俺は一度の目覚ましでは起きないから、目覚ましのセットは六時半だが起きるのは七時だ。
目を覚ますために洗面所に行き、冷たい水を顔に片手でかけて、最低限の(寝癖など)身だしなみを整えてから朝食を食べる。
それから用意してある弁当をカバンに入れ、自転車で駅までむかい、そこから電車で行く。
ここ二年間続く通学だ。
電車内で音楽やゲームをして適当に時間を潰して、目的の駅で降りる。
そして学校の決められた通学路とは逸れた道を俺は歩く。
誰も通る人がいないというのもあるが、この道にある満開の桜並木の道が好きなのだ。
「……」
新しい学年になり、新しいクラスになったがうまく溶け込めないでいる。別にそこまでクラスと上手くやっていきたいとは思わないが
「…つまらない」
そう呟いたところで退屈がまぎれる訳ではないが、つぶやかずにはいられなかった。
学校に行ったところで楽しいことなんてない。特段勉強とかスポーツが出来る訳では無い。学校に行くくらいなら家でゲームしている方がいいと思うのが常々だ。
…いっそのこと、死んじまおうか?
そんなくだらないことを考えていた時だった。突如胸が熱くなった。いや、比喩でも何でもなくだ
「……は?」
我ながら間抜けな声だったと思う。自分に何が起こったのか分からなかった。
それから体から血が抜けていく感覚を感じた。痛みなんて知覚出来なかった。耐えられず横に倒れてしまう。そして目の前が真っ暗になっていくのを感じた。
ああ、神様ってのは意地が悪いんだな
そんなくだらないことを思って、意識が消えた。
そして、今に至るのだ。
「…神様ね……もっと荘厳な者かと思っていたけど、案外そんな事は無いんだな」
「…恨んでおるのか?」
「今更そんな事は思わないよ」
目の前の人の形をした何かとは会話というより念話という感じだ。頭の中に会話が入っていく
「貴方は私とは別の人間を裁く予定だったが、誤って私を殺してしまった。もう元の世界に帰すことは出来ないが、別の世界に転生させることとそこで生きていく力を与えよう。要約するとこう言うことですよね?」
皮肉混じりにそう言った。別に皮肉ったところで何か変わるとも思えないが
「そうじゃ」
悪びれも感じないその回答に舌打ちしたくなるが我慢する
よくありがちな転生小説物の筋書きだ。現実で起こるとは思っていなかったが
「転生する先の異世界は指定は出来んが、お主の望む力を授けることは出来る。何でも言うが良い」
いく先がわからないと言うのは痛いものだが、力を貰えるならもらっておこう。
「とりあえず、身体能力の強化。そうだな…いく先の世界の一般的な人を遥かに超えるものが良い」
「ふむ。身体能力の強化か。他には?」
とりあえず当たり障りのない要望を答えてから考える。俺はこれから別の世界に行く。だったら雨宮一樹としてではなく、別の人間として生きていきたい。
今まで生きていた世界に未練を残したくはない。
「…どうした?それだけでよいのか?」
目の前の神は怪訝そうな(表情読めないが)顔をする。俺は覚悟を決めた。
「後の願いは…………
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「…あいわかった。それではヌシを異世界に飛ばす。そこで今の要望も叶えよう」
目の前が白に染まって行き、やがて意識も消えていった。
この日、雨宮一樹と言う人間は存在が消えた。
まるで初めから居なかったかのように消えた。
…変わったやつだったのう…
長年彼はここで
「またですか?アドラルテ様」
後ろから声をかけてくる小柄な男性(の形をしたもの)は呆れたが、もう慣れたようなため息をつきながら言う
「…レネットか、何用じゃ?」
「何用じゃ?ではありませんよ。毎度毎度あなたの不祥事の始末書提出するの誰だと思っているんですか?少しは自重してくれませんかね?大体あなたという人は何故下界の生物を
表情は見て取れないが、彼の疲労度が高いことがうかがえる。
それに対してアドラルテと呼ばれた老人は飄々と答える
「何、これでも人は選んでおる。死を望んだ人間に限ってワシはそいつを殺す……いや、転生するのじゃよ」
「いえ、だから理由になっておりません。何故こんな意味の無い事をするのですか?」
「お主、観賞用動物って知っておるか?」
「…いえ、存じません。それが何か?」
「観賞用動物とはな、人間達が動物を観賞や、愛玩するために……まあ動物にもよるがの、それを飼うことじゃ。魚などは水槽という海や川とは比べものにならんくらい狭いものに閉じ込めたりするのじゃ」
「……それが何か?」
「わからんのかのう?」
「ワシはそれと同じことをしているだけじゃ。
「……ハァ…まあ、私もそこまで拘るつもりもありませんが、神を信仰する信者達は、浮かばれませんね…」
「まあ、これはある意味試練でもある。ワシはタダで力をやる程お人好しでもないからのう。それに…」
「その世界に転生した人間はどう生きて行くのか、観賞するのも楽しかろう?」
これからが楽しみじゃ。お主は果たして最後に悪魔となるか、それとも聖人になるかのう…
冷たい風が頬を撫でるのを感じ、目を覚ました。寝ているベッドのスプリングが柔らかいのか、フカフカしていてこのまま寝ていたい衝動に駆られるが、素肌を刺す冷たさを感じガバッと起きた
「……?」
その少年は不思議そうな顔をして自分の現状を確認する。今自分は辺り一面が真っ白に染まる雪の中を寝ていたようだ。
「……」
彼は現状を把握し切れていない。ここは何処だ?何故俺はこんなことにいる?そもそも何故俺は雪の中で寝ていたのだ……
いや、そもそも……俺は……いや
「……僕は、
どこまでも白い雪の大地に
どこまでも白いその少年
名を忘れ、自分の生涯も分からないそんな白き少年
白き大地に白き少年が降り立った
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…というか、ルビ振り直しするのに、何回編集してるんだろ…