超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第52話 助けた先に見ゆる影

「……んぅ……」

 

顔に当たる光を感じ、無意識にそれを避けるように寝返りを打つその少女は、布団の中の暖かさと今だに抜け切らない疲れから、もう少し眠ろうとしたのだが、自分の置かれている状況を可笑しく感じて、閉じかけていた瞳を再び開き、上体だけ布団から起こした。

 

「……んぅ?」

 

まず、布団に眠っていると言う状況がおかしい。 少女に昨日布団に入った記憶は無かった。 少しだけ不安を感じたその少女は、この場所がどこであるのか確認するために寝惚け眼をこすりつつ、辺りを見回す。

 

大きなテレビに繋ぎっぱなしの据え置き型ゲーム機のコード、部屋の端の机の上を占領するフィギュアやゲームソフトのパッケージ、壁に貼られているいかがわしげなポスター。

 

足を布団の中に今だにいれつつも、それらの光景はその少女、コンパにはどれも見覚えがあり、自分が誰かに誘拐をされた訳では無いことに安堵した。

 

しかし、何故今自分は布団の中で眠っていたのかと、増す増す気になりだす。 コンパは昨日の記憶どうにか思い出そうとしたのだが、今だに寝ぼけから覚めていない脳では無理があるのか、中々思い出せない。 と言うか、まるで脳が思い出すことを拒否しているかのようにもコンパは思えた。

 

「あらコンパ。 やっと起きたのね」

 

それでもどうにかしてコンパは記憶を呼び起こそうとしたのだが、声をかけられた事によりその作業を中断せざるを得なくなった。 声のした方へ視線を向けると、そこにはいつも頭に結んでいる双葉のリボンを外し、シャワーを浴びたのであろう軽く頬を紅潮させ、体から少し湯気を発しているアイエフが、首に回したタオルで髪を拭きながらコンパへと話しかけていた。

 

「あ、あいちゃん。 おはようです」

 

「おはようコンパ。 昨日はよく眠れた?」

 

「んー……それなんですが、わたし昨日のこと覚えてなくて……どうして布団に入っているのかもわからないんです。 あいちゃんは何か知ってるですか?」

 

「……あー……そっか、覚えてないか……」

 

コンパの疑問に何か言い淀むような態度のアイエフ。 それを見たコンパはまた不安を感じ始めた。 まさか、自分が覚えていないだけであって、何か変なことをしたのではないかと

 

コンパは感情が表情に出やすい。 コンパが不安そうな顔をしたのを見たアイエフは、慌てて安心するように言った。

 

「あー、誤解しないでねコンパ。 別にコンパが何かやらかした訳じゃないわ。 むしろコンパはされた側と言うか……」

 

「? どう言うことです?」

 

「別に、言う程の物でもないわよ。 コンパは何も気にしなくて平気よ」

 

「???」

 

後半のアイエフの言葉の方は、1つ前の言葉のように何か言いづらそうにしていた事に、コンパは疑問を感じるが、アイエフはその疑問を適当にはぐらかしていた。 コンパの記憶をすっ飛ばした根源たる者の発言によれば、既に同じような行為を行ったようだが、わざわざ伝える事でもないだろうと考えてのことだった。

 

答えてくれそうにないアイエフに、コンパは昨日の記憶については一旦後回しにすることにし、他のことを聞くことにした。

 

「あいちゃん、 他の皆はどこにいるんです?」

 

「ベール様は、用事があるからってさっき部屋から出て行ったわ。 で、ネプ子とブランなんだけど……」

 

「? ねぷねぷとブランさんがどうしたですか?」

 

コンパが他の質問を聞いてきたことにより、話題を自然と転換できたのだが、ネプテューヌとブランの所在についての話になると、何か口ごもっていた。 言いづらいと言うよりも、事態をよく飲み込めていないようであった。

 

「実は私もさっき起きたばかりなのよ。 私が目を覚ます頃には2人ともいなかったわ。 ベール様は丁度私が起きたタイミングで、私に一声かけてから部屋を出て行ったのよ」

 

本当は目が覚めたらベールがアイエフに抱きついていたと言う事象も起こっていたのだが、端折るアイエフ。 勿論ベールにもアイエフはネプテューヌとブランがどこにいるのか聞いたのだが、アイエフの質問に対してベールは言いづらそうに笑いながらこう答えた。

 

 

『あいちゃんには申し訳ありませんが、こう言う話はあまり他人に言いふらすのは良くないですわ。 ごめんなさいね』

 

 

ベールはやんわりとアイエフの質問に答えるのを拒否した。 そうは言われてもアイエフは気になるものは気になるので、中々引き下がろうとはしなかったのだが、唐突にベールはアイエフを強く抱きしめた。 ベールの暖かく柔らかい体に抱きしめられたことにより、多幸感により体を弛緩させられ、アイエフの中でネプテューヌとブランの所在は一瞬でどうでもよくなった。 それでいいのかアイエフちゃん。

 

ネプテューヌとブランの所在は気になるが、あまり教会内を下手に動くことも出来ない。 という建前の元、ベールの許可を得てシャワールームを借り、シャワールームから上がったところでコンパが目を覚ましたことに気づき今に至るのだ。

 

ネプテューヌの所在が不明と聞き、またコンパの表情に不安が現れる。 それを見たアイエフは再びフォローを入れた。

 

「別に心配することは無いわよ。 ネプ子1人がいないのならともかく、多分ブランも一緒だから、教会の外にいるわけでも無いと思うわ。 それよりも、コンパ昨日体洗ってないんでしょ? ベール様には私から言っておくから、シャワールーム借りれば?」

 

アイエフの言葉、主に後半を聞いたコンパは、そう言えばそうだと思い、布団から足を出し、軽く背伸びをした。

 

「あ、シャワールームはそこだから」

 

「あいちゃんありがとうです。 それじゃあ、シャワー借りてきますです」

 

いそいそとアイエフの指差したシャワールームへと向かうコンパ。 体の清潔度を保つことは女の子にとっては死活問題だ。 コンパとしても、すぐに体を洗いたかったのであろう。

 

アイエフは視線だけでコンパを見送ると、誰もいなくなったこの部屋で、誰か戻ってくるまで暇つぶしでもしておこうと携帯を開いたのだが、新着メールの存在を確認した辺りで、シャワールームと丁度対になる位置にある扉が開く音が聞こえ、この場にいないネプテューヌとブランであると予想したアイエフはそちらに視線を向けた。

 

「ネプ子、ブラン、そんな所にいたのね。 一体何をしてーー」

 

アイエフのこの言葉は、視線の先にいたブランとネプテューヌの状況を目に入れたことにより、呆然としたために中断された。

 

「……」

 

扉の前に無言で立っているブラン。 こちらは特に変化は無い。 あるとすれば、無言で立つブランの右手に握られているものがあることだ。

 

「……え、えへへ……わたし、ごまプリンはプリンと認めな〜い……」

 

そしてブランにパーカーワンピの襟を握られている人物は、何か若干虚ろな目をしてブツブツと何かを呟いていた。

 

「ね、ネプ子オォォォオオ!!?!」

 

いつも見ていた明るく元気な姿の面影すらないネプテューヌに、ちょっと目を離した隙に一体何があったのか、アイエフには想像もつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、さしものネプテューヌさんでも、あの拷問の前では死ぬはないにしろ、意識が飛ぶかと思ったよ」

 

「いや、あれは意識飛んでいたわよ多分……」

 

アイエフが必死に呼びかけたさい、ケロリとした様子で立ち上がったネプテューヌは、あらかじめ用意されていたペットボトルの紅茶を煽りながら言ったが、部屋に引っ張って来られた際に呟いた、ごまプリンアンチ発言を聞いていたアイエフは冷静に返し、何故ネプテューヌが本人曰く拷問されていたのか予想する。

 

「この状況ってつまり、ネプ子がまた何かやらかして、ブランが折檻したとかそんな感じ?」

 

「それは心外だよあいちゃん! わたしまたって程問題行動起こしてないもん!」

 

「嘘つけぇ!」

 

ネプテューヌの異議申し立てを一言で一蹴するアイエフ。 ネプテューヌは自身が問題行動を起こしている自覚が無い訳では無い。 しかしその頻度までは自覚していなかった。

 

「で? 今度は何をやらかしたのよネプ子」

 

「わたしが何かやらかした事は確定なんだね。 まあ、いいんだけど、あいちゃんにも聞いて欲しいんだー。 なんと、昨日ブランはお兄ちゃんにーー」

 

にこやかに言うネプテューヌの丁度顔の前に、凄まじい風切り音が通り過ぎると、アイエフとネプテューヌの間、ネプテューヌ寄りの方に、白いシンプルな装飾が施されているハンマーが2人の間を遮るように立ち塞がっていた。

 

ネプテューヌはチラリとハンマーがどこから現れたのか目だけを動かし持ち主を探す。 横から伸びている片手で持たれたハンマーは、ネプテューヌには見覚えがあった。

 

「……」

 

ハンマーの持ち主であるブランはこめかみにシワを寄せ、怒りモードの証である紅い瞳でネプテューヌを無言で睨んでいた。

 

「……あ、と……えーと……」

 

「……どうした? 続けろよ」

 

口ごもるネプテューヌに、ブランは片手でハンマーを左右に軽く動かしながら、続きを言うように促す。 ハンマーをまるで振り抜く前の準備運動のように動かしていることと、紅く睨む瞳から、ネプテューヌは先ほどまで実行されていたブランによる拷問(お仕置き)が頭の中でリフレインする。

 

事の発端は既に目を覚ましていたブランに、ネプテューヌが最初にかけた挨拶から始まる。

 

 

『やぁブラン。 昨日はお楽しみ……いや、昨日は口移しでしたね!』

 

 

瞬間ブランによるブランのための裁判、『ルウィー式ブラン裁判(裁判長 ブラン)』が発動。 ネプテューヌはブランに捕らえられ、ベールの許可の元ベールの部屋にあるアニメやグッズの置いてある倉庫の部屋へと連行され、ネプテューヌにとっては絵にも文にも出来ない程の恐ろしい拷問をされた。

 

この世の地獄を垣間見た気がしたネプテューヌにとって、2度もそのような拷問を受けるのは本意ではない。 ネプテューヌは冷や汗を流しながら何とかこの場を誤魔化そうとする。

 

「……き、昨日ブランは、お兄ちゃんにパイルドライバーをかけたいって寝言を言ってダバハッ!!?」

 

「どこの世界に寝言でプロレス技かけたいなんて言う奴がいるんだゴラァ!!」

 

変な誤魔化しをしようとしたネプテューヌはブランが片手でハンマーを振るったことにより、後ろへ倒れ込んだ。 念の為に言うが、振り抜いてはいないのでダメージは皆無だ。

 

「いや、ここは事実ではないかつ、ネタになるような変なことを言った方が誤魔化しやすいと言うネプテューヌさんなりの気遣いであって……って、ねぷ!? 世界が反転した!?」

 

「……いや、アンタが反転しているのよネプ子」

 

ネプテューヌは自分の視界が急にぐるんと反転したことにより驚くが、アイエフの指摘と足をを掴まれている感覚から、どうやら自分が誰かに空中でひっくり返された状態で抱えられているようだと分かった。 おそらく、と言うよりほぼ間違いなくブランが自分を抱えているのだろうとも予測出来た。

 

なので、ブランの足を持つ手が下におりて行き、丁度腰の辺りで固定された瞬間、ネプテューヌは今ブランが何をしようとしているのかも予想がついてしまった。

 

「ちょ、ちょっと待ってよブラン! わたしは何とかこの場を誤魔化すためにああ言ったのであって、別にわたしがパイルドライバーをかけられたいがために言った訳では無いんだよ!?」

 

必死にネプテューヌはこの場を切り抜けようとブランに弁明するが、既にブラン裁判により前科持ちとなったネプテューヌに聞く耳を持たずと言った感じであり、ネプテューヌを抱えたまま軽くピョンピョン飛び、しっかりと腰に回す手を固定した。 後は技をかけるだけである。

 

「タイム! ターイム! そんなガチでパイルドライバーなんてかけられたらわたしヤバイって! それに暴力は何も生まないんだよ!?」

 

パイルドライバー発動寸前まで来たことにより、ネプテューヌはもがきながらもブランへの説得をやめない。 往生際の悪いネプテューヌに対し、ブランは静かにこう言った。

 

「……大丈夫よ。 これは暴力じゃなくて、私からのささやかなサービスシーンであり、ファンサービスなのよ」

 

「……あー、そう言えば、この体勢だとわたしパンツ丸見えだね。 うん、サービスシーンだね……。 あいちゃんヘルプ!!」

 

ブランの言葉に一瞬賛同しかけたネプテューヌ。 最早自力では脱出不可能と理解し、目の前に映るアイエフへと助けを求めたのだが

 

「逝ってらっしゃいネプ子」

 

「そんなぁ!?」

 

間髪入れずに返された無慈悲な答えにネプテューヌは絶望した。 そしてネプテューヌの体が上へと浮き上がり、ブランのパイルドライバーが発動する。

 

「うおりゃぁぁぁぁああああ!!!」

 

「ば、馬鹿な!? 女神たるこのわたしが、こんな色気も描写もないサービスシーンを最後にやられルドガ!!?!」

 

ゲームのストーリーの悪役噛ませキャラの死に際のようなセリフを吐こうとすらしてもらえず、ネプテューヌの脳天は地面へと激突。 しかし考えようによってはセリフを最後まで言わなかった事により、死亡フラグを回避出来たのである。

 

 

「……わたしがシャワー浴びてる間に、一体何があったんでしょうか……?」

 

 

脱衣室からこっそりとネプテューヌたちのことを覗いていたコンパはそのただならぬ雰囲気に割って入る勇気は無いため、何食わぬ顔で部屋に戻るタイミングを探ることにした。

 

 

 

 

「はい、ねぷねぷ。 治療終わりましたです」

 

「あー、危なかった。 何かやけにクリアな三途の川のようなものが見えていたよ」

 

「……死亡フラグのセリフを言いかけていた人はそんな呑気なセリフは言わないわよネプ子」

 

「わたしとしても、上半身と下半身が真っ二つになって、ネプ/テューヌになるビジョンが見えたんだけど、気の所為で良かったよ」

 

パイルドライバーがダメージを与える部位は頭であると言うのに、何故か体が真っ二つとなるビジョンが浮かんでいたと言う、ネプテューヌ。 回復力は相変わらずであり、ブランに技をかけられた直後こそ身悶えしていたが、ネプテューヌが悶えている時に、タイミング良くシャワールームから戻ってきたコンパの治療も合わさって、気がつけばネプテューヌは既に復活していた。

 

しかし常時ホイミをかけられているとしか思えないネプテューヌでも、痛いものは痛いので、死なば諸共の勢いでブランの隠し事を拡散しようなどとは思わない。 と言うより、ネプテューヌはそんなことをすればブランに今度こそ何をされるのか分からなかった。 それこそ、生きていることを後悔するようなことをされるかもしれないと、ブランに完全に恐怖を刻み込まれていた。

 

「ただいま戻りましたわ」

 

何てやっているうちにベールが部屋に戻ってきたようだ。 アイエフは帰ってきたベールに、ネプテューヌとブランの所在についてもそうだったが、聞きそびれた事を聞くことにする。

 

「あ、ベール様。 あの、ベール様の用事って一体なんだったのですか?」

 

「ふふ、気にすることはありませんわ。 ちょっとお痛の過ぎた方にお灸を据えてきただけですわ」

 

何やら意味深な笑みを浮かべるベールに、アイエフはやや戸惑いつつも、疑問符を浮かべていた。

 

「さて、その話はさて置き、丁度皆さんお揃いになってますので、話をしましょうか」

 

「話、ですか?」

 

「ええ。 今回の事件で、何故イツキさんが狙われたのか」

 

真剣な面持ちで話すベールに、一同もそれに感化されて緊張感を持つ。

 

「ええ。 あいちゃん達から聞いた話では、イヴォワールはイツキさんがあいちゃんやネプテューヌを魔王崇拝へと洗脳し、モンスターディスクをゲイムギョウ界にばら撒いていると言う報告を受けたので毒を飲むように命じた、という話でしたわね?」

 

「は、はいそうです」

 

ベールの真剣な問いに、アイエフは言葉をどもらせながら答えた。 確認が出来たベールは次の話を始める。

 

「先ほど確認してきたのですが、イヴォワールにイツキさんに毒を飲ませるように命じたのは、ルウィーの宣教師のコンベルサシオンと言う者らしいですわ。 聞き覚えはありますか?」

 

ベールのコンベルサシオン、という単語に皆が皆反応していた。 その名前はベールの言う通り、聞き覚えがあったからだ。

 

「……って、ベール様。 もしかしてさっき部屋を出て行った理由って」

 

先ほど確認してきたと言う言葉も聞き逃さなかったアイエフは、ベールに確認するが、ベールはまた意味深な微笑みを浮かべて

 

「心配はいりませんのことよ、あいちゃん。 イヴォワールには、た〜っぷりとお灸を据えてきましたわ」

 

ふふふ、と微笑むベールに、さしものベール信者のアイエフも少し身震いした。

 

「……と、話が逸れましたわね。 その様子だと、コンベルサシオンの名前に聞き覚えがあるみたいですわね。 あなたたちとはどんな関係なのでしょうか?」

 

「うーん……どんな関係と言われても、お兄ちゃんが追っかけをしている対象としか言えないよ」

 

「ネプ子、紛らわしい話をするのはやめなさい。 それにイツキの話によれば、私たちがプラネテューヌで会ったあのおばさんも、同一人物であるって言っていたじゃない」

 

「あー、そうだったそうだった」

 

にへへー、とベールの質問に適当に答えた事を誤魔化すネプテューヌ。 素なんだかボケなんだか分からないネプテューヌの言葉に、ツッコミとしてはツッコミにくいアイエフはため息をつくしかなかった。

 

「あいちゃん。 コンベルサシオンとプラネテューヌで出会った時のことを詳しく教えてもらえませんか」

 

「分かりました。 ベール様」

 

アイエフはプラネテューヌのとあるダンジョンで出会った、当時は名前も分からなかったネプテューヌを狙う人物について知っている限り話した。 ネプテューヌの力を狙っていたことや、今会話の内容を思えば、初めからネプテューヌが女神であることを知っていたと言うことなどを掻い摘んでベールに伝えた。

 

「……ふむ、そうですか。 ですが、それだと増す増すイツキさんが狙われた理由が分かりませんわね」

 

「? どうしてですか?」

 

話を聞き終えたベールは軽く顎に手を当てて考えるように呟いた。 コンパにはそのベールの呟きの意味がよく分かっておらず、アイエフとネプテューヌも同じような面持ちであった。 ベールは自分の現時点での推理をネプテューヌたちに説明することにした。

 

「イヴォワールがコンベルサシオンに聞かされた話では、イツキさんがあいちゃんたちを洗脳しているから抹殺して欲しいと言う事でしたわ。 コンベルサシオンはネプテューヌが女神であることを知っているにも関わらず、イツキさんの抹殺をイヴォワールに頼んだ。 ここが疑問なのですわ」

 

「あ、確かにそうです。 こんなでもプラネテューヌの女神であるネプ子よりも、どうしてイツキを抹殺するように言ったのかが分からないですね」

 

こんなってどう言うことー!? と騒ぐ人物が約1名いたが、コンパがそれを宥めるだけであり、他は全員スルーしていた。 ともあれ、ベールの疑問について皆が納得しており、殆どの人物が何故イツキが狙われたのかを疑問に感じた。

 

「女神であるネプテューヌよりも、イツキさんを抹殺することを優先した理由とは、なんだったのでしょうか? あいちゃんはイツキさんが、何故コンベルサシオンを追っているのかは知っていますか?」

 

「……いえ、イツキはそれだけは話してくれませんでした」

 

ベールの問いに、少しだけ記憶を呼び起こすために考え、イツキはコンベルサシオンを追う理由を話すことは出来ないと言っていた事を思い出し、アイエフは答えた。

 

「そうですか……では、ブランはイツキさんがコンベルサシオンを追う理由をご存知でしょうか?」

 

「……そう言えば、ブランもルウィー出身なのよね? 何か知っているんじゃないの?」

 

アイエフの回答に、また顎に手を添えて考え始めてから、ベールはブランへと質問した。 アイエフもそのベールの問いに同調するようにブランへと問いた。

 

「……」

 

問いかけられたブランと言えば無言であった。 と言うのも、イツキがコンベルサシオンもとい、マジェコンヌを追う理由を全て話す事が指す意味は、現在ルウィーはマジェコンヌにより掌握され、女神としての力を奪われ、模倣された事を話すということだ。

 

ブランにそのようなことを話すことは出来なかった。 別にこれはネプテューヌたちが自分が女神としての力を奪われ、女神化は出来るが弱体化されている自分を狙われるとかそんな器の小さい理由で無ければ、かつてイツキが予想した、自分の国は自分で守るというプライドから来るものでも無かった。

 

きっとネプテューヌたちに話せば、ネプテューヌたちは断ってもルウィー奪還の協力をしてくるだろう。 ブランはネプテューヌたちに、自分の落ち度で奪われた国を取り返すのに、ネプテューヌたちに迷惑をかけたくないのだ。

 

「……あまり、詳しくは話せないの。 ごめんなさい」

 

だからブランは初めに謝罪した。 ベールとアイエフの顔がまた困り顔になる。 その謝罪が、理由を話してくれないものだと思ったからだ。 だが、そうでは無いとすぐに気づかされた。

 

「ただ、コンベルサシオンはルウィー教会を裏切って、イツキはそのコンベルサシオン……いえ、マジェコンヌと戦ったの。 ……ルウィーの女神を守るために、ボロボロになってまで」

 

ブランの話す言葉に、この場の殆どの者が押し黙った。 ブランはイツキが目の前で死にかけてまで、自分を守ろうとしてくれたのを見ていた。 ネプテューヌとアイエフ、コンパも、イツキがシアンたちのために、ラステイションの下町を己が身一つで守ろうとしていたことを知っていた。

 

「もー! ダメだってみんなー! お兄ちゃんは皆にそんな顔して欲しくて戦ったんじゃないよ!」

 

部屋の雰囲気がまた暗くなり始めたのを見ていられないと言った感じに、ネプテューヌは声を上げる。

 

「お兄ちゃんはさ、皆の笑顔を守るために戦ったんだよ! それでわたしたちが、変に気遣ったりしてどんよりしちゃったら意味ないじゃん!」

 

「……そうね。 そうだったわね」

 

ネプテューヌの励ましに、ブランは目を閉じ、深呼吸してネプテューヌの言葉に賛成した。 アイエフやコンパも、ネプテューヌの励ましに応えるように頭を横に振るい、ネガティブな思考を振り払った。

 

「でも、やっぱりコンベルサシオンがイツキを狙う理由は分からないわね……」

 

「いえ、そうではないですわよあいちゃん。 おかげでネプテューヌが狙われず、イツキさんが狙われた理由が分かりましたわ」

 

「え? それってどう言うーー」

 

立ち直ったアイエフの呟きに、ベールは否定の言葉を言った。 その理由が分からず、アイエフはベールにその理由を聞こうとしたが、突如鳴り響いた軽快な電子音に阻まれてしまった。

 

「あら、わたくしのですわね」

 

一言謝りを入れ、ベールは懐から携帯電話を取り出し、耳に当てるベール。 短い問答の後、ベールは携帯電話を切り、ネプテューヌたちにこう言った。

 

「では皆さん、行きましょうか」

 

この目的語のないベールの突然の誘いに、部屋が一瞬ピシリと固まった。

 

「……あの、行くってベール様、どちらに?」

 

おずおずと聞くアイエフに、ベールは携帯電話を懐に入れながら、微笑みながら答えた。

 

 

「勿論、コンベルサシオンの元へですわ。 ……あぁ、どうして居場所を知っているとか、その他諸々は時間が推していますので、道中お話しいたしますわ」

 

 

既にコンベルサシオンをマークしていたベールの手際の良さに呆気にとられ、一同は舌を巻くしか無かった。

 

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