Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
今回はペルシカさん登場です。
本社でクルーガー社長との会談を終え、そのまますぐに前線基地へと帰任してきたコータ指揮官と素子達。
正直、話の転がり方によっては処刑もあり得たわけで、命の危険が伴う会談であった。
その中、最低限のキープすべき事柄は確保できた。本当に最低限だけではあるが。
欲を言えばもっと確保出来ればよかったのだが。しかし相手は流石海千山千の社長達である。グリフィンの経営幹部がそんなに甘いわけがない。「分かった上で最低限を与えてもらった」とも言えるだろう。
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「昨日付で、第一部隊への辞令が出ております。社長直轄?・・・と私たちの基地兼務、ですね」
前線基地の副官のG36がコータに伝える。内容は昨日の会談で告げられた内容だ。
社長直轄など聞きなれない辞令のため、パーフェクトなメイドである彼女も報告に一瞬詰まってしまった。
副官のG36の戦闘服は正にメイド、白いシャツ、エプロンにフリフリ、そして黒いメイド服である。
金髪で編み上げた三つ編みを腰まで垂らしている美人で出来る戦術人形との評価だ。その睨みつける様な不機嫌そうな目つきを除いて、ではあるが。
「ああ、昨日伝えられたよ。さすが本社、辞令だすのも早いね」
やれやれと言った戯けた態度で返すコータ。
「しかし指揮官様、辞令の発令前と実務上大きな違いは無いようですが・・・・」
社長直轄と雖も社長からの指示などほぼ無いわけで、結局兼務の業務が主となっているからだ。
「うん?・・・いや、最も重要なのは何かあった時、つまり有事の時だ。その時は僕の権限は無くなり恐らく社長が出てくるだろう」
全く、厄介なやり方だよ。本当に。
「なるほど・・・・分かりました」
「2点目です。同じく本社経由でI.O.P.の16LABのペルシカリア主席研究員とのミーティング予定が設定されております。多忙な先方優先で調整されておりますが、指揮官様の予定も空いておりますので予定します。日時は明日のAM10時です」
「なに!それは早速で助かるね。明日の10時ね。了解したよ」
「素子さんと荒巻課長にも伝えておいてくれ」
「了解しました」
目つきは悪いけど優秀なメイド副官により9課の素子と荒巻に義体のメンテ先候補との会談の予定を伝えられる。
今の9課に予定や任務があるわけでは無いので、設定の時間に全員で参加する事となった。
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翌日、予定の時間に基地の司令室に集合しているコータ達と9課の面々。
「少佐、博士って言うからには爺さんかな?・・・あの今来栖みたいな」
「まあ・・・確率から考えたらそうでしょうね」
例の笑い男事件の中で消された厚生労働省の諮問機関に属した老人。自身のプライドと地位に固執した愚かで可哀想な男だった。今日、呼ばれる博士がそんな者であったら時間の無駄なんだろう。そんな思考が巡ったところで、映像通信機にグリフィンの社章が映る。どうやら先方と通信で繋がったようだ。
『やあ、ヘリアン。久しぶりね』
映し出されたのは30前後の若い女だった。素子たちの予想は大外れとなった。
彼女は明るいカラーで腰までのクセっ毛のロングヘア、着込んだよれたシャツにミニなタイトスカート、さらに使い込まれた白衣を羽織っている。ネコミミ型のヘッドホンに裸足で研究室を歩いているあたり、公私の区別をしないタイプのようだし、生活も荒れているようだ。
『ああ、久しぶりだなペルシカ。元気そうで何よりだ』
『昨日の連絡の通り相談に乗ってもらいたい。詳しくはヤシマ指揮官達から説明させる。よろしく頼む』
『異世界のサイボーグの整備、だっけ?まるで空想科学小説みたいだけど?』
そんな荒唐無稽な話ないでしょ。嘘をついてでも私と話したい理由は何かしら?的な態度で聞いてくるペルシカリア博士である。
(まあ、信じられないよね。僕もそうだったしね)
「初めまして、ペルシカリア博士。S地区前線基地指揮官のコータ・ヤシマです」
『あ〜待って待って。その博士はやめてくれるかしら。ペルシカでいいわ』
「え、ええ・・・では、ペルシカさん、ヘリアントス上級代行官から聞いているかも知れませんが、端的に申せば並行世界から来たこのサイボーグの方達の義体のメンテや修繕にご協力いただきたいです」
「各人の義体化率はそれぞれですが、全身義体化が数名。その他は多少なり電脳化のみなり、と言ったところです」
『え?ちょっと待って!・・・本気で・・・言ってるの??』
画面の向こうのネコミミ残念美人博士が驚愕の顔で聞き直した後に、額に手を当てて下を向き黙り込む。
そりゃそうなるだろう。直接面と向かって会った僕ですら意味不明でなかなか飲み込めなかったのだから。映像通信越しで理解するなど無理だって分かりますよ。
『・・・・・分かった。もう何も考えないわ。そう言う人たちが来た。そう言う話だ、として進めましょう』
『それで?非人道的な人体実験の被験者達、とでも言うのかしら?』
この世界では人間に対するサイボーグ化技術は確立していない。できないわけでは無いが倫理上、人権上の問題にも抵触するレベルの実験段階である。すなわち、サイボーグであると言うことは、人体実験の被験者と結論づけられる。しかもそのような被験者が施術者以外に相談に来ると言うことは、まともな状況での実験では無かったと簡単に推察できるわけだ。
「いやそういう訳では無い。私たちの世界では電脳化やサイボーグ化が治療目的だけではなく本人の嗜好も含めて簡単に施術可能であった」
「それこそ病院で行われる一般的な行為と言える。文化宗教上の倫理観から否定されるケースはあれど、社会的に許されない行為ではない」
荒巻課長が至って真面目に説明する。
それに続いて素子が付け加える。
「そうね。間違いないわね。」
「一方で戦術人形に代表されるアンドロイド技術はこちらの世界の方が進んでいるわね。私たちの世界ではもっと単調な仕事しかできない。研究中のバイオロイドやタチコマ達が戦術人形に近いかしらね」
バイオロイドやタチコマなる言葉が出てついていけなそうになるが、
『こんにちは〜。僕がタチコマですよ』
『ずるいよ、僕に喋らせてよ』
『いや、そこは僕でしょ〜』
『待っててよ。後で並列化すればいいでしょ』
三台のタチコマが映像通信に割り込み俺が俺がと会話の取り合いを開始する。
「コラ!お前たち。何勝手にハッキングしている!解体処分にするぞ!」
部下の締まりのなさに素子が激怒する。
『うひゃー、に、逃げろ〜』
タチコマ達は慌てふためき速攻でログアウトする。今までの喧騒が無かったかのように鎮まりかえる。勝手な動きにヘリアントスは苦虫を噛み潰したような顔になるし、コータは苦笑いしている。
まあ、主役のペルシカはついていけないかのように顎に指を当てて口を半開きにしてフリーズしているわけだが。
『・・・・・・・』
『・・・・・・・』
『ああ・・・ごめんなさい。なんでしたっけ?』
『要約すれば、異世界から来たサイボーグのメンテ、というか重整備ができるように協力して欲しい。という事かな』
暫しのフリーズから復帰した後のペルシカのつぶやきに大きく首を縦に振る素子達。
『そう・・・ただ、あまりにも技術が違いすぎるわ。とても出来るとは言えないし期待されても困ってしまうわね』
『けど、技術者としても何もせずに出来ないとは言いたく無いわ』
『一度、面会して考えさせてもらいたいわ。費用はいらないからあなた達の世界の技術の提供でどうかしら』
『そうだな。それが妥当なところだろう』
荒巻がペルシカの提案に返す。
大方方向が決まったところで、後日I.O.P.社の研究部門の16LABを訪ねる事となったのだった。
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映像通信を終えたペルシカリアは代用インスタントコーヒーをカップに入れ角砂糖を10個以上投入した。ただカフェインを摂取する機能しかないその泥水のような飲み物を愛飲するのは、ここでは彼女くらいである。
今日の映像通信はここ10年で最も意味のわからない情報がてんこ盛りで、脳の処理が限界近くになったのだろう。いつも以上に身体は糖分を欲していた。
「は〜〜〜。異世界のサイボーグ、ね・・・」
今日の通信を振り返りながらデスクで思考に耽る。
まあ、仮に彼らの話が本当ならば、今日の通信に至った行動にも理解はできる。彼らがグリフィンと合流したのであれば頼る先は我々以外はないだろう。義体と考えれば戦術人形の技術と近いのでは、と容易に想像がつくからだ。
しかし、同じ機械の身体と雖も人形とサイボーグでは根本的な技術が全く異なる。サイボーグは人間と言う既存の天然生体ユニットに機械を付加していくのだ。神経にしろ機構にしろその接続技術や設計技術は人形製造とは全く異なる。人形設計は生体部品を用いるとは言えゼロから好きに設計することができる。応用技術が全くないかと言えばそうではないがキーになる技術は全く違うのである。
「サイボーグ化技術か・・・・」
口にしてみて、ふと一つの可能性が頭に浮かぶ。
そう言えば、I.O.P.に来る前に所属していた技術集団『90wish』。そこに所属していた『彼』は似たような研究をしていた事をふと思い出したのだ。当時はまだ人形開発の黎明期であり今となっては厳しく禁止されている人体実験なども違法では無かった。倫理的な障壁しかなくやろうと思えば出来たのだ。当時、『彼』は生体と機械の融合に関する研究をしていた。私も覚えている。何故なら彼のまとめた論文の査読をしたからだ。正直、吐き気を催すほど許容できない研究ではあったが、それはそれだ。価値観の違いがあれど研究に対してはフェアに接する必要がある。その私の姿を見て、にやけながら「連名とするか?」などと聞いてきたが断固拒否したものだ。あまりの内容から他の研究者から査読拒否されていたため、受けた私を仲間と勘違いしたのだろう。
彼の論文なら役に立つ可能性があるかもしれない。
その考えから、パソコンを用いて論文検索を行う。しかし、『彼』の名前からは全くヒットしなかった。
「え?どうして?」
思わず疑問が口をつく。世界中の過去からの技術論文を検索できる優秀な社内システムである。彼ほどの研究者の論文がヒットしないなどあり得ない。
ふと、思いがわく。そう言えば彼は今どこに所属しているのだろうか。
『彼』の名前と思い当たる研究分野で検索をかける。しかし、どんなにワードを変えようともついに探し出すことはできなかった。
「・・・一体なにが起こっているの・・・」
突然現れた異世界から来たと言う謎の集団。昔の知り合いの存在が消えていること。
突然で意味のわからない状況に再び唖然とするしかなかった。
もうちょい書く予定でしたが、長くなったので分けました。
次話はすぐに投稿できる。はず?(笑)