食されかけて、その度にあの思い出──大切な思い出のおかげで振り払っていられたんだ。
「──────」
思わずこめかみに手を当てると少し湿った。じっとりとした、嫌な汗だ。
祖母とのなんでもないような日常の断片だ。それでも俺にとっては重要な記憶。ほら、ちょっと『声』を我慢して考えればすぐにでも思い出せる。そうだろう?
『走れ走れ走れ走れ走れ走れ──』
「──────」
声が聞こえる。それだけだった。
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「……ねえお兄ちゃん。カレンのことは『カレン』って呼んでくれないかな」
「…………?」
「ダメ、かな……うるうる」
「分かった──カレン」
「────はーい♪」
無干渉は齟齬を生み、齟齬はいずれ歪みとなり、歪みはやがて軋轢となる。
そうなってしまえば色々と面倒事も増えるのでこちらとしても余計な憂いは絶っておきたい。だから求められれば一緒に出かけるくらいのことはする。呼び名を変えるぐらい特に何も思わない。
カレンチャンに誘われ妙に煌びやかなカフェやら何やら来てみたのはいいが何故俺を付き合わせたのかよく分からない。ウマスタグラムだかなんだかの写真を俺に撮らせるわけでもなく、こちらが全く喋らずとも慣れた様子で小気味よく会話を展開させていく。
基本的に俺が手出しをしなくてもコイツはなんでもやってのける。面倒な取材の対応やSNSひいては人間関係のゴタゴタも独自で考え行動に移し、そして成功を収めている。これほどやりやすい相手はそうそういない。
要するに────俺がいなくても問題は無いということだ。
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どこに行っても、何をしても、あの人はどこかうわの空で、走っている時の方がずっと楽しそうだった。
会話の最中にそれとなく探りを入れてみたけれど自分のことについては全く話してくれなかった……というよりも自分の過去に対して興味が無さそうだった。
でも、
『いいのか?』
『……え?』
『そのウマスタ……だかの写真、今日はあまり撮ってないようだが……いいのか?』
やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだった。
今日はあの人にたくさん「見て」もらおうと思ってウマスタの更新は予め出かける前にある程度済ませてきた。あの人といる最中はなるべく控えめにもした。
私の”カワイイ”を受け止めてくれることは無いのにそうやって私を見守っているところが────本当に大嫌いだった。
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「が、あ……っ、はぁ、あ……ッ」
「…………」
心臓が今にも胸を突き破りそうだ。ウマ娘に合わせて肥大化された血液ポンプ。およそ人間のそれでは成し得ない爆発的な力。
恐らく、ではなく一度確実に心臓が破れた。通常ならばその時点で命に関わる重傷だ。それでも強制的に治され、そして────造り変えられた。
「あ…………ぐ、」
それも全て一回のレースの為。それが終われば圧倒的な心肺機能も、この強心臓も無用の長物。
感覚が霞む程に強烈な鼓動。神経ごと再生しているのだろう。いつまで経っても痛みに慣れる気配は無く、意識も透き通ったままだ。
そう、慣れない。何度繰り返しても何度味わっても体が痛みに適応しない。脳細胞は擦り切れる度に作り直されその鮮度をみずみずしく保っている。役目を果たせとでも言うように。
「…………」
カレンチャンは俺の背中をさすっているようだが一向にその感覚が捉えられない。身体中の燃えるような熱さに紛れて酷く曖昧になっている。
暗に「面倒は起こすな」と言われたがそれ以外特に追求などされることはなかった。
あの時吐き出しかけた血液を飲み下しておいて正解だった。もしレース毎に重傷を負っているとバレていたならこうはならなかっただろう。
外部にその情報を漏らさないように走る際は身元を隠蔽する為の変装を行うという条件付きだが逆を言えばそれだけだった。いくらなんでも美味い話がすぎるが……そんなことを気にしていられる余裕は俺には無い。
「はあ、っ……、は……」
隙を伺いサクラバクシンオーと走った時からつけっぱなしだった長髪ウィッグを影にして自らの胸元と両足を確認する。
傷跡が増えている。最初は走った傍から治っていくことに深く落胆していたが、これなら──いつかは───
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秋川やよい。
彼女は若くしてトレセン学園理事長の座へ上り詰めた──傑物である。
その慧眼は既に彼の異常性を見抜いていた。無論、奥底に秘められる狂気的なまでの闘争心も。
理事長に赴任してまだ日の浅い彼女だが、学園を牽引する上で多くのトレーナーと関わってきた。そして学んだことがある。
──アレは、あのような目をした者は、一度走り出したら止まらない。
下手に刺激を与え事態を悪化させでもするならば厄介事は避けられない。そうなれば学園及び生徒たちが被害を被る恐れもある。
カレンチャンを大差に突き放す程の実力の持ち主ならば、扱いようによっては生徒たちの助けとなるだろう。
であればこの際理由は問わない。使えるものはなんでも使う。それが、この学園を経営するということなのだ。
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誰もいない廊下に足音が響く。
……私は、時々あの人と一緒に走るようになった。模擬レースでもトレーニングでも、あの人はとにかく走る事だけを考えていた……かと思えばそうでもなく、トレーナーとして私に特訓をつけることも何度かあった。
──結局、お兄ちゃんは選手としての”
足音が響く。
私が休んでいる間──お兄ちゃんの傍にいない間、あの人はいつでも他の子と走っている。それが悪いとは思わない。理事長さんからもその力を他生徒の指導にも活かせるようにと言われているようだから。
でも、そうなんだ。
私はお兄ちゃんにとって何も特別じゃなかった。
「……お兄ちゃーん☆入るよー?」
思考を切り替えていつものカワイイカレンチャンに戻る。寧ろこっちの方が自然体だから負担に感じることなんてない。
カレンは今、走り終わったお兄ちゃんを「労おうと思って」ドリンクを片手にトレーナー室にやってきていた。辺りはすっかり暗くなっていて、お兄ちゃんは今の今まで自主トレをしている子に付き合っていたみたい。
最近、みんなの中でお兄ちゃんのことが話題になっている。学園指定の制服やジャージを着ていない、謎のウマ娘。顔を隠してダボダボの服を着ていて、爆発的な速度で走る。
決して喋ろうとしないし身振り手振りで説明するだけだけど評判はいいらしい。とても勉強になるだとか。
その正体を知っているのは、カレンだけだった。
「…………お兄ちゃん?」
返事が無い。少しだけ不安が胸を
「────」
「が、あ、あ……っ、ぎ、あぁあ、あ、ぁ──」
ドアを開けた先にいたのは、苦痛に表情を歪めて身を捩っているお兄ちゃん。顔色は真っ白で生気が全く感じられない。玉のような汗を浮かべて今にも死んでしまいそう。どうして?
違う。やることは決まっている。お兄ちゃんが苦しんでいる。なら私がなんとかしないと。
「ほんのちょっとだけ待ってて。すぐに助けを呼んでく──────お兄、ちゃん?」
身を翻して助けを求めに行こうとすると腕を掴まれて引き止められてしまった。振り払うのは簡単だけど、この人の眼がそうさせてくれない。
「…………い゛、く…………な」
「────うん。分かった」
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「ありがとうございましたッ!大変勉強になりましたッ!」
「…………」
元気よく礼を言うサクラバクシンオーに対して無言で手を振ることで返事をする。
初めはどうなるかと思ったがことのほか上手くいった。ジェスチャーや筆談でも生徒たちは正しい解釈をしてくれる。俺が使用した
ただそんなことはどうでもよかった。
走っていないと気が狂いそうだった。相手は誰でもいい。とにかく走らなければ自分を保てなかった。
走れば走る程に体は傷つき、修復が追いつかないこともある。それでいい。そうでなくてはならない。
彼女たちと走っている間痛みは感じない。大分体が適応し始めてきたのかと予想していたが、それは甘い考えだったとすぐに思い知らされることになる。
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誰の目にも触れないよう身を隠しながらトレーナー室に戻る。幸い今は放課後。陽が落ちきった時間帯ということもあり、学園内に生徒の姿はそこまで見受けられない。
トレーナー室に戻り息をつこうとすると────
「が────ッ!?」
強烈な痛みに襲われた。思わずその場に跪く程の。
「あ、あ……!」
痛みによって意識が遠のき、痛みによって意識が取り戻される。
成程、周囲にウマ娘がいる間こんなことになれば俺が傷を負っていることも人間であることもすぐに発覚してしまうだろう。
ならば誰もいない状況で一気に痛みを処理させた方が心配も少ない。これこそ正しい隠蔽方法だ。
「─────」
あとどれくらいこの時間が続くのだろう。どれだけ耐えれば解放されるのだろう。もうそんなことすら考えられない。
「……お兄ちゃーん☆入るよー?」
そして、カレンチャンがやってきた。
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汗で身体中を濡らしながら辛そうに呻いているお兄ちゃんに、私はさすってあげることしかできなかった。
どれくらい経ったのか分からない。しばらくするとあの人は生気を失ったまま語り始めた。
「声が聞こえる……と言ったら、お前は信じるか」
あの人が言うには、物心がついた時から延々と頭の中で『走れ』と囁かれている……らしい。疑う気なんて無い。そうでもなかったらあそこまで速く走っていられる理由がつかないから。
それよりも頭の中にしつこくこびりついていたことが一つ。
──お兄ちゃんは今初めて、私に悩みを打ち明けた。
ずっとそうだった。一度だって私に自分の中身を見せることなんて無かった。
そんなことを考えている間もあの人は話し続けている。走っていないと声が聞こえて気が狂いそう、これからもやめる気は無い、トレーナーとしてカレンのことはきっちり面倒を見る……、
どこかふわふわした気持ちで聞きながら分かってしまった。
この人は死のうとしている。
突拍子もないようだけど、何故か分かってしまった。あそこまで自分を追い詰めていたのも、ここまで苦しんでいながら止めようとしないのも、そう考えれば説明がつく。
ここ最近のお兄ちゃんが走るペースは異常だ。並のウマ娘なら間違いなく再起不能になるぐらいには激しい。そうやって疑問に思っていても止められなかった。最近はなるべく無理をさせないようにお兄ちゃんからの誘いを受け流してきたけれど、それは逆効果だった。
「お兄ちゃん」
だから私は条件を付ける。これから先、私の体が持つ限りいくらでも一緒に走ってあげる。その代わり──私が勝ったら、お兄ちゃんには走る事をやめてもらう。
酷なことなのは分かってる。この人は今までたくさん苦しんできたんだろう。私の浅い想像を絶する程に。
でもイヤだった。お兄ちゃんがまたいなくなるなんて、私には耐えられない。
制止しても止まらない。なら私が一緒に走り続ける。他の子たちに気を向けられるぐらいなら、そっちの方が断然いい。
「……分かった」
お兄ちゃんはこの折衷案を呑んでくれた。だから絶対に勝ってみせる。勝手に死なせなんてしない。
……ごめんね。あなたの命数が尽きる前に、私があなたの夢を壊す。
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また夢を見た。『奴ら』にしつこく追いかけられ拘束され体内に入り込まれる夢を。
それでも俺が自我を保っていられる理由は祖母との思い出が心の支えになっているからだろう。
だが、目を覚ませばそれも消えていく。日頃思い出せなかった大切な記憶が、失う瞬間にのみ想起され目覚めと共に剥がれ落ちる。花火のように呆気なく。
毎朝、瞼を開くととめどない喪失感に覆われる。忘れるということがここまで
そして忘れる毎に──自分を縛る鎖から解放されていくような気がした。
ずっと心残りだった。祖母には数え切れない程世話になったというのに、恩を返す前に亡くなってしまったから。
「あの日」大人しく死ねたのなら、どれだけ幸せだっただろう。何故、そうだ何故なんだ。何故『奴ら』は俺から離れてくれないんだ。
────────────────────
「ハァ……ハァ……」
「大丈夫かカレン。ここいらで終わりに──」
「だいっ、じょう……ぶ、まだ、まだ行ける、から……!」
目の前で息を切らす担当ウマ娘。対する俺はせり上がる血液を堪えることに全神経を注いでいた。
カレンチャンとの「契約」を結んだあの夜以降、共に並走トレーニングや模擬レースを行うようになったが……今日はこの辺りが限度だろう。強いて後──一走りできるぐらいか。
自分が手塩にかけて育てているウマ娘を、自分の足で打ち倒す。その勝利の、なんと甘美なものか。
「はぁ────、大丈夫。カレンはやれるよ」
「…………」
武者震いがする。今の俺は、走る事でしか自身の存在を確立できない人でなしだ。それでも構わない。走る喜びが、この瞬間だけが、俺に生を実感させてくれる。
「────行くぞ」
「……うん」
並んでスタートラインに立つ。
────俺は、求められたから走ったのか。『彼ら』も、数多の声に求められたから走ったのだろうか。
誰かの気持ちを誰でもない第三者が計り知るなど、驕り高ぶりも甚だしい。
分からない。なんの為に走るのか。彼らは何故走っていたのか。
俺が彼女たちの残痕を慰める為に用意された空っぽの虚像なのなら、俺はなんの為に彼女たちを跳ね除けてきたのか。
俺は走ることでしか己の存在を確かめられない。彼女たちの声は走ることでしか無くならない。
合図に合わせて飛び出した。
走っている間も頭の片隅で考えていた。
走る者には役目がある。誰の為に走るのか、なんの為に走るのか。
例外はあれど、彼らには自らの忠を尽くす主がいた。その本意はどうであれ、彼らを導く
誰よりも速く。何者にも負けない為にウマ娘は走る。なら、俺は何故ここにいる。何故走っている。誰の為に。なんの為に。
俺の旅路に
それこそが人ならざるものの歩む獣道。──そして最悪なことに、これこそが俺の人生だった。
────────────────────
「ハァ……っ、ハァ……ッ!」
「今日はもう終わりにしよう。それ以上はお前の足が持たない」
「だ、め……っ、カレンは、まだ、かって、ないから、これじゃあ、おにいちゃん、が」
「分かった。なら今日は俺もこれ以上走らない。これでいいか」
「え、……?なん、で」
「……声は耐えればいい。お前の足を壊すぐらいなら、その方がいくらかマシだ」
「────」
本音を言えば声と欲求を抑えるのは限界に近い。今すぐにでも走りださなければ気力が持たない。
それでも、コイツに無理をさせて共に走れなくなるのはゴメンだ。俺はあくまでトレーナーであり、コイツの面倒は俺が見なければならない。
──それに、カレンチャンには目指す夢がある。俺とは違う、炯々と輝く道標。
コイツの言う”カワイイ”はよく分からないが、コイツの在り方は十分人に誇れる……いいものだと思う。それを俺の勝手で台無しにはしたくなかった。
────────────────────
「……はぁ、本当にもう……いい加減にしてくれよ」
『走れ走れ走れ走れ走れ走れ──』
やぶれかぶれに呟いてみるがそんなことはお構い無しに『奴ら』は俺を追走する。
不思議なことに、奴らが俺を取り込もうと至る箇所から黒いモヤをねじ込んでくる感覚にはすっかり慣れてしまった。
振り払うことにも疲れてしまった。それでも、大切な人との繋がりだけが俺を支えてくれていた。どれだけの記憶を失ったか、予想もつかない。
─────────あ。
ダメだ。それだけは勘弁してくれ。いや、そうじゃない。
蘇る。
養成学校への合格が決まった日のこと。あの人は痩せこけた顔をしわくちゃにしながらも喜んでくれた。あの時には既に病に冒されていたのだろう。
それだけはダメだ。頼む。お願いだ。
あ、
あ─────────
─────────────────あ、れ?
────────────────────
「あ」
黒いモヤが消えた。そして、あの人とのことも。
「────」
誰のことを忘れてしまったのか。分か
「────」
涙が溢れて止まらない。過ぎ去った思考の海に取り残されたものはただ一つ。
「──────────カレン」
次の話でひとまずは終わると思います。