Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
なかなか筆が進まず、書いていたらダラダラとした回になってしまった気がします。
お楽しみ頂けたら幸いです。
「お父様はついに・・・ついに完成したのね」
素子とベクターの前にいる黒髪の少女、苦痛に顔を歪めながらも喜びが顔に現れていた。
彼女には名前などなかった。ただ
速成のクローン人間に機械化改造を施し、電子的なウイルスを用いた徹底的な精神的な強化、それらを経て作られるが、彼女は初期の機械化改造に適応できなかった存在だった。だからこそ本格的な精神的強化を免れたのは運が良かったのかもしれない。まあ、リサイクル利用的な改造テストに使われて
彼女程度の底辺の者に『お父様』の目的など全く分かってはいなかった。ただ一緒に居た同じ顔をした姉達が出て行ったきり戻らない。そして新しい妹が追加されていく。一方通行で消費され何かに生まれ変わる事だけは知らされていた。恐らく何かを完成させたいのだろう事だけは薄々感じていた。
だからこそ素子に向けて出た言葉だった。
「そうよ。お父様は成功したわ。・・・苦しむ娘ももう居なくなるわ・・・」
「良かった・・・お父様がお望みする世界に近づくことが出来て・・・」
(ちょっと! モトコは何のことだか分かっていの??)
素子がサラリと謎の少女に答えるが、驚いたのはベクターだった。この謎の状況について行けていないのは自分だけなのか? と焦る。
少女に伝わらないようにセカンダリーレベルで話しかけていた。
(ああ、彼女の反応と状況から推察しただけだ)
(人体への義体化改造は確立されていないとペルシカが言っていた。この状況から考えて可能な限り情報を抜き取りたい)
(彼女を連れて帰るぞ)
(は!? 冗談でしょ??)
(本気よ。貴女となら出来るわよ)
(・・・モトコがリーダーだからやるならやるよ。けど戦術シミュレーションの結果はこのまま退避が優勢。私達が殺られたら持ち帰れる物はゼロ。ロストせずに現在の情報を持って帰るだけでも価値があるとは思うよ)
(ふふっ。困難な任務も完遂するのが9課よ。なにがなんでも連れて帰る)
(了解。その命令だけでいいよ)
そう言うと、ベクターは自身の半身の"KRISS Vector"のマガジンチェックなどを行いながら部屋と廊下を繋ぐ扉方へと歩いていく。
脱出前に警備兵が回ってこないか警戒してくれるようだ。
まあ、「用が済んだならさっさと帰るぞ」とのアピールでもあるのだろう。
素子がそんなベクターを目で見送っていると、同じく見送っていた少女が怪訝そうな顔で話しかけてきた。
「ところであれは・・・I.O.P.の
「ああ、手伝いに使っている」
サラッと小声で返しておくがベクターが近くに居なくて良かった。こんなやりとりを聞かれていたらヘソ曲げていたに違いない。
しかし、このやり取りだけでも分かる情報がある。ベクターを見てガラクタと評したその態度。I.O.P.やPMCに対して敵対的かあるいは自身の組織外に対して全て敵対的か、と考えられる。自身の保護者をお父様と表現した事から特定個人の私的組織、そして公表されていない組織である事から後者の組織外に対して敵対的、の可能性大か。テロ組織や秘密結社の類だろうが、その解明は連れて帰ってからか。
「そう・・・さすが・・・お姉様・・です・・・・・」
返答した少女にまた苦痛が襲ってきたようでそのまま気絶してしまった。
連れ出すには好都合ではあるが、状態はかなり悪そうだ。このままでは数日内に命を落とすのではないか? ここの連中は彼女に何ら手当をするつもりは無いらしい。もう用済みという事だろう。
であれば、連れ出して治療と情報収集する。それが私たちとこの娘のためになるだろう。
気絶したのをこれ幸いとして素子は少女を担ぎ上げたそんな時・・・
「モトコっ! ヤバい。警備兵達が集まってきている。これはバレたみたい」
「数が多すぎるよ。やはりその子を放棄して元の道を帰ることを勧める」
ドアの脇に張り付きドアの向こうの様子を伺っているベクターだが、クールな彼女としては珍しく焦っているようだ。
「あら? 9課ならこれくらいよくあることよ」
少女を担いだまま研究施設の端末PCへと歩みを進めながらベクターに返事を返す素子。
PCの前に立つと、首の後ろから接続コードを引き出しPCのポートに接続・・・・・
素子は少し考えて懐からアクセサリーのような物を取り出して首裏の外部接続コネクターに取り付ける。そしてそのアクセサリーからコードを伸ばしてPCに接続する。
素子が接続コードを介して秘密研究所のシステムにダイブするが、ダイブと同時に首裏のアクセサリーに激しいスパークが走り焼け落ちた。
「モトコっ! 大丈夫か!?」
再び焦るベクターだがそれもそうだろう。脳を焼かれたら一撃で即死だ。明らかにモトコに生じた事象は即死攻撃だったからだ。
「ベクター、大丈夫よ。身代わり防壁がやられただけよ」
振り返って淡々と答える素子だが、この世界で身代わり防壁を作ったペルシカを思い浮かべていた。
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「ほう! こんな考えの防御壁を用いているのか。おもしろいね」
ペルシカが聞きたがっていた異世界技術を紹介する会の一幕の話である。
素子が提示した前の世界の身代わり防壁の仕様を見てペルシカが興奮していた。
「なるほどなるほど。これなら自身と完全に同じ仕様のダミーを先行させて、そのダミーを自爆仕様にすれば行けるわね」
「やっぱり異世界の技術はインスピレーションの塊ね!」
「あら、あっちでは普通の技術だったけど?」
「ふふっ。挑発には乗らないわよ。けど、すぐに作ってあげるわよ!」
そう言ってすぐに実験検証を終わらせて数セットの試作をペルシカは作り上げていた。
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(ふふっ。ペルシカ、いい仕事するわね。この場にいたらドヤ顔していたかしらね?)
(しかし・・・敵の防壁は単調ね。恐らく本当の電子戦をまだ理解できていない。これなら行ける)
侵入と同時に強力な攻性防壁による攻撃を受けるが身代わり防壁でいなしてお終い。その後は特に無し。
ネットワークへの各種階層への侵入を進めると、社員や研究に関する情報の格納庫などが多数並んでいる。しかし、素子は全て無視して先へと進む。
通常あり得ないだろう。こんなデータベースの階層構築など。どう考えても見え見えの罠としか思えない。
サクッと施設のセキュリティと管理を司るシステムを探し出し『枝つけ』を完了させる。
ネットワークに侵入して30秒程度の出来事である。
「で? モトコ、どうする?」
セカンダリーレベルから戻って来たところでベクターが問いかけてくる。正直、まともにやって少女をつれたまま無事脱出するのは不可能に近い。
「施設のセキュリティは掌握したわ。まずはマップを共有する」
近距離通信で共有された施設マップには黄色く光る点が記されている。どうやら脱出用のエレベーターのようだ。
しかしこの部屋から直接の一本道であり、部屋の前の警備兵たちを躱していくことなど出来ない。
「出口は分かったけど、コイツらはどうするのよ?」
うんざりした顔をしながら親指で後方を指差すベクター、表の連中をどう始末するのか? さっさと教えろ! とアピールしている。
「もう、せっかちね。それは・・・・・」
素子がベクターに作戦を伝え、いよいよ脱出を開始することとなる。
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「・・・・準備オッケーよ」
「了解。10秒後に開始する」
ベクターの声に素子が開始時間を答える。と同時にベクターは扉の前にスタスタと歩いて行き右太ももを上げてポーズをとり準備をする。
「・・・3 ,2 ,1・・GO!」
"ドガンっ"
"グチャ"
素子がピッタリ10秒後、ラスト3秒のカウントダウンを口にする。それと同時にベクターが扉へ渾身の足刀蹴りを叩き込んだ。
軽合金製とはいえ十分分厚くセキュリティ性の高い横開きの扉がくの字になって廊下へ吹き飛ぶ。
ちょうど廊下に集まった警備兵、ストレリツィ達の数名が運悪く扉を開こうとしていたタイミングだった。彼らは突然飛んできた扉を避けられわけもなくそのまま吹き飛ばされ扉と壁にサンドイッチにされてクチャりと潰れ即死させられる。
ベクターの蹴りと同時に、音もなく部屋と廊下の電気が落とされ暗闇に包まれた。
他のストレリツィ達は全く想定外の事態に全く対応できなかった。
「モトコ! 行くよ」
そう言うとベクターは破壊された扉から飛び出して、居並ぶストレリツィを躱しながらエレベーターに向かい走り出す。
突然の暗闇と動き出した事態に全く対応できないストレリツィ達、真っ暗闇のなかほぼ棒立ちだが一部の優秀な兵は反応を示す。
だが、それも無駄に終わる。
反応を示す個体は足を止めずに先頭のベクターが射撃を加える。サイレンサー付きのKRISS Vectorから丁寧なダブルタップによるフルメタルジャケットの.45ACP弾が頭部に綺麗に着弾していく。近距離からの射撃によりストレリツィのバイザーは容易く破壊され彼らの頭部をメチャクチャにしていく。戦闘を主に想定していなかった為ホローポイント弾を持ってこなかったのが幸いした。
「一瞬で殺してあげるから何の痛みも感じないよ」
ストレリツィの集団を抜けたあたりでベクターは腰に下げた
投げられたグレネードードは綺麗な放物線を描き破壊された扉の前あたり、ちょうどストレリツィ達のど真ん中に落下する。カンッと着地した衝撃音とほぼ同時に爆発して紅蓮の炎を撒き散らす。集まっていたストレリツィ達はなす術もなく炎に巻かれ次々と倒れていく。何一つ仕事をこなす間もなく強力な兵士たちは斃れてしまっていた。
紅蓮の炎が照らし出した廊下には焼かれたストレリツィと戸惑って動きを止めたストレリツィのみ。素子とベクターの姿はどこにも無かった。
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ストレリツィ部隊の隊長は混乱していた。
開けようとしていきなり飛んできた扉。訳がわからない。横開きの扉がなぜ突然?
仲間が数名飛んできた扉にやられ他に巻き込まれた数名もダメージを受けている。しかし扉が開いたなら好都合と思う・・・が、間も無く、周囲は突然真っ暗闇に包まれる。
集まった仲間達も混乱しているし、同志撃ちの危険が生じる為迂闊に発砲出来ない。まあ、10秒も経たずに闇に慣れるのでこれは問題は無い。
と思ったら発砲音が聞こえ、仲間の断末魔が聞こえてくる。音もそれ程近くは無いようだ。
(クソッ。どうなっている)
「・・・・・・・」(落ち着け、間も無く闇に慣れる。慣れてから数で押し切るぞ)
そう思った時だった。何か金属製のものを落としたような音と共に爆発的な炎が周囲にまき散らされる。
俺は火だるまになった。本能的に転がって消そうとするが全く消えない。化学的な焼夷燃料の為なのだろうがその理由など気にする時間などなかった。
周りの仲間達と同じようにもがくしか無かった。廊下の消火用のスプリンクラーも作動しない。巻き込まれた仲間と共に廊下に斃れ意識を消失するが、最後の瞬間まで一連の攻撃者を認識する事は出来なかった。
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「モトコ、見えたよ」
先頭を走るベクターの眼に、廊下の先のエレベーターが見えた。丁寧に扉が開いている。
「ああ、突っ込むぞ」
ベクターを先頭に少女を担いでいる素子共々、ベースボールのスライディングの様にエレベーターに飛び込む。
と同時に自動的に一階行きのランプが点る。素子がシステムを完全に掌握しているため、セカンダリーレベル経由でエレベーターを操っている。
「・・・・・」
ベクターはまた一つ腰のグレネードを手に取って口でピンを抜き、またどうでも良さげに後方に放り投げた。
ちょうど閉まり始めた扉の隙間から廊下に転がり、扉が閉まった頃に廊下に紅蓮の炎が迸る。
追手のストレリツィ達が追跡できぬようにする嫌がらせだったが、素子達を頑張って追って来ていた優秀なストレリツィが炎に巻かれてしまうことになる。
エレベーターの扉が閉まった外の事など、素子とベクターにはどうでもいい事ではあった。
「で、モトコ、どうする?」
「まだイシカワと連絡が取れない。施設から脱出して退却ポイントへ移動する」
「なんとか乗り物を確保したいわね」
"チーン"
ちょっとしたやりとりの間にエレベーターが一階到着する。
スーッとひらく扉の脇に隠れて素早く廊下のクリアリングをするが、例の連中は居ないようだった。
「ベクター、行くぞ」
「了解」
ベクターと素子が駆け出していくが、いつか角を曲がったところで、二人の人間の警備員と鉢合わせる。
「おい、なんだお前達!」
警備員達にしてみれば本来いるはずのない人間(人形)が二人いるのだ。一瞬面食らうがすぐに対応に移る。
警棒を抜き素子達に問いただすが素子達は無視してダッシュで脇を抜けて走り去る。
「お、おい! まて!! ・・・・え? な、なんだ?」
逃げ去る素子達を追いかけようとしたところで、何処からか謎の白い集団が現れる。
白い集団は足を止めて、警備員達に躊躇なくライフルを向ける。
「なんだ? ・・・おい! 銃を捨てろ」
流石に銃を向けられ警備員達も焦る。全く手慣れていない手つきで腰の拳銃を抜こうとした。ライフル相手に拳銃などさして意味はないだろう。しかし彼らにはそれが最大の武器なのだから致し方なかっただろう。だが拳銃を抜くことすら叶わず白い集団からビームライフルを乱射される。
複数の高エネルギーのビームを受けた警備員達はその身を焼かれ灰にされてしまう。明らかに人体に対してはオーバーキルな兵器である。
「あいつら・・・仲間じゃないのか?」
後方の惨事を察して考えが思わず口をつく素子。
「行くよ」
ベクターは走りながら建物正面玄関の立派なガラスの自動ドアにサブマシンガンを乱射して粉々に破壊する。
"ガシャーン"とけたたましい音が鳴り響きガラスが砕け落ちるが構っていられない。どうせ静かに近づいてもドアが開く訳がないのだから。
入り口受付の夜間警備員も突然目の前で行われた狼藉には、頭を抱えて床に伏せることしかできなかった。
表に出た素子は、ハッキングしていた建物のコントロールプログラムを通して防犯シャッター、防火扉、消火装置などのあらゆる機器を作動させて兵士たちの動きを阻害させる。もちろんプログラムから抜ける時にそのアクセスコードを無茶苦茶に書き換える事も忘れない。
これで僅かな時間は稼げるだろう。
素子がハラスメントを行なっている隙にベクターは駐輪場に掛けより、バイクを吟味する。
「JAPAN製の内燃機式のモタード車、電子キー式だし丁度いいわね」
傷は多いが綺麗に手入れされた緑色のバイクに近づき手をかざす。
ベクターはバイクの電子キーをハックして何事も無かったようにエンジンを掛ける。
今はなき日本国の年代物バイクの旧式のセキュリティくらいならベクターでも余裕でハック可能である。
すぐに跨りアクセルターンで向きを変えてモトコの下に向かう。自分の手足のように使うその運転技能は見事な物である。
「モトコ! 乗って!」
ベクターの掛け声にモトコがタンデムシートに乗り込むが、気絶した少女を抱えている為、リアサスペンションがずっしり沈み込む。まあ変則的な三人乗りなので致し方なし。
モトコが乗り込むと同時にベクターはアクセル全開で出発する。リアヘビーな車体が軽くフロントホイールを浮かしウイーリー状態で走行し敷地のゲートポールをへし折りながら表通りに飛び出してあっという間にその姿を消していった。
「少佐、聞こえますか? 少佐」
「イシカワか。どうした?」
「どこからともなく謎の白い兵士が現れ、街中で戦闘が発生しています」
「展開中の各部隊も応戦中で57が重傷。街のグリフィンの警備部隊も出ていることからこの街の指揮官にも情報が上がっている模様」
「なに!?」
「・・・・急ぎ撤退するぞ。Cポイントに各自集合しろ」
「了解」
Cポイント・・・作戦前に取り決めた緊急時の撤退ポイントだ。そこまで状況が悪いとの判断か。
イシカワは改めて気を引き締めて各部隊に伝えていった。
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「分かったわ、イシカワさん。Cポイントに撤退ね」
唯一作戦に参加していたコータ指揮官の第五部隊長のグローザが丁寧に返事を返す。グローザは凛とした雰囲気を持ちまろやかかつ掴みどころのないコミュニケーションが特徴的だ。まさにできる女を体現したような人形である。
第五部隊はバックアップ任務ではあったが、街中に出現したストレリツィ達の排除と住民の避難支援を行っていた。
「えー撤退ですか? やっとアタシの出番なのに」
「ドリルの言うとおりだな。面倒くさいから全部やっつけて帰ろう」
「どうでもいいけど、ドリルって言うな!」
最初に不満を漏らしたのがSMGのPP-90だ。グレーの髪に縦巻きのツインテールに赤い瞳の活発な女の子と言ったタイプである。縦巻きヘアーをドリルと呼ばれよくイジられている。本人は言うほど怒ってないらしい。
ドリルと揶揄したのは同じくSMGのPP-19。グレーのボブカットのしっかりした印象の女性だが、堪え性がなく突っ込みがちなのが短所だったりする。黒いハイレグレオタードにニーハイソックス、丈がかなり短い戦闘用ジャケットを羽織っている。
「はいはい。二人とも仲良くね。油断しているとやられちゃいますよ」
諭すように言うのは副隊長のHG人形のトカレフだった。活動的なSMGのPPコンビの手綱をしっかり握る出来る人形である。ブルーの大きなリボンにストライプのアンダーとストッキング、その上から白いワンピースと言った可愛らしい出立だが、相当頭のキレる見た目とは異なった性格である。
「わたしも・・・クマさんも・・・頑張らないと・・・」
自信がなさそうに控えめに話すのは金髪赤縁メガネのAR人形のAS Valだ。その自信の無さとは逆にビキニにジャケットとミニスカート+ニーハイソックスと、男性から振り向かれそうな格好をしている。性格の内面は真逆なのでは? と噂されていたりしていた。
ちなみに戦闘時を含めていつもクマのぬいぐるみを抱えている不思議っ子の一面もある。
第五部隊は湧いて出たストレリツィ達に対して少しずつ後退しながら攻撃しており、極小の被害で敵の排除と避難民の退路確保を確実に履行している。隊長のグローザの素晴らしい戦術眼が成す見事な対応だった。
・・・この瞬間までは。
「逃げ遅れた人がいます! 私がフォローに行きます!」
トカレフの視界に黒髪で黒いローブの様な服の女性が目に入り、間髪を入れず駆け出していた。
「もう大丈夫、私と一緒
"トスッ"
え? ・・・・」
トカレフが不思議そうに自身の胸を見ると何かが突き刺さっていた。それがトカレフが感じた最後の認識だった。
まるでバターに熱したナイフを入れるかの如く抵抗もなくスッと刺さったそれは、トカレフのコアを正確に破壊していた。
それが抜き取られると同時にまだ稼働していた循環ポンプが真っ赤な擬似体液を黒い女性へと撒き散らす。と同時にトカレフはガラクタに成り果てその場に崩れ落ちる。
「トカレフ!」
異常な事態に気づいてグローザが声をかけるが、何が起きたのか誰から攻撃されたのか分からない。
一瞬固まるが、この場で最初に動いたのは意外にもValだった。
「狙いを定めて.撃て!」
躊躇無く黒い女性へと向かって自身の銃を撃ち、その全弾を命中させる。9x39mm亜音速弾は消音かつ貫通性の高い弾薬である。普通の人間ならこれだけの数をボディに受ければ即死するだろう。
「倒した・・・?」
だからValは安心して射撃態勢を解いてしまっていた。
"ズガーン"
次の瞬間、凄まじい衝撃音と共に砂埃が舞う。何かが地面や周囲の建物を削り鞭のように振るわれたようだ。
「ちょっと・・・なに・・・?」
PP-90が身を屈めて警戒していると、彼女の足元にクシャクシャにひしゃげた赤縁のメガネが飛んできた。
「ちょ・・・え? ・・Val??」
顔を上げて砂埃の落ち着いた周囲にValの姿は見えなかった。
仲間二人が瞬時にやられる異常な事態にグローザが動く。が、
「イシカワさん・・・イシカワさん!?」
ジャミングがかけられて通信不能となっていた。
このままでは全滅すると判断したグローザが行動に移る。
「ドリル! 走って離脱して本部に伝えなさい。PP-19と私はここで食い止める」
「っ・・・了解」
そう言うとドリルは後方に走り出す。仲間にこの異常な敵の存在を伝えないといけない。
走り出すが何か飛んでくる音がドリルの耳に入った為、確認する間も無く瞬時の立体機動で躱わす。と同時に自身が走っていた場所が何かに薙ぎ払われた。SMGの機動力があってこその回避だった。しかし危なかったと思った次の瞬間、返す攻撃がより鋭く飛んでくる。
「うそ・・・・」
そう、一撃目はただのフェイントでニ撃目が本ちゃんの攻撃だった。
ニ撃目のなにかによる刺突がドリルの胸に綺麗に突き刺さりトカレフ同様にコアを破壊され即死させられた。
「・・・・・・・」
グローザは眼を見開き起きた事態を否定しようとする電脳と戦っていた。
自身が集めてチームアップした部隊。一から鍛えてコータの基地のレギュラー部隊まで登ってきた自信。その全てが瞬時に破壊された。受け入れられない現実と受け入れざるを得ない事実が目の前に並んでいた。
しかし、Valのシャフトによる斉射を受けても全くものともしないバケモノ。ヤツの攻撃手段も正確には分かっていない。残ったPP-19とだけで一体何ができるのか。
「人その友のために己の生命を棄つる、之より大なる愛はなし・・・・・I.O.P.のガラクタにも当てはまるものですわね」
「それでは、お疲れ様ですわ」
目の前の無表情の黒い女が口にした言葉はそれだけだった。
やっぱりパラデウスといったら、金と銀のあの人たちですよね。
意外に好きなキャラだったりします。
ゲームの敵としては嫌でしたけどね(笑)