Dolls' Frontline STAND ALONE COMPLEX 作:へなころ
今回はグリフィン側がメインですが、テンションが違いすぎて書くの難しいっすね。なかなか筆が進みませんでした。クロスオーバーってむずいっすね。
字数が多くなったので予定より短めで切らせてもらいました。
よろしくお願いします。
『状況は理解したが・・・作戦失敗とはな。残念だよ』
映像通信機に映し出されているのは、銀髪の美しいアラサーくらいの真面目そうで神経質そうな女性である。
えんじ色の軍服調の服にモノクルを掛けたその姿は、正しく軍隊の司令官の様に見える。
女は軽く伏せた目を見開き強い視線を向ける。
『今回の進軍はS09地区における大規模作戦だ。失敗しました、では貴官の経歴に大きな傷がつく』
『後一日時間はある。分かっているな。ミスターパーフェクトの名に恥じぬ様にな。ヤシマ指揮官』
美人の女性はそこまで言うと通信を切る。
消えたモニタを前に、部屋に残された若い男は深くため息を吐くのだった。
ここはグリフィン&クルーガー社のS09地区に多数ある前線基地の一つだ。
グリフィン&クルーガー社は
現在の社会情勢は国家の力が弱まっており都市運営をPMCへと委託している。
また、単純な都市運営だけでなく問答無用で人間の殺戮を行う連中の排除なども主な仕事となる。
殺戮を行う連中とは、製造した人形が突如暴走し会社そのものが消滅した鉄血工造社の戦術人形や
今回の作戦は、鉄血工造への反攻と人間の活動可能域の奪還が加わったものであり、多くの前線基地指揮官が投入された同時進行の大規模作戦だった。
特にミスターパーフェクトと呼ばれるヤシマ指揮官の作戦区域は廃棄された都市群の奪還であり要衝である。その手腕を買われてそこを任されたとも言える。先程背広組の上官であるヘリアントス上級代行官言っていた様に、失敗しましたで済む話ではない。そんなことになれば作戦全体に大きく影響を及ぼすし自身のキャリアにも大きな傷がつく。それは許されない。
S09地区のいち前線基地指揮官のコータ・ヤシマはまだ20代前半と若いが失敗もなくこれまでに非常に素晴らしい成績を残している。それがミスターパーフェクトと呼ばれる所以であるが、本人の向上心も非常に高く、将来は会社の幹部までのし上がり歴史に名を残すとの野望を持っている。こんなところで躓くわけにはいかないのだ。
「G36、すまないが各部隊の隊長たちと第一部隊全員を司令室に至急呼んでくれ」
消えたモニタを少しの間見つめていた指揮官が横の美人メイド姿の副官の戦術人形に顔を向け端的に伝える。
チャンスはあと一日、ヤシマ指揮官はなんとしてでもやるしかない状況に置かれていた。
・・・・・・・
程なくして司令室に各部隊の隊長達が集合する。
翌日の作戦行動についての打ち合わせを行うが、目下の課題は謎の勢力への対処となる。
第一部隊はベクターが隊長のエリート部隊である。この部隊は謎の勢力と対峙したことから全員が集められている。
「鉄血兵の始末については問題ありませんわ」
飄々と述べるのは第二部隊、
全身真っ黒のワンピースに漆黒のニーハイブーツ、そして髪には真っ白な大きなシラユキゲシの髪飾りをつけている。何かこう葬式の様な暗い雰囲気を醸し出している。まるで鉄血兵を地獄へと送る使者の様である。獲物も固定式のスコープとサイレンサーを付けたアサルトライフルのステアーAUGであり、まるで暗殺者の様な出立ちをしている。
「そうだね。特にこっちとしては問題なかったからね。明日一日あれば都市の制圧には十分よ」
AUGに乗っかる形で答えるのは第三部隊隊長のSMG人形のMP-7である。ピンクのまとめ上げられた髪が特徴で社交的な人形である。彼女はキャンディが好きでよく咥えているが、かなり塩っぱい飴らしい。そのキャンディを貰った人形達は顔を顰め二度と欲しいとは言わないとか。
第三部隊も同じくARとSMGから成るオーソドックスな編成である。
「このゲームは完封勝ちですわね」
これまた問題無いとのコメントするのは、
オレンジ色のロングヘアにふわっとしたドレス調の戦闘服、キラキラした装飾が特徴の明るい性格の人形であるが、その外見とは裏腹に重度のギャンブル好きである。
中距離の支援で第二第三部隊を強力に援護していた。
「指揮官さん、私たちまで呼ぶなんてよっぽど困っているのね・・・」
そういうのは、今日の任務には居なかったOTs-14、通称グローザである。
彼女の部隊、第五部隊は特殊で、夜間戦闘の専門部隊である。日中の作戦によばれるくらいだから指揮官も相当参っているのだろう、と考えていた。ただその考えも間違ってはいなかった。追い詰められていたヤシマ指揮官はバックアップ部隊としてグローザ達も使う考えで呼んでいたわけだから。
「集合早々、話が早くて助かるよ。鉄血兵の殲滅は想定通り問題無いか」
「では、第二、第三、第四部隊は鉄血の殲滅を頼む。作戦内容は本日と同じ。明日一日しか猶予がないからそこは留意してくれ」
「「了解しました」」
「さて、問題は第一部隊の謎の勢力だよね。状況を一度確認しようか」いよいよ本題に切り込む。
「状況なら全て報告したはずだけど」ベクターがクールな真顔でどこか冷たく言い放つ。
「まあ、そうだけど・・・一応ベクターの視界映像を見よっか・・・」
「そう・・・勝手にすればいいよ」見たきゃ見れば?的だけど、このプイッとした態度と素っ気なさが彼女のデフォルトである。初めはびっくりしたけどね。
「じゃあ見ていこうか」
そう言うと、副官のG36が端末を操作し、映像通信用の大型モニターにベクターの視界映像が映し出される。スタートの静止画像は丁度28階の階段室からに編集されている。各部隊長たちも滅多に見ることのできない
・・・・・・・・
「止めてくれ。5秒戻して繰り返しスローで流してくれ」ヤシマ指揮官が伝えたところは、ちょうどベクターが光学迷彩を見抜いた場面だ。
「光学迷彩か…ただ、羽織る様なものではなく体の輪郭が透けている。グリフィンが使う熱光学迷彩のカモフラージュマントではなさそうだな。こんな装備見たこと無いな」
言われてみれば、と人形達がざわつく。
G36は「違法製造、コピー物でしょうか?」と言っているが、社では違法コピー品のチェックも常に行っているが、まともな出来の物は見たことがない。
「こんな高性能品はコピーでは無理だ」
想定を超える何かが起こっている気がして嫌な予感が過ぎる。
その後市長室での謎の戦術人形との戦闘の場面に移る。
光学迷彩を解いた謎の人形がファイティンポーズをとっているところで映像が再び止められる。
ベクターの視界モニタに当時の検索結果も映し出されるが「やはり該当はありませんでした」とG36が追加調査結果を付け加える。
「確かに見たことがない人形だけど・・・戦術人形?だよな?」何か違和感を感じる。
「人形でしょ?」ベクターが何言ってんだとの視線を向けてくるが、何か上手く言えないが人形というより人間に近くないか?
「私にも戦術人形に見えますわ」
「同じく」
AUGとMP-7が人形と評しているし、他の隊長達も「うんうん」頷いている。
まあ、そこは答えが出るものでは無いので置いておき、先を続けて見る。
ベクターと謎の人形の格闘からのベクター敗北。一連の流れを見て人形達の顔が強張る。
「これは・・・運が悪いとか言ってられませんわね」何かと運が良いだ悪いだ勝った負けたとうるさいR93であるが格闘の内容は洒落にならないと思った様だ。
特にベクターと同じSMGカテゴリのMP-7はなおさらの様だ。
「ベクターに勝つのも信じられないけど、あの3連コンボを初見で躱す?普通あり得ないよ」塩っぱい顔を見せるがキャンディの味のせいではないらしい。MP-7はベクターとの格闘訓練で何度も義体を破壊され交換しているだけありこの結果は信じられなかった。ベクターに鍛えられているからこそ分かるその相手の強さである。
「うーん、うん??すまない。相手が姿を表したところからリピートを頼む」ふと何かに気づきヤシマ指揮官が見直す。何度かのリピートを繰り返したのち、澄ました顔のベクターの方を向きバツが悪そうに話し始める。
「なあ?ベクター?あのさ、相手と会話とかしていないのかな?」
「会話?する必要が無いわ」表情を変えずにクールに呟くベクター。
ああ、しまった。ベクターの性格はこうだったな。
する必要があるか無いかで言えば、デッドオアアライブを許可したことから必要性は無いと言えるが、謎の相手と相対したら普通何かしら話しかけたりすると思うけどな。
額に手を当てて考え込んでいると「ダメよ指揮官。だってベクターはコミュ障なんだから」と笑いながら57が話しかけてくる。さらりとベクターを軽くディスっとくあたり57っぽい。ベクターも抗議の視線を57に向けるが特に言うことは無いらしい。
「そういう目で改めて観察すると、相手も決して敵対しているわけでは無さそうだね」
人形達からは、うーんどうなの?との反応である。
「で?指揮官さんはどうしたいのかしら?」グローザが問いかけるが、他の隊長達も指揮官の方を見ている。指揮官の判断を聞きたい様である。
「一度・・・一度話をしてみようか」
その指揮官の答えを聞いたベクターは目を細め自嘲気味に「ま、私はどっちでもいいけど」と答えるだけだった。
そこから翌日のミーティングを開始する。
鉄血の
隊長には責任があるしアンタは隊長ディスったんだからやりなさいよ。とのこと。まあ、いい人選だろう。
「では、2人は白旗丸腰で。だな。記憶データのバックアップは確実にしておけよ」
「話が出来そうになったら、FALに護衛してもらいながら俺が行こう!」
えっ!?とFALが嫌そうにするが、提案した責任はとってもらう。
行政庁舎の周辺は残った第一部隊の二人とグローザ達第五部隊に包囲させる。多少は相手へのプレッシャーが必要だからである。
そんなこんなで大体決まったところで各部隊長同士で詰めを行い作戦計画が出来上がり、G36が議事録兼作戦計画書にまとめ上げる。最後に指揮官がサッと目を通してPDA上で電子承認を行いお仕舞い。打ち合わせからの続きなので補給や車両関係のチェックを主にやるくらいだ。
最後は雑談となったところで、基地の映像通信が着信したため人形達は流れ解散となった。
・・・・・・・
『やっほ〜。元気してた?コータ』繋げた映像通信の画面の向こうから笑顔で手を振っているのは、ヤシマ指揮官と同年代、二十歳そこそこの可愛らしい女の子だった。
「なんだよ。アリスかよ。忙しいんだからもう切るぞ」馴れ馴れしくコータと呼ばれたヤシマ指揮官はうざったそうに通信を切ろうとするが、アリスと呼ばれた女の子は馴れ馴れしく話を続ける。
『そんなに邪険にしないでよ!・・・ふふふっ。噂に聞いたけどついに作戦失敗したんだって〜?』
ニヤニヤしながら聞いてくる。全くうざったいことこの上ない。
「うっさいわ!切るからな!」
『あー待って待って。アタシのところも明日作戦に参加なんだよね。何かあったらコータが助けてね♪』
「助けてね。じゃないから!僕のところも明日リベンジだよ」
『なんだ〜。そっか。居ないんじゃあしょうがないか。まあアタシの担当は違法闇市の制圧だから余裕だもんね。じゃあね〜。また今度」
言うだけ言って一方的に切ってしまった。それはそれで腹が立つがまあいい。
彼女はアリス・コレット。同い年の同期の指揮官だ。普段は真面目でしっかり者なのだが二人だけの通信の時は妙に馴れ馴れしくだらし無い態度になる。全く何なんだか。
今度こそ本当にお開きとなった。
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
翌朝
「少佐!銃声です!恐らく昨日の連中かと思われます!」
サイトーから緊急の短距離通信が9課の仲間に伝えられる。
行政庁舎の外部を警戒していたサイトーが遠くの目視範囲外、恐らく都市の中で市街戦が行われていると判断する。元傭兵なだけあり状況判断は完璧だった。
「本当に戻ってきたのかよ」ウンザリな感じのバトーのぼやきが入る。横に居る素子からは"な?言った通りだろ"と言いたげな視線を向けられる。
しかし、昨日と違ったのは殺人アンドロイド達の動きだった。
「ん?なんだ?ハンビーが一台、ゆっくり庁舎へ向かっています」
まるで平時の時にVIPが庁舎に乗りつけるが如く、庁舎の入り口へと滑り込む。
サイトーの短距離通信に乗せた視覚情報には、庁舎の入り口に降り立つ2体のアンドロイドが映し出されるが、丸腰、サイドアームは不明もメインウェッポンは持たない代わりに小さな白旗を持っている。おもちゃの様な小さな旗がどこか可愛らしい。一人は昨日破壊したアンドロイドの様だった。
「なんだ?連中どういう風の吹き回しだ?」先日と180°違う態度に困惑するバトー。
「コミュニケーションを取る気になったのだろう」
「サイトーは引き続き外部の警戒、バトー、イシカワ、パズとボーマは市長室に集合。戦闘準備は忘れるな」
決して楽な道ではないだろうが、空から蜘蛛の糸が降りてきた感じがした。何とか手繰り寄せて未来につなぐ。隊長としての重責を改めて感じていたのだった。
ヤシマ指揮官がベクターの映像をチェックする場面のイメージは、攻殻機動隊SAC第四話でトグサさんがインターセプタで撮られた写真をチェックする場面をイメージしてみました。オマージュのつもりですね。
新キャラ
■コータ・ヤシマ
日系人の若者指揮官(男)
やり手で、密かに出世の野望を持つ。
これからどうなるか考え中。まだ決まってません(笑)
■アリス・コレット
フランス系の若手指揮官(女)
コータの同期。仕事はできるがコータの影に隠れがち。
コータ共々どうするか考え中。