Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
想定以上に話数が進んでしまう。おかしいな。当初のイメージだとここまで3話くらいの予定だったんだが。
小説説明に書いた、比較的短い話数で、と言うのは守れないかもしれません。(泣)
陽が落ちて夜の帳が下りる闇市。通常であれば欲と色の溢れる時間だが、全く人影がなく異様なほど静かである。それもその筈、数日前からの厳戒態勢と昨夜の戦術人形による侵攻と市街戦だ。
大方、この街の支配者と地域を支配するPMCとの間で何かあったのだろう。住んでいる住民にだってそのくらいの事は分かる。けど弱い底辺の住民にはどうすることも出来ない。嵐が過ぎるのを待つしかない。
民兵達から外出禁止を言い渡されているが言われるまでもなく出ない。地べたを這うしかない虫にも生き残る本能はあるのだ。
今夜もそんな異様な街の外縁の塀の外で嵐の目が育ちつつあった。そうグリフィンのヤシマ指揮官達の部隊である。
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「指揮官、第一部隊、第二部隊、第三部隊、第五部隊の準備完了」
輸送ヘリが到着すると同時に部隊員達が即降車し、すぐにヘリが飛び去る。
それとほぼ同時にベクターが指揮官へ報告する。
『では予定通りに、ベクターとモトコで潜入。第一部隊は潜入のバックアップ。第五部隊は陽動。第二第三部隊は守備だ』
「「了解」」
人形達の気合のこもった応答が基地司令室に届き、コータは笑み浮かべ返す
『頼んだぞ』
──────
「オーライ、オーライ・・・・・オッケー。・・・・フックを外して・・・完了。ありがとー」
57の案内で大型輸送ヘリに吊り下げられた軍用の箱トラックのような車が無事着陸し、ヘリはホバリングしたまま吊り下げ用ワイヤーロープのフックを外してすぐに飛び去って行く。
輸送ヘリ達はアリスの手配でグリフィンの輸送専用部隊に依頼したものだが、その腕は確実なようだ。それはすなわちアリスの調達能力を、彼女の実力如実に表している。
他の指揮官との共同作戦で手を抜くわけにはいかない。何故ならその働きで自身を値踏みされるからだ。味方とてライバルである事に変わりはないのだ。
「なんだこりゃ」
イシカワがその到着したトラックを見て感想を呟く。こんなとこに運ぶには場違いなものだから。
「うん?これ?これは私の仕事道具よ」
「情報戦用の機器ね」
57がニッコリ返しながら、トラックの後ろの観音開きの扉を開く。
扉の中を見てイシカワが一瞬固まるがそれもそうだろう。中には高度な機材が詰まっていたからである。
──────
「さてさて、最初は私の出番だね〜」
ルイス軽機関銃を担いだ明るい女の子。紅いノースリーブのワンピース調の軍服姿。そう、手に持つ銃の名の通りルイスだ。
一緒に陽動作戦を行う第5部隊の面々も同道している。
ルイス達は昨日の作戦でZasが破壊した門の代わりに瓦礫を積んで封鎖しているバリケードの前に距離をおいて立つ。
通常伏せ撃ちのところをスタンディングで構えて撃とうとした。そんな時に、声が掛かる。
「おう。俺も混ぜてくれよ」
「え!・・・・あ、バトーさんか。どうしたの、ってそのミニガンは何よ・・・」
声の主を認識したところまではよかったがその手に持つ武器を見て二度驚く。
何しろ、人間が手持ちで使えないと判断されて開発中止されたXM214マイクロガンならまだしも、その上のM134ミニガンを手に持っているのだから。
その重量は本体だけで18kg、装備重量は100kg以上もあり運搬だけで人間二人が必要。射撃に関して言えば普通の人間には制御不能だ。
つまり、ルイスにとってはマトモな状況とは思えなかった。
「ああ、基地の倉庫に転がっててな。整備員に持ち手をつけてもらったんだよ」
いや、そうじゃない。聞きたい事はそこじゃない。使えないだろ?と聞きたかったのだけど流され、その証拠を目の前で提示される。
「いくぜえ」
との掛け声と共にバトーがM134を門の代用の瓦礫に向かって乱射する。
全く訳がわからないが、キチンと制御されて乱射されている。
「え!?本当に人間ですか!?っと・・・私も撃たないと・・・」
ルイスも腰だめに軽機関銃を構えて銃撃を加える。第五部隊の部隊員達も同調して射撃を加える。
突然の機関銃の乱射により多数の弾丸が瓦礫を貫通して街の通りに降り注ぐ。幸いな事に普段の人出が無いためにこれによる被害は無かったが街の民兵達にとってはたまったものではない。
「くそっ!敵襲だ」
「応戦しろ」
「東門だ!兵を集めろ」
民兵達は突然の出来事に右往左往するがなんとか体勢を整えて東門に兵を集め迎え撃つように動く。それと同時に門の側の建物の二階から散発的に応射する。
「やらせない」
建屋からの応射は先日の全滅の影響かビビりながらのため牽制にもなっていない。
第五部隊長のグローザは
結果、襲撃の阻止が叶わぬまま民兵達はやりたい放題やられる。しかし、民兵達にも被害が出ているわけではなく一見すると耐えられている様に見える。
「よし!抑えられているぞ。もっと増援を呼べ!門を死守するぞ」
民兵達が活気付いていくのが外からでも分かる。
「いい感じですね〜。じゃあ撤収しましょうか」
「そうだな」
バトーが返すと、二人と第五部隊は颯爽と後退していく。辺りに響いていた銃声が消えるとしばらくして街の中から民兵達の勝鬨が上がった。それはそうだろう人間が戦術人形を押し返すなどあり得ない事なのだから。
──────
撤収の道すがらバトーは一緒に戦った戦友のルイスに雑談を振ってみることにした。
「ところでお前も機関銃を腰だめフルオートで撃つなんていいパワーしてるな」
筋トレが趣味でパワー自慢のバトーとしてはついつい気なるところだ。
「うーん、ミニガン乱射する貴方には言われたくないですよ」
困った顔のルイス。そりゃそういう反応になるだろう。無茶苦茶な奴に無茶苦茶だと言われるのは心外なところだ。
「でも、I.O.P.の戦術人形の中では一番の力持ち、と言われてますよ」
「お、そうなの。じゃあ帰ったら一戦どうだ?」
バトーは空いた左腕で力瘤を作る仕草をして腕相撲の勝負をアピールする。
「望むところ、ですけど、女の子に負けて悲しい気持ちになっちゃいますよ」
ルイスが悪戯っぽい笑顔で挑発するが、バトーには効果少ないようだった。
「甘いな。いつも少佐にやられているから大丈夫だ」
笑顔で答えるバトーと少佐の単語から、素子のことだろうか。と推察するルイス。
(いえいえ、そうじゃないでしょ)と心の中でツッコミをいれるが、面白味のある大男に興味を持ち始めていた。
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──
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ルイスとバトーが射撃を開始する前、57は箱トラックの荷台に乗り機器に座りヘッドセットをつけて作業を開始する。
「俺も手伝ってやるよ」
そんな声をかけられて57が振り向くとイシカワが居た。
「人間が戦術人形のわたしの補佐なんて出来ないでしょ。処理速度が違い過ぎるわ」
(忙しいんだから邪魔をしないでよ)と思いながら57が返す。
それもそうだろう。電子戦特化型の戦術人形ではないとは言え、57は★5クラスの
正直人間なんているだけ無駄、スループットを考えれば30年落ちのコンピュータの方がまだマシだろう。正直言えば邪魔でしかない。
とは言うものの57は知らないがイシカワは電脳化しているので決して処理能力が低いわけではない。どちらかと言うとオンライン接続できない事が能力低下の主因である。
「いいから、やらせてみろって」
そう言いながら、57の横の席にどかっと雑に座り、ヘッドセットをつけて機器をいじり出す。
「ちょっと!」
57が抗議の声を上げるが、イシカワは無視して機器の操作を続ける。
「よし、
「えっ!・・・・了解」
突然の仕事の進展に戸惑うがすぐに切り替えて作業を行う。流石に処理自体は57が抜群に速い
「ん?これは、携帯無線機も使用しているな。タイミングを見てジャミングをかけるぞ」
「作戦を悟られないように周波数帯を狙い撃ちにしろ。タイミングも間違えるなよ」
「任せてよ」
こうして二人の通信妨害の準備は完璧に完了し、ルイスとバトーの射撃完了と同時に民兵達のあらゆる通信が封鎖された。
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「オジサン、やるじゃん!」
仕事を終えてヘッドセットを外した57が隣のイシカワに話しかける。
「オジサンじゃねーよ」
「ジャミングはオハコだからな、処理能力は戦術人形には勝てねえが勘所は負けねえぞ」
やんわりとしたドヤ顔のイシカワを見て57の顔が悪戯っ子のそれに変わる。
「ふーん、そっか・・・・オジサンは嫌かぁ・・」
「じゃあ、パパでいいかな?」
完全にオモチャを見つけた猫の様な顔となってイシカワに絡む57。
「はぁ?俺はお前みたいな御転婆娘を持った事ねーやい!」
「そんな事言わないで〜パパ〜」
ぶりっ子な態度で言う57を見て、イシカワの反応を見て面白がって揶揄っている事が鈍感ヤツでも分かるだろう。
イシカワとしても、もう何を言ってもこりゃダメだと諦めが入る。
「・・・もう好きにしろよ」
「ありがと〜、パパ〜」
57はイシカワが降伏したのを見てニッコリ勝利宣言をする。
イシカワが嫌がっているのを分かってとことん揶揄うつもりの57だった。
ー
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イシカワ達のジャミング開始の報告を持って、素子とベクターは侵入を開始する。
アリスからの情報で敵の司令部の位置は共有している。
ベクターはブリーフィングの内容を思い出す。
「接敵を減らすために屋根伝いに速攻で侵攻する」
「殺傷は最小限。可能な限り殺すな」
「データリンクが使えないから光学迷彩は使用しない」
どれもこれも全く問題ない。
今回はモトコが前。ワタシはモトコのフォロー。完璧にやってみせるよ。
素子とベクターは闇市外縁の高さ3mを超える壁を一足飛びに飛び越える。
街の中に降り立つと共に壁際にしゃがみ索敵を素早く済ます。
「クリア。いくぞ」
「了解」
二人はすぐさま雑居ビルの間の路地裏に消えていく。あっという間の出来事で二人の潜入に気づくものは居なかった。
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路地裏に入ると共に、素子は左右のビルの壁を使い三角飛びの要領で登っていき、最後は伸身の宙返りで飛び上がりビルの屋上へ着地する。
着地と同時にベクターを待つと、素子の軌道をトレースするように伸身の宙返りでベクターが着地してくる。
「やるわね。行けるかしら?」
「全く問題ないわ」
ベクターの返事を聞き素子は走り出す。走ると言ってもビルの屋上であり柵や荷物、ビルの設備等がランダムに置かれている。
その上を複雑な立体機動で飛び移り速度を落とさず進んでいく。
時には柵の上を走り、途切れれば隣のビルに側宙で飛び移る。ビルとビルの間に大きな隙間があれば力強いジャンプと伸身の宙返りで飛び移る。
まるで体操の平均台競技を見ているようである。しかし高速で力強く一切のブレや失敗がない。
素子の「走り」を見て追いかけるベクターも凄まじい。決して素子の動きをトレースせずに別のラインで走っていく。しかし一切の遅れはない。
この二人の実力は伯仲していると言えた。
あまりの凄まじさに見ている者がいたら見惚れてしまうだろう。
いや、
「くそっ。どうなっている通信機能が全て落ちている。門の戦いはどうなった?守れているのか??戦況は??」
司令部の屋上を警戒していた民兵の一人が愚痴る。
「・・・・・・」
「????」
「なあ・・・あれ」
もう一人の民兵は屋上を踊るように移動する二人の美女を見つけて見惚れたように固まっていた。
「あーん、なんだよどうした?・・・・っつ、馬鹿野郎敵だ。撃て!」
相方の寝ぼけた声を聞きふと目を向けてみれば戦術人形が二体迫ってきているではないか。
遅れてAKを構えて射撃しようとするも両肩に衝撃を受け倒れる。
素子が走りながら銃のベクターをセミオートで2発撃ち民兵の両肩を撃ち抜いていた。素子とベクターの銃にはサイレンサーが取り付けられ発射音は抑制されているため、周囲に気づかれる事は無かった。
「く、くそ・・・・・」
見惚れていた男が仲間がやれるの見て慌ててAKを構えるが、あまりにも遅すぎた。
ベクターに飛び掛かられて屋上に押し倒される。頭などぶつける物が無くて運が良かった。
「いててて・・・」と倒れた体勢から見上げると、目の前にベクターが立ち見下ろしていた。
「ひっ!ば、バケモノ共が!」
倒れたまま右手で掴むAKをベクターの方に向けようとした時に、彼女に右前腕を踏みつけられ銃を向ける事は叶わなかった。
「ボスの居場所はどこ?」
表情を変えずに端的に問いかけるその女は正しくロボットにしか見えない。
「バカが。言うもんかよ!」
ベクターの問いに強がって拒否する民兵だが、それは悪手だった。
"ボキッ"
ベクターが腕に乗せていた左足に力を込めると、まるでビスケットが割れるようにあっさりと腕の骨が折れる。
「ああっ〜〜〜」
右腕に奔る激痛と湧き上がる吐き気に、悲鳴とうめき声しか出せない青年。
左手で懸命にベクターの足をどかそうと掴むがピクリとも動かない。
「もう一度聞く前に言っておく。まだお前の腕は繋がっている。けど、次ナメた態度見せたら神経が切れるまでやる。次は腕が断裂するまで。右腕の次は左腕、両腕の次は両足、最後は首」
「分かったわね。ボスはどこかしら?」
一回目と全く変わらない表情で問いかける女は青年にとって悪魔にしか見えない。
「3階にある司令室にいる・・・」
冷淡に告げるベクターに恐怖した民兵の青年は心が折れて白状していた。
「いい子ね」
足を退けたベクターはAKをモトコの方へ蹴飛ばす。
解放された青年は腕を押さえてうめく事しかできないが一応無事なようだ。
「あら貴女、ちゃんと喋れるじゃない。私の時は問答無用だったのに」
素子はニヤニヤ揶揄いながら2丁のAKの機関部を分解して部品をビルの外に投げ捨てる。
「ふん!モトコは別よ」
プイっと横を向くベクター
そんな態度を見て素子は満足そうだった。
「さて、目的地もわかった事だし、行きましょうか」
「ベクター、準備はいいかしら」
「ああ、問題ない。行くよ」
突入する準備が整いいよいよ作戦の最終段階が始まる。
57のジャミングの場面はは色々な場面で出ていますが、セラノ氏が誘拐される23話で警察が使っている指揮車をイメージしています。それと19話のクルツコワ会のイシカワの電子戦を混ぜた感じ。
バトーのミニガンは24話の海上自衛軍の海坊主襲撃時のガトリングガンをイメージしています。
人形と9課メンバーをツーマンセルで動かす事としました。別々だとつまらないので(笑)