悪魔の一目惚れ   作:主義

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恋は盲目

あの日から私はクラウス様のお家に毎日のように訪ねるようにしている。

 

 

もちろん、クラウス様もお忙しいので毎日家にいることはなく留守なことも多いが、それでも私は毎日続けている。

 

クラウス様の『アーベル家』は普通の家系と少し違うもの。『アーベル家』は十三英雄の末裔と言われている。そして『アーベル家』がそう思われているのは代々受け継がれている家宝と尋常ではないその力。アーベル家の人たちは生まれながらにして天才。

どういうわけなのかは私も分からないが、生まれて数ヶ月もすれば他との違いを発揮し始めるのだという。

 

 

 

物心が付く頃には魔法の天才であっても敵わないほどの力を付け、成人する頃には一つの国を亡ぼせてしまうほどの力を有する。

 

まあ、私も全て父上から聞いただけなので真実の程は分からないが。ただ、クラウス様を見ているとその話は嘘ではないと感じる。

 

 

その話が本当だとすると……クラウス様は…。

 

 

 

アーベル家の人間は三十代になる頃には命を落とす。

 

それを物語るようにクラウス様のお父様とお母様はもうこの世にいない。

 

 

お父様とお母様のお話をしている時のクラウス様はとても寂しそうだった。そんなクラウス様を見ていると私まで悲しい気持ちになってくる。

 

 

私の命でクラウス様を延命させられるのなら、私は迷わず自分の命を差し出すことが出来ると断言できる。

 

―――――――――――――

 

そして今日もクラウス様のお屋敷に来ていた。

 

 

「クラウス様!」

 

 

「…ひ、ひめさま…」

 

 

「待っていました!」

 

クラウス様は何故こんなにも美しくてカッコいいんだろう。見つめられるだけで今にも意識を失っちゃいそう。

 

 

「今日もご足労頂き、ありがとうございます」

 

 

「いいえ、私はクラウス様にお会いできるだけで幸せですので」

 

ここまでの道のりもクラウス様と何を話すかを考えたり、これからの自分たちのことについて考えたりしているとあっという間に時間が流れる。

 

 

「そう言って頂けるなんて自分は幸せ者です」

 

 

「いえ、私の方こそ幸せ者です。クラウス様といつもお会いできて、お話が出来るんですもん」

 

今まで退屈だった日常が、クラウス様のお陰で違って見える。モノクロだった世界が色づき、鮮やかになっていくのが自分でも分かり、それを楽しんでいた。

 

 

それからクラウス様は私を家の中へと通してくれて、いつも通り応接間でお話しようとしていたので、私は少し勇気を出して「今日は違う場所でお話しませんか?」とお願いしてみることにした。

 

 

「違う場所ですか…。ですが、姫様をお迎えして失礼にならないのは応接間だと思うのですが」

 

 

「私はどんなところでも大丈夫です。クラウス様とお会いする時の私は王女ではなく、ただのラナーという女です。なのでそこまで気にする必要はないんですよ」

 

 

「…ですが…」

 

 

「本当にいいんです」

 

そしてどんどん押して行けばいずれは…クラウス様のお部屋に招待してくれると確信していた。クラウス様が女性とお付き合いのような経験があるのかは分からないが、それでも男女が二人きりで会うとしたら、やっぱり応接間なんて場所じゃなくて、お部屋がいい。そして、それはクラウス様のお部屋がいい。クラウス様の匂いがする場所でクラウス様と一緒に過ごせるなんて最高のご褒美だ。

 

 

「では…僕の部屋でも大丈夫ですか?」

 

 

「全然いいですよ。私としてもクラウス様のお部屋に興味があります」

 

 

「そ、そんな大したところではないですが…」

 

そしてクラウス様は私のことをお部屋まで案内してくれた。

 

 

 

クラウス様の部屋はとても簡素だけど、しっかりと整頓されていた。そして何よりもクラウス様の匂いがする。この匂いだけで私は生きていける。

 

 

「こんなところですが、姫様大丈夫ですか?」

 

 

「全然構いませんよ。私としてはクラウス様のことをまた一つ知れて嬉しいです」

 

 

「そうですか。そう言って頂けると自分も有難いです。それではそちらの椅子に腰かけていただいて」

 

 

「そうですね」

 

いずれは寝室に行って、クラウス様のベッドで眠りたい。それが出来ればクラウス様に包まれて眠るという夢を叶えられる。そしてもっと先の未来では……クラウス様に抱きしめられながら眠りたい。

 

 

そんなことを考えながらも私はクラウス様に促された通り、椅子に座る。それを確認するとクラウス様も目の前の席に座った。

 

 

「姫様が僕のことを高く評価してくれるのは有難いです。自分も姫様ほど魅力的な人と結婚ができたら、それはとても幸せなことです」

 

 

「私もです」

 

 

「ですが、僕たちはまだ会って数回です。お互いのことを完全に理解しているとは言えません」

 

 

「それはそうですね」

 

 

「では、姫様さえよければ僕とお出掛けをしませんか?」

 

 

「それはデートというもののお誘いですか?」

 

 

「そうです。姫様さえよければですが」

 

そんなの良いに決まっている。絶対に結ばれたい人が、私のことを知りたいとデートに誘ってくれているのだもの。嬉しい以外の感情が沸き上がって来ることはなかった。

 

 

「もちろん、構いませんよ。私もクラウス様のことをもっと知りたいので」

 

 

「それでは日程などは姫様のご予定もあると思いますので、次に会う時に詰めていきましょうか」

 

 

「そうですね、そうしましょう」

 

 

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