Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX   作:へなころ

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大変お待たせしております。
大分時間が空いてしまいました。今回はリハビリを兼ねて短めです。
あまり山場もなくですがお楽しみ頂けら幸いです。
次は早くあげるぞ!


22.お姉様

 

「いったい何があったんだ!? 街の状況は?」

 

 寝巻き姿の若い男が眠気顔を堪えて小柄な少女へ怒鳴りつけるように問い詰めている。若干赤い顔色を見るに昨晩の酒もまだ抜けてないのだろう。

 

「はい。指揮官様。ガラテアの研究所を中心に大規模なテロが発生しています。未確認情報ではガラテアの研究所も襲われている模様です」

 

 赤いベレー帽を被りMP5で武装した少女が報告を返す。どうやら彼女が若い男性指揮官の副官のようだ。

 

「早く部隊を送り収束させろ。犯人は射殺で構わん!」

 

「しかし、多数の市民に被害が出ております。市民の保護を優先して・・」

 

「そんなものどうでもいい。収束が最優先だ」

「くそ。ガラテアグループは迷惑掛けないと約束したのに・・・」

 

 男は説明と接待を受けたグレーのロングヘアでアラサーくらいの女医を思い出していた。手篭めにしたい良い女だったがこの迷惑は頂けない。しかしまずは自身の立場のキープが大前提である。まずは誰かの責任にして全て片付けてからだ。

 

「とにかく収束させろ。後は任せた」

 

「・・・了解しました」

 

 我関せずと去っていく自身の指揮官をどこか侮蔑を含んだ目で見送るMP5。

 

「第一から第三までのアサルトライフル部隊は順次展開し敵の排除を。HGの臨時部隊は戦闘は控えて住民の避難支援に専念してください」

 

 去ってしまった指揮官を見送ると、MP5は心機一転とばかりにコンソールを操作してテキパキと指示を出す。そんな少女は確かに優秀だった。それがこの基地の戦術人形達の唯一の希望なのかもしれない。

 

 

 ──

 ────

 ────────

 ──────────────

 

 

 遅れながら街のグリフィン部隊が対応を始めた頃、素子とベクター、それに連れてきた少女を乗せたバイクは街の中を脱出ポイントへ向けて疾走していた。

 バイクでの逃走中にあらゆる路地や交差点から謎の白い敵が出て発砲してきたが、素子のKRISS Vectorによる牽制射撃とベクターのライディングテクニックでなんとか躱していく。しかし、バイクも右に左にと路地を曲がって攻撃を回避していた為、目的地へなかなか進めていないことも事実ではあった。

 とはいえ少しずつ接敵機会は減り、いよいよ敵の包囲網を抜けたと思われたあたりで想定外の事象に見舞われる。

 

 

「う・・・んっ・・・えっ! ・・・・きゃああああっっっ」

 

 素子が左肩に担いでいた少女が目を覚ましたらしく悲鳴を上げながら暴れ始めた。

 しかしそれもそうだろう。さっきまで研究所のベッドで寝ていたのだ。目を覚ましたら街を疾走するバイクの上で後ろ向きに背負われている。しかも彼方此方から銃声も聞こえる。どう考えても混乱するなと言う方に無理がある。

 

 

「おいっ! 暴れるな。落ちるぞ!」

 

 素子が声を掛けるが少女の顔は背中側であり声も届かない。セカンダリーレベルや無線通信で直接話しかける事に慣れておりうっかり失念していた。珍しく素子のミスである。

 

「チッ。ダメか。・・・ベクター、バイクを停めろ」

 

「ん? 停めるのか? あまり余裕はないから早くしてよ」

 

 追っ手を撒いたこともあり"荷物の積み直し"程度なら問題ない。少し開けた場所の建屋脇にサッと停車する。

 

 

 ──────────

 

 

「安心しろ。私だ。どうだ落ち着いたか?」

 

「お姉様? ・・・あの・・・ここは何処ですか?」

 

「貴女を治療する為に連れてきた。・・・・これはお父様の指示よ」

 

「お父様の! ・・・・私は・・・見捨てられてはいなかったのですね」

 

 バイクから降りて地面に座っている彼女は縋るような瞳から希望に溢れた瞳に変わる。

 素子にしてみれば連れ出した言い訳として『お父様』という単語を使用しただけだが、その反応から思いの外効果が抜群だったようだ。

 しかし、そのお父様とは一体何者なのか? 一人の謎の被験体の少女のメンタルが一喜一憂する程の存在。明らかに異質である。何か非常に大きなキーとなる人物なのでは無いか? 

 いや、それも彼女を連れて帰れば解明できるだろう。今は無事に帰る事が優先だ。素子は思考を切り替える。

 撤退ポイントCまではまだある。それに追っ手も追いついてくるだろう。ゆっくりはしていられない。

 

 

「そろそろ行くぞ。立てるか?」

 

「はいっ! お姉様」

 

 辛そうだが精一杯の笑顔を作る少女の手を取り、立たせようとした。

 その瞬間の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずがんっ! 

 

 

 そんな間抜けな破砕音と共に目の前の地面が弾け飛び、土煙と共に少女の躰が突然浮き上がった。素子が掴んでいた筈の少女の手はいつの間にか離されてしまっていた。それ程勢いが強かったと言う事だった。

 まるで大きなアスパラガスの様な機械的な触手(モノ)が地面から生えて彼女の身体を貫き、百舌鳥の速贄の如く少女を10m程の高さに磔にしていた。仰向けに貫かれた彼女の身体からは血が噴水の様に吹き出し、素子とベクターとその周囲を赤黒く染め続けている。

 

 

「モトコっ!」

 

「くそっ! やられた」

 

 ベクターの悲鳴の様な叫び声と同時に二人は触手から飛び退き距離を取るが、良い判断だった。

 直後、触手がうねると共に素子達がいた辺りに突き刺していた少女を投げ捨てる。10m程の高さから投げ捨てられた少女は地面に叩きつけられその勢いに巻き込まれたバイクと共に地面に転がる。

 まるで意思を持つかの様に触手は少女の方に首をもたげ、その先端が蛇の口の様にパッカリと開いた。

 

 

「待てっ!」

 

 触手の意図を察した素子が叫ぶが、その動きが止まる事は無かった。

 触手先端の口が光輝いたかと思うと眩しいレーザー光線が解き放たれ、少女だったものの身体とバイクを焼いた。漏れ出ていたバイクのガソリンに引火して爆発炎上を引き起こしレーザー光とガソリンの爆発を受けた少女の身体はそのエネルギーにより瞬時にこの世界から消失していた。

 

 "ずりゅっ! "と言う擬音が似合うように、用事を終えた触手は土の中に姿を消す。その姿はさながら水族館に展示されているチンアナゴを彷彿させるが、この世界にはそんな文化的な施設は超高級なごくごく一部にしかないわけで、口にした所で誰も理解できないだろう。

 そんな考えがよぎった時だった。

 

 

 

『お父様を裏切るなんて、馬鹿な娘』

 

「誰だ!」

 

「・・・・・」

 

 想定外の声が聞こえてきた方に振り向くと共に問いただすベクター。

 問いただすまでもなく、こんなタイミングで声を掛けてくる者など敵しかいないだろう。しかし、わざわざ声を掛けて不意打ちをしない辺り、どう言うことか。素子は疑問に思う。

 先程の触手攻撃はこの少女の仕業だろう。しかし、何処にもその触手は見えない。

 目立つ金色の帯に、黒いローブの様で襟がついた制服の様なロングスカートの服。ただし異様に長い袖は彼女の両腕を完全に隠している。あの袖の中に異形の触手を隠しているのか? 

 少女自身は黒髪のロングをツインテール様に編み上げた髪。オリエンタルな顔立ちから醸し出される魅惑感というか謎めいたというか不思議な雰囲気。

 パッと見、不思議少女の様にも見えるが、素子のカンは"コイツは危険だ"と警鐘を鳴らしている。

 

 

 

「何処のネズミかと思ったら・・・グリフィンの出来損ないが二匹とはね」

「クスクスクス…研究所を見て生きて帰れると思うなよ!」

 

 小馬鹿にした様に罵り嘲笑ったかと思うと突然語尾が乱暴にる。

 

(こいつ・・・精神が不安定すぎる。マトモな手合いじゃない)

(ベクター! 来るぞ!)

 

(分かってるよ!)

 

 セカンダリーレベルで会話を交わした瞬間に少女の両袖から触手が伸び、凄まじい破壊を伴った横薙ぎの攻撃が飛んでくる。

 二人ともギリギリで躱すがそこへ追撃が襲いかかる。が、その連撃すらも素子とベクターは難なく躱していく。初撃を敢えてギリギリで躱したのはすぐさまの追撃を躱すために意図してであった。戦闘経験が豊富な二人だからこその判断である。

 

 

(モトコ行くよ)

 

(ああ、行くぞ)

 

 二人が攻撃を躱した直後に息を合わせ、二人のKRISS Vectorサブマシンガンによる斉射を喰らわせる。若干角度をつけた十字砲火気味のフルオート射撃が綺麗に集弾していく。45ACP弾の30連マガジン2本分をその身に受ければ屈強な男であっても即死するだろう。しかし・・・

 

「キャハ! 遊び甲斐のありそうなおもちゃ達ね。クスクスクス…やっぱりこうでないと!」

 

 少女は多少のダメージを受けてはいるがほぼ問題ないらしい。

 

(コイツ! サイボーグか!?)

 

 流石の素子もピストル弾とはいえ45口径の弾丸を60発近く受けているのにほぼ無傷なのは想定外であった。

 通常の人間の肉体ならば身体に開いた銃創から血を吹き出し絶命する。しかし彼女は銃創が出来たり出来なかったり、また傷から血も吹き出していない。明らかに人間とは異なる。これは前の世界のサイボーグそっくりだ。であれば彼女はサイボーグか? 

 手足や身体の状況から先程殺された少女と似ている。いや・・・・その顔すら。・・・・まさか? 

 

 素子はこの後このヤマの裏の深淵へと足を踏み入れた事を知ることとなる。

 

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