Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
スジはあらかた考えていましたが、どういう訳か書き始めてもなかなか進まなくて。
苦労しました。
とりあえず1章完了。
けど、この後どうしよう。
全く筋を考えていない。悩み中です。
「くそっ、どうなっている! 何故無線が通じない」
女ボスのノンナはずっと通信を試みていたが、先刻から一切通じなくなっており、その焦りや怒りから通信機を強く床に叩きつけた。
ガチャン! と音を立てて無線機が壊れて部品が床に散らばる。
その様子から、部下達も何かが起きている事は分かった。しかし何が起こっているかまでは分からなかった。
その何も分からない気持ち悪さ、居心地の悪さはプレッシャーとなり精神を蝕んでいく。
通信不能など想定外でありこうも不自由なものか、と改めて理解させられていた。
「姉さん・・・どうします・・・」
狼狽えた兵士達に焦りが伝わり始めるが・・・
「お前たち落ち着け。グリフィンの作戦が動き出したと見るべきだ」
臨時の参謀役の荒巻が浮き足立つ兵士達を落ち着かせる。
「じゃ、じゃあ、もうそこまで敵が来ていて、俺ら殺されるんですか」
慌てふためく青年は、荒巻の話を聞いても落ち着くことは出来なかったようだ。
逆に不安が増えていくその姿からほぼ素人、つまりゴロツキ程度の実力しかない事がすぐに分かる。
「落ち着けと言ってるじゃろ。本当に殺す気なら正面から正攻法で来る」
「周りくどいやりかたをしていると言う事は、こちらの想定通りに進んでいると考えていい」
冷静に状況を読む荒巻の態度を見て、民兵達は落ち着きを取り戻していくが・・・・正直、荒巻自身も苦しいと感じていた。
(むう・・・想定通りとは言ったが前回の戦いでタチコマ達を見せている。その交戦の被害を考えると少数による暗殺作戦も十分考えられる)
(交渉に入る確率は五分五分と言ったところか)
できる限りの事はやったが、最後の一歩は運任せになってしまっている。作戦としては赤点であろう。
無線封鎖を行なっていることからなんらかの動きがあるはずだが、騒がしくないことから潜入系の作戦は間違いないだろう。
グリフィンはPMCであることから前回の作戦行動から考えても暗殺は無いだろう。だろう止まり、であると言うことだ。
「タチコマ、外の様子はどうだ?」
荒巻は司令室のある建物の三方の通りに配置しているタチコマ達に短距離無線通信を送る。
周囲を警戒しているタチコマに異変が無いか確認する。何らかの侵攻があればタチコマ達に捕捉されるだろうからである。
本来であればネットワーク経由で長距離通信が可能なのだがこの世界のネットワークに対応していないため、無線が届く短距離に限られている。なのでタチコマ達もそれほど遠くに配置は出来ない。
なお、この通信が可能な事はノンナ達には秘密としている。
「かちょー。コッチは問題ありませんよ」
「そうだねー、何も無いねー」
「こっちも同じ〜。つまんないからもう帰っていいかな」
相変わらずの緊張感の無いおちゃらけた返事が帰ってくるが、仕事はそれなりに出来ている。
彼らの性能が高いからなのか、やれば出来る子なのか、はたから見たらいまいちよく分からない。少なくともそのおちゃらけた言動で損をしているのは間違い無いだろう。
まあ、いつも通りのそんな状況で報告を交わしている時に想定外の事が起こる。
「ふふっ。お前たち、珍しく真面目に仕事をしているようね」
9課の通信に割り込むように入線してきたその通信。あまりに想定外であった。
「え? 少佐!」
「いつから?」
「どこにいたんですか?」
タチコマ達が思わず声を上げる。
「少佐!」
「少佐か! こちらに来ていたのか? いや、短距離通信の距離という事はすぐそばに居るな? ・・・そう言うことか」
トグサの声に続いて荒巻が通信に出るが、荒巻は素子がどのような状況でこの側まで現れたか、薄々感じてはいた。
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ほんの1分ほど、荒巻と素子とで会話が行われて情報が共有化される。
頭の切れる両名の効率的な会話により互いの状況や立場を互いに理解する。
荒巻にとっては少佐が現れたことが想定外だったが、グリフィンの関係者として現れた事はそれ以上に想定外であった。
細かい経緯までは不明であったが、素子がここに現れた目的を知ったことで、自身の作戦が100%成功する事を確信した。
「了解だ少佐。そちらの作戦はこちらの都合と合致する」
「指令室には民兵3名に、女ボスのノンナ、トグサにワシだ」
「指令室内での殺害は厳禁だ。ワシの目をやる。民兵達を無力化してそちらの作戦を遂行しろ」
「民兵達に我々の関係は悟られるな」
「了解よ」
会話が終わると共に素子はすぐに荒巻の目を使って司令室内部の状況を把握する。
部屋のサイズ、物の配置、ノンナ達だけでなく荒巻とトグサの位置も全て合わせて確認する。
(これなら、私とベクターの同時の奇襲で十分対処出来る)
特に広くも狭くも無いこの程度なら戦闘の障害にはならない。急襲からのCQCによる制圧はなんら問題ない。
「ベクター、やはり中に仲間がいたわ」
「敵はボス含めて4名よ。ベクターはあっちの窓から。私は扉から行くわ」
「敵をCQCで無力化。殺害は無し。オッケー?」
「別に、いいけどさ」
「バディなんだから・・・私もその通信に、仲間に混ぜて欲しいんだけど」
「えっ・・・・ああそうよね。帰ったらイシカワに頼んでみるわ」
ベクターと突入の打ち合わせの後の素っ気ない返事はいつも通りだったけど、その後の"仲間に入れて欲しい"の言葉は想定外で面食らってしまった。アンニュイな彼女の態度の中から出た本音に思わずたじろいだけど・・・ふふっ可愛いところがあるじゃない。
素子の心にも小さくではあるが別の気持ちが湧いていた。
「何が可笑しいのか分からないけど」
少しニヤけた素子の顔を見て不機嫌になるベクター
「ふふっ。なんでもないわ。・・・5秒後に突入する」
「了解」
やりとりのきっちり5秒後に二人は同時に敵司令室に飛び込んで行った。
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ガシャーン! という激しい音が鳴り響いた方に目を向ければ銀髪ショートヘアの女が窓を突き破り飛び込んできた。
「あ・・・・うげぇ」
突然の事で反応が遅れた手近にいた民兵が間抜けな声を上げるが、着地したベクターが素早く近づき鋭いボディを入れる。
綺麗に鳩尾に吸い込まれた拳は男の体に弾丸の様にめり込み男の体が一瞬浮き上がる。胃が破裂しない程度に手加減されたボディだった。
民兵は倒れ込むと共に反吐を撒き散らす。恐らく三日は飯が食えないだろう。
「てめ・・うっ・・・いてっ・・うげぇ」
味方がやられた二人目の民兵はAKを素早く向けるが、向け切る前に踏み込んできたベクターに銃を押さえられてしまう。
そのまま手首の骨が砕かれる寸前まで強く握られ銃を落とす。
手首を掴まれたまま鋭く足を払われて民兵の体は綺麗に宙に浮かされ、背中から床に落ちて背中も頭もしこたま打ち付ける。
仰向けのまま起きる間も無く、ベクターの右踵により鳩尾を踏みつけられる。
まるで杭を打ち付けるようなその攻撃によりベクターのショートブーツのヒールが"ズブリ"と鳩尾に沈み込む。
これまた、内臓破裂寸前に手加減された攻撃により反吐に沈む。一人目と同様に暫く苦しむことになるだろう。
二人目を始末した直後に視界の端に煌めく何が見えたのでベクターは回避をとる。
3人目が接近戦での銃による攻撃は不利と考え、コンバットナイフで切り付けたが、それを最低限の動きで躱していた。
「ヘヘッ・・・・」
切り付けたナイフがギリギリ当たらなかったことから男は手応えを感じていたが、ベクターは計算して躱していたため残念ながらこの男の判断は誤りだった。
民兵の男は細かくナイフを振り続ける。この動きから男がナイフによる格闘技能を持っていると判断できる。
素人は一撃を狙い大振りになり易いが、本来は小振に振ってバイタルパートや腱などを隙なく切り付けるのが基本である。
しかし、その全てをギリギリで躱していく。
「クソッ・・・・・えっ・・・・・うぐっ」
焦りから大振りになってしまったところでベクターに払われてナイフを落としてしまう。
そのままリカバリ出来ずに頭をベクターの脇に抱えられる。
ベクターがそのまま首を捻ろうとしたところで動きを止める。
(あ、モトコが殺すなと言ってたっけ)
勢いで殺してしまう寸前で動きを止めると共に体勢を変えて鳩尾に膝蹴りを叩き込む。
結局、前の二人と同様に反吐に沈む事となったのだった。
続いてベクターの目に入ったのは、ブラウンヘアでスーツを着た中年男だった。
まるでオフィスで働くサラリーマンの様な格好の男を拘束し(反吐に沈め)ようと動くが、繰り出す攻撃を紙一重で躱されていく。
「コイツ・・・」
手加減していたとは言え躱されつづけられイラついたベクターがミドルの回し蹴りを入れると男にガードで受け止められる。しかし勢いを殺せず中年男は吹き飛び資材の山に派手に突っ込み動かなくなる。
「ふんっ・・・・・」
ベクターはいまいち納得行っていなかった。
そう言えばモトコは敵は3名と言っていた気がするが、まあ結果オーライと言うことにしとこう。
(課長! これ本気で痛いですよ!)
倒れたままのトグサが荒巻に秘密回線で苦情を飛ばす。蹴りを受けた腕は折れてはいなさそうだが痛みと痺れで暫くは使えそうにない。
(トグサ、我慢だ。今は死んだふりでやり過ごすんだ)
自分だけ痛い目に遭ってばかりで少し納得のいかないトグサだった。
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一方で
ドアから侵入した素子は、女ボスのノンナと鉢合わせしていた。
「くっ・・・暗殺部隊か!」
素子が会話や行動に移す前にノンナが先制攻撃を繰り出す。
腰のシースに収めてあるナイフより大型の山刀とでも言える武器を抜き取り横凪に振る。CQCで最も自信のある武器だ。
突発の鋭い攻撃を素子は上体を後ろにスウェーして躱す。しかしノンナは二撃めを一歩踏み込みながら逆手で振り戻す。
(殺った! ・・・え、なに!?)
間合いに捉えた一撃。何人も斬り殺してきたノンナの感覚、相手は躱せないと判断した。完勝の一撃。
そう思った瞬間目の前の女が消える。
スウェーしていた素子が二撃めの攻撃のタイミングで前に出てしゃがみ横凪の斬撃を躱すところまでは視認出来た。しかし次の瞬間景色が回転していた。
しゃがんで躱した素子はその流れで素早く背負い投げへと移行していた。ノンナは刀を持つ手を抑えられて反対の手で胸ぐらを掴まれて投げられていた。柔道家も褒めるであろう綺麗な背負い投げだった。
「か・・はっ・・・」
背中から床に叩きつけられた衝撃で肺から空気が漏れ息が出来なくなる。身動きが出来なくなり負け、つまり死を覚悟する。
「くっ・・・殺せ!」
ノンナが悔しさを顔に出しながら発するその言葉は、決して折れないボスとしてのそのプライドを示している。
その態度を見てキョトンとする素子だが、それもそうだろう殺すつもりなどないのだから。
素子は手を差し伸べてノンナを立たせるが、その手を取るノンナもまたキョトンとしていた。
「暗殺が目的ではないわ。話し合いの使者。と言ったところかしら」
「話し合いだと!?」
ここまでやっといて何を言うのか! 少しいやだいぶ怒りが湧いてくる。
「まあまあ、クライアントからの要望よ。文句は通信相手に言うことね」
戯けながら全部コータになすりつけとく様に答え、司令室の映像通信気にメモリースティックを差し込む。
プログラムが自動で作動してグリフィンの施設と映像通信が繋がる仕掛けである
モニターが点灯してグリフィンの社章が表示され・・・・一人の男がず映し出される。
「初めまして。闇市の支配者のノンナさん」
そう、グリフィンのコータ指揮官だった。
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コータ指揮官の提案は簡単な話だった。
「民兵組織を株式会社としてグリフィンの子会社化すること」だった。
メリットは正式に支配者と認められること。そして給与が支払われること。
デメリットは好き勝手出来なくなること。
しかし、提案は悪くないが上から目線で癪に触ることこの上ない。
しかも提案? 実力部隊をここまで送っといて提案もないだろう。乗らなければ殺すと言う脅し以外なんだと言うのだ。
「その提案ずいぶん甘いわね。相当そっちの状況も悪いのかしら? フフッ、例えば拒否したら?」
「・・・・・・」
コータは無言。この交渉の落とし所が難しくなりそうな雰囲気が出かけたところで一人の男が割って入る
「無駄な遊びはそこまでじゃ。ボス、これは悪い話ではないだろう」
ノンナの短気で危うい方に転がりそうな状況を荒巻が修正してくれる。
「・・・・・」
「ふう、分かったわ。ヤシマ指揮官、この話呑むわ」
「よかったよ。新たに興す会社は別の指揮官の下に入るから、後日その人から連絡を待ってくれ」
「今日は連絡員の人形を送るからベクター達は帰任する様に」
「あと、そこのお爺さんと倒れているスーツのお兄さんは連行する。ベクター、連れて帰る様に」
「ん? うちの客人だ。連れていかれるわけにはいかないな」
そこはノンナが割って入る。
「そう言う訳にはいかない。重大犯罪の容疑者でね。そいつらの身元は分かっていないだろ?」
コータの言葉を聞き「やはりな」と思うノンナだが、ここまでバレているなら手元に置いておく意味はないどころか、むしろリスクにしかならない。その様な荷物はさっさと処分するに限る。
「そうなのか? ならば連れて行くことに異論はない」
「よかったよ。・・・これで議論は全て片付いたね。連絡員が到着次第引き上げさせてもらう」
両者の目的が達成され、無事に会談は終了となった
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契約と話が終わり解散となった。連絡員の到着早々にベクターと素子は帰るが・・・・
「はぁ!? 軽戦車3台を輸送追加ってどういうことよ!!」
アリスがコータに呆れ顔で吠えていた。と言うのも作戦を無事に終えて撤収するにあたり、タチコマ達の輸送がすっかり抜けていた。
簡単にソロバン弾いても、大型の輸送ヘリ3台追加である。しかも今すぐに、で。
輸送機なら中型機一台だが、残念ながら飛行場などなく使用不可。
まったく、バカ言うなだ。いくらかかるか分かってて言っているのがなおタチ悪い。
「アリスごめん。この埋め合わせはするからさ」
通信映像には顔の前で両手を合わせて申し訳なさそうな顔を見せるコータがいる。
日系人をルーツに持つ彼が見せるそのポーズは、心からの謝罪を意味するらしい。
タチコマ達からは、「重くてすみません」とか「ダイエットします」とか戦車らしからぬふざけた謝罪が出ている。このAIを作った人間は何を考えているのか疑問に思うが、アリスの毒気を抜かれたのは確かだ。そういう意味では技術者はいい仕事をしている。
「もう・・・なんとかするけど、高いわよ」
ほっぺを膨らませてはいるが、作戦が無事おさまったことで満足の様だ。
全員が無事に帰路に着くことが叶ったのだった。
その後、ノンナが部下になるにあたり軋轢からの悶着があったり、民兵を株式会社化して傘下に収める方法が一般化されて「アリスメソッド」と呼ばれたりで、アリスにとっては色々と精神的な苦労が積み重なるのだが、それはまた別の話である。
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「さて、これで9課の全員が無事に揃ったな」
「ええ、課長達も無事でよかったわ」
「部下に心配されるほど耄碌はしていないぞ」
「ははっ、流石オヤジだ」
「俺は暴行続きで死にそうでしたけどね・・・」
「お前だったから無事だった。そうポジティブに考えようぜ」
「違いねえ。バトーだったらその外見だけで殺されてだだろうな」
「何言ってやがんだ、ボーマだって変わんねえだろ」
「俺よりお前や少佐の方が凶暴だろ?」
「あら? 私は外見には気を遣ってるわよ」
「・・・中身は否定しないのかよ」
帰りの機内で雑談が飛び交うが、秘密通信で荒巻から喝が入る。
(雑談はそこまでにしとけ、まずはこの世界を生き抜くことを考えろ)
(少佐達のお陰でグリフィンとやらと友好関係を築けた。組織の性格上グリフィンに取り入らざるを得ないじゃろう。今後どの様にして行くかグリフィンの指揮官やトップとも話しをして行くことになるだろう)
(それに少佐とバトーの義体整備先の確保も必要だ。課題は多い)
(そこは、彼らに心当たりがあるそうよ)
(む、そうか。ならばそちらは交渉方法も含めて少佐に任せる)
(了解よ)
荒巻は改めて全員の顔を見回して高らかに宣言する。
(本日この場を持って、この世界での9課再結成を宣言する)
((おう!))
課長、少佐、隊員達から思い思いの笑顔が漏れる。
2030年の日本の新浜市から飛ばされてきた平行世界の未来。
国も時代も世界情勢も、何もかもが違うが9課である事は変わらない。
なんとしても生き抜く、そして元の世界に戻る。心を一つにした新たな門出であった。