超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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投稿遅れて申し訳ない……いつまでも正月気分が抜け切りませんでした……


第44話 紫と白

「お前なんて生きてる価値ねーんだよ!」

 

 

いつも通り、トイレにいるところを囲まれ、殴られている最中、そんなことを俺に向かって言い出したやつがいた。

 

生きてる価値?

 

そうだな。俺に生きてる価値は無いだろう。

 

 

じゃあ、お前らには生きている価値があるのか?

 

 

お前らが生きていれば、政治問題が解決されるのか?

 

お前らが生きていれば、今まさに餓死しようとしている人々が救われるのか?

 

お前らが生きていれば、世界中の国家間の戦争や民族間の紛争を止められるのか?

 

お前らが生きていれば、いつか滅びると言われる地球や太陽系が救われるのか?

 

 

根底までつきつめてしまえば、誰にも生きている価値なんてありはしない。

 

 

だって誰もいなくなったところで、悲しみだとか苦しみだとか、幸せすら感じる人間が誰1人いないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーンボックス教会を後にしたネプテューヌたちは、とりあえず邪魔になる手荷物を置きに行こうと泊まっているホテルへと歩を向けていた。

 

「あいちゃんにお話って、一体なんなんでしょうか?」

 

「んー……グリーンハート様LOVE同好会会員の勧誘とかそんなのじゃないの?」

 

「……それ、つまりベ……グリーンハートの信者じゃない」

 

コンパの質問に適当に答えるネプテューヌに、危うく本当の名前を言いかけたが、的確なツッコミを入れるブラン。

 

「んー? ブランがツッコミ?」

 

「……悪い?」

 

「いやー、そんなことないよ? ただ、こういう時って大概お兄ちゃんがツッコミをいれるからさー。 ね? お兄ちゃん?」

 

「……」

 

ネプテューヌはやや後ろを歩くイツキに振り向いて話しかけるが、イツキは少し俯いており、ネプテューヌの言葉に反応していなかった。

 

「? おーい、おにいちゃーん。 わたし放置プレイとかは管轄外なんだけどー?」

 

「……」

 

もう一度話しかけるがイツキは俯いたままである。 それを見たブランはネプテューヌたちに合わせていた歩を緩め、イツキの隣に立ち、肘でイツキを小突いた。

 

「イツキ」

 

「ん……? ブランさん? どうかしたの?」

 

それでやっと反応をしたイツキは顔を上げた。 様子を見るに、ネプテューヌの言葉を無視していたわけでは無いようだ。

 

「どうしたも何も、話しかけても聞いていなかったようだったから」

 

「あ、あぁごめん。 ちょっと考え事していてさ」

 

「お兄ちゃーん。 考えすぎは良くないよ? ゲームだってロード時間が無駄に長いのはプレイヤーにとってイライラの原因にしかならないからね!」

 

「……その例えはどうなの?」

 

「悪い! そのツッコミはキレが悪いよお兄ちゃん!」

 

「僕に何を求めているのさ!?」

 

すっかりネプテューヌに流されたイツキ。 そのまま一行はおしゃべりしながら更に足を進めた。

 

そんな中ネプテューヌが突如歩くのをやめ、何やら目をつむり、斜めにつま先立ちをし始めた。

 

「……ん? この香りは……クレープだ! そういえばわたしちょっとお腹減ったな〜」

 

ネプテューヌが指差した方向には、移動販売するタイプであるクレープ屋があった。 少し離れた場所にあるにも関わらず、微かに甘い香りが漂っており、その香りが客を集めんと誘惑していた。

 

「でもねぷねぷ、この後パーティーがあるですよ? 大丈夫ですか?」

 

時間的には既におやつの時間は過ぎてしまった時間であり、どちらかと言うと夕飯の時間の方が近い。 この後あるパーティーのことも考えてコンパはネプテューヌに確認するが、ネプテューヌは笑って答えた。

 

「別に1個くらいなら問題ないでしょ! それじゃお兄ちゃん、わたしチョコクレープ!」

 

「なんでしれっと言外に奢れといっているのかな?」

 

「イツキ、私はシナモンアップル」

 

「そしてブランさんはどうしてネプテューヌに便乗しているの!?」

 

「わたしは、メニュー見てから決めたいので、イツキさんがクレープ持ってくるのを手伝うです」

 

「……僕が奢ることは確定なんだ……まあ、いいけど……うわ、意外と並んでるなぁ……」

 

イツキの財布はまだまだ春真っ盛りではあるが、こんな調子で奢られ続ければ、すぐに冬を迎えてしまいそうだとため息をついきながら、コンパと共にクレープの屋台に並ぶ列へと向かった。

 

「せっかくだし、座って食べようよ。 ね、いいでしょブラン?」

 

「別に、何でもいいわよ」

 

「よーし、そうと決まれば……あ! あそこにしようよブラン!」

 

「わ! 馬鹿引っ張るな!」

 

残ったネプテューヌとブランは、おあつらえつきな座る場所を見つけたネプテューヌがブランを引っ張り、4人が座れる場所を確保した。

 

「おー。 ちょうど木陰で涼しいー」

 

「……」

 

ネプテューヌが見つけた場所は、少し大きめなベンチで、5人は座れるくらいの大きさのベンチだった。 真後ろにある背の低めの木の枝についた葉が、丁度ベンチに降りかかる陽光を遮るものであり、ネプテューヌはベンチにもたれかかって涼んでいた。

 

「……ねぇ、ネプテューヌ」

 

「んにゃ? 何ブラン?」

 

ベンチに浅く座りリラックスしていたネプテューヌに、人1人分離れた位置で座るブランは話しかけていた。

 

「あなたに、1つ聞きたいことがあるの」

 

「なになに? お兄ちゃんがラスティションでやらかしたラッキースケベについて以外なら何でも答えるよ?」

 

「別にそういうことを聞きたいんじゃ……いや、やっぱそれについては後で聞くわ。 でも、今聞きたいのはそのことじゃない」

 

若干ネプテューヌに話をはぐらかされかけたが、再びブランは向き直る。

 

「ネプテューヌ。 あなたは自分の記憶を取り戻すために、どこかに封印されているイストワールの封印を解く、鍵の欠片を探しているのよね?」

 

「……うーん……」

 

ブランの質問に、ネプテューヌは珍しく唸って答えを出さなかった。

 

「? どうしたのよ?」

 

「いやさー……最近、それどうしようかと思っているんだよね。 自分の記憶を取り戻すこと」

 

ネプテューヌは困ったように笑いながら、自分の後ろ頭を掻いて答えていた。 そのネプテューヌの答えに、当然ブランは反応する。

 

「どうして? 自分の記憶を取り戻すために旅に出たんでしょ? それなのに、どうして記憶を取り戻すことに迷っているの?」

 

余程気になるのだろう。 ブランは少しネプテューヌの方に乗り出していた。 そんなブランとは対極に、のほほんとして答えるネプテューヌ。

 

「わたしさー、ラステイションに行った時、ノワールと仲良くなれたのは、わたしが記憶喪失だったからだと思うんだ。 ……あ、ノワールって言うのはラステイションの女神のことね」

 

その話はブランはイツキから報告を受けていて知っていた。 報告を受けた当初、ブランは信じられなかった。 ラステイションの女神ブラックハートはブランから見ても考え方の硬い女神であり、守護女神(ハード)戦争でも好戦的である女神であった。 そんな頭の固い女神と和解したことを、ブランは信じられなかったのだ。

 

ネプテューヌの話は続く。

 

「で、わたしがもしも記憶を取り戻したら、えっと、なんだっけ……?」

 

「……守護女神(ハード)戦争?」

 

「そう、それ! 記憶を取り戻すってことはさ、その戦争でノワールとか、リーンボックスの女神様とかルウィーの女神様と戦ったことを思い出しちゃうでしょ? 前のわたしのことは分からないけど、記憶を取り戻したら、もしかしたら他の女神様たちに対する負の感情も同時に取り戻してしまうのは、嫌なんだよねー」

 

ネプテューヌらしいといえば、ネプテューヌらしい意見ではあった。 いつもあっけらかんとして、自己中のように思われているが、ネプテューヌは最後には誰かのためになるように行動している。

 

いや、自分が仲良くする上で、負の感情は阻害にしかならない。 そういう意味では、ネプテューヌ自身が他の女神と仲良くしたいという、己の願望のためなのかもしれない。 しかし、ブランには少しネプテューヌの言葉に引っかかる点があった。

 

「……他の女神様? ノワールに憎しみを向けたくないのは分かるわ。 でも、その言い方ではノワール以外の女神たちのことも含めているように聞こえるけど?」

 

ブランにとって、そこだけが理解できなかった。 ネプテューヌは記憶喪失であるから、リーンボックスの女神は勿論、目の前にいる女神であることを隠しているブランのことを知らない。 それなのに、ネプテューヌは自分の記憶には無い女神とも仲良くしたいと言っているようだったのだ。

 

ブランのその質問にネプテューヌは特に動じたりすることなく答える。

 

「別に変なことじゃないでしょ? ノワールと友達になれたのなら、きっと他の女神様たちとも仲直りして、友達になることが出来るよ! それで4人でゲームしたり、お菓子パーティーしたり、それからそれから……」

 

「……もしも」

 

「ん?」

 

言葉の意味そのままであることを説明し、楽しそうに和解した後のことを想像するネプテューヌの言葉を遮るように言った。 ブランの言葉を聞いたネプテューヌは喋るのをやめて、次のブランの言葉を待った。

 

ブランはそこで1つ呼吸を置いてネプテューヌに言葉を放った。

 

 

「もしも、あなたを強く憎んでいる女神がいて、あなたと和解することを拒否するどころか、顔を見るなり攻撃をしてきたら、それでもあなたはその女神と仲良くなろうと思う?」

 

 

ノワールは確かに頭の固い女神ではあるが、頭が固いゆえに私情を挟まない。 ノワールと仲良くなれたのはその頭の固さであったからこそなのかもしれない。

 

少し意地の悪い質問だとブランは自分でも思っていた。 そもそもブラン自身女神であるから、ネプテューヌに対して少なくとも強く憎い感情を抱いている女神がいないことなんて知っている。

 

グリーンハートであるベールはブランからすればムカつく女神ではある。 だが、ブラン的には認めたくは無いが、ベールは精神的に大人であることを知っている。 守護女神(ハード)戦争にもそれほど執着しておらず、疑問を感じていたことから、ネプテューヌと和解することに抵抗はないだろう。

 

ブランは今の自分自身がネプテューヌを受け入れられるかは本人でも分からなかったが、もしもこの場にいることもなく、ルウィーにずっととどまり続けていて、ネプテューヌが自分の目の前に現れたら、きっと自分は無愛想な対応をするだろう。 機嫌が悪ければ、やつ当りするように怒鳴り散らすかもしれない。 ブランはそう考えていた。

 

ブランの言葉を聞き終えたネプテューヌは、少しキョトンとしていたが、すぐにいつも通りの調子を取り戻して、ブランに言った。

 

「……あのね、ブラン。 わたしは大前提として、『もしも』っていうのは考えないようにしているんだ」

 

「……『もしも』を考えない?」

 

「そう。 だって『もしも(なになに)がああだったら』とかって考えて、何かすることに失敗するのを怖がって、尻込みしたりするのは嫌だもの。 それで結局何もやらずに『もしもあの時こうしていれば』って、考えたくないし」

 

戯けたような口調だが、どことなく真剣に言葉を紡ぐネプテューヌを、ブランはじっと聞き据えていた。

 

 

「だからわたしは、わたしが正しいと思って、やろうと思ったことは絶対にやるよ。 たとえ失敗したとしても、その行動はきっと、誰でもないわたし自身が選んで、わたし自身が後悔しないように進んだ道なんだもん」

 

 

ある意味、その言葉はネプテューヌ自身を体現したかのようなものだった。 失敗を恐れずに、考えるよりも行動をして、自分自身が後悔しないために誰かを助ける。 それがネプテューヌの生き方なのだ。

 

今なら、ノワールと和解した相手がネプテューヌと聞いてブランは納得できる。 前のブランから見てネプテューヌは言葉では言えない、曖昧な奴であり、一言で言えば変な奴としか言えなかった。 どうしてそんな奴が女神であり続けることが出来ているのか分からず、守護女神(ハード)戦争中は分からず、無責任で、適当で、とにかく悪い印象しか無かった。

 

だが、それは違う。 ネプテューヌの本質は愚直なほどまっすぐで、誠実で、どんな時でも明るく振舞って道を進んで行く。 そんな姿勢を見て、みんなネプテューヌについて行く。 そんなカリスマが、ネプテューヌにはあるのだ。

 

 

「……なーんてね! 実際は、なーんにも考えてないよ! 考えるのって面倒だし! 失敗したら失敗したで、その時はその時! ネプテューヌさんは先のことは考えず、過去を振り返ることもしないのだー!」

 

ネプテューヌは自分らしくないことを言ったと思ったのか、誤魔化すように笑って、本音とも建前とも分からないことをまくし立てた。

 

「そう……そうなのね。 あなたって、そういう人だったのね」

 

しかし、今の言葉を聞いたブランなら、どっちが建前でどっちが本音なのかは分かっていた。 守護女神(ハード)戦争をしていた時から、ネプテューヌは正直で素直であることは知っていたからだ。 それに応えるようにネプテューヌの言葉に納得した返答をしていた。

 

ネプテューヌはそれをどう受け取ったのか、何故か少し焦るようにブランに補足した。

 

「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、別にいーすんを助けないって訳じゃないよ。 困っている人が助けを呼んでいるのなら、助けるのがヒーローだからね!」

 

「分かってるわよ。 さっきまでの、あなたの言葉を聞けば……」

 

今のブランに、既にネプテューヌに対するわだかまりのようなものは薄れていた。 これも、ネプテューヌの成す人徳であるのか、なんてブランは思っていた。

 

「……あ、いたいた。 おーい! ブランさーん! ネプテューヌ!」

 

不意に、ネプテューヌとブランに声をかける者の存在に気づき、2人はそちらの方へ向く。 そこにはクレープを両手に持ったイツキとコンパの姿があった。

 

「あ、こんぱとお兄ちゃんだ。 おーい!」

 

イツキの掛け声に応えるように返事をし、手を振るネプテューヌ。 少し遠方にいたイツキとコンパは軽く手を振りかえしながらネプテューヌとブランの座るベンチに向かった。

 

「ねぷねぷ、こんなところにいたですか。 ちょっとイツキさんと探しちゃったですよ。 はい、ねぷねぷのチョコクレープです」

 

「おぉ、待ち侘びたチョコクレープがやっと来た! ありがとうこんぱ!」

 

「……誰の財布から捻出されたクレープか分かっているのかネプテューヌは……はい、これブランさんの。 シナモンアップルであってるよね?」

 

「えぇ、合ってるわよ。 ありがとうイツキ」

 

嬉しそうにコンパからクレープを受け取るネプテューヌにイツキはボヤくように呟いて、片手に持っていたクレープをブランへと手渡した。 その時、ネプテューヌが気づいたように言った。

 

「あ、ブラン。 詰めないとこんぱとお兄ちゃん座れないよ? ほら、こっち来なよ」

 

「……そうね」

 

何気無く言ったこのネプテューヌの気遣いの言葉と、それに応えたブランの行動。 イツキにはそれを少し不思議に思いながらも、ネプテューヌの方へとズレたブランの隣へと座り、そのイツキの隣にコンパが座った。

 

「あ、ブランのシナモンアップル美味しそうだね。 わたしのチョコクレープあげるからさ、シナモンアップル食べさせて!」

 

「えぇ、いいわよ。 ほら、口開けて」

 

「あーん」

 

ネプテューヌの食べさせあう提案に、ブランが承諾して自分のクレープをネプテューヌの口へと差し出していた。 そんなどこにでもある女の子同士の仲良さげな雰囲気を、またイツキは不思議そうに思った。

 

ブランから差し出されたクレープを、ネプテューヌは大きく口を開けてかぶりついた。

 

「あ、コラ! 一気に食べ過ぎよネプテューヌ!」

 

「モグモグ……あー、ごめんごめんブラン。 ほら、今度はブランが口開ける番だよ。 あーん」

 

「全く……ネプテューヌ、これはお返しよ」

 

ブランは不敵な笑みを浮かべると、ネプテューヌから差し出されたクレープを持つ手を抑え、ネプテューヌよりも豪快に口を開けてクレープにかぶりつく。

 

「ああ!? ちょっとブラン!? いくらなんでもそれは食べ過ぎでしょ!」

 

「ふぉふぉふぁほーふぁふほ(等価交換よ)」

 

「いや、絶対ブランの方が食べてるよね!? その分のシナモンアップルを寄越せー!」

 

取られた分を取り返そうとブランに襲いかかるネプテューヌ。 それを難なく避けてブランはクレープを飲み込み、自分のクレープに口をつけ始めた。

 

「ふふん。 こういうのはやったもん勝ちなのよ。 ほっ!」

 

「あ、こらー!」

 

ブランはベンチから立ち上がり、襲いかかるネプテューヌから逃げるように走り出した。 ネプテューヌもそれを追いかけるようにベンチから起き上がり走り出した。

 

「……何があったんだろう? ネプテューヌとブランさん」

 

クレープ片手にそんなネプテューヌとブランが楽しそうにしているのを見て、そう呟いた。

 

「ねぷねぷとブランさん、仲が良くなったですね。 仲が良いのはいいことです」

 

イツキの隣に座るコンパは、ニコニコと笑いながらネプテューヌもブランの様子を眺めていた。 イツキもその言葉を聞いて、再びネプテューヌとブランの方へと視線を向ける。

 

そこには笑いながら絡み合っている、ネプテューヌとブランの姿が、お互いのクレープの奪い合いに興じていた。

 

「……ま、いっか。 仲が良くなって何よりだよ」

 

 

ブランの立場がネプテューヌにばれたとしても、今結ばれた絆が崩れないことを、イツキは願うばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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