Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
いや、原作でもあるのかもですが調べきれていないので、一応勝手に設定したと書いておきます。
あれだけ高出力の駆動エネルギーを考えると、やっぱり専用食だけでは足りないだろうから充電かなと。そう考えたところです。
うーん、普段の倍くらいの量になってしまった。見積もりが甘いんだよな。
グリフィンサイドとの邂逅ですね。
行政庁舎の入り口を潜ったベクターはサッとクリアリングを行う。
こんなところに敵が居ない事は分かっている。居るのであればハンビーを降りた時に射撃してきただろう。
踏み入った先、地階に横たわる多数の亡骸を見てもベクターのメンタルは何一つ揺らぐ事はなかった。
(ふふっ。見え見えよ)
廃墟と雖も我々人間でも人の気配を感じることがあるだろう。澱んだ空気の動き?匂い?気のせい?色々と明確に説明するのは難しいとは思う。しかし、何か居るとの思いは感じたりする。もしかしたらそれを危機管理の本能と呼ぶのかもしれない。
しかし戦術人形のベクターには確信があった。何年も放置された建物内を歩き回った明らかな証拠。足跡や埃の痕跡だ。
自身の半身の銃を構えて、その痕跡の先へと進んで行く。
(上階、ね)
『NTW-20、聞こえるか?標的は上階だ。滞りないフォローを期待するわ』
『ああ隊長。任せておけ』
建屋の構造を理解しているNTW-20は効率的な狙撃ポジションの確保へ動く。
NTW-20からの回答を聞いたベクターは上階への侵攻を再開する。フォローは彼女任せで大丈夫だ。S地区の中でもトップクラスの狙撃技能の人形なのだから。
しかも彼女の武器はその名の通りNTW-20。南アフリカの広大な草原での長距離射撃を想定した大口径の対物ライフルである。その20mmの機関銃、いや機関砲とも言えるレベルの武器の弾薬が使用されている。
今も1000m程度の距離から狙っているのだろう。
・・・・・・
ベクターが上階へ進むと破壊された防火シャッターを見つける。破壊されたシャッターの破面や塗装の剥離状況からごく近日中にやられたものと分かる。
(ビンゴ)
ベクターは自分の推理に誤りがない事が証明され、ニヤリと笑う。
(どれだけ楽しませてくれるのかしら?謎の獲物さんたち)
しかし、強引に破壊されたシャッターから、これをやったのは生身の人間ではないとも推定される。
しかも破壊痕から恐らく一人ではない。数名の人形、しかも戦術人形級のパワーをもつ者が居ると考えるべきである。
(ますます面白くなってきたわね)
ベクターは歩みを止めずに階段を登っていく。
・・・・・・
人形達の足跡を確認しながら階段を登っていくが思いの外抵抗がない。階段での待ち伏せも想定していたがそれも無かった。いや人の気配が全くないただの廃墟にしかみえない。確信を持ったベクターでなければここまで来る前に引き返していたかもしれない。
28階まで登ってきたところで変化があった。足跡が廊下へ延びていたからだ。
(28階・・・たしか・・・市長室か)
ベクターは階段室で足を止めて連絡する。
『NTW-20、28階の様子は分かるか』
『市長室含め28階の部屋に人影は無い。オーバー』
『了解』
言うまでもなくクリアー済みと言外に言っている。さすがである。
ここからは追いかけっこではない。ハンティングだ。獲るか獲られるか、一つの油断が死に繋がる世界。
階段室から廊下へ侵入するにあたり、ベクターは入念なクリアリングを行う。直近に敵が居る事はなさそうであるが、
(居るわね・・・・)
ベクターの勘が囁く。
ベクターのアイカメラが望遠モードになり廊下の両端を確認する。
部屋の入り口辺りの背景が微かに揺らぐのが見えた。何も考えずに見ていてはわからなかっただろう僅かな変化。それをベクターは見逃さない。
(光学迷彩・・・)
光学迷彩などそこらのテロリストが簡単に入手できるものでは無い。しかも戦術人形まで連れている可能性が高い。
そんな連中が私たちの作戦エリアに現れた。しかも隠密で。
目的が無いわけがない。最低でも一人は生かして捕らえ、全て吐かせるしかないだろう。
とりあえず、邪魔くさい廊下の両端の奴らを黙らせることとする。
腰にぶら下げているHEグレネードを手に取り片手でピンを抜く。彼女は普段は
(今は大人しく待ってな。後で苦しまないように殺してあげる。)
ピンを抜いたグレネードを廊下の端の部屋の入り口に力いっぱい遠投する。ついでもう一つHEを手に取り反対の端にも遠投した。
・・・・・
両端の部屋で待機していたのは、バトー及びパズ、ボーマ組だった。
隊長の素子の指示で熱光学迷彩を使用して待機していた。
『どうも28階にいる事を嗅ぎつけた様だ。どうする少佐』9課の6人は短距離通信で密に情報交換が可能だ。
『・・・撃つな。まだその場で待機だ』素子は手詰まりな状況を考え答えに悩み、この場は先送りとする。
『・・・了解。うおっ!』
素子の思いを察しバトーも黙るが、突然HEグレネードが投げ込まれる。
バトーは急ぎ部屋に飛び込み隠れるが、同時にグレネードが破裂し爆風が吹き荒れる。
パズ達の部屋も状況は同じ、両部屋共に怪我はなく何とか回避していた。
『おいおいおい。アイツめちゃくちゃやりやがる。気をつけろよ少佐』
・・・・・
"ドゴーン""ズガーン"とけたたましい音と共にビルの28階の両端の部屋の窓ガラスが吹き飛び街に降り注ぐ。さながら真冬に発生するダイヤモンドダストの様である。とは言うものの飛び散るガラスは見てくれ以上に凶悪であり人が住む街だったら大惨事だろう。
「まったく、やりたい放題楽しんでいるわね」
「ま、大目に見てあげなよ。隊長もストレスが溜まってるのよ」
「・・・・」
FALと57の揶揄いが混ざった嫌味を聞き、ベクターの本体がジロリと睨む。まあ、無口なところもあるが状況から何も言い返せないのが大きいのだろう。
と、同時にNTW-20から通信が入る。
『隊長、両端の部屋に人影を視認。恐らく光学迷彩を使用していたものと推定する。始末するか?オーバー』
『・・・・いえ。置いておいていいわ。市長室に集中しなさい』何故か分からないが撃たない方がいいだろうとの気持ちが湧く。ベクターの勘がそう囁き、通常なら狙撃一択の場面が流される。
『了解!』NTW-20は市長室へとスコープのサイディングを移す。
・・・・・・
HEグレネードを投擲したベクターのダミーは素早く市長室へと向かい、扉を蹴り破り侵入する。もちろん素早く確実にクリアリングを行う。
(誰もいない、いや光学迷彩を使用しているのか?)
ベクターは眼を細め室内を注視する。すると微かに動くものが確認される。
(そこか)
自身の半身となるVectorを素早く向ける。手足を撃ち抜き行動不能にするつもりだった。
しかし、右手に持ち構えたVectorが払いのけられ、半身の銃が床に音を立てて転がってしまう。
同時に右腕を取られるが、腕の破壊が目的である事を察し、素早く相手にタックルを当てて拘束された手を振り解く。と同時に腰にさげたコンバットナイフを抜き放つ。
(居るわね。ここに。格闘技能を持つ戦術人形が)
そう思った直後に、ベクターの前に光学迷彩を解いた戦術人形が現れる。
紫がかった青い前下がりのロングボブの髪型、赤い瞳、服装は薄いピンクがかったレオタード型にニーハイストッキング型の防具、その上から黒いジャケットを羽織っている。見たことのない人形だった。
ベクターの視界モニタに目の前の戦術人形のチェック結果が映し出される。
"I.O.P.の戦術人形リストに該当無し"
"鉄血工造の戦術人形リストに該当無し。鉄血工造製人形の特徴との合致率1%以下"
"その他確認されている民生用人形に該当無し"
そう、調査結果を見る限り、違法製造された戦術人形という結果に落ち着く。
ならば先程チラリと見えた光学迷彩を纏ったものがコイツらの指揮官だろう。であればさっさとこの人形を破壊して生捕りする。そのような結論に至る。
『NTW-20、視えているか?』
『隊長、戦術人形を確認した。オーバー』
『よし。隙を見て撃つ事を許可する。私ごと射殺して構わない』
『ふふっ。分かったよ。隊長』NTW-20から思わず笑みが溢れる。
私ごと撃って構わないとは相当脅威を感じているのかね。隊長にしては珍しく感情が入ってるじゃないか。
・・・・・・
市長室ではベクターが目の前の違法戦術人形と対峙していた。
目の前の戦術人形はファイティングポーズを取り、ベクターを注視しているだけである。その態度はベクターのプライドを酷く刺激することとなる。
それもその筈である。I.O.P.社の戦術人形には銃種毎のカテゴリがあり、そのカテゴリによりざっくり役割が決定している。ベクターのカテゴリは
しかも、ベクターはI.O.P.のSMG人形の中でもハイスペックを意味するLGENDARYクラス、いわゆる★5と言われるランクであり、かつダミー人形を4体操れる程最適化された人形である。
この世で彼女は最強クラスの近接戦闘能力を誇る人形なのだ、それは当然人間をゆうに超える。つまり事自分のフィールドであれば絶対の自信に繋がる。
なのに目の前の違法製造の戦術人形はそのフィールドで戦いを挑んできている。どこの馬の骨とも知らぬ違法製造人形如きがだ。
例えるなら、オリンピックの選手に一般人が勝負を挑み大真面目に勝つつもり。と言っている様なもの。馬鹿にするにも程がある。
ベクターは右手に持ったコンバットナイフをくるりと回して腰のシースへと収め、自身もファイティングポーズを取る。
ここからは異種格闘技戦でスクラップにしてやるつもりだ。
互いに前に出て、ジャブやストレートといったボクシングスタイルで戦いが開始される。
拳を放ち、敵の拳をかわしながら分析を行う。
(成程、性能はまあまあね。戦いを挑む気持ちは分かるわ)
(でもこの程度なら★4連中の練習にちょうどいいレベルね。・・・もういい、すぐに壊してあげる)
分析も終わり、相手を始末すべくベクターが動く。
ジャブの応酬の中、隙を見て左足を一歩踏み込み強烈な左ボディを叩き込む。相手が屈強な大男であろうとも肋骨を粉砕し肝臓を破裂させ即死させることが可能なレバーブローだ。
半分ガード半分受け流す様な格好で相手がガードするがこれにより相手の意識を中段に移させる。ボディと同時にベクターは右ハイキックへと流れるコンビネーションへと移行する。打ち上げではなく柔らかく股関節を使った打ち下ろし気味のハイキックだ。ベクターの素晴らしい体幹バランスがなせる技だった。
しかし、目の前の違法製造人形は素早く体を屈めギリギリで避けた。
(・・・・・・)
ベクターが眼を見開き驚愕する。I.O.P.の人形同士の訓練でも初見でこの技を見切れたものはごく僅かであったからだ。
だがこれだけではない。右ハイキックを打ち抜き敵に背を向ける格好となるが、その回転力を利用し下段の左足による後ろ回しの水面蹴りを放つ。戦術人形の足を容易く破壊する強烈な蹴りである。ベクターの中段上段下段へと続く流麗な必殺3連コンボだった。初見でこの技をかわした人形は皆無。まさに必殺技だったのだ。
一度背を向けて水面蹴りを放つが手応えがない事にベクターは混乱する。
(かわした?馬鹿な!そんなわけはない・・・。いや、敵はどこか)
水面蹴りの態勢で索敵するが見当たらない。
一瞬虚をつかれたが、天井に足をつけ逆さまに張り付く態勢の人形が見えた。
(上かっ!来る・・・・ガード!)
天井に張り付いた敵が天井を蹴りベクターへ飛ぶと共に前方宙返りの要領で強烈な踵落としを入れてきた。
水面蹴りを出していたためしゃがみ態勢であり回避は不能。左膝を地につけた膝立ち状態で敵の踵落としを受ける。
メキィィィ
嫌な音が響くと同時に足元のPタイルが粉々に割れて飛び散り"ピシッ"とコンクリートの基盤に割れが走る。そこに敵の蹴りの強烈さが現れている。
受けたベクターの左前腕骨格は大きく変形していた。それと同時に敵の人形がベクターを踏み台としてバク宙の要領で着地して距離を取る。
・・・・・・
攻撃を入れた素子も驚きを持っていた。
先程の3連コンボは見事であると評価していたし、回避できたのも偶然が重なり運が良かった側面もある。
今の踵落としにしても上半身を破壊するつもりだった。なのに腕の一部の破壊しか叶わなかったわけだ。油断はできない全力で破壊するしかないと考えていた。
・・・・・・
ベクターの左前腕骨格は変形しているし肘関節は人工皮膚が焼け、時より火花が散っている。
視界モニタには多数のコーションアラートが出ていた。
"左肘関節
"左前腕骨格変形過大"
"左手首関節動作不能"
"左手握力低下90%以上"
有り体に言って重傷であるが、そんな事は関係ない。左腕が腕から備え付けの鈍器に変わっただけだ、戦闘継続に支障無し。
これからは違法製造の人形などとは思わない。小馬鹿にして油断していた自分が恥ずかしい。目の前にいるのは鉄血工造のハイエンド以上の人形だ。
ベクターはリミッターギリギリの出力で敵に襲いかかる。
ジャブの速度は先程以上、時より裏拳の要領で左腕を振り回す攻撃を交える。多少なり受けざるを得ない敵も苦しそうに見えた。
思わず敵が下がるが、これを好機に一気に畳みかけるためにベクターが追う。しかし、それは敵の罠であった。
後ろに下がる様に見せかけてすぐさま反転し前に出る。と同時に左ボディを叩き込む。
隙をつかれたベクターは咄嗟に判断してガードする。
(くっ、危なかった・・・・しまっ)
微妙なタイミングだったがギリギリガード出来た。しかし、次の瞬間右ハイキックをモロに頸部に受け意識を消失した。
自身の得意とする必殺コンボを綺麗に、いや自分以上の完成度でトレースされていた。
彼女が知るよしもないが頸部に叩き込まれた蹴りは鋭く、頭部と胴体が分離して稼働停止となっていた。
この後のベクターは、左腕は稼働不能になっていたため防ぐ術はなかっただろうが、直前まで自身のコンボに気が付かなかった自分にひどく苛立っていたと言う。
・・・・・・・
(驚いたな。まさか隊長が負けるとは)
(仇はうってやるさ)
NTW-20はベクターと敵のハイレベルな格闘に見入っており、二人の戦闘を邪魔するのは野暮であると考え戦闘終了を待っていた。
バイポッドを立ててNTW-20を設置して構えている。重量のある銃でありまさに設置という表現が正しいだろう。
NTW-20自身もビルの屋上に寝そべり、銃を構え光学照準器を覗く。
距離も風も諸々の状況を加味しても外す状況ではない。
ベクターの敗北直後にサイディングを済ますと同時にスナイプを行う。
なんの気負いもなく引き金を引くその時、意識を消失していた。
これまたNTW-20が知る由もないが、外部を警戒していたサイトーによってすでに捕捉されており、射撃のタイミングでカウンタースナイプを受けヘッドショット一撃で頭部を粉砕され稼働を停止していたのだった。
・・・・・・・
ベクターとNTW-20の本体がほぼ同時に自身のダミーを消失した事を自覚する。
両名とも苦々しい顔をしているがそれはそうだろう。自身の得意分野で敗北を喫したのだから。
「貴方達、センスがないんじゃなくて?」FALか容赦なく塩を塗り込む。
「指揮官に怒られちゃうんじゃなくて?」57がFALの真似をしながらさらに厚盛りに塩を積んでいく。
「ぐぅ・・・」NTW-20が何か言いたげだがぐうの音も出せない様だ。ベクターはどこ吹く風だがどうも意識は敵に向いている様だ。
「みなさん、仲良くだよ。とりあえず指揮官には報告しましょ」ルイスがそう言い指揮官へ連絡をする。
『そうか。ベクターとNTW-20がダミー一体とは言え、敵に瞬殺されたか」
しばしの沈黙の後、指揮官が指示する。
『現時点をもって作戦を中止する。全軍撤退だ』
「しかし・・・再度編成を見直しリベンジします。再考を」隊長のベクターが上申するが、
『判断は変わらない。作戦は失敗だ。全軍速やかに帰投せよ』
「くっ・・・了解・・・しました」苦しい表情で回答するベクターだが、速やかに部隊へ撤収を指示する。
乗ってきたハンビーに搭乗して速やかに帰投していった。
・・・・・・・
ハンビーを見送った素子はため息をついていた。
「少佐、情報収集ダメだったな。アイツらめちゃくちゃだぞ」
「ああ、強くて紙一重だった。倒すので精一杯だったわ」
「殺人アンドロイドの仲間かな?そうは見えなかったが・・・・」
「なんとも言えないわね。仲間と考えておいた方がいいだろう」
イシカワがベクターの死骸の装備や落とした武器を集める。
「KRISS Vectorに手榴弾か、まあこれは使えますな」
この後にNTW-20の死体と武器も回収されるが、これは流石に重すぎるのでそのまま使うわけにはいかない。とりあえずキープとしている。
「連中、また来るかな」バトーが聞くがあまり関わりたくはない様子である。それもそうだろう。かなり追い込まれた危ない連中だから。
「作戦行動中だったことから、この街の清掃が目的なのだろう。恐らく来るな」
二回目の衝突を予言する素子に、うんざりそうな顔を見せる5人だった。
やっぱり、少佐は強い!あとサイトーさん好きですね。
イシカワさんは意図的に弱めに書いています。そこはすみません。
話せば分かり合える筈なんですけどね。
無口なベクターが悪いです。のしのしと現れて皆殺しする勢いですからね。
ターミネーターかっつーの(笑)