Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
活動報告にもちょろっと書きましたが生活が荒れておりご迷惑をおかけしております。やり切るので気長に待っていただけると助かります。よろしくお願いします。
書いてたらやたら長くなっちゃいました。その分とっ散らかったかもしれません。
ここはグリフィン本社がある某大きな街である。
流石に世界有数の大企業が何社も本社を置く街であり、小さな国の首都レベルの規模と機能がある。
住んでいる人々は裕福な者ばかり、と言うか許可を得た住民しか入ることも住むことも許されぬ管理区である。その中でもここは金持ちが集まるアップタウンであり、街に入る事さえ叶わぬ下々の人間の事情など気にもかけることもない人たちが住んでいると言える。街の外の世界は絶望感が溢れる世紀末であるが、人出も多く喧騒が溢れるこの場所は第三次大戦前から時間が止まったかのようであった。
外の者がこの世界を見たらどう思うのだろうか?
その一つの答えがいま示されようとしていた。
「・・・ははっ。馬鹿共が。能天気なもんだ・・・自分達が殺されるなんて思ってもいないんだろうな」
休日の夕方であり多くの老若男女が幸せに歩く繁華街を見下ろす雑居ビルの屋上の若い男が思わず呟く。地べたを這いつくばり今日を必死に生きる同胞を見ないフリをするような幸せそうな群衆に怒りさえ覚える。姿形や言葉こそ自分と同じであるがその態度振る舞いを見るに、同じ人間はおろか家畜以下程度にしか価値を感じない。故にこれから引き起こす惨劇を想像してもなんら良心が痛む事も無いのだろう。
自身の目的を達する為には好き勝手にしても何ら気にすることもない。子供が遊びでアリを踏み潰すのと同等という事だ。
「さあ、粛清の始まりだ!」
男は宣誓と同時に屋上の柵から離れる。下の道路で複数の爆発が起こるので柵の側にいると爆風や吹き飛ばされた人間が降ってくることを知っているからである。
そう、男はテロリストであり爆弾テロが実行されるまさにその瞬間であった。
人類が滅びようとするこの世紀末な世界においても人々は争いを止める事は出来なかった。約15年前に始まった世界大戦もそうだが窮地に立たされるほど闘いに傾倒するのは生物としての性なのかもしれない。
生存可能エリアが限られて、E.L.I.D.感染者という化け物や鉄血工造の暴走人形と言った危機が迫るこの世界でさえ、いやこんな世界になってからこそ様々なテロが行われる事となった。
中には人形人権団体やE.L.I.D.人権団体など、非科学的な宗教じみた団体もある。それらの矛先は国家に向くのが普通だが、国家が衰退してPMCが台頭したこの時代では矛先はPMCに向く。特に戦術人形を用いるグリフィンは各種非合法活動団体の格好の的であった。
この男もその団体の一つに属するやり手のテロリスト、と言う事である。
今までの何件もの大規模テロに関わっていた。
今回もここまでは順調。予定通り完了して帰るだけ。だったが・・・・
(・・・・・・)
(・・・・・・)
(うん? 爆破されない? ・・・トラブルでもあったか?)
(たく、使えねえ連中だな。何かあったら連絡しろって言っただろうが!)
屋上の柵の向こう、爆破が行われる通りの空を注視するが爆破が起こる雰囲気は全く無かった。
「全く、しょうがねーな。・・・・えっ!?」
ボヤきながら使えない馬鹿どものケツ拭きのために、通りの様子を見るために柵に向かおうとした。そんな時、
薄ピンクのレオタードを着た青紫の髪の少女が屋上に立ち、こちらに視線を向けている事に気がついた。
可愛らしい外見とは裏腹に、露出の高いレオタードにその全てを見透かす様な赤い瞳。一般の人間では無い事は明白だった。
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「それで、オヤジ。次の仕事は決まったのか?」
S09地区のコータ指揮官の基地のミーティングルームに9課のメンバーと第一部隊、それにコータ指揮官が集まっていた。
新たな仕事があると定期ミーティングとは別に打ち合わせが設定されるのが9課の慣例なので、9課のメンバーはなんの事かすぐに分かる。そんなわけで呼び出されて早々にバトーが質問する。ここ最近活躍の場が無くてウズウズしていた所である。
「うむ。次の仕事だがテロの抑止だ」
「未確認の大規模テロの情報が入ったらしく、可能性は低いが調査しろとの事だ」
「おほっ。やっと9課らしい仕事になってきたな。飽き飽きしてたところだ」
「グリフィン内の使い込みや不正の調査、そんなのばっかりだったからな」
バトーとしては気の乗らない仕事ばかりだったようだ。前の世界ではファンだった元銀メダリストのザイツェフが軍で不正行為を働き、バトーが9課の仕事として逮捕する一件があった。この事が深層心理にあるのかもしれない。
「なに言ってやんだよ! 8割りがたは俺と57で片付けてるだろうが!」
「ほんと、それよね」
呆れ顔でバトーを責めるイシカワと57。殆どがイシカワ達で始末していたので、さすがに飽き飽きしてたは無いだろうと。まあ、さしものバトーも二人のそのツッコミを受けてタジタジしている。
まあ内偵調査などは電子戦が有効なので、仕事に偏りが出ても致し方ないのだが。
グリフィンはPMCでありデータベースにそれなりの攻性防壁が張られているが、電脳化されて
「グリフィンとしてもお試し期間が終わり、合格と判定した。と言う事だろう。ある一定の信用を得たと考えていい」
「逆に考えれば、ここからは遠慮なく本格的な仕事になっていくともいえる。心してかかれ」
イシカワとバトーの絡みを見て、改めて気を引き締めるように荒巻課長は檄を飛ばす。
「それで? そのテロの阻止って具体的にはどんな依頼なのかしら?」
「グリフィンの情報部が手に入れた情報らしいが、本社の街が狙われているようだが詳しくは分かっていないらしい」
「恐らく、発生の可能性や重要度が低いと判断されているか・・・・」
「それか、これもテストの一つ。ってとこかしらね?」
「そう言う事だろう」
素子と荒巻はそう言うと二人してコータの方を見る。確認という事だが、見られたコータも両手を上げて降参のポーズをしている。コータにも情報が無く会社側の真意は分からないようだ。
「まあやるしかないって事だな・・・」
バトーの呟きに頷く9課の面々。これが会議の締めとなった。
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「少佐、グリフィン本社周辺でのテロ情報は見つかりませんね。やはりガセじゃないですかね?」
情報端末をいじっていたイシカワがモニタから視線を外して、困惑顔で素子を見て報告する。
確かに普通に考えればガセだが、素子のゴーストが囁く。これはガセではなく大きな山だと。
「ガセではないな。間違いなくあるわね」
「反グリフィン連合の最近のテロで、かつ被疑者が捕まっていない事件をピックアップしろ」
「抽出済みよ。パパ」
横の57がさっと、情報をイシカワと共有する。やはり情報収集の単純な早さは57の十八番のようだ。
「お、済まねえな」
「・・・・おいおい、こりゃ・・・。少佐、爆弾を仕込んだ人間を複数紛れ込ませて自爆させる手口の主犯が捕まっていないですな。爆発物の種類はC4爆薬か。軍やPMCの関与も疑われますな」
「なるほどな。自爆犯の身元はどうだ?」
「ちょっと待ってください・・・身元不明か、ダウンタウンの貧困層ばかりですね」
「やはりな・・・主要な貧困者支援団体のメンバーと、事件現場の事件1ヶ月前からの通行人の顔写真を照合しろ」
「!? ・・・・了解! 57、急いでやるぞ!」
「任せてよ!」
イシカワと共に端末にアクセスする57。ヒントを得たことから後は正誤を明らかにするだけであり、いつもに増してやる気に溢れているようだ。
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「少佐、出ましたぜ」
皆が集まるミーティングルームにイシカワと57が入ってくると共に、答えが出た旨を告げる。
少佐、荒巻以外からも視線が集まり、無言で結果を求められていることが分かる。その反応を受けてイシカワが無言で備え付けの大型モニタを着ける。
モニターには一人の若い金髪の男が映し出されていた。
「コイツはキリール・ラスキン。難民支援団体に所属する男だ。しかし、複数の事件現場映像でその存在を確認されている」
「かなり慎重なようで事件一週間前には消えている。犯人か疑わしかったがコイツの身元を徹底的に洗うことで見えてきたものがある」
そう言うとモニタの映像が変わり銀行口座らしきものの明細が映し出された。
そこには数々の入金と振込の記録が記載されている。
「口座の明細がどうしたって?」
「まあ、話は最後まで聞け」
バトーがチャチャを入れるが直ぐに荒巻に嗜められる。
間を置き、イシカワが説明を続ける。
「この口座はキリール名義ではないが、奴の複数の入出金時の映像と時間から他人名義の秘密口座と特定した」
「それはいいが、問題はこの取引内容だな」
そう言うと、いくつかの取引がハイライトされる。
「これは・・・・」
「ええ少佐。きっちり事件の二週間前に振り込まれてますな。
「なるほど、自爆犯の家族への支払いというわけだな」
「その他にも、報酬と思われる振込もC4の違法購入の取引記録も残っていますな」
そう言うと、それなりの額の取引記録がハイライトされ、その振込先口座の情報が画面に現れる。
そこにはグリフィンのQ地区のとある前線基地の指揮官の口座である事が示されていた。
「ふう、全く度し難いものだな」
頭を抱えて渋い顔をする荒巻だが、それもそうなるだろう。何しろ自社へのテロに自社員が協力しているわけだから。
「ここからが本題ですが、キリールの奴は約二週間前にグリフィン本社の街の目抜き通りに現れております」
「なに? では犯行間近か!」
「いかん、少佐。直ぐに阻止の準備をして出発しろ。詳細は任せる。ワシはクルーガー社長に状況と行動開始の連絡を入れる」
「了解」
荒巻の号令と共に素子達とベクター達が動き出した。
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第一部隊のベクター、FAL、ルイス、NTW-20、9課の素子、バトー、サイトー、トグサの計8人はヘリに乗り本社の街に到着した。
「時間がない、本社基地に寄らず直に行くぞ。ベクター達は離れた位置に降下、分散し突入しろ。デッド・オア・アライブで構わない。私はキリールを捜索する」
そう言うと街の上空を航行中のヘリから素子が飛び降りる。と同時に光学迷彩を起動して街の風景に溶け込む。
街の上空を旋回したヘリから次々と第一部隊の人形達が飛び降りていく。光学迷彩が無いためビルの屋上に降りて不自然さを与えぬように街へ溶け込む。
トグサとサイトーは義体化率が低いため高所からの飛び降りは出来ないため、比較的高度を落としたところでそれぞれFALとNTW-20に背負われて飛び降りる。いくら背負っているからとは言え高所からでは着地の衝撃で無事では済まないからである。
「NTW、俺は通りの犯人を監視する。バッアップは頼む、お前の銃は大口径だから特攻車両等が乱入した時は阻止しろ」
「うむ。任せろ」
目抜き通りを監視できるポイントにポジショニングしたサイトーが指示を出すが、NTW-20も問題ないようだ。サイトーは対人射撃を考え小口径のサイレンサー付きのセミオートスナイパーライフルを装備している。現地の突入班のバックアップを予定していた。
「FAL、行くぞ」
「そちらこそ、遅れないようにね」
トグサとFALはダッシュで階段を降りて突入班に合流をする。チームの準備は滞りなく進んでいた。
と、同時にイシカワから無線通信が届く。
「犯人達が分かったぞ。人数は五名だ。顔写真を入手したので送る」という連絡と同時に無線通信に5名分の顔写真が送られる。
「それとクラウド上の犯行計画も見つけた。自爆予定は30分後だ」
「うむ、イシカワ、57、短時間でよくやった」
「突入班はバトーが指揮しろ。以上、成功を祈る」
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「くそっ、まだ死にたくねえよ」
普通の兄ちゃんと言った風体の男が壁によろけるように身を預けながら思わず呟く。言われてみれば心なしか栄養状態の悪そうな感じが見て取れる。怪しまれない程度に着飾った貧困層の男である。
その声が耳に届いたのか、横のショボくれたオッサンが胸ぐらを掴みながら小声で返す。
「諦めて腹括れ。家族が金を受け取っているんだ。逃げたところで皆殺しだ。それに逃げてもそのまま爆殺されるだけだ。もうどうにもなんねえならやるしか無いだろ」
「うう・・・・」
「落ち着け。バレたらそれこそそこでお仕舞いだ。ほら、クスリだ。飲め」
絶望感から男が泣き出すが、通行人から怪しまれないようにキリールから渡された
冷静に見えたオッサンも子供たちを食わせるためのカネを手に入れるために命をかけていた。正直、死にたくはなかったがもうやるしかない。兄ちゃんに言った腹を括れと言う言葉は自分に言い聞かせるものでもあった。
オッサンにしても行こうと思っても震えて一歩が出ない。それはそうだろう本心では死にたく無いのに行かなければならぬのだから。深呼吸とともに気付け薬代わりにMDMAを飲み込む。
(さあ行くか)
「俺は通りに出て右、お前は左だ。後は人混みに紛れて時間の合図が来たら・・・実行だ。わかるな」
「じゃあな、俺が先に行くからな」
「・・・ああ、分かったよ。オッサン・・・」
クスリの影響が出てきて高揚感に包まれると共にオッサンの覚悟が決まった。兄ちゃんから視線を外し、路地から喧騒溢れる通りに出て右に向けて歩き出す。もう誰も止める事が出来ない所まで来ていた。
オッサンが人混みの雑踏に紛れたそんな時、一人の女性とぶつかった。"ごめんなさい"と謝る女性は美しい黒髪に紅いワンピースを着た美人であり、オッサンは足を止めて一瞬見惚れていた。"ああ、娘が大きくなったらこんな感じになるのか? "なんて思いながら改めて歩みを進めようとしたその時、膝から崩れ落ちていた。
「えっ? ・・・」
訳が分からず足元を見た時、自身の胸から何かが生えていた。オッサンが思わず溢した声は声になっていなかった。
そう、オッサンの左胸にはダガーナイフが深々と突き立てられていたのだ。
「ふふっ。本当にごめんなさい」
目の前の美女が晴れやかな笑顔で嬉しそうに呟く声が聞こえてきた。
それが、オッサンが聞いたこの世の最後の感覚だった。
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「こっちは片付いたよ」
紅いワンピースを着て街娘に化たルイスから一つ始末した報告が犯人の顔付きで回ってくる。
「こちらも始末した」
屋上のスナイピングスポットで構えていたサイトーからも報告が入る。オッサンと一緒に居た若い兄ちゃんが路地裏で倒れていた。オッサンが出た後にサイトーに捕捉されていた兄ちゃんは胸部を撃ち抜かれそのまま即死させられる。頭部を撃ち抜くと脳味噌が弾け飛びあからさまな死体と通行人にバレてしまう。胸部であれば直ぐにはわからない。もちろん放置すれば血溜まりが出来るがそこはグリフィンの警備部門の戦術人形たちである。9課の要請で協力し、殺害された犯人達は人知れず運ばれていた。
「お? 早いね。俺もターゲットの確保完了だ。ルイスとサイトーは他のフォローに回れ」
バトーも完了させて残る自爆犯は二人だった。
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ベクターも通行人に紛れる犯人を捕捉していた。身長が低いまだ少年と言っても差し支えない男だった。
遠巻きに観察してチャンスを伺う。・・・すり抜け様に膝蹴りを鳩尾に叩き込み無力化する。・・・つもりだった。
犯人の近くに忍び寄った時に嫌な予感を感じた事から、膝蹴りを中止してすり抜け様に首の後ろに当身を入れて気絶させる。
(モトコに言わせれば、ゴーストの囁き。ってどこかしら)
気絶させた少年を警備員と共に路地裏に運び、爆弾のを改めるが・・・・・
「こ、これは・・・・」
珍しくベクターが驚きを見せていた。残りは一つである。
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「そこまでよ。両手を上げて投降しなさい」
FALが路地に追い詰めた犯人の頭部に、半身の銃のFALをエイミングして投降を促していた。
他の犯人が始末されるところを偶然見られ、最後の犯人はパニックに陥り路地裏へと駆け出していた。それを追ったFALが追いついたところだった。
FALは冷戦時代の傑作バトルライフルである。今の時代のアサルトライフと比較すると大口径で大型であるが、その性能の良さから多くの国や紛争で使用されていた。
そのような銃であることから狙われた者から見れば非常に脅迫感を感じる。それが犯罪組織に買われただけの一般人なら尚更だろう。
手を胸の前で組む犯人は20才前後の垢抜けていない女性だった。
「投降しないなら撃つ」
FALの冷徹な言葉に、女はただ震えていることから怯えていると見て取れた。銃を突きつけられた緊張からか手を上げられないようだ。
再度警告を行い、FALの右手人差し指は躊躇なくトリガーにかかるが・・・・
「FAL、撃つな。彼女に抵抗の意志はない。俺に任せろ」
駆けつけたトグサの言葉でFALの人差し指がトリガーから離れる。
「落ち着け。大丈夫だ。君たちには何もしない」
安心させるために丁寧な対応に笑顔を作りながらゆっくり女に近づくトグサ。構えていた拳銃も女から射線を外している。
その行動を静観していたFALだったが、しかし突然顔色を変えるとトグサを突き飛ばし素早く銃からククリナイフに持ち替えて女の頭を横凪に鋭く斬りつけた。
「何をするFAL! 彼女に危険は無かった。殺す必要は無かった筈だ」
女は血を撒き散らし仰向けに倒れている。それとFALを交互に見ながらトグサがFALへと抗議の声を上げる。
FALはトグサの抗議を無視するように倒れた女に近づく。
「ベクターから連絡が来ているでしょう。彼女達、身体に爆弾を仕込まれている」
えっ? とトグサが映像通信を確認する。ちょうど投降を促していたタイミングで確認できていなかった。生身の人間であれば難しいタイミングだったかもしれないが、電脳化していたトグサならマルチタスクでの確認も出来たはずではあった。
「・・・・これは・・・」
「そう・・・そして起爆装置は・・・口の中よ」
FALは女の口の中に手を突っ込み、起爆装置を引き抜き配線を引きちぎる。
「これでとりあえずは大丈夫。彼女を病院に回しなさい。体内に爆弾があるから慎重にね」
周囲に待機していた警備部門の戦術人形に伝えて女を運ばせるFAL。
「病院? 彼女は死んだんじゃ無いのか?」
「殺してはいないわ。起爆されないように顎の左右の咬筋を断ち切っただけよ」
サラッと言うが、ほっぺを深く切り裂き顎を動かす筋肉を切断したと言うことだ。斬られた女にしてみればたまったものではないだろう。
「そうか・・・FAL、助かったよ。ありがとう」
「私を失望させないでね。と、言いたいところだけど極力殺さないその姿勢も悪くは無いわね」
「私も学ばせてもらうわ」
担架を見送りトグサに背を向ける彼女はもしかして照れているのかもしれない。そんなふうに思いながらトグサは彼女に改めて伝えた。
「FALこれからは相棒としてよろしく頼む」
「ふっ、よろしくね。あなたのセンスを直してあげるわ」
振り向き笑顔の返事はいつものFALだった。
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というのが、冒頭のテロリストの男ことキリールに想定の範囲外の事態が起きるまでの事情であった。
しかし、キリールに起きた想定外はそれだけではなかった。そう、素子にすでに補足されていたことだった。
「クソっ」
視界の端に居るはずのない少女を捉えたキリールは右手で拳銃を抜き、素早く発砲した。
・・・発砲したがこれは完全に致命的な行動だった。彼がやるべきだったのは自爆犯達を遠隔により至急爆破する事だった。それならば彼にもワンチャンスあっただろう。
だが、彼は残念ながら拳銃を抜いて闘う事を選択してしまったのだ。
キリールが拳銃をエイミングすると同時に、素子は飛び込むような前宙で射撃を躱し距離を縮めると同時に左足のかかと落としを見舞う。
素子の左踵がキリールの右肩に叩き込まれる。「バキッ」という音が左踵を通して聴覚デバイスに伝わってくる。そう、キリールの右鎖骨が粉砕された音だった。
「ぐあっ・・・クソ」
二、三歩よろけるように後ろに下がったキリールは破壊され動かすことが出来なくなった右手による攻撃は諦め、左手でリモコン起爆装置を取り出し、手動による爆破を狙う。
しかし、素子に接近された今、その目的が叶う可能性は1%たりとも残されてなど居なかった。
リモコンスイッチを取り出した左前腕を素子に掴まれ、その握力を持って骨を粉砕される。と同時に落としたリモコンを空中で素子にキャッチされてしまう。キャッチした素子は片手で器用にリモコンを素早く分解し破壊する。これでテロのリスクはほぼ無くなる。
男の取れる攻撃的な手は全て叩き潰されてしまっていた。後は無事な脚を使って逃げる事だけだが、身体を破壊されたダメージからそれも無理だった。まあ、仮に全力を出せたとしても素子に捕捉された状態で逃げ切るなど不可能だろう。
痛みから逃げる事もままならず膝をつく体勢のキリールが苦悶の表情を浮かべながら素子を睨む。
「貴様はグリフィンの人形か? こんな世の中ですら人の生き血を啜る貴様らクズに正義はない。粛清あるのみ」
「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。それも嫌なら・・・」
素子は抜いた拳銃をキリールに突き付けるが、どうやらこれ以上言うこともないらしく観念したようだ。
後頭部に拳銃のグリップを当てて気絶させる。全てのミッションが完了した瞬間だった。
さあ、残るは後始末。素子がそんな事を考えていた時に、背後に気配を感じた。
「誰だ!」
素早く振り向くと同時に拳銃を向けていた。
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「流石、前評判通りの実力ね」
「ミスターパーフェクトの部隊を退けたって聞いていたけど、本当にその通りのようね」
自分とキリールしか居なかったはずの屋上に突如現れた少女。
黒のパーカー付きジャケットに黒いスカート、黒いタイツに黒いショートブーツ。その服の所々にカナリアイエローのラインとかワンポイントが入っている。アッシュグレーの若干クセのあるロングヘアーを左サイドテールに纏めているが、一番の特徴は左の瞼におでこから頬へ通る大きな切り傷。
敵対するつもりが無いのか、自身の武器だろうUMPサブマシンガンのストックを下にして右手の人差し指の上に立ててバランスゲームをして遊んでいる。
間抜けな姿に見えるが、私は騙されない。全く隙はないうえに銃も全く揺れていない。直ぐに構え直して撃つことは可能なのだろう。
とは言ったものの敵対する態度を見せていない以上、こちらも銃を下ろす。
「何か用かしら」
「間に合わない、と思ってね。こっちで片付ける準備をしていた。ってだけよ」
「それがどうして。いい働きね」
少女はニッコリ笑顔で頷いている。
「・・・・・」
「なるほど。それで私たちは合格なのかしら?」
「ん? ・・・テストか何かだと思っているのだったら違うわ」
「グリフィン情報部の尻拭いで来ただけよ」
「そしたら誰かさん達の完璧な仕事を見れて感激した。ってところかしら」
素子はこの任務がグリフィンによる実力確認テストかなんかだと認識して謎の少女に問うがどうやらそうでは無いらしい。
「まあ、でもせっかく来たからそこの虫ケラは回収して行くわね」
「それと生きて回収された自爆犯達は多分治療されると思うわ。テロリストを叩くプロパガンダに使われるでしょうね」
銃を戻してキリールに歩み寄る少女。横たわるキリールの襟首を掴み猿轡を取り付けてズリズリ引きずって行く。
当然、痛みで目を覚まして抗議のうめき声をあげるが・・・・
歩みを止めて髪の毛を掴み顔を引き起こして言葉をぶつける。
「黙れ虫ケラ。生きて娑婆に出れると思うなよ。ふふっ、ここで殺された方が幸せだったかもね〜」
寒気がするほど冷徹な声の後に、明るく絶望を告げる彼女。素子は彼女を理解できないでいたが・・・
男を引きずっていた彼女がおもむろに歩みを止めて振り返る。
「あ、そうだ。自己紹介をわすれてたわね。私はUMP45よ。よろしくね〜。また何処かで会えると思うわ。
可愛らしく間伸びした話し方をする彼女はまた歩みを進めて消えていった。
どうやらUMP45という戦術人形は只者ではない。と言う事だけは理解できた。
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「今回は時間と情報がない中、良くやってくれた。クルーガー社長からも同様に強く礼を言ってもらえた」
「今後も、ハードな任務が増えるだろうがよろしく頼む」
基地に帰ってからのミーティングの締めに荒巻課長から褒め言葉が伝えられた。今回の実績からこれからはより困難な任務も間違いなく増えるだろうとの事だったが、結果、本来の9課らしい仕事に戻っただけとも言える。
「少佐、仕事明けにたまには一杯どうだ?」
ミーティングの解散と共にバトーが素子に声をかける。
二人で飲むのはどうか? と、仲の良いサラリーマンが会社帰りに愚痴や世間話をしながら飲もう的なノリではあるが、別の淡い期待も込められてたりする。しかし一〇〇式ベースの義体ではまるっきり高校生くらいの外見であり、何も知らない者が見れば全くけしからん状況にしか見えないだろう。
「あらごめんなさい。今日は女子会の約束なの」
「あら〜そりゃしょうがないか・・・」
先約があるらしくあっさり断られ、第一部隊の面々と出て行ってしまう。
「残念だなぁ、おい」
「じゃあ、男子会をやるか?」
「俺も付き合いますよ」
「あ、ああ・・・そうだな」
残念なバトーを見て、イシカワ、サイトー、トグサに慰められがてら飲みに誘われる。
まあ、基地内で飲める場所なんて少ないため、会場は一緒だったりするわけだが。
男組も始めながら雑談に花が咲く。
「まあ、少佐は諦めろ。セカンダリーレベルに密会用の部屋が造られていたからな。ベクターとお楽しみみたいだぞ」
「しかも、すげえ防壁アレイで守られてるからな。覗くのは命懸けだぞ」
そう言ってイシカワが笑いながら秘密部屋を共有して可視化する。
「ほーう、これが。ちっと覗いてみるか?」
「やーめとけ、バトーお前じゃ無理だ。脳を焼かれるぞ。それに仮に覗けたとしてもリアルに少佐に殺されるぞ」
「それもそうか」
男組も命懸けになる事を理解してこれ以上は断念となった。
男女共に慰労会的なノリで数時間で解散となる。
ハードな1日ではあったが、素子達が異世界に飛ばされてやっと9課らしい日常に近づいてきた。そんな感じを思わせる日だった。
キリールさんの冒頭のセリフは、SAC第6話の茶番劇団の同窓会でSPが暴走した時のセリフをお借りしています。
爆弾テロは2ndGIGの9話からシチュエーションをお借りしています。女の子を撃ったところはFALに変えてですね。
素子のSAC1話のセリフはシチュエーション含めてお借りしていますね。「世の中に〜」のセリフはあのシチュエーションが完成形だと思うので崩せなかった。文才がなくさっぱりした表現になってしまいましたが。
ここからはまとめに進んで行きたいと思っています。まとまる気が全くしませんが。(笑)