ノーゲームノーライフ【ゲーマ兄妹とバグチートな弟がファンタジー世界を征服するそうです】 作:misogi
「………なんだこれ」
「……………」
少しいや、かなり不気味な文章。
そして見たことのないURL。
URL の末尾に「 .JP 」などの国を表す文字列はない。
特定のページスクリプトへの―――つまりゲームへの直通アドレスで見かけるURL 。
「………どう、する?」
あまり興味はなさそうに、妹が同う。
「駆け引きのつもりか?まぁプラフだとしてもノッてみるのも一興か」
そう判断し、一度も話していない弟の方に話しかけたが
「おーい、零よ――――って寝てるし」
「……ぐぅ………ぐぅ………」
爆睡中である。
空は爆睡している弟をそのまま放っておいてURLをクリックする。
現れたのは、なんとも簡素な。
至ってシンプルな、オンラインチェスの盤面だった。
「………ふぁふ………おやす、み………」
「ちょちょ、待てって。『 』あての挑戦状だぞ。相手が高度なチェスプログラムとかだったら俺一人じゃ手に負えないって」
一気に興味が失せたらしく、眠りに戻ろうとする妹を引き止める兄。
「………いまさら……チェスとか………」
「うん……いや、気持ちはわかるけどさ」
世界最高のチェス打ち―――グランドマスターを完封したプログラム。
そのプログラムに妹は、二十連勝して興味が失せて久しい。
ヤル気がないのもわかる。が
「『 』に負けは認められない………一部を除いてだが。せめて相手の実力がわかるまで、起きてくれ」
「………うぅぅ…………わかった」
そしてチェスを打ち始める空。
一手、二手と積み重ねて行く兄の対戦を、興味なさそうに。
いや、眠そうに。船を漕ぐように、かくん、かくんと眺めている白。
が――――五手、十手重ねたところで。
五分の四閉じられていた白の目は開かれ、画面を凝視していた。
「………え?あれ、こいつ」
と、空が違和感を覚えると同時、白が立ち上がり、言う。
「……にぃ、交代………」
一切の反論なく、椅子を明け渡す兄。
それは、妹が兄の手に負えないと判断したということ。
つまり、世界最高のチェスプレイヤーが相手するに足ると判断したということ。
入れ替わった妹が、手番を重ねて行く。
――――チェスは『二人零和有限確定完全情報ゲーム』である。
『運』という、偶然が差し挟む余地のないこのゲームにおいて。
理論上、必勝法は明確に存在するが、それはあくまで理論の話。
十の百二十乗という膨大な局面を把握出来た場合の話である。
つまりは、事実上ないに等しい。
――――が、それを「ある」と断言するのが白。
つまり、十の百二十乗の盤面を読めばいいだけの話と断言し。
事実世界最高のチェスプログラム相手に二十連勝した。
チェスは最善手を打ち続ければ先手が勝ち、後手は引き分けることしか出来ない。
理論上、そうなっている。
そのチェスにおいて、一秒で二億局面を見通すプログラム相手に。
先手後手入れ換えで二十連勝し、プログラムの不完全性を証明した、その妹が。
「………うそ」
と驚愕に目を見開く。
――――すると
「落ち着きな、こいつは人間だ」
爆睡していたはずの愛しい零の声が兄と妹の耳に聞こえてくる。
「―――え?」
白も空も声の聞こえた方を見ると上半身だけ起こした零がこっちを不敵に笑いながら見ている。
「……零にぃ……いつおき、たの?……」
「ん?今だけど?、それよりも、プログラムは、常に最善手を打つ。集中力も切らさないが、既在の戦術通りの動きしかしない。だからこそ白は勝てる。が―――こいつは」
画面を指を指す零。
「あえて悪手をとって誘ってるな。それを相手プログラムのミスと判断したお前のミスだ白」
「…………うぅ」
零の言葉に、しかし妹は反論しない。
―――確かにチェスの技術において、いや、ほとんどのゲームにおいて。
白は空を上回る技量を持つ。まさしく―――天才ゲーマー。
だがこと駆け引き、読み合い、揺さぶりあいなど「相手の感情」という不確定要素を見抜くことにかけては――――兄は常人離れして上手い。
故にこそ『空白』―――二人だからこその―――無敗。
だが『空』を越える不確定要素を見抜くことや『白』を越えるゲームの技術それを一人の人間が持ったらどうだろう。
『空と白』それを一つに合わせた存在それが『零(れい)』空だけでは勝つことが出来ず白でも勝つことが困難まさに完全体超天才ゲーマー。
―――だが零は白とは違い才能ではなく普通の人間は持つことが出来ない超特殊能力を持っている。それのお陰でチェスの全ての手やその他のありとあらゆる情報を頭に記憶している。
「いいから落ち着け、相手がプログラムじゃねぇなら、なおのこと白が負ける要素はねぇよ。相手の挑発に乗るな。相手のひっかけや戦術は空が指摘するから、冷静になれ、こいつは『0』の挑戦状でもあるからな」
「そうだぞ、白、俺達二人で『 』だ、それに『0』が加われば、―――――相手に勝ち目はない」
零が白を落ち着かせる為に白を自分の股の間に座らせ二人でマウスを持つ。
「………りょーかい…………がんば、る」
コレが。
数多のゲームで世界ランキングのトップの一人『 』と『0』のからくりだった。
―――――………。
五時間以上に及んだ対局に決着の瞬間が訪れる。
スピーカーから響く、無感動な音。
『チェックメイト』
兄弟妹の――――勝ちだった。
「「「――――――――」」」
長い沈黙の後。
「「「はぁあああぁぁああ~~~~~……………」」」
大きく息を吐く二人。長い長い息を吐いたあと、三人は笑い出す。
「……すごい………こんな苦戦………ひさし、ぶり」
「はは、俺はおまえが零以外に苦戦するのを見るのすら、初めてだぞ?」
「………ふぅ~、やっと、終わったか」
―――――テロンッ♪
というメールの着信音が響く。
「さっきの対戦相手じゃねぇの?ほら開けてみろよ」
「………う、うん………」
と――――しかし届いたメールには。
ただ一言、こう書かれていた。
【おみごと。それほどまでの腕前、さぞ世界が生きにくくないかい?】