Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX   作:へなころ

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前話から、3ヶ月空いてしまいました。申し訳ないです。
もう少し書く予定でしたが、一旦区切りで投稿します。
楽しんで頂けたら幸いです。



23.窮地

 

「大分減ってきたな」

 

「そりゃあ、減らなきゃ困っちゃいますよ」

 

 バトーとルイスは撤退途中で白色の兵士集団と出会していた。

 白色兵士達は街を破壊し深夜の凶行から逃げ惑う民間人を容赦なく殺傷しているため致し方なく戦闘に突入していたわけだが、今回は隠密作戦の為通常は戦闘などせずサッサと撤退するのが定石。しかし街の衛兵戦術人形の動きがすこぶる遅く全く展開されていない。流石に寝覚めが悪いと言う事で展開が始まるまで阻止する事となった。

 トグサとFALも合流した事で制圧力はかなりのもので、戦闘が始まるなり白色兵士達はゴリゴリとその数を減らしている。

 バトーとルイスのマシンガンによる面制圧に、トグサとFALのアサルトライフルによるピンポイントショット。おまけにFALの榴弾も撃ち込まれる。ボッコボコにした結果、冒頭のバトーとルイスのセリフに繋がったわけである。

 

「ちょっと! 油断すると危ないですよ」

 

「余裕かまして被害受けるなんてノーセンスな事にならない様にね」

 

 トグサとFALから気をつけろよ! と、注意が飛ぶが、マシンガンコンビはどこ吹く風である。と言ってもバトー達とて仕事の結果はしっかり残す訳で、決していい加減なわけでない。その明るさと何となくチャラい感じがテキトーな感じに取られているのかもしれない。運が悪いと言うか身から出た錆と言うか、評価者によって変わるところだろう。

 

 

 ──────────

 

 

「全滅ね」

 

 FALがサラッと呟いた様に、白い兵士達はさして時間が掛からず全て始末された。

 

「おし。じゃあ撤退するぞ」

 

 バトーが撤退を宣言して進もうとした時、前方よりまた新手が現れる。

 しかし、その陣容は先ほどとは異なっていた。

 何かジャパニメーションの白い巨大ロボットを思わせる造形の巨体が三体。それを盾に先程の白い兵士が随伴歩兵の如くついてきている。

 

「おいおいおい。またかよって・・・・・何だありゃ?」

「まさか・・・強化外骨格(アームスーツ)か?」

 

 その言葉にバトーとトグサの警戒感はMAXに引き上げられる。何しろ前の世界では本部ビルの中で死ぬ寸前まで追い回されたのだから。こちらの世界に飛ばされた主な要因とさえ思えるわけだ。

 全員が射撃を開始するが敵のロボは動きが遅いらしく、バシバシと銃弾を受ける。しかし・・・・

 

「マジか! なんて硬さだよ。まるで受け付けねえぞ!」

 

「M61徹甲弾じゃ抜けないわね・・・」

 

「同じよ。こっちのFMJ高速弾でも無理ね」

 

「動きも止まらないし、まずいですよ」

 

 都市内での後方支援任務だった為、まさかこんな重装甲の敵と戦うとは想定しておらず、グリフィンで広く使用されている安価な徹甲弾と高速弾しか装備していなかった。まあ任務の性格上、高級弾薬を申請しても許可は下りなかっただろう。つまり彼らが悪いと言うわけではない。しかし、現実は残酷なもので想定外と言う言い訳は許されない。切り抜けられなければ死が待っているわけだから。

 

 射撃を加えても足止めできず彼我の距離は縮まり、白い兵士たちの攻撃も飛んでくる為、物陰に隠れざるを得なくなっていた。

 そんな時だった。白いロボ達が歩みを止める。

 

「故障・・・かしら?」

 

 物陰から顔を出したルイスが呟くが、そんなことあるわけもなく。背中や腕のランチャーをこちらに向けるのが見えた。

 

「ウソでしょ〜〜〜!!」

 

 間髪を入れずに、白いロボ達から大量のロケット弾が発射されるのが目に入ったルイスが、思わず叫んでいた。

 

 

 ────────────

 

 

「クソ! ジリ貧だな」

 

 バトーは珍しく焦りを見せていた。9課のメンバーとして素子に見られていたら叱責の一つも飛んできていたかもしれないが、しかし致し方ないところもあるだろう。こちらの世界に飛ぶ前、アームスーツの一団に追い詰められた9課本部での攻防戦を彷彿させる状況とうり二つである。

 白いロボの無茶苦茶なロケット弾による攻撃を掻い潜りノーダメージで逃げてきたのは偶然に過ぎない。周囲にばら撒かれたロケット弾は街の建物にも多数着弾し、数多くの建物が倒壊炎上している。少なく見積もっても3桁の人が死傷しているだろう。何にしてもあのロボは何とかしないと脱出は不可能だろう。

 

 万策尽きた、そんな雰囲気が漂うところでFALが珍しく優しい表情で口を開く。

 

「あいつらを倒すのは無理ね。ここは私とルイスで足止めするから、あなた達二人は撤退しなさい」

 

「FAL、そう言うわけには・・・・」

 

「そー言うわけなの! ・・・・私たちは人形であなた達は人間でしょ」

「私達はすぐに復旧出来るけど、あなた達の命は一つしかない。人形には人形の役割があると言うだけよ」

「私を失望させない様に無事に撤退してくださいね」

 

 最後はFALらしい高慢な物言いで強引に話を終わらせる。

 しかし彼女の瞳にはどこか哀しさが浮かんでいるがそれもそうだろう。人形とて死にたくはないのだ。簡単に生き返るとは雖もその時の、今この時の記憶は無く記録された記憶からリカバリーされるわけだ。一緒にいた仲間がどうなったか分からない。自分は活躍できたのか? 無駄死にだったのか? それすらも分からない。いや、今いる自分は本当に自分なのか? そんな疑念すら湧く。死とは人形にとっても本当に怖い事なのだ。

 

 

「ルイス、3カウント後に飛び出て二人の撤退の援護射撃。いいわね」

 

「OK。いいわ」

 

「3」「2」「1」・・・

 

 "ドゴーンッ"

 

 ちょうどカウント1のタイミングでロボが後方に仰反る様に倒れ、手足をビクビク震わせながら駆動を停止する。

 それとほぼ同時に白い兵士も斃れ始める。遅れて耳に届いたのは強烈な射撃音にサイレンサー付きオートマチックライフルの連続する射撃音だった。

 残った2体のロボ達も数秒後には同様に胴体に大穴をあけて同じ末路を辿っていった。

 

 

「大丈夫か?」

 

「NTW! 遅いわよ! ・・・・けど助かったわ」

 

「んっ・・・・褒めてもいいんだぞ」

 

「NTWちゃん。愛してるよっ」

 

「むっ・・・・バトーにじゃない・・・」

 

「NTW。良いスナイプだ。よくやった」

 

「むふふぅ・・・ミッションコンプリートだ!」

 

 ひと段落したところで無線通信が入ってくる。

 バトー達のピンチを救ったのはサイトーとNTWのスナイパーコンビだった。

 久しぶりの大活躍をサイトーに褒められ、滅多に笑わない彼女の頬が緩む。恥ずかしさを堪えて笑ったものだからちょっと気持ち悪い笑い声となってしまっていた。

 

 敵を一掃し緩い雰囲気となったところで一台のトラックが走り込み急停車で少し乱暴に寄せて来た。

 少し警戒し銃を向けようとしたがすぐにイシカワと57の電子戦指揮車と分かり、警戒を解く。

 

「撤退だ。乗っていくか?」

 

「よしここらで撤退だ・・・・・。少佐、聞こえるか? ・・・少佐? ・・・・あれ? 通じねえぞ」

 

 バトーが撤収の最終連絡を素子に伝えようとするがまたもや通信不能となっていた。

 イシカワも少佐に通信を繋ごうとするがどうもダメな様である。

 

「嫌な予感がする。俺は少佐の撤退支援に行ってくる」

 

「あっ待って。私も行きます!」

 

 走り出すバトーにルイスがついていく。

 

「俺も行きます」

 

「待てトグサ! 57が重傷だ。こちらの援護を頼む」

 

「っ・・・・了解」

 

「代わりに私が行くわ。後は任せなさい!」

 

「頼む」

 

 走り出そうとしたトグサをイシカワが引き止める。トグサは素早く状況判断しバトーについていくのを諦めて電子戦指揮車の助手席に乗り込み撤収する。途中、サイトー達をピックアップして無事撤退ポイントへ到着することとなる。

 トグサの代わりにバトーについていくこととなったFALは、指揮車の出発を見届けた後に、合流すべく駆け足でバトー達を追って行った。

 9課の課員はまだ事態が収束していないことを肌で感じていたのだった。

 

 

 ──

 ────

 ────────

 ────────────────

 

 

 

「クソ。バケモノか」

 

(ベクター、落ち着け! 焦ったら敗けだ)

 

 黒髪の少女の両腕の触手から繰り出されるオールレンジ攻撃を何とか回避しながら射撃を入れていた。

 しかし、二人で200発弱の銃弾を叩き込んでいるのに効いた様子がない。

 いくら拳銃弾とはいえ45口径の弾である。防弾チョッキを着ていなければその破壊力は生体の生命を奪うには十分である筈だ。なのにそれを多数受けたにも関わらずほぼ効果がない。まず人間ではない。

 では人形か? いや、素子の勘は人形ではなくサイボーグと告げている。しかし、ペルシカの話ではサイボーグ化技術は確立されていないとの話だった。

 ではコイツは一体? それに先程殺されたあの少女もコイツと身体的特徴が似通っている。

 コイツらは一体・・・・

 その様な事を電脳の片隅で考えている時に、冒頭のベクターの焦りから出る呟きが聞こえてきたため、思考をやめ戦闘に集中する。

 ベクターに対して焦るなと近距離通信で伝えたが・・・・

 

(チャンスはある。隙を作る。モトコは後退しろ!)

 

 ベクターが触手の攻撃を鋭い立体機動で躱すと同時に黒ずくめの少女に向かって走り込む。

 

(触手の懐に入ってしまえば! もらった! ・・・・なにっっ!)

 

 触手の先端からの攻撃を受けない触手の懐。近接からの銃による射撃、近接格闘どれも自信がある。これなら勝てる。

 そう思っていたが、突然触手が波打つ様にうねり出し激しく動く。

 

「キャハッ。触手の先端だけだと思ってたの? 馬鹿ね。全て自由自在よ」

 

 うねっていた触手がまるで大蛇が獲物を絞め殺すが如くベクターの胴体に巻きつけられ、強い力で締め付ける。

 

「ぐうっ・・・」

 

 苦悶の表情を浮かべるベクターの視界モニターには電脳内に響く警告音と共に複数のコーションアラートが点滅している。

 "義体に対する負荷が限界値を超えています"

 "外部から強い電子戦攻撃を受けています"

 "電脳リソースの使用率90%以上。パフォーマンス低下注意"

 

 触手は締め付けるだけで無く触れている箇所からハッキング攻撃を仕掛けてくる。非常に嫌らしい。

 ベクターの義体は★5クラスであり平均以上の対電子戦能力があるが、電子戦専用モデルには及ばない。

 触手からのハッキングに抵抗する為、電脳リソースの多くを優先的に費やされてしまっていた。結果、手足の制御パフォーマンスが低下し力が発揮できない。ベクター自身としてみれば全身が痺れている様に感じているのだろう。

 

(モ、モトコ・・・逃げ・・ろ)

 

 自身が窮地に立たされたなかベクターが呟いたのは、仲間を心配する言葉だった。

 

 ──────────

 

 くっ・・・触手に捉えられたベクターは動きを止めている。恐らく脱出は不可能なのだろう。

 そして、あの気狂い少女の性格からして間も無く殺される可能性が高い。

 とは言え、こちらは触手の攻撃があり助けに行くには時間がかかる。

 電脳からは"ベクターを犠牲にして逃げる"戦術提案が出される。何度やり直しても同じだ。

 

 間に合わない。出来ることはない。誰もがそう答えるのかもしれない。

 

(セオリー通りならね)

 

 自身の思考に対してモトコも思わず呟いていた。

 

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