Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
ちょっと切りどころが悪く時間の割に短めになりました。
やはりあっち方面と絡めたいよね。と言うことで導入の導入会みたいになってます。
よろしくお願いします。
「ガラテア義肢装具研究所・・・?」
誰かが呟く声が聞こえたが、疑問形に語尾が上がっている。つまり、なんでその固有名詞が出てきたのか分からない。と言うことなのだろう。
「研究所?」
「少佐・・・研究所・・・ですよね。特に怪しさは感じませんが?」
バトーとトグサが誰かの呟きに続き疑問を口にする。トグサは自身なりの疑問をぶつける。
少佐は自身の口で述べた。怪しい転売先は無かったと。そして今提示された気になる先も特に怪しさは感じない。少佐の言う通りだった。なのに気になると言う少佐。正直、この場にいる誰もが理解できないでいた。いや、一人、荒巻課長は何か理解している様子ではあったが。
「そうね。私も違和感は感じないわね」
そう言いながらリストを見ていた57がベクターと替わり大型モニターを操作する。
一度リストが消されてwebページが映し出された。ガラテアグループのメインページだった。
ガラテアグループ。それはこの滅びゆく世界で人々の希望や羨望を集める大企業である。
医薬品を主品目としつつ医療器具や病院経営などなど多岐に渡る。この世界の希望の灯火の一つであり、なんら後ろめたさなど無い真っ当な企業。との評価だ。まあ、大企業である以上多少なり法に触れることや不良社員の悪事などもあるだろうが、その程度のレベルであり企業に対する評価が変わるものでもない。
誰がどう考えてもこの世界のに必要な最優良企業と言えるだろう。
横の別のモニターにはニュース映像の動画が映し出されている。小柄で可愛らしい女性が丁寧にガラテアグループのリポートをしている。そのシッカリした報道姿勢からその彼女が優秀なジャーナリストなのだろう事が分かる。ニュースで取り上げられて多くの人の耳目を集める企業である事を如実に表していた。
57はそんなガラテアグループのメインページからグループ内の医療関係の事業部門のページへ移動して、さらに医療事業の拠点情報のページへ進む。
大型モニターには関連事業所や子会社などの住所や営業品目、住所などか出ていた。このご時世、自社の住所を載せるなど危険な行為であるが、大企業なりの自信や信念などが感じられるページである。
そのリストの中に、ガラテア義肢装具研究所も記載されていた。
「住所、連絡先共にさっきのベクターのリストと同じだわ」
「つまり鉄血の部品を買ったのは正真正銘ガラテアグループの研究所、と言うことになるわね」
57は間違いなくガラテアグループである事を付け加え、モトコの方に視線を向ける。"有名大企業の何処が怪しいのか? "そう言いたいようだ。皆も57同様に素子へと視線を集めている。
「ああ・・・そーいう話し?」
何処からか女の声が聞こえて、モニターが一方的に切り替わる。
モニターに映し出されたのは16labの主席研究員のペルシカリアだった。その言葉から画面に映し出される前から話を聞いていたらしい事が分かった。
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「ペルシカ、来たわね。遅いわよ」
「あーごめんごめん」
素子の苦情にあくびしながら全く反省の態度なく謝罪の言葉を述べるペルシカ。その後ろにパズとボーマも控えている。9課の会議のため二人も呼ばれていた。しかし、二人の顔には隈が出来ており、相当の疲労が溜まっている様子だった。ちょっと休暇を与えても良いかも、と素子の心に同情が浮かぶがそれもすぐに消え去る。9課はそんなに甘いわけがないということである。
「で、私のコメントが欲しいお題は"研究所が鉄血の部品を買うのは不自然なのか? "かしら?」
コーヒーと言い張る超甘い泥水が入ったマグカップを持ち、ニンマリ顔のペルシカ。いつも通りの彼女である。
「言ったかもしれないけど人形と装具は似て非なるもの。けど構造や材質に限って言えばほぼ同じとも言える」
「そうね。だって私たち戦術人形は人間と同じ外観なんだから。少なくとも四肢の構造はほぼ同じ。よね」
「FAL、その通りよ。構造研究で人形の部品を手に入れる行為は一般的ね」
「・・・・・」
「では、不自然では無いのだな」
ペルシカの言葉にFALとNTW-20が返す。答えが出たように思えるが・・・・
「うーん・・・大筋はそうなんだけど・・・ね」
「ただ、R-15基地の転売品はリッパー、べスピドにイェーガーの部品でしょ? 今更ガラテアに必要とも思えない旧型なのよね」
「ガラテアグループが販売している装具の性能はそれらの世代の古い戦術人形の部品より遥かに洗練されているからね」
「では、不自然なところがある?」
「そうね。目的がね、ないわよね」
「でも、気まぐれな研究者もいるからね~。思い付きで買った可能性もゼロではないかな」
「怪しさの確率はフィフティーフィフティーってとこかしら?」
ルイスの問いかけに適当に返すペルシカだが、気まぐれな研究者も居るのくだりで横のパズとボーマがペルシカを睨んで居た。「お前が言うか?」との思いなのだろう。
「私はモトコを信じるよ。モトコが・・・ゴーストが囁いたなら私は信じる」
「人形の私には分からないけど・・・・モトコが信じるなら・・・」
ベクターが真っ直ぐな眼で素子を見て信じると告げた後に、下に視線を移して呟く。
ベクターなりに何かを感じているのだろう。素子達と出会う前の彼女とは多少なり変わっているのだが、本人にはその認識はまだ無かった。ベクターが不明確な事に乗るなんて以前の彼女を知るものには信じられないだろう。
そんな皆のやりとりを見て荒巻課長が裁定を下す。
「うむ。では9課として正式にガラテア義肢装具研究所への調査を行うこととする」
「少佐とベクターによる潜入調査とする。イシカワ、バトー、サイトーにトグサはフォローする様に。調査計画は少佐に任せる」
「では・・・私とベクターで現地潜入により施設の調査を行う。イシカワと57は電子戦指揮車により中継指揮。バトーとルイス、サイトーとNTW-20それにトグサとFALは不測の事態に備えて後方待機」
「以上。作戦は明後日の午前0時開始だ」
「僕の方でも訓練を兼ねて予備部隊をだすよ。夜間作戦なので第五部隊のグローザ達を派遣する」
そんなこんなで打ち合わせ終了後は各チーム毎に散って準備を始める。
何にしても、調査は実施することとなったのだった。
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「おい。真面目にやれよ」
「え~、だってなにもやること無いわよ、パパ」
椅子に座り電子戦装置の前の作業台の上に脚を放り出してヤル気無しの57をどやしつけるイシカワだが、まあ気持ちは分からんでもない。
しかし、ミニスカートの少女が態度の悪いオヤジよろしく机に脚を放り出す姿はどうなのか? ちょっと頑張れば、いや頑張らなくても下着が見える状態であり、逆にチラリズムでエロさが跳ね上がっている。
「お前なあ・・・まあいいや」
「けど、少佐の勘は侮るな! 何かあると思っとけよ」
「ふ~ん・・・パパはモトコの予想を信じてるんだ」
「少佐とは付き合いが長いからな。そのあたりの凄さは分かっているつもりだ」
ニヤケながら試すように問いかける57に、真顔で返すイシカワ。9課のメンバーは素子の能力を信じているが、57はまだ信じきれていないようだった。
「と言ってもね、もう入ってから10分は経つけど、特に代わり映え無いわね」
「今回はからぶりかしらね・・・・え?」
57がふとなんの気無しに見た電子戦装置のモニターだったが、見慣れぬ警告が出ていた。
一瞬なんだか分からず口から漏れた言葉は気の抜けたような、え? と言う声だけだった。
"
通常ならアラーム音と共に現れるメッセージだがアラームすら鳴っていない。
「クソッタレ。ハックされたか! やられた!」
「ちっ! 無線ネットワークがダウンしている。不味いぞ」
イシカワが慌ててキーボード端末を操作するが全く事態が好転する様子もない。
どうやらかなり深刻な状況である事が素人にも分かる。想定外の先制攻撃だった。
「私がセカンダリー空間に行って片付けてくるわ!」
その如何ともしがたい状況を見た57は業を煮やし有線ケーブルを後ろ首に挿そうとする。
直接セカンダリー空間に入り込みハッキングの大元を叩き潰すつもりだった。
しかし、57がケーブルを挿した瞬間にイシカワに突き飛ばされ、ケーブルが抜け落ちる。
それと同時に細い通信ケーブルに大電流が流れ、ケーブルの被覆が溶けてズタズタに焼け落ちる。
「キャァっ」と思わず悲鳴が漏れるが、瞬時に抜いたケーブルから飛んだスパークが57の首の端子に飛んでいた。
「57! 大丈夫か!?」
イシカワが忙しなく端末を操作しながら、壁に吹き飛ばされたまま地面に座り込む57に声を掛ける。
57がセカンダリーネットワークにダイブした瞬間に強烈な攻撃を受けていた。イシカワの咄嗟の判断でなんとかダウンは免れた形だった。
「ダイジョーブ・・・と言いたいところだけど、ダメージが大きくてメンタルの維持で精一杯ね・・・」
「パパありがと。パパが咄嗟に止めてくれなかったら脳を焼かれてたわ・・・」
「あんなに強度の高い攻性防壁を入り口に偽装して張るなんて・・・」
「ああ。電子戦型の戦術人形を誘い込んで殺すトラップだ。痺れを切らして飛び込みたくなるように仕向けてやがった」
「お前は少し休んでいろ」
重傷の57を休ませて、イシカワが作業を続けるが、
「・・・・クソっ。ダメだ制御を取られてリブートも受け付けねえ」
「不味いぞ、潜入した少佐達に状況が伝えられない。このままだと孤立しちまう」
突然諦めたように立ち上がったイシカワが入り口の配電盤を開けてメインブレーカーを落とした。
"ヒュィーン"とファンか何かが止まる余韻の音と共に電子戦指揮車の内部が真っ暗になる。
しばし時間を置いてブレーカーを上げると再び電気がつくと共に電子戦装置が立ち上がる。
システムのアップ中にすかさず煙草を咥えて火をつける。
「よし! 制御を取り戻した。・・・が、機器は侵入者にやられてズタボロだな」
「もう、パパは乱暴ね」
「バ〜カ、100年前は白黒のテレビを叩いて直してたんだよ。こんくらい優しいもんだ」
「何よそれ」
イシカワの強引な話を聞いて思わず苦笑してしまう57だった。
「通信は・・・ギリギリ可能だが・・・少佐は・・・相変わらず
不味いぞ。これは完全な罠だ。直ぐに撤退するのが最良だが上役の少佐に連絡が取れないと作戦変更も撤退も出来ない。
先ずはフォロー班に伝えて少佐の援護と撤退支援をすべきだ。
「バトー班、サイトー班、トグサ班、聞こえるか。中継指揮組がハッキングでやられた」
「少佐と連絡が不能だ。撤退支援に移行・・・・あ? なに?」
「マジかよ・・・」
バトー達の返答を聞いたイシカワは思わず呟き、咥えていた煙草が床へポトリと落ちていた。