Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
書いていたら思いの外長くなってしまったので、もう一度切らして下さい。よろしくお願いします。
おかしいな、3話まとめて5000字くらいで終わるはずだったんですが・・・見積もりが雑ですね(笑)。
次話も早めに投稿できる予定?です。
I.O.P.本社を警護する目的でこの街に存在するグリフィンの駐屯基地のヘリポートに輸送ヘリが数台到着してたのは朝方だった。搭乗しているのはS地区前線基地のコータ指揮官以下、第一部隊の面々と、9課の全員、そしてタチコマ一台である。
「街全体が軍事基地、って感じだな」
ヘリから降りてI.O.P.の本社に向かうハイヤーからの車窓を見ながらバトーがこぼす。
どこに行くにしても、なにかこう遠足のような雰囲気を出すのはバトーの長所でもある。
「そうだな。新浜市の軍港周辺のような雰囲気だな」
「どーせお前はあれだろ。こんな街だから、いい飲み屋でも無いかって思ってんだろ?」
「ちげーねーや」
「お、俺のことわかってんね! 終わったら街に繰り出そうぜ」
バトーの言葉に真面目に答える素子だが、イシカワやパズたちからはからかいの言葉が飛ぶ。まあ、バトーもそのつもりらしいが。
「お前ら真面目にやれ。ゆっくり飲めるほど早く終わらないと思うわ」
素子から酒は諦めろとの言葉が出て、9課の皆は残念そうな態度でアピールする。
こちらの世界に来てからまともな娯楽にありつけてはいなかった。気分の発散も必要だろう。9課再結成を名目に皆で懇親会を開いてもいいかもしれない。
素子がそんな事を考えていたところで、ハイヤーは巨大なビルに到着していた。そう、I.O.P.本社ビルであった。
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I.O.P.かつては人形製造において鉄血工造社と並びシェアを争った企業だった。
だった、と言うのはその競合の鉄血工造が工場に行われたテロにより工場を統括する自動制御AIが暴走し、無差別に人間を襲い始める事となった。結果、製造された在庫人形により工場及び本社が破壊尽くされ社員も皆殺害された為、一夜にして消滅してしまった。
そんな事情もあり、I.O.P.は業界一の人形製造会社となったわけである。
ちなみに、鉄血工造社は消滅したが工場制御AIと製造していたハイエンドモデルの人形によるテロ組織へと変わっている。昼夜自動で人類を殺戮するマシーンを製造し放出し続ける迷惑極まりない存在と化しているわけで、その後始末にグリフィンがI.O.P.の人形を使用して活躍しているという事情があるのは皮肉な話である。
ハイヤーから降りた素子達だが、すぐにビルから案内の人形が出てきた。
「お待ちしておりました。S地区前線基地ヤシマ指揮官と・・・
赤いベレー帽に栗色のツインテールの女の子だった。
「よろしく頼む。・・・君はステンMK-II?」
「はい、私はステンMK-IIですが兵士としては引退しております。コアを外して民生人形として受付の仕事をしています」
I.O.P.の第二世代の戦術人形は、コアを搭載し銃と紐付ける烙印システムにより、民生用人形が優秀な兵士へと変わる特徴がある。なので彼女のように戦術人形から民生用人形へと戻る事もできるのである。
「ではこちらに・・・って、マンティコア!!」
「うんうん違うよ。マンティコアくんじゃないよ。僕はタチコマ、よろしくね」
今回ついてきた唯一のタチコマは、元の世界の研究所でバラされる直前だった黒い機体のやつだった。
やはりステンにマンティコア認定されてしまったが、これはお約束なのかもしれない。
「えっと・・・タチコマさん? ・・・はサイズ的に玄関から入れないので裏口から入りましょう」
「え〜僕だけ裏口! 嫌だよ〜」
「タチコマ! 我儘言うな。すぐに合流できるだろう」
「は〜い少佐! 裏口から行きま〜す」
タチコマは駄々捏ねるが、素子がピシッと言うと黙って言う事を聞き、案内のステンに付いて別口の方に回っていく。定期的に突拍子もない動きをするタチコマを警戒して素子はステンと共に行くタチコマを見ているが、まあ大丈夫そうだ。曲がり角を曲がったところでこちらに別の案内人が来たので、思考を切り替えそのままビルに入って行った。
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「ねーねー。ねえってば」
「はいタチコマさん、なんでしょう?」
タチコマの絡みに真面目に返すステン。建物の角を曲がって少佐が見えなくなったところからステンに絡み始めていた。
「クイズ出してもいいかな」
「私の任務は皆さんをご案内する事です。それ以上はありませんよ」
「けど、お客さまのご希望であれば一問だけでしたらお付き合いしますよ」
足を止め後ろのタチコマへ振り返ってニッコリ微笑むステン。意外に喧しく絡むタチコマに興味があったのかもしれない。効率を重視する彼女の性格を知る者としたらその行動の珍しさに驚くだろう。
「じゃあ行くよ。問題〜」
「僕は嘘しかつかない。本当のことは何一つ言わないんだ」
「もし今のセリフが本当なら僕は今真実を語ってしまった。もし今のセリフが嘘なら僕は普段から真実を語ることになる」
「さてこの矛盾をどう処理する?」
「・・・」
ステンは人差し指を顎に当てて首を傾げ、視線を上に向けて考える。・・・・
「ふふっ。タチコマさんはよく嘘をつくんですね〜」
「それはそうと私はテストには合格ですか? 自己言及のパラドックスですよね。私に敢えて質問すると言うことは、タチコマさん達の世界のアンドロイドは自己言及のパラドックスをクリア出来ないんですか?」
ニッコリ笑顔でタチコマに返すステンの態度を受けてタチコマは答えに窮する。奇しくもステンは9課のオペレーターのお姉さんと同じステレオタイプなポーズを取っていたが、予想を裏切り知的な人間のようにすんなり回答する。しかもタチコマの質問の意図までバッチリバレていた。
タチコマはすっかりこの世界のI.O.P.製の戦術人形の能力の高さを思い知らされたのだった。
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裏口から入ってきたステンとタチコマが素子達と合流してペルシカの元に向かうが、妙に仲良くなっている2人(1人と1台)に違和感を感じていたが間もなく16LABの施設へと到着する。建屋内にセキュリティーゲートがありぐっと秘匿性が高くなる。地下階であり建物内も窓などもなく圧迫感を感じる何か嫌な雰囲気の廊下である。地上階と違い歩く人形もほぼ無し。
しばらく歩くと、ステンが一つの部屋の前で止まりドアをノックする。それと同時に聞き慣れた若い女の返事が返ってきた。
「は〜い、どうぞ〜」
その声に導かれて部屋に案内される。10畳ほどの広さの部屋だが若い女が座る汚いデスクにそこら中に積み上げられた学術雑誌に論文の山、それに脱ぎ散らかした服に下着。有体に行って汚部屋である。
「お客さんが来るから昨日片付けたのよね」
「「・・・・・」」
どこが片付いているのか、片付ける前はどんだけ汚かったのか。入った全員が心の中で思った筈だ。
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「それで、ペルシカリアさん、何か良い案は出ましたでしょうか?」
「・・・・・」
「結論からになるけど、うちは人形屋だからね・・・サイボーグは無理よね」
挨拶がひと段落したところで、コータ指揮官が問いかけるが色良い返事は無かった。
やはり異世界の技術の再現など無理。悔しいが認めざるを得ない。コータ達から視線を外して床を見ながら呟く、そのようなペルシカリアの態度からは彼女の気持ちが滲み出ていた。
「そう・・・・じゃあギブアップかしら?」
「ふふっ。挑発してくれるわね」
「・・・・」
素子が微笑を浮かべ鋭い目つきで挑発する様に問いかけるが、ペルシカの反応からまだ何かありそうであり素子達もペルシカの次の言葉を待つ。
「言った通り、うちは人形屋。だから義体はなんとかなる。生体と融合するサイボーグ技術はない」
「だからさ、君たちの電脳を人形ベースの義体に載せればいい。単純な話さ」
「草薙さんとバトーさん、ボーマさんは全身義体だから準備は出来るわね。男性型のボディは時間が欲しいけど」
「サイトーさんの目も、生体との融合部を残して機械部分の交換はなんとかなるかもね。もちろん見てくれやサイズが変わるのは勘弁してもらうけどさ」
「一方で義体化率が低い人たちは注意が必要。重傷な怪我をしても義体化による治療は現時点では不可能だから」
「なるほど。今はそれで十分よ」
ペルシカによる今できる精一杯を聞いて素子が答える。全身義体の隊員の義体のスペアが手に入るだけでもありがたいというものである。贅沢は言えないのだ。
「そこでお願いがあるんだけど。しばらく研究開発の為に誰かこちらに貸して欲しいわね」
「ああそうね。そう言うと思っていたわ」
「パズとボーマ、ペルシカに協力しろ。それとタチコマ、お前もだ!」
「ええ!? 俺たちですか?」
「ボーマはともかく俺もですかい?」
「僕はまた分解されちゃうの? 嫌だよ〜!」
残留組がやいのやいのと不満を口にする。
「ああ、ボーマが研究の対象だけど電脳の積替えなどもあるだろう。パズは立会要員よ」
「タチコマ、お前は研究に協力しろ」
(I.O.P.と16LABの「深いところ」を調査をしておきたい。お前達の調査能力は信用している。特にパズは空いた時間で徹底的にやれ)
(「深いところ」ですかい・・・了解しましたぜ。少佐)
「諦めますよ。了解です」
素子が口に出して研究の協力をしろと伝えた裏で、近距離通信によりI.O.P.の調査を命じる。この世界の秘密についてI.O.P.社にも何か関係がありそうだと素子のゴーストが囁いていた。
「まず、貴方達の電脳と人形の義体との接続の要素確認を行うわ」
「仮設の装置が出来たら連絡するから試験しにきて欲しいけど、大丈夫かしら?」
「ああ、問題ない。期待してるわ、博士」
本題は大枠で完了した為、雑談を含めて細かい調整を行うが、早速イシカワから質問が飛ぶ。
「博士、広域通信の接続権限と、PCなどの有線接続規格を知りたいのだが」
「広域通信ね・・・・I.O.P.戦術人形規格のツェナープロトコルを使うのがいいわ」
そう言うとペルシカがツェナープロトコルの仕様に関する書面をイシカワへ渡す。
受け取ったイシカワがパラパラとめくり読み込んだ結果、どうやら通信用のアプリケーションの開発目処が立ったようだ。ツェナープロトコルを使えば電脳からの接続によりセカンダリーレベルでの活動も出来る様になるだろう。この辺りの技術は元の歴史より進んでいるようだ。
併せて有線接続規格の仕様書も受け取り、接続変換コードの準備の目処も立った。これにより9課の活動範囲が飛躍的に広がることとなる。何しろこの世界では人間が広域通信空間に直接アクセスする事など想定していないのだから。
「どうでもいいけどさ、貴方達の通信規格も欲しいんだけど」
ベクターが書面を読み終わったイシカワに要求する。以前から素子との会話に混ぜろと言っていたのでここぞとばかりに要求する。なんだかんだで素子と会話がしたいようだ。
「あ、ああ。そうだな」
「渡してもいいが通信アプリの搭載は第一部隊限定だ。取扱いに注意しろよ」
注文をつけた上で、9課が使っている暗号通信周波数やセキュリティー関係の情報をペルシカに渡す。
「分かったわ。義体の解析に合わせて次回までに作っておくわ。楽しみにしててね。ベクター」
「ふん。別に楽しみじゃないんだけど」
そのベクターの態度に素子が笑みを浮かべる。それを見てベクターの機嫌が尚更悪くなったのはいうまでもないだろう。
大方のやりとりが終わったところで、改めて挨拶を済ませて帰路につくのだったが・・・・
「少佐! 飲みに行こうぜ」
とのバトーの言葉により市街地のバーに繰り出し9課と第一部隊とでドンチャン騒ぎをしたのだった。この世界の通貨を9課は持っていないのでコータ指揮官の接待費を使用したのだが、その額がかなり行ったとか行かないとか。「今後は奢れませんよ!」とのひと言が渋い顔のコータから荒巻と素子に伝えられたのは想像に難くないだろう。
ペルシカが仕上げるこの世界の技術で作られる義体。それを楽しみに想像しながら酒を嗜む。目の前では課員達がワイワイ楽しんでいる。普段の彼女なら叱責の一つでも飛ばすだろうが今日くらいは大目に見る素子だった。
タチコマくんと言えば、自己言及のパラドックス、ですよね。
原作程上手くないですが、入れさせていただきました。