バトルスピリッツ GranWars   作:草薙蒼士

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お久しぶりです、草薙蒼士です。
今回第3話です。今回は結構自信のある頭脳戦シーンがありますので、お楽しみいただければいいなと思います。

注意事項及び第1話、第2話にて報告されていた誤字を修正しました。報告して下さった方、ありがとうございます。


第3話 天空の神皇

日曜日。朝の陽射しが部屋に差し込む。その部屋のベッドでは…、

 

「zzz…、zzz…、」

 

赤い髪の青年がブレイドラの縫いぐるみを抱きながら、よくある旅する系の物語の主人公のようにぐっっっすりと熟睡している。…まあ主人公なのだが。

 

「太陽〜、もうご飯できてるわよ〜?」

 

「んん…もうちょい寝かして………zzz…」

 

1階から母親が呼んでいるにも関わらず、太陽は眠り続けようとする。「太陽」なんて名前のくせに朝に弱いのだろうか。

 

「今日、月乃ちゃんと遊ぶ約束してるんじゃないの〜?」

 

 

 

「………………………あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つぅぅぅきぃぃぃのぉぉぉぉぉぉ!」

 

「あ、やっと来た」

 

時間にして10時30分。公園前に立っていた月乃は、遠くから全速力で走ってくる太陽を目撃した。太陽も月乃を確認すると、両脚で急ブレーキをかけ、砂煙を上げながら彼女の眼前で停止した。

 

「わ、悪い…。昨日、いろいろ考え事してたら…寝坊した…」

 

「私も今来たところだから大丈夫だよ。ほら、早く行こ!」

 

流石は月乃。フォローができる女である。

太陽は荒い息を整えると、月乃の隣を歩き出した。太陽がこの街に帰ってきて1週間。春休みももうじき終わり、新学期がスタートする頃。2人は今日もカードショップ・ポラリスに向かう。

 

 

 

「ねえ、太陽くん何か当たった?」

 

「おう、『煌星竜スピキュールドラゴン』」

 

ポラリスに着いた2人は真っ先にパックを購入、バトルスペースで開封していた。

太陽が引き当てたのは太陽の表面のような眩い炎に包まれた、刺々しいフォルムが特徴的なドラゴンが描かれたカード。星竜デッキで活躍している1枚である。

 

「いいじゃん!太陽くんのデッキって星竜だから相性いいね!」

 

「そういう月乃は何か良いもん入ってたか?」

 

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。私のは…これ!」

 

月乃が引き当てたカードを太陽に見せる。そのカードには、両肩に狼の頭を模した砲門を備え、胸部の鷹の頭が特徴的な白いスピリットが描かれていた。それは_、

 

「『翼神機グラン・ウォーデン』、だと…!?」

 

「Xレア!それもグラン・ウォーデン!当たりも当たり、大当たりだよ〜!」

 

太陽は目を丸くし、月乃は目を輝かせながらグラン・ウォーデンのカードをスリーブに入れる。そんなやりとりを繰り広げていた時_、

 

「おや、月乃さんじゃないですか」

 

そこに現れたのは、緑色の癖のある髪型をした細目の青年と、黒髪に一束の赤い長髪を垂らし、黒いパーカーを肩を露出させながら羽織った少女だった。

 

「翼遥さん!白亜ちゃんも!久しぶりだね!」

 

二人を見た月乃は笑顔で挨拶をする。

 

「? 月乃、知り合いか?」

 

「うん。この人は"版鳥(いたどり)翼遥(すばる)"さん。隣町に住んでる、一つ年上の先輩。すごく強いカードバトラーの一人で、大会でも何度か優勝してるの。こっちは"冥斬(くろぎり)白亜(はくあ)"ちゃん。翼遥さんの年下の幼馴染で、この子も強いんだよ。あっ、翼遥さん、こっちは絢星太陽くん。私の幼馴染です!」

 

「月乃さんの幼馴染の方でしたか。版鳥翼遥です。よろしくお願いします、絢星君」

 

「あっ、はい!よろしくお願いします!」

 

挨拶と同時に翼遥が右手を出してきたのを見て、太陽も立ち上がって右手を出し握手を交わす。

 

「ほら、白亜ちゃんも挨拶して」

 

「フッ。新参の者と初対面で馴れ馴れしくするつもりはないよ。それに、ボクは冥き地の底に生きる竜の者。天空に昇り輝く太陽とは相容れない存在なのさ」

 

「………ふぁ???」

 

「………。すみません、こんなことを言ってますが良い子なんです。よろしくお願いします」

 

「は、はぁ…」

 

白亜の対応に翼遥はため息を吐き、太陽は困惑のあまり目を点にする。言動から察しは付くかもしれないが、彼女は俗に言う「中二病」(それもかなり痛い系)である。その上ボクっ娘属性という情報量の多さに太陽は言葉を失ってしまった。

 

「あははは…、ところで翼遥さん達はどうしてここに?」

 

「今日は別件で出かける予定があったんですが、時間が空いていたのでそれまでここで暇を潰そうと思いまして」

 

「ちなみにボクは付き添いね」

 

太陽は楽しそうに会話する3人を眺めていた。が、突然月乃から驚きの提案を持ちかけられる。

 

「そうだ!太陽くん、折角だし翼遥さんとバトルしてみたら?」

 

「えっ、でもお前とのバトルは?」

 

「私なら大丈夫。それに言ったでしょ?私ばかりに構ってないで他の人に勝てるようにならなきゃ。翼遥さんは強いから絶対勉強になるよ!翼遥さんも良いですか?」

 

「俺は構いませんよ。絢星君がそれでも良ければですが。どうします、絢星君?」

 

翼遥に問われた太陽は「う〜ん…」と少し悩んだ後、

 

「…やります!俺、翼遥さんとバトルしたいです!」

 

「喜んで受けて立ちますよ。ではバトルステージに移りましょうか。まだ誰も使っていないようなので」

 

こうして二人は受付で手続きを済ませ、店の向かい側に広がるバトルステージに立つのであった。

 

「ふーっ…。んじゃ翼遥さん、よろしくお願いします!」

 

「はい。お互い精一杯楽しみましょう」

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

第1ターン side.太陽

ライフ5

手札4→5

リザーブ3+s

デッキ36→35

トラッシュ

 

「メインステップ。『レイニードル(RV)』をLv1で召喚!更に『創界神アポローン』を配置!《神託》発揮だ!」

 

太陽のフィールドに角の生えた小型の龍と、赤髪の太陽神が現れる。

更にアポローンによって太陽のデッキから『ゴッドシーカー・アルファレジオン』『超弩級星艦シュバルツシルト・ドラゴン』『リミテッドバリア』の3枚がトラッシュに送られる。内対象カードが2枚、よってアポローンに2つのコアが置かれた。

 

「ターンエンドだ!」

 

ライフ5

手札3

リザーブs

デッキ32

トラッシュ2

・フィールド

レイニードル(RV)(Lv(1)

創界神アポローン(Lv1(2)

 

 

第2ターン side.翼遥

ライフ5

手札4→5

リザーブ3+s→4+s

デッキ36→35

トラッシュ

 

「アポローンですか…。初めて見るカードですね。

メインステップ、『ウツボクイナ』をLv1で召喚。ソウルコアと通常コア1つずつを置きます」

 

翼遥がカードをフィールドゾーンに置くと、彼のフィールドにエメラルドが出現し、その中から名の通りウツボカズラと一体化したクイナのスピリットが現れた。

 

(『爪鳥』のスピリット…爪鳥主体の緑デッキか?)

 

翼遥が召喚したスピリットを目にした太陽は、瞬時に相手のデッキを分析する。

爪鳥の系統を持つスピリットが属する緑属性は他5色よりもコアを増やすこと_コアブースト_を得意としている。これによりどの色よりも素早く強力なカードを使えるようになるのが特徴である。そしてこのウツボクイナも_

 

「加えて召喚時効果によりボイドのコアを1つウツボクイナに置いてLv2にアップ。_ではターンエンドです」

 

かくして後攻の翼遥の初手はスピリット召喚のみで終わった。太陽の様子を伺うつもりなのだろうか。

 

ライフ5

手札4

リザーブ

デッキ35

トラッシュ3

・フィールド

ウツボクイナ(Lv2(2+s)

 

 

第3ターン side.太陽

ライフ5

手札3→4

リザーブ2+s→3+s

デッキ32→31

トラッシュ

・フィールド

レイニードル(RV)(Lv(1)

創界神アポローン(Lv1(2)

 

「メインステップ。『ファルスクロス・ドラゴン』を召喚!アポローンの神託発揮!」

 

青石や月乃とのバトルでも活躍した太陽帆を背負う赤竜が召喚される。ファルスクロス・ドラゴンが天にひと吠えすると、アポローンにコアが追加され、オーラが濃くなった。

 

「アタックステップ!ファルスクロス・ドラゴンでアタック!アタック時効果でウツボクイナを破壊して1ドロー!」

 

ファルスクロスが掌をウツボクイナに定めると、掌から光線が放たれウツボクイナを消し炭にしてみせた。そのままファルスクロスは鋭い眼光を翼遥へと向ける。

 

「おっと、気が早いですよ。ウツボクイナの破壊時効果、デッキの上のカードを1枚公開して、それが系統:『爪鳥』のスピリットかアルティメット、ブレイヴのカードなら、1コストで召喚できます」

 

翼遥のデッキから捲れた1枚は『ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ』。

 

「当たりですね。『ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ』をLv1で召喚します」

 

「ッ!ゴッドシーカー…!」

 

ゴッドシーカーの名を聞き太陽が目を見開くと同時についさっきまでウツボクイナがいた地点に、黄金と緑の鎧を身に纏った雉型のスピリットが現れた。

 

「キジバトゥーラの召喚時効果。デッキから4枚のカードをオープンし、その中にあるカード名"創界神ホルス"1枚と、『界渡』か『化神』の系統を持つ緑のスピリットかアルティメットカード、そして系統:『界渡』のブレイヴカードを手札に加えます」

 

翼遥のデッキからオープンされたのは『天空勇士ノースリー』『天空鳥ナイルバード』『創界神ホルス』『天空神皇バッジー・ペセド』の4枚。

 

「ノースリーとホルスを手札に加えます」

 

(ホルス…、それが翼遥さんの創界神の名前か…)

 

「では、そのアタックはライフで受けます」

 

翼遥が宣言した直後、ファルスクロスの左手から再び光線が放たれ、翼遥の前に展開されたコアシールドを一つ砕いた。

 

「ッ」

 

翼遥:5→4

 

「ターンエンド」

 

レイニードルを防御に回す事を視野に入れ、太陽の二度目のターンは終わり、翼遥へと移る。

 

ライフ5

手札4

リザーブ

デッキ30

トラッシュ2

・フィールド

レイニードル(RV)(Lv(1)

ファルスクロス・ドラゴン(Lv2(1+s)

創界神アポローン(Lv1(3)

 

 

第4ターン side.翼遥

ライフ4

手札6(ノースリー、ホルス)→7

リザーブ5+s→6+s

デッキ32→31

トラッシュ

・フィールド

ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ(Lv1(1)

 

「メインステップ。では、俺も出すとしましょうか」

 

「!」

 

翼遥はそう言うと、リザーブのコアを1つトラッシュに移し、1枚のカードをフィールドゾーンに置いた。

 

「次代の神王。天空を統べる者。『創界神ホルス』を配置!」

 

瞬間、翼遥の上空に雲が広がりその切れ目から光が差し込むと、そこから白い衣装の上に金色の鎧、そして隼の尾羽のような赤い武装を纏った黒髪の男性が降り立った。

 

「これが翼遥さんの創界神…!」

 

ホルスの姿を見た太陽は全身に力が入り、後ろのアポローンも闘志に満ちた表情を浮かべる。

 

「ネクサス配置時、同名のカードが無いのでホルスの神託発揮です」

 

ホルスの力で翼遥のデッキのカードがトラッシュへ送られた。『天空鳥ナイルバード』『ヤツギョリュウ』『天空勇士ノースリー』の3枚、全てホルスの神託条件を満たすカードである。よってホルスに置かれたコアは3個。

 

「出だしは遅れましたが順調に進みそうですね。ウツボクイナを再び召喚します」

 

ウツボクイナが再びバトルフィールドに現れる。神託でホルスにコアが1つ、召喚時効果でウツボクイナ自身にもコアが1つ追加された。

 

「これでターンエンドです」

 

先のターン同様、翼遥は全く攻撃を仕掛けることもなく、再び太陽にターンが回る。

 

ライフ4

手札5(ノースリー)

リザーブ2+s

デッキ28

トラッシュ3

・フィールド

ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ(Lv1(1)

ウツボクイナ(Lv1(2)

創界神ホルス(Lv1(4)

 

 

第5ターン side.太陽

ライフ5

手札4→5

リザーブ2→3

デッキ30→29

トラッシュ

・フィールド

レイニードル(RV)(Lv(1)

ファルスクロス・ドラゴン(Lv2(1+s)

創界神アポローン(Lv1(3)

 

「メインステップ、バーストをセット!

アタックステップだ!」

 

「どうぞ」

 

太陽のアタック宣言に対し翼遥は丁寧に返す。太陽はフィールドのファルスクロスのカードをタップする。

 

「ファルスクロスでアタック!アタック時効果、キジバトゥーラを破壊して1ドロー!」

 

先程同様ファルスクロスが掌をキジバトゥーラに向け、光線を放ちキジバトゥーラを撃ち抜いた。

 

 

一方、観戦席では月乃と白亜が2人のバトルを眺めていた。

 

「彼、随分攻めるね。赤デッキらしい戦い方ではあるけど、盤面のカードも少ないのに大丈夫かい?」

 

「太陽くん、まだ創界神使い同士のバトルは経験が浅いからね…。だけど、何も考えずに攻めてる訳じゃないよ」

 

「ふぅん…。ま、ボクからすれば今の彼が何をしても、翼遥の勝利に変わりはないと思うけどね。もうそろそろ翼遥も動き出すんじゃないかな?」

 

バトルの状況を見守る月乃と白亜。白亜が不敵な笑みを浮かべた直後___、

 

 

「フラッシュタイミング、創界神ホルスの【神技:4】を発揮します!」

 

「神技…ッ!」

 

「デッキの上から3枚をオープンし、その中の系統:『爪鳥』を持つカードを1枚、1コスト払って召喚します」

 

ホルスのカードに置かれた4つのコアがボイドへと送られる。そして翼遥の背後に立つホルスが右手を翳すと、翼遥のデッキから『ホルスの天空神殿』『ゴッドシーカー 天空鳥キジバトゥーラ』『天空勇士フェニックジャク』が公開された。

 

「来てくれましたか。『天空勇士フェニックジャク』をLv1で召喚!」

 

ホルスが翳した右手を天に掲げると、フィールド上空から光の柱が降り、その中から緑の身体に黄金の尾羽を持った孔雀が現れた。

 

「フェニックジャクの召喚時効果、このスピリットが効果で召喚された時、疲労状態の相手スピリット1体をデッキの下に戻します」

 

フェニックジャクの黄金の尾羽が光を放ち、強風を巻き起こす。風に捉えられたファルスクロス・ドラゴンは動きを止められ、そのまま太陽のデッキボトムへと送られてしまった。

 

「くっ…!ターン、エンド…ッ」

 

「やっぱり脅威だなぁ、ホルスの神技…」

 

「恐ろしいのはホルスだけじゃないさ。翼遥の秘めたる能力を考えれば、ね…」

 

ライフ5

手札5

リザーブ4+s

デッキ29

トラッシュ

・フィールド

レイニードル(RV)(Lv(1)

創界神アポローン(Lv1(3)

バースト有

 

 

第6ターン side.翼遥

ライフ4

手札5→6

リザーブ5+s→6+s

デッキ28→27

トラッシュ

・フィールド

ウツボクイナ(Lv1(2)

天空勇士フェニックジャク(Lv1(1)

創界神ホルス(Lv1(0)

 

「メインステップ。ネクサス『ホルスの天空神殿』を配置。効果でフェニックジャクにコアを置き、Lv2にアップします。さらにバーストセット」

 

翼遥側の天空から、巨大な翼を広げたホルスを祭る神殿が地上に降臨する。そこから眩い光がフェニックジャクに降り注ぎ、力を与えた。

加えて翼遥は手札から1枚のカードをバーストエリアに伏せる。

 

(向こうもバースト…、仕掛けてくるか…!)

 

太陽は身構え、翼遥はアタックステップを宣言する。

 

「アタックステップ、フェニックジャクでアタックです」

 

 

「ついに動いた!」

 

月乃が声を上げる。翼遥はカードをタップし、フェニックジャクは翼を広げ太陽を威嚇した後、フィールドを駆け出した。

 

「フェニックジャクのLv2アタック時効果によりターンに1回、回復します」

 

対して太陽は待ってましたと言わんばかりにレイニードルへ手を伸ばす。

 

「そのアタックはレイニードルでブロックだ!」

 

迫るフェニックジャクの前にレイニードルが割り込み、額の角を向けて迎え撃たんとする。それを見た翼遥はすかさず手札のカードを突き出した。

 

「フラッシュタイミング、『天空勇士ノースリー』を【神速】召喚。ホルスの神託を発揮し、さらに天空神殿Lv2の効果《天空封印》。カード名に「天空」を含むスピリットを召喚したことで、俺のリザーブのソウルコアをライフへ」

 

「《封印》か!!」

 

翼遥:4→4+s

 

その瞬間、白黒の羽毛を生やし、緑の翼を広げた小鳥のスピリットがフィールドに現れた。更に天空神殿が反応し、通常の青いコアとは異なる五角形の赤いコア_ソウルコアが、翼遥のリザーブからライフへと移る。自らのソウルコアをライフへと移す効果《封印》。これにより翼遥側の一部スピリット達の更なる効果が解放される。例えば_、

 

「ノースリーの召喚時効果により、ボイドからコアをひとつノースリーへ。加えて《封印中》の効果、相手の疲労状態のスピリット1体を手札に戻します!」

 

「何ッ!?」

 

突如フィールドに飛来した小鳥型スピリット・ノースリー。その翼から起こした風は封印の影響か自身のサイズに反して激しいものであり、レイニードルを抵抗させることなくフィールド外へと吹き飛ばす。

これで太陽の場のスピリットはスター・ブレイドラが1体。ここでブレイドラを残そうがブロッカーとして使おうが、太陽は確実にライフを2つ失ってしまう事は確かだ。

 

翼遥がアタックを続行するならの話ではあるが。

 

「ではターンエンドです」

 

「!?」

 

翼遥はそれ以上アタックをする事なくターン終了を宣言。太陽はただ驚き困惑する事しかできなかった。

 

ライフ4+s

手札3

リザーブ

デッキ27

トラッシュ3

・フィールド

ウツボクイナ(Lv1(1)

天空勇士フェニックジャク(Lv2(3)

天空勇士ノースリー(Lv1(2)

創界神ホルス(Lv1(1)

ホルスの天空神殿(Lv2(2)

バースト有

 

 

「レイニードルを除去しただけで終わった…?」

 

「これだから翼遥のバトルは面白いなぁ」

 

観客席でも月乃は呆気に取られ、白亜は面白がるようにバトルを眺めていた。

 

 

第7ターン side.太陽

ライフ5

手札5(レイニ)→6

リザーブ4+s→5+s

デッキ29→28

トラッシュ

・フィールド

煌星竜スター・ブレイドラ(Lv1(1)

創界神アポローン(Lv1(3)

バースト有

 

(何なんだこの人…?全然考えがまるで読めねえ…)

 

太陽は苦い顔で翼遥を見る。翼遥の方は相変わらず目を細め柔らかい笑みを浮かべたままだ。先程から全く表情の変化が無い。これが翼遥のポーカーフェイスといったところか。

 

(くっ…、このままだと埒が明かない!早いとこ勝負を決めたいとこだけど………ッ!!)

 

「来た!まずは『レイニードル(RV)』を再び召喚!」

 

先のターン、ノースリーによって手札に返されたレイニードルが再び戦場に舞い戻る。

 

「そして、燃え盛れ太陽の龍!流星の如く天を駆けろ!『太陽神星龍アポロヴルム』をLv1で召喚!」

 

瞬間、バトルフィールドを飲み込むほどの炎が溢れ、太陽側のフィールドに巨大な炎の竜巻が発生。それを内側から引き裂くように化神スピリット・アポロヴルムが咆哮と共に現れた。

 

「それが…絢星君のキーカード、ですか」

 

翼遥がアポロヴルムを見据える。

 

(現状、翼遥さんのフィールドで厄介なのはフェニックジャク…。2体の小型スピリットは何とかなる!)

 

「アタックステップ、アポロヴルムでアタックだ!アタック時効果、相手のBPが一番高いスピリットを破壊する!対象はフェニックジャク!」

 

アポロヴルムは飛翔し、上空からフェニックジャクに狙いを定めると、口から太陽級の灼熱の炎を吐き、フェニックジャクを瞬く間に灰燼へと変えた。

 

「よしっ!厄介なのは片付けた!」

 

「本当にそう思いますか?」

 

拳を握り喜ぶ太陽の言葉を遮ったのは、翼遥の問いだった。

 

「絢星君、唐突ですが少しバトルを遡りましょうか。先のターン、俺はフェニックジャクのアタックをレイニードルで防がれた事に対し、ノースリーを出しましたね。何故だと思います?」

 

「えっ…」

 

「答えは君が伏せたバーストです。君がバーストを伏せたのはゲームの中盤、お互いのアタックが激しくなり始める頃です。俺も君も準備は早い段階で済ませている。この時点で俺は、ゴッドシーカー等へのカウンターとしてスピリットの召喚時効果や手札増加でトリガーするバーストを伏せた可能性は低いと思いました」

 

翼遥は淡々と話し続ける。

 

「加えて君のライフは5、一つも削られていません。重要だったのはそこです。アタック後やライフ減少で発動するバーストとも考えられましたが、フェニックジャクの効果発揮後には使われず、ライフに余裕があるにも関わらず君はフラッシュを使うでもなく、レイニードルでブロックした。ただ攻撃を止めたいわけではなく、まるでレイニードルを破壊して欲しかったかのように。それで確信できました。

 

 

 

 

 

そのバースト、相手によるスピリットの破壊もしくは消滅で発動するタイプですね?」

 

「!!?」

 

太陽の目が見開く。

 

「どうやら当たりのようですね。俺がノースリーを出したのは、レイニードルを手札に戻す事でバーストを発動させないためです。そして__、

 

バトルを戻しますが、俺が伏せたバーストも君のものと同じタイプなんですよ」

 

そう言って翼遥は、バーストエリアのカードを裏返した。

 

「相手による自分のスピリットの破壊後、『天空戦艦ピラミッドウィング』のバースト発動!デッキから2枚オープンし、その中の系統:『爪鳥』を持つスピリットかアルティメットを好きな枚数、コストを支払わずに召喚します!」

 

デッキからオープンされたカードは『チキンナイト』『天空神皇バッジー・ペセド』。

 

「『チキンナイト』、『天空神皇バッジー・ペセド』を召喚!バッジー・ペセドにはコアを2つ置きます」

 

バトルフィールドの上空から2本の光の柱がが出現し、そこから緑の鎧を纏った小さな鶏のようなスピリットと、翠の翼に黄金の装飾が施された神官のような姿の爪鳥が舞い降りた。

 

「ホルスの神託を発揮。その後バッジー・ペセドの召喚時効果、ボイドからコアを一つ自身に置き、その後ボイドからコアを一つホルスに置きます。そして『天空戦艦ピラミッドウィング』をLv1で召喚!」

 

天を仰ぎ祈るように鳴くバッジー・ペセドの効果によりホルスのオーラが濃くなり、更にピラミッドを首から提げた巨大な鳥がゆっくりとフィールドへ降りてきた。それによりホルスのオーラがまた濃さを増してゆく。

 

「さあ、どうします?」

 

「くっ…!」

 

太陽の額から一筋の汗が流れる。太陽からすれば、スピリットを1体排除したと思えば逆に3体も増えてしまったのだ。想定外もいいところである。

 

「でも、バーストが無くなったならこれ以上怖がるものも無い!フラッシュタイミング、アポローンの【神技:2】を発揮!ピラミッドウィングを破壊!更に1ドロー!」

 

アポローンが弓を構える。矢が向く先のピラミッドウィングを鋭い目で捉え、勢いよく矢を放つ。放たれた矢は光の速さで戦場を飛び、ピラミッドウィングの眉間から尾にかけてを一瞬で貫いた。ピラミッドウィングは墜落する暇さえなく空中で爆散した。

 

「続けてフラッシュタイミング!アポローンの【神技:2】!チキンナイトを破壊!」

 

すかさずアポローンは再び弓を構えると、チキンナイトに狙いを定め、そのまま矢を放つ。先ほどピラミッドウィングを射抜いた時と威力もスピードも変わりはないが、ピラミッドウィングと比べればチキンナイトは明らかに小さすぎた。矢はチキンナイトの身体を貫通することなく、着弾と同時に小さな騎士を爆散させたのだった。そんな戦場をアポロヴルムが翔け抜けていく。

 

「ライフで受けます」

 

アポロヴルムの渾身の飛び蹴りが翼遥のライフを一つ砕いた。

 

翼遥:4+s→3+s

 

「…ターン、エンド」

 

ライフ5

手札4

リザーブ

デッキ28

トラッシュ3

・フィールド

煌星竜スター・ブレイドラ(Lv1(1)

レイニードル(RV)(Lv1(1)

太陽神星龍アポロヴルム(Lv1(s)

創界神アポローン(Lv1(0)

バースト有

 

 

第8ターン side.翼遥

 

ライフ3+s

手札3→4

リザーブ5→6

デッキ25→24

トラッシュ

・フィールド

ウツボクイナ(Lv1(1)

天空勇士ノースリー(Lv1(1)

天空神皇バッジー・ペセド(Lv2(3)

創界神ホルス(Lv1(4)

ホルスの天空神殿(Lv2(2)

 

「メインステップ、天空神殿をLv1にダウン。そして_、」

 

翼遥は手札のカードを1枚右手に持ち替え正面に掲げた。

 

「神と盟約を結び、翼を広げ天空を征く。『天空神皇ゲイル・フェニックス・ホルス』、Lv2で召喚!」

 

緑と白の躯体に赤い羽毛を交え、黄金の鎧に身を包んだ巨鳥_ホルスの化神スピリットがその翼を広げ舞い降りた。

 

「ゲイル・フェニックス…!?でも、この姿って…」

 

太陽もその名は知っている。だが、翼遥が呼び出したそれは、彼が知る"十二神皇"の名を持つ最初のゲイル・フェニックス_『酉の十二神皇ゲイル・フェニックス』_とはどこか違う風格を纏っていた。

 

「創界神の化神たる力を得た神皇、ですよ。そして…、異魔神ブレイヴ『超・風魔神』をゲイル・フェニックス・ホルスとバッジー・ペセドに直接合体!」

 

ゲイル・フェニックスとバッジー・ペセドの後方に竜巻が巻き起こる。その中から、四肢に黄金色の翼を生やし、2本の槍を携えた緑の魔神型武装_異魔神ブレイヴの一つが姿を現し、緑色のオーラで2体の神皇と接続される。

 

「アタックステップ。ゲイル・フェニックス・ホルス、アタック!」

 

翡翠の神皇の一体は天高く咆哮すると、空を舞い、太陽のフィールドへと進撃する。

 

「ゲイル・フェニックス・ホルスの《封印中》アタック時効果、【旋風:2】。スター・ブレイドラとレイニードルを重疲労させます!」

 

ゲイル・フェニックスが旋風を巻き起こす。強力な神皇が起こす風の重圧に、ブレイドラとレイニードルは地面に押さえつけられてしまう。

 

「…!ブロッカーを封じてきた…、ならフラッシュタイミング!」

 

「それはさせませんよ。超・風魔神の合体アタック時効果により君はバーストを発動できず、更に左右に『神皇』の系統を持つスピリットが2体合体していることにより、【ダブルドライブ】の効果で手札のカードも使えません」

 

ゲイル・フェニックスとオーラで繋がっている超・風魔神が太陽へ向けて緑の風を放ち、放たれた風は太陽の手札のカードを拘束するかのように覆ってしまった。

 

「くっ…!」

 

「ブロッカーもいません。ダブルシンボルを受けてもらいましょうか」

 

「ライフで受ける! ぐはぁっ!」

 

太陽:5→3

 

ダブルシンボルの衝撃で身体が吹っ飛びそうになるが、太陽は何とか脚に力を込め踏ん張る。

 

「系統:『爪鳥』を持つコスト5以上のスピリットのアタックで相手のライフを減らした時、バッジー・ペセドの《封印中》の効果!相手のライフを一つ、リザーブへ置きます」

 

「何ッ!? うわっ!」

 

太陽:3→2

 

「更にゲイル・フェニックス・ホルスのもう一つのアタック時効果発揮。このスピリットのバトル終了時に自身の緑の創界神ネクサスのコアを一つ、このスピリットに置くことで回復します」

 

ホルスがゲイル・フェニックスに右手を翳し、自身のオーラを分け与える。すると、地に足をつけていたゲイル・フェニックスは首を上げ、翼を広げ再び飛び上がった。

 

「回復、した…!?」

 

「ゲイル・フェニックス・ホルス、再びアタック!旋風の効果によりアポロヴルムを重疲労です!」

 

ゲイル・フェニックスが二度目の進撃を開始する。その翼から旋風を発生させ、今度は疲労状態のアポロヴルムをその上から大地に抑えつけた。風圧で苦しいのか、アポロヴルムが悲鳴に近い叫びを上げる。

 

「…ライフで、受けるッ」

 

攻撃を防ごうにも、3体のスピリットは重疲労状態。手札のカードも超・風魔神によって封じられ、バーストさえも発動できない。太陽に今出来る事は、眼前に迫るゲイル・フェニックスのダブルシンボルの攻撃をもう一度受ける事だけだった。

天空神皇の巻き起こす風が太陽の二つのコアシールドを砕いた。

 

「うわあああああああああッッッ」

 

太陽:2→0

 

バースト『ガンマレイ・バースト・ドラゴン』

 

 

 

「太陽くん、お疲れ様。翼遥さんとのバトルどうだった?」

 

「…やべえよ月乃、あの人…考えは全然読めないし、でも逆にこっちの考え読んでくるし、おまけにバースト完全に見抜いてたし、怖い…」

 

「あははは…。でも、楽しかったでしょ?いい経験になっただろうし」

 

バトルステージから降りてきた太陽は青ざめた顔に震えたような声で月乃に訴えかけた。バーストを見抜かれその上で発動させてもらえず、最終ターンに至っては手札さえも封じられライフを削られる選択肢しか与えられなかったのだ。無理もない気もする。

そんな2人のところへ、バトルステージの向こう側から翼遥が白亜と共に歩いてきた。

 

「絢星君、ありがとうございました。良いバトルでしたよ」

 

翼遥が太陽に手を差し出す。太陽は一呼吸し気持ちを切り替えると、その手を握り返した。

 

「こちらこそ、ありがとうございました!すっごい楽しかったです!」

 

「まあ、君が翼遥に勝てるわけもないけど、初めて翼遥を相手取ったにしては上出来だったんじゃないかな?」

 

まるで自分のことのように得意げに語る白亜に、翼遥は「こらこら白亜ちゃん…」と窘め、太陽は思わず苦笑いした。

太陽もそれなりに強くはあるが、相手は大会で何度も勝利を重ねるベテラン。実力差があるのは当然といえる。

 

「ねえ、翼遥。ところで本命の目的は良いのかい?」

 

「えっ、…あ、そうだ。ついバトルが楽しかったので忘れていました。お二人共すみません、俺はここで失礼します。絢星君、いずれまた対戦しましょう」

 

翼遥はそう言うと、太陽達に一礼して足速にその場を去る。白亜も「じゃあ、またね」と一瞬手を振り、翼遥の跡をついていった。

 

 

 

「なあ、月乃」

 

「ん?どうしたの?」

 

「俺、翼遥さんに勝ちたい。次は絶対に勝ってみせる」

 

「そうだね」

 

太陽と翼遥は、日曜の人混みに紛れ見えなくなるまで翼遥と白亜の後ろ姿を見送り続けた。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
リアルの多忙さと戦いながら話を考えていたら前回の投稿から5ヶ月…時の流れは怖いですね←
さて、今回第3話ですが、ようやくうちのオリキャラ第1号こと「版鳥翼遥」を出すことができました。前回の後書きでも名前を伏せた上で既存のキャラを出すことは明かしていたので、Twitterで草薙と合流して下さっているフォロワーさんならば、察していた方はいたのではないでしょうか。
翼遥はかなり頭の切れるキャラとして描かせてもらってます。バーストを的確に見抜くとか正直筆者としてもキモいです(笑)。

次回第4話になりますが、話の流れは決まってません(←おいこら)
また次の投稿まで時間が空いてうんざりさせてしまうかもしれませんが、温かい目で見守っていただけたら嬉しいです。ありがとうございました!
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