司馬達也に憑依したワールドトリガー   作:ヨミセンアポ

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司馬達也のサイドエフェクト

 司波達也は転生者だ。

 

 だが、前世の記憶は曖昧だ。

 ただ転生したのだという根拠のない自覚があるだけの一般人に過ぎなかった。

 

 

 ランク戦最終ラウンドを数日後に控えた玉狛第二の隊長、三雲修は最終ラウンドで初めて戦うことになる司波隊の情報収集をしていた。

 

 修は実力派エリート迅悠一に質問をする。

 

「あの、迅さん……司波隊がオペレーターもいない戦闘員一人だけの隊っていうのは本当ですか? 司波隊長が参戦しているランク戦のログを観たんですけど、オペレーターがいないとは思えないほどステージ全体を把握できているような気がして」

 

 迅は笑いながら答える。

「よく気がついたね、修……実際、達也は文字通りランク戦のステージ程度の広さなら全体を把握できていると思うよ」

 

「それは……司波隊長もサイドエフェクト持ちということですか?」

 

「勘がいいな修……達也のサイドエフェクトは俺と同じ超感覚の空間認識だ」

 

「空間認識ですか? それは自分と対象の距離が正確に把握できるとかではないですよね」

 

 修の考察に迅は笑う。

「あながち間違いではないな……実際、達也がゲーセンでUFOキャッチャーをした時は、店員に止められるほど景品を取っていたよ」

 

 修は苦笑いをする。

 修がイメージする司波達也には似合わない意外なエピソードだ。

 

 迅は真面目な顔に切り替え、話を続ける。

「でも達也のサイドエフェクトはそれ以上のことができる……そうだな……修、目を瞑ってみてくれ」

 

 修は不思議に思ったが指示に従う。

 

「修、お前は今、何が見える?」

 

「……何も見えませんけど」

 目を瞑っているのだから当たり前だ。

 

「じゃあ、目を瞑ったまま、修の対面に座る今の俺をイメージできるか?」

 

「はい」

 目を閉じる直前の姿と変化はないだろうからイメージできる。

 

「今、修がいる場所は?」

「玉狛支部です」

 

「なら、今座っているソファーから支部の外へ出るルートを説明できるか?」

 

「はい……まずはソファーの右手側にあるとびらを開けて部屋を出て、階段を降り、廊下を歩いて、出入り口を開けたら支部の外です」

 いつも利用している玉狛支部のことだから簡単だった。

 

「次は玉狛支部からボーダー本部までの道のりをイメージできるか?」

 

「はい、できると思います」

 玉狛支部所属でも本部へ行くことは数えきれないほどあるから、イメージできた。

 

 修の答えを聞いた迅は話す。

「もう目を開けていいよ修……そして達也のサイドエフェクトは今、修がしたことを強化したものだ……」

 

「……どういうことですか?」

 要領を得ない迅の説明に修は当然、質問をする。

 

「詳しく説明するとだな……今、修が目を瞑っていても、目の前の俺をイメージできていたのは、直前まで俺を見ていて、俺が動いていなかったからだろ?」

 

 修が頷くのを確認した迅は話を続ける。

「でも達也なら、俺が音を立てずに部屋をこっそり出ていたとしても俺のことを把握できていたと思うよ……あいつのサイドエフェクトは人の気配にも敏感だからな」

 

 迅の話を聞いた修は目を見開く。

「つまり、司波隊長のサイドエフェクトは、視界の外の人まで見えているということですか?」

 

 迅は首を横に振る。

「修は、その程度の認識だと、まだまだ甘い。……さっき修には本部までの道をイメージしたもらっただろ」

 

「はい……自分がいつも歩いている道なのでイメージできました。…………それってまさか!?」

 

 修の想像を迅は肯定する。

「修の想像通りだよ……達也は未知の場所であっても、見るまでもなく全てをリアルタイムで把握することができる。……例えば、巨大な迷路に迷い込んだとしても、達也なら上から俯瞰したようにゴールを目指して歩くことができるだろうね」

 

 修は顎に手を当て考え込む。

「それは凄まじいですね……そのサイドエフェクトはどんな風に見えるんですか?」

 

 

「達也が言うには、地図みたいな平面なイメージではなく、地形や人の立体的なリアルタイムのイメージが頭に浮かぶそうだよ。……そして、達也のサイドエフェクトはトリオン体も認識することができる。だからこそ、オペレーターがいない一人の部隊が成立する。……ランク戦でのオペレーターの主な仕事は、他の部隊のトリオン反応の位置を戦闘員に知らせること……しかし、達也のサイドエフェクトは、オペレーター以上の精度でそれを可能にする。オペレーター泣かせのサイドエフェクトだよ」

 

 修は考える

――それはつまり、司波隊長相手にはバッグワームも意味を成さないのではないだろうか。

 

 不安を覚える修に迅は声をかける。

「修、そんなに悲観する必要はない……一年前ならまだしも、今の達也なら勝機がある」

 

「それはどういうことですか?」

 

「達也はとあるブラックトリガーを封印するためにトリオン能力の大半を常時使用している……一年前のあいつならブラックトリガーなしでヒュースと同等以上のトリオン能力があったと思うよ、流石に千佳ちゃんほどデタラメではないけどね……今は二宮さんよりは低いはず」

 

 修は溜息を吐いた。

 比較するのが、射手ランク一位の二宮さんの時点でなんの慰めにもならなかった。

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