転生したら女神様!?〜退屈だから子育てやらなんやらします〜目指せ世界最強お母さん! 作:参勤交代02
俺の母さんは、なんというか不思議な人だ。
いつも丁寧で落ち着いているのだが、たまにテンションが上がって俺らの予想外の行動をしたり、ドジしたりしている。
でも、いつだって俺らには優しかった。ご飯を作ってくれたり、手伝ってはいるが掃除や洗濯もしてくれている。分からないところがあれば理解するまで教えてくれて、俺たちに怒った事など一度もない。
俺は、母さんに拾われ、母さんの子どもになれて本当に心の底から良かったと思っている。
―――――――――――――――――――――――――――
物心ついた頃から、俺たちが両親から愛されていないことは理解していた。ご飯をもらったことや名前を呼んでもらったのも両手で数えるほどしかなかったと思う。
いつ死んでもおかしくない生活をしていた俺たちの面倒を見てくれたのは、近くに住んでいた名前も知らないお爺ちゃんだった。
爺ちゃんは俺たちに食べ物をくれたり、いつか役に立つからと言葉遣いまで教えてくれて、その頃の俺とアリアは比較的笑って過ごすことが多かった。爺ちゃんが死ぬまでは.......
そこからの流れはとても早かった。
爺ちゃんが死んでしまったことで、また元の生活に戻ってしまった俺たちは、ある日の朝珍しく両親たちに名前を呼ばれた。アリアと二人で両親のところまで行くと、そこにはここでは見たことのない上等な服を着ている男がいた。
どうやらこの親は、邪魔な俺たちをこの男に売り金を受け取っているようだった。俺とアリアは見てくれが良いので街で高く売れると上機嫌だとばかりに言っており、それを聞いた両親も揃って笑っていた。アリアは俺にしがみついてきて、俺もアリアの手を強く握った。
人売りの男に大人しく従って馬車に乗り、俺たちを乗せた馬車は街へ向かった。馬車の周りには護衛のような人が、中には俺たち以外にも子どもがおり、悲しげな顔や泣いている子、果てには全てを諦めている子などがいた。
アリアと並んで座りこれからについて考え、自分はいいからアリアだけは助かる方法はないかと頭の中で必死に考えた。
だが、そんな都合のいい方法が考えつくはずもなく、時間だけが過ぎていった。
しばらくの間馬車に揺られていると、外が騒がしくなり、いきなり馬車が止まった。どうしたのかと思っていると悲鳴が聞こえてきた。聞こえた方向へ顔を向けると、そこには二足歩行で歩く犬のような生き物が馬車の中の子どもを襲っていた。俺は瞬時にそれが爺ちゃんが言っていた魔物だと気づき、無意識のうちにアリアの手を掴んで馬車から飛び出した。
馬車から抜け出すと、すでに俺らを連れてきた人売りの男やその護衛は魔物にやられており、辺りは血の匂いで充満していた。それを見た俺は、内から湧き上がってくる恐怖心に耐えながら、森の中へとアリアを置いて行かないよう全速力で走った。
幸い魔物が追いかけてくることはなかったが、とてもじゃないが安心することは出来なかったのでひたすらに走った。
それから森の中を魔物に襲われる恐怖におびえながら一日中彷徨った。体力も限界で、途中転んだりしたため怪我もしてしまい、辺りは薄暗くなってきた。夜の森の静かでなんとも言えない雰囲気が余計に恐怖心を煽り、次第に呼吸も荒くなってきた。
アリアが倒れこんでしまいったため、俺はアリアを背中に担ぎながら歩き続けた。段々と俺も限界が近くなり、まだ生きたいという気力だけで森の中を歩いた。
すると、すぐそこに何かがいるのか分かった。人なのか魔物なのか、それともまた違った生物なのか詳しいことは分からなかったが、意識が朦朧としている中で俺は最後に賭けることにした。
(ここで負けたらもう潔く諦めよう、ごめん、アリア)
背中にいる妹に謝りながら、俺はなかがいる方へと向かった。
茂みを抜けるとそこには真っ白な髪がとても綺麗なまるで女神様のような人がいた。それを見て俺は、もう死んだんだと思ったが、最後にその人に話そうとした。
「お願い.....します.....俺はいい...から.....妹を..たす...け」
そこで俺の意識はなくなった。
―――――――――――――――――――――――――――
その後は、目が覚めるとベッドの上にいて、母さんがおかゆを持って来てからこっちの事情を話し、ずっと家にいていいと言われたりとかなりの急展開だった。
母さんは俺たちのことを本当の子どもだと言っていたが、俺はあまりそうは思わずまた捨てられないようにと家の手伝いをしたり自分の気持ちを隠したりと、かなり精神的に無理をしていた。逆にアリアはどんどん母さんに甘えるようになり俺は自分がどう思っているのか分からなくなってきた。
そして三人で料理を作った日、母さんに呼ばれこんなことを言われた。
『私ではあなたの母にはなれませんか?』
咄嗟に俺はそんなことないと否定し、母さんに思っていたことを話した。それを聞いた母さんは俺を抱きしめ、今まで一人でよく頑張った、今度は私を頼って欲しいと言われた。
そう言われた瞬間俺は母さんに抱き着き、自分でもびっくりするくらい涙が溢れ、今まで我慢してきたことを全部吐き出した。
それからだろう、母さんを本当の意味で母さんと思い始めたのは....
母さんのことは俺たちを愛してくれる、穏やかで包み込んでくれる優しい人だと思っているが、同時に、大きく頼りになる父親のような人だとも俺は思っている。
いつか絶対追いつき、母さんの自慢の息子でいれるよう頑張っていきたいと思う。