超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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今回は本編そっちのけでクリスマス特別編を投稿します。

今回はちょっと長めな上に、今日ギリギリで仕上がったので、クオリティ低いかもしれません……申し訳ない。

それではどうぞ


クリスマス・イヴ特別編 僕と女神のクリスマス

雪がしんしんと降り積もる雪国、ルウィー。 街はイルミネーションで彩られ、幾つもの色と白い雪が重なり合い、僕の貧弱なボキャブラリーでは言い表せない美しさがそこにあった。

 

今日は12月24日。 クリスマス・イヴだ。

 

僕のいた世界ではキリストの誕生日を祝う前日がクリスマス・イヴだったが、このゲイムギョウ界での神様と言えばそれぞれの大陸を守る4女神だ。 クリスマスこそあれど、それは特に4女神の誕生日であったりするものではなく、『サンタが子供たちにプレゼントを配る日』というのがこのゲイムギョウ界の人々の認識だ。 まあ、記念すべき日と言う理由で子供は勿論だが、仲睦まじいカップルはこの日に互いの愛を確かめ合ったりだとか、大人は大人で記念日を盾に酒を飲み騒いだりする。

 

クリスマスにプレゼントを配る、サンタさんが生まれたのはここ、ルウィーであるとこのゲイムギョウ界では伝えられているため、毎年クリスマスになると他国、つまり他の大陸からルウィーに訪れる人が多いらしい。

 

らしい、と言うのも、僕自身これはルウィー教会でフィナンシェさんに教わったことであって、実際にこのゲイムギョウ界でクリスマスを体験するのは初めてなのだ。 てっきりゲイムギョウ界にクリスマスは存在しないかと思っていたのだが、意外と僕のいた世界と通じる所は多いと感心したものだ。

 

一応他国から来るってことは、中にはルウィーの女神、ホワイトハートを信仰する人もいるが、その殆どの観光客は他国の女神を信仰している。 信仰対象の問題で入国できないんじゃない? と考えたりもしたけど、案外この世界はその辺は緩いみたいだ。 まあそうでも無ければ気軽に他国行けないけど。

 

さて、ゲイムギョウ界でも元の世界でも皆浮かれている華やかなと言える日に、何をしているのかと言われれば……

 

「じゃ、行きますよー。 おーりゃっ!」

 

「あ、抜け出せました! 」

 

「この先は一応除雪しましたけど、地面が凍結していますので、滑らないように気をつけてくださいね」

 

「は、はい! ありがとうございました! ほらリンちゃん、お兄さんにお礼」

 

「おじちゃんありがとー!」

 

「お、おじちゃん……まあ、君が僕くらいの年になったら僕おじさんだよな……それじゃ、お気をつけて」

 

「はい! 本当にありがとうございました!」

 

車の窓越しにお礼を言うと、その男性の運転手は窓を閉じ、ゆっくりとした動作で車を前に進ませた。

 

遠ざかる車の中から後ろの席にいた、小さな女の子が僕にその小さな手をブンブン振っていたから、僕も手を振りかえした。

 

やがて車が見えなくなった所で僕は手を下ろすと同時に、大きなため息をついた。

 

現在、僕が居るのはルウィーの中央街に繋がる主要道路だ。 そこで除雪作業兼モンスターの警邏兼他国から来た観光客の案内兼問題が発生した際の仲裁役兼……ここで全て言い出すとキリが無いから、やめておくけど、とにかくルウィー教会っていつからブラック企業だったの? って言いたくなるくらいの仕事量の仕事をしている。 更にそれを1人でこなすという、某牛丼屋も真っ青なワンオペっぷりだ。

 

 

『クリスマスだから、教会の職員や神官たちも休んでいるから、人手不足なの。 イツキ、クリスマスパーティー始める前までお願いできるかしら』

 

 

数時間前の僕の仕える女神、ホワイトハート様ことブラン様のお言葉である。 少なくとも女神補佐官1人に頼む仕事じゃない。 と言うかこれ僕じゃなかったら過労死するよホント……

 

除雪作業自体は楽な物だ。 力任せに雪を全部吹っ飛ばせばいいし。 モンスターは数が多く来ると厄介だが、それほど大きな問題でも無い。

 

他国からの観光客の対応。 これが本当に大変だ。 さっきの人みたいに他国から車で来る人が多いのだが、他国では雪が降らない弊害か、雪の中での運転の仕方を知らない人が多い。

 

プラネテューヌのように科学が4大陸の中で最も発展している国だと、タイヤのないエアカー、僕のいた世界で言うホバークラフトのような乗り物で来るので、スリップなどの心配はないのだが、未だに乗り物にタイヤがついているラスティションやリーンボックスから車で来た観光客はその限りでは無い。

 

一応大陸と大陸との接岸場で、スタッドレスタイヤもしくはチェーンをつけているか確認し、どちらもされていなければその接岸場でどちらかの対策をしてから入国することを義務付けられているが、それだけで雪の中でも問題なく運転できるかと言われれば、そうでは無く、さっきの人たちのように積もった雪に引っかかって身動き出来ない車が結構多い。

 

他人の物であるだけに、慎重に力を入れながら後ろから押し出したりしなくちゃいけないから、神経をすり減らすことすり減らすこと。 これは特別手当てが欲しいですわ。

 

「……おっと、そろそろ良い時間かな」

 

携帯の時計を見ながらそう呟くが、携帯の液晶パネルのデジタルな数字が指す時間は、パーティーが始まるまでに帰らなくてはいけない時間には早いが、正直さっさと帰りたかった。 わざわざ言葉にしたのは帰ることに正当性を求めたためである。 ……誰も見てないけど。

 

僕はその場で回れ右をし、これまで除雪した道を辿るようにして、ブランさんの待つルウィー教会へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハアッ……」

 

僕はルウィー教会の入り口の扉をくぐり、扉を閉めると僕は一際大きなため息をついた。 その時丁度自宅へと帰る様子の教会職員さんに心配されたが、何でもないと答えて自室へと向かった。 トボトボとした歩調で廊下を突き進んで行く。

 

「時間外勤務とか聞いてないよ……」

 

ルウィー教会に帰ってくるまでに、それはそれは多くのトラブルに巻き込まれ……と言うよりトラブルをみつけてしまい、見なかった事にすることは出来ず、車の立ち往生からの救出とか喧嘩沙汰の仲裁とか観光客の案内とか子どもの迷子等……とにかく解決していた。

 

そんなことしながら教会へと帰るもんだから、疲れは最高潮を迎えるわけで、既に体は休みを欲していた。

 

(幸いバーティーが始まるまでには少し時間はあるし、ベットで少し寝よう……)

 

やや前傾しながら廊下を進み自室の前へとたどり着いた僕は、すっかりかじかんでいた手でドアノブを強く握り、ドアを開けた。

 

「ジングルベ〜ル」

 

「ジングルベ〜ル」

 

「ふっふっふ〜ふふ〜」

 

「「「ヘーイ!!」」」

 

「ふっふっふ〜ふふっふっふ〜」

 

「ふふふっふふっふっふ〜」

 

「「「ヘーイ!!」」」

 

「……失礼しました」

 

とりあえずドア閉めた。

 

ドアノブをキチンと引っかかるまで閉めた後、ドアの中央にかかっているネームプレートを確認した。 そこにあるのは、最近フィナンシェさんが作ってくれたシンプルな作りをしたネームプレートの中央に、『イツキ』と書かれたネームプレートがかけられていた。 部屋を間違えた訳では無いらしい。

 

「つまり、疲れのあまり幻覚が見えていたのか。 これはいけないすぐに休まなければ」

 

そうでも無ければあり得ない現象だ。 自室に戻ってみたら何か6人くらいの女の子たちが、我が物顔で人の部屋に居座って、クリスマスの歌を途中から著作権を気にするようにハミングで歌っていたなんて可笑しいでしょ。

 

後半を棒読みのような勢いで言ったその言葉に納得した (人はこれを現実逃避と言う)僕は、再びドアノブを握り、幻覚を振り払うために勢い良くドアを開けた。

 

「今日は〜たのっしい〜クリスマス!」

 

「「「「「「ヘーイ!!」」」」」」

 

「なんだこれ!?」

 

とりあえず僕が幻覚と感じた物は大体現実とわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何で僕の部屋に君たちは居座っているの?」

 

部屋のドアを2回は開けたのだが、どうも彼女たちは完全に気づいていなかったようであり、2回目のドアの開閉した時歌の終わりだったようなので、そこで適当に咳払いをして、僕がいることを主張した後、この言葉を続けた。

 

「いやー、だってさお兄ちゃん、クリスマスと言えば雪だよね? 雪と言えばルウィーでしょ? だから皆でルウィーでクリスマスをパーっと祝おうーって話になって、どうせ誰も誘わないとクリぼっちになるノワールと、こんな時でもオンラインゲーのイベント行きそうなベールを誘ったの」

 

「誰がクリぼっちよ誰が! 私はあなたがどうしてもって言うから、仕方なく来たんじゃない!」

 

「確かに、今わたくしのハマっているオンラインゲーのクリスマスイベントはたった1日のイベントですが、あいちゃんがクリスマスパーティーに参加するなら、わたくしは喜んでそのパーティーに参加しますわ」

 

「ベール様……」

 

「あいちゃんとベールさんは仲良しですね〜」

 

今の一連の言葉を誰が言ったかは、把握できるだろうが、一応ここでこの場にいる僕以外の人物(女神を含む)を挙げよう

 

僕のベッドにダイブインしているのがネプテューヌ。 そのベッドに腰掛けているのがノワールさん。 ベールさんとアイエフさんは1つの椅子に2人で座っている。 その隣の椅子に座るのがコンパさん。 そして部屋の隅の壁に背をかけて立っているブランさんだ。

 

何だかまた騒がしくなってきたので、騒音で聞きたいことシャットアウトされる前に言いたいことと聞きたいこと言っておこう。

 

「確かにネプテューヌの言う通り、パーティーは大勢でやることには大いに賛成するけど、それと君たちが僕の部屋にいることと何の関係があるのさ? そもそも何で僕の部屋に勝手に入り込んだし」

 

「わ、私はイツキに悪いと思ったのよ? けど、皆勝手にズカズカ入り込んじゃって、それで……」

 

「ぼっちになりたくなかったんですね分かります」

 

「い、イツキまで私をぼっち扱いするの!?」

 

僕のこの問いに申し訳なさそうにしているノワールさんに対して、いつもなら苦笑いして済ませるが、今日は疲れからか、ちょっと辛辣に答えた。 でもまあ許そう。

 

「あ、ちなみに私もそんな感じよ」

 

「わたしもですー」

 

何その『赤信号、みんなで渡れば怖くない』みたいなノリ。 まあ便乗者はまだ許せる。

 

「わたくしは、一般的な殿方のお部屋がどんなものか拝見したかったのですわ」

 

「……感想は?」

 

「物がなさ過ぎて参考になりませんわ」

 

ベールさんに感想を求めた結果、今度は逆に辛辣に返された。 そう言えば僕は趣味に力を入れて物を買ったりしないから、部屋の物が極端に少ないな。 今度クエストの報酬で貯まったお金で本でも買おうかな。 ベールさんも許します。

 

「わたしは、この人たち……主にネプテューヌがイツキの部屋で変なことしないかの監視のためよ」

 

「うん。 ありがとうブランさん。 本当に助かるよ」

 

「ちょっとー! どんだけわたし信用されてないの!?」

 

ブランさんが僕の部屋にいる理由を聞いている途中でネプテューヌが介入して来た。 ブランさんは元よりこの教会の持ち主だし、どうこう言うつもりは無かったからネプテューヌに聞くか。

 

「じゃあネプテューヌはどうして僕の部屋に入ったのさ?」

 

「ふっふ〜ん。 それはねー……ひ・み・つ。 うふ!」

 

「そこの主犯を捕縛せよ!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

「わー! 冗談! 冗談だってば! 真面目に話すから! 」

 

僕の指示によりネプテューヌをベールさんとアイエフさんとブランさんが抑えてくれた。 これで心おきなくネプテューヌとお話しできるね!

 

「それでネプテューヌ、何か言い分はあるかな?」

 

「わ、わたしはベールと同じで男の人の部屋に興味がありました!」

 

「そう。 で、本音は?」

 

「ベッドの下の男のロマンを探し求めたかった!」

 

「被告人ネプテューヌに有罪判決を言い渡す!」

 

「ええええ!? ちょ、ちょっと待った! 異議あり!」

 

「却下! 被告人ネプテューヌをベットに押さえつけよ!」

 

往生際の悪いやつめ! どうせ他の便乗組と違って、ネプテューヌが1番先に僕の部屋に入ったに決まっている! ネプテューヌは抵抗しようとしたが、呆気なく捕縛したグループにうつ伏せで捕らえられた。

 

「え、冤罪だー! わ、わたしは無実なんだー!!」

 

「……一応、聞いておこうか。 僕の部屋に最初に上がり込んだのは誰?」

 

僕の問いにネプテューヌ以外の人物の視線が1点に注がれる。 その視線の先にいる人物は、ベットに押さえつけられてるネプテューヌ。

 

「……え、えーと……」

 

「弁護の余地なし。 情状酌量の余地も無し。 それでは被告人に、刑罰を執行する」

 

皆の視線が自身に降り注ぎ、反論を言い淀んでいるネプテューヌの横に僕は移動する。

 

「ふふふふ……安心したまえネプテューヌ。 僕は平和主義者だから、君の刑罰に暴力をしたりはしない……怖がる必要はないよ? ふふふふ……」

 

「そ、その怪しげな笑みの方がよっぽど怖いよ!」

 

「寧ろ健康的なものさ……ただ、あまり喋らない方がいい。 ……舌噛むよ」

 

「ま、待って! 見逃して! 見逃してください! わたしにどうかお慈悲を!」

 

「…………」

 

「……50クレジットで、手を打ちませんか……?」

 

「…………」

 

 

50クレジット=500円相当

 

 

「 ダ メ 」

 

その言葉を言い終えると同時に、ネプテューヌの腰の丁度上あたりを二本指を立てて押し込んだ。

 

「!!? ふにゅおああああああああ!!!!」

 

たまらずベットで転げ回るネプテューヌ。 僕が今ネプテューヌを押した部分にはツボがあるのだが、このツボを突かれると、結構痛いのだ。 でも、健康には良いから暴力では無い。

 

「え、えげつないですわね……」

 

「陸に引き揚げられた海老のようね」

 

ネプテューヌの惨状を見て、ベールさんとブランさんがそんな感想を述べていた。

 

「今回は僕だったからいいけど、幾ら興味あるからって他人の部屋、それも異性の部屋に許可無く入るのはNGだよ。 人にはプライバシーって物があるんだからね」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

皆同じ言葉で返してきた。 本当に反省しているのかちょっと不安だ。

 

「失礼します。 イツキさん、パーティーの準備出来ましたよ。 ……あ、ブラン様と皆様方はここにおりましたか」

 

と、そんな時ドアが3回ノックされた後、僕の部屋にフィナンシェさんが現れた。

 

「フィナンシェさん、随分準備終わるの早かったね」

 

「前日に下味や会場の飾り付けはある程度済ましていましたからね。 今日の料理は私も腕によりをかけて作りましたよ」

 

「おー! それを待っていましたー!」

 

フィナンシェさんの自信ありげな声に反応したのは、先ほどまでのたうちまわっていたネプテューヌだった。 相変わらず異常な回復力を持っているなこの子。

 

「ちっ……生きてたか」

 

「それは前フリなのかなお兄ちゃん? 『わたしは死なぬ! 何度でも蘇る!』って返して欲しいの?」

 

僕のコメントを華麗に受け流し、自分の流れに持って行くネプテューヌ。 その辺りのトーク力では僕は敵わない。 よって僕にはネプテューヌに対して大きなため息をつくことしか出来なかった。

 

「……何か、今日のイツキはやたら辛辣ね……」

 

「さっきまでお仕事してたみたいですし、きっと疲れているですよ」

 

アイエフさんとコンパさんが何かコソコソしていたが、気にしない事にする。

 

「さて、それではパーティーの準備も出来たことですし、会場に向かいましょう」

 

「そうね。 それじゃ、パーティー会場に案内するから皆ついてきて」

 

「わーい! ごっはん! ごっはん!」

 

「……ネプテューヌって、本当に頭の中が食欲で支配されているわよね」

 

「あいちゃん。 一緒に行くです」

 

「はいはい。 引っ張らなくてもちゃんとついて行くわよ」

 

ベールさんとブランさんの声を皮切りに、皆立ち上がって僕の部屋から出ていき、残ったのは僕とフィナンシェさんだけだった。

 

「それではイツキさん。 私たちも行きましょうか」

 

「うん。 分かった」

 

ルウィー教会の僕の自室には施錠する鍵は備えつけられていないから、とりあえず僕は上着を椅子にかけておき、フィナンシェさんと共に部屋を出る。

 

「あ、そういえばイツキさん」

 

「ん? どうしたのフィナンシェさん?」

 

部屋のドアを閉める直前、フィナンシェさんはドアを閉める手を止めて話しかけてきた。 そういえばと始めていた辺り、あまり重要な話でもなさそうだが、僕は次のフィナンシェさんの発言により度肝を抜かれることになる。

 

「幾ら隠すところが少ないとは言え、本棚の後ろにあれらの本を隠すのはベタすぎるかと……」

 

……あれらの……本?

 

「……え? え!? えええええええええ!? な、何でそれ、いや、何で隠してる所分かったのフィナンシェさん!?」

 

焦りまくる僕には対して、特に動じていないフィナンシェさんの次の一言がこちらだ。

 

「侍従ですから」

 

「もうこの人いや!!」

 

僕は一生この人に勝てる気がしない……

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー! これが伝説の七面鳥! 初めて見た!」

 

「……ま、まあ一般家庭じゃ、そう見られるものでもないし、ネプ子の言うことも、嘘ばっかって訳でもないわよね」

 

「ねぷねぷ。 こっちにはカニが丸々焼かれているです!」

 

「おお! そっちは伝説のタラバガニ!?」

 

「……それ、ズワイガニよネプテューヌ」

 

フィナンシェさんに色々と弱みを握られた気がするが、とりあえず会場に向かうと、豪華絢爛に装飾されたパーティー会場の、テーブルを鮮やかに彩る料理達を見て、ネプテューヌやコンパさんが興奮しているところだった。

 

「あらイツキ、ちょっと遅かったじゃない。 ……って何でそんな疲れ切った顔してるのよ?」

 

最も会場の近くにいたノワールさんが僕に気づき、どうやら顔色が悪く見えるらしい僕を気遣ってくれた。

 

「……何でもないよノワールさん。 ただちょっと、この世には絶対に敵わない人が1人はいるって分かったんだよ」

 

「???」

 

疑問符を浮かべるノワールさん。 まあ、それはとりあえず置いておこう。

 

「皆お待たせ」

 

「あら、イツキ。 遅かったわね」

 

「ごめんブランさん。 それで、準備は出来ているの?」

 

「ええ。 後は乾杯するくらいかしら」

 

皆テーブルの席につき、それぞれのグラスには飲み物が既に注がれていた。 そのブランの言葉を聞き、ネプテューヌは手を高く上げて

 

「乾杯をすると聞き、このネプテューヌさんがその音頭を取る人物を推薦したい!」

 

「却下よ」

 

「何で!?」

 

ネプテューヌの意見はブランさんに一蹴された。 でも正直、僕でも却下すると思う。何故かその辺理解してないネプテューヌにブランさんは呆れながら言う。

 

「どうせ、『わたしが自信を持ってその重要な役目に推薦したいのは……やはり、プラネテューヌの気高く美しい女神たるネプテューヌ!……あ、これわたしだ。 テヘペロ』とかって言うつもりでしょ?」

 

「ギクッ! や、やだなー、ブラン。 わ、わたしがそんなナルシストなこと言って、ましてや自分を推薦なんてするわけないですよー……」

 

……これ絶対同じことを言うつもりだったな

 

ネプテューヌ以外のこの場にいる者たちが、全員一致で考えたことだろう。

 

「こ、コホン。 まあそれはさておいて」

 

ネプテューヌは滅多にしない咳払いをし、無理矢理話を戻した。

 

「わたしがこの音頭に任命したいのはノワール! 君に決めた!」

 

どこぞの携帯型モンスターのトレーナーみたいに言っているネプテューヌだが、それはこの際おいておこう。 名指しされたノワールは突然の事に焦る。

 

「わ、私?」

 

この後の言葉にノワールさんは自分には出来ないと否定しようとしていたようだが、その前にブランさんが言葉を発していた。

 

「確かに、ノワールなら安心してそう言う役を任せられそうだわ。 ネプテューヌにしては珍しくマトモな案ね」

 

「ちょ、ブラン!?」

 

「そうですわね。 ノワールの真面目な性格なら、あまり変なことはしないでしょうし」

 

「ベールまで!?」

 

いつの間にか引き合いに出されるノワールさん。 自然と皆の視線はノワールさんへと向かれる。

 

「わ、分かったわよ! やればいいんでしょやれば!」

 

「と、言いつつも実は大役を任されたことに満更でもないノワールであった……」

 

「ネプテューヌ! 変なナレーション入れて捏造するのはやめなさい!」

 

ネプテューヌに振り回されるノワールさん。 割と日常として僕らに受けいられつつあるが、1度こうなると長くなってしまう。

 

「ノワールさん。 とりあえず今は音頭取って。 夫婦漫才は後でお願い」

 

「め、夫婦漫才て……ハァ、何だかなぁ……」

 

ノワールさんはため息をついきながら立ち上がった。 大分無茶振りだったと思うのだが、キッチリやるあたりノワールさんらしいと言えばノワールさんらしい。

 

「えー、今日は皆さんルウィー教会主催のクリスマスパーティーにお集まりいただきありがとうございます」

 

「それにしてもこの女神ノリノリである」

 

このノワールをおちょくったセリフを誰が言ったかは説明するまでも無かろう。

 

「そこ! うるさいわよ! ……コホン、まずは本日のために準備をしてくださった、このルウィー教会の職員方に感謝します。 今年も残すところ後僅かになりました。短い時間ですが、楽しい時を過ごしましょう。 それでは、乾杯をしましょう」

 

ノワールさんがグラスを掲げるのと同時に、皆がグラスを掲げる。 僕もコーラの入ったグラスを高く掲げた。

 

「それでは皆さん、乾杯!」

 

「「「「「カンパーイ!!」」」」」

 

乾杯の声とグラス同士の響く音とともに、楽しいパーティーの時間が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時とはあっという間に過ぎてしまうわけであって、いつの間にか料理も殆ど下げられており、皆思い思いの時間を過ごしている。

 

パーティーで振舞われた料理はとても種類が多く、次々と新しい料理が運ばれてきた。 アボカドとパプリカの添えられたサラダやタンドリーチキン、ビーフシチューなどなど、定番のものから意外なものまで取り揃えられていて、皆舌鼓を打っていた。 中でもデザートの砂糖の代わりに蜂蜜を使ったプリンは皆に絶賛であり、プリンに目がないネプテューヌは大喜びしていた。 同じ物をコンパさんにも作るようにすごい勢いでせびって、コンパさんは苦笑いしながらフィナンシェさんにレシピを聞いていた。

 

その後、ネプテューヌの提案で皆でゲーム大会もやった。 コンパさん辺りはゲームは苦手なのでは? と感じていたが、実際はそんなことはないと身を持って味わった。 ゲーム大会は意外にも皆にウケが良く、特にベールさんとネプテューヌが対戦した際はお互いに白熱し、コントローラーを操作する手が残像が見える程のスピードだった。 接戦の末に勝利したのはベールさん。 そして優勝者は人物を指定して罰ゲームをさせる事が出来るのだが、ベールさんに負けたネプテューヌが

 

『お兄ちゃんを女装させようとしたのにー! 悔しいー!』

 

とか悔しそうに言っていた。 これはベールさんにグッジョブ! としか言えない。 ちなみにベールさんが指定したのはアイエフさんで、サンタのコスプレをしてもらうという内容だった。 当然アイエフさんは恥ずかしがるが、どこからともなく現れたフィナンシェさんと何人かの他の侍従さんがアイエフさんを捕獲すると、すぐに部屋の外へと連行。

 

数分後、扉を開けて現れたのは、ちょっと露出度が高めのミニスカサンタのコスプレをしたアイエフさんが、恥ずかしそうにスカートを抑えながら現れた。 ベールさんやコンパさんは絶賛していたのだが、恥ずかしいものは恥ずかしいのだろう。 ちなみに僕がアイエフさんのサンタコスを見ることが出来たのは僅か数秒であり、アイエフさんが現れた直後に何者かに目潰しされた。 僕の視力が回復する頃には、既にアイエフさんはいつもの服装だった。 解せぬ。

 

ちょっとしたトラブルもあったが、皆楽しそうに過ごすことが出来たようだった。 かく言う僕も、楽しい時間を過ごせた。

 

「イツキ、隣いいかしら?」

 

パーティーでの事を振り返っていると、後ろから声をかけられた。 振り返ってみると、そこにいたのはグラスを片手に持つブランさんだった。

 

「あ、ブランさん。 問題ないよ」

 

許可を得たブランさんは僕の隣の席に座り、自分の空のグラスに、テーブルにあったオレンジジュースを注いで、一口オレンジジュースを飲んだ。

 

「……ねぇ、イツキ」

 

「ん? 何ブランさん」

 

グラスから口を外したブランさんは僕に、間を入れて話しかけてきた。

 

「……あのね、あなたにお礼を言いたいのよ」

 

「お礼?」

 

唐突な話題に僕は戸惑う。 何に対しての感謝であり、お礼であるのか全く心当たりが無かったからだ。 戸惑い気味の僕にブランさんは

 

「ええ、お礼よ。 私を『変えて』くれたお礼」

 

「僕が、ブランさんを変えた?」

 

ブランさんの言葉にますます戸惑う僕。 何かブランさんにしてしまったのかと、変に緊張してしまった。 その戸惑う僕の姿を見て、ブランさんは少し笑って答えた。

 

「あぁ、別にそんな戸惑わなくていいわよ。 悪い意味じゃなくて、良い意味で変われたって意味だから」

 

ブランさんのその言葉に僕はホッとするが、ブランさんの言っている事が余計分からなくなってしまった。 でも、それについては次のブランさんの言葉を聞いて知ることが出来た。

 

「今、私はこうして他の女神達と楽しく過ごせているのは、それは私が『変わる』ことが出来たから。 前の私だったら、全く考えられなかった。 そして、私が『変わる』ことが出来たのは、きっとあなたのおかげよ、イツキ」

 

僕の瞳を見据えて、答えるブランさん。 僕もそんなブランさんを見つめていた。

 

「イツキと一緒に過ごして、沢山の出来事を乗り越えて、他の女神と出会ったりして、今の私がいるわ。 きっと、イツキと出会わなかったら、私はこうして他の女神たちと、楽しくパーティーをするだなんて、考えなかった。 だから、改めてお礼を言うわ」

 

ブランさんはそこで一呼吸おいて

 

「ありがとう、イツキ」

 

微笑んでお礼を言う、ブランさん。 たった一言、その言葉に込められている感謝の念を感じて、僕も口にしていた。

 

「……僕も、ブランさんにお礼が言いたいんだ」

 

「え?」

 

ブランさんは、僕から感謝されることは意外だったようだ。 まあ、きっかけでもなければ、僕は自発的にこんなことは言わないだろう。

 

「あの日、何もこの世界について知らなかった僕を見て、保護までしてくれて……ブランさんがいなかったら僕は死んでいただろうし。 そして、僕もブランさんと一緒に過ごして、辛いこともあったけど、楽しかったよ。 だから、僕もお礼を言うよ。 ありがとう、ブランさん」

 

僕もまた、ブランさんのことを見つめて、偽りない自分の気持ちを伝えた。

 

ブランさんはその言葉を聞いてキョトンとしていた。 僕もまた、言葉を発さず黙りこくっていた。

 

「……プッ」

 

どちらが先に吹き出してしまったのか、それは僕にも、きっとブランさんにも分からない。

 

「「アハハハハハ!」」

 

だって吹き出した言葉の直後、お互いに可笑しくて笑ってしまったから。

 

「フフッ……わたしたちって、何だか変ね」

 

「うん。 本当に」

 

それからお互いに顔を見やって、また笑い合った。 それは可笑しくてでは無く、嬉しかったからだ。

 

「それじゃ、こうしようよ」

 

僕は不意に自分の持つグラスをブランさんへと向けた。 その意図を理解したのか、ブランさんも自分の持つグラスを僕の持つグラスへと向けた。

 

「……僕たちのこれまでと」

 

「……私たちのこれからに」

 

「「乾杯」」

 

チンッと、グラス同士のその僕たちを祝うような音は、とても小さく、僕とブランさんにしか響かなかった。 けど、それはきっと、僕たちだけの特別な祝福する音だからだ。

 

ふと外を見やれば、しんしんと降る雪を、街から零れたイルミネーションが色をつけるようにする背後で、夜空を彩る星々が、街のイルミネーションに負けないように輝いていた。

 

きっと今の僕たちのように、この夜空を見上げながら、恋人たちや家族、友達同士で皆この日と、これまでとこれからを祝っているのだろう。

 

そう思うと、何だか不思議な気分になって、僕はこうつぶやいていた。

 

 

 

 

 

「……メリー・クリスマス」

 

 

 

 

 

誰かも分からない、この夜空を見上げる者たち、そして……僕の大切な人へ
















はい、クリスマス特別編でした!

いやー、思いつきでこんなことするんじゃなかった。 実はこの話の後に続きがあるんですけど、実はそこまで仕上がってないんです……これは終わり方が急すぎるのでお察しですよね。仕上がってない話はいつかオマケとして投稿しましょうかね……

お正月記念とかやろうかなー、とか思ったけど、無理ですね(迫真)

さて、皆さんはどんなクリスマスをお過ごしになるのでしょうか? ……え? 俺ですか?

風邪を引いて自分の部屋に隔離されてます(泣)

いやー、受験無事合格して安心して、風邪を引いたっぽいです……解せぬ。

そういうわけで皆さん風邪にはお気をつけて!

来年も『超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人』をよろしくお願いします!

それでは最後に一言

メリー・クリスマス!


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