ノーゲームノーライフ【ゲーマ兄妹とバグチートな弟がファンタジー世界を征服するそうです】 作:misogi
白く染まる視界。
それが、目を開いたから―――即ち陽の光だと認識出来たのは。
久しく感じていなかった、網膜を焼かれる感覚故。
そしてようやく光に慣れつつある瞳に飛び込んだ景色から、兄は理解した。
そこは―――上空だった。
「うぉおおあああっ!?」
「………ッ!?……んだよこれはぁあああ!!?」
狭い部屋から一気に広がった広大な空間。
―――だが兄と弟が叫ばせたのは、視界に広がった景色の異常さ故だった。
空の脳が、状況を把握しようと脳回路を焼き切らんばかりに加速し、叫ばせる。
「「なん――――なんだこれぇえええっ!」」
―――何故ならばどう見ても、何度見返しても。
空に、島が浮かんでいた。
目を、頭を何度疑っても、視界の果てで空を飛んでいるのは、ドラゴンで。
どう考えても自分が知る『地球』のそれではない景色。
だが、それよりもなのよりも。
眼下に広がる雲から、浮遊感の正体が、落下している事実だと気づき。
「「あ、死ぬ」」
という確信に変わるまで、兄と弟が要したのは、実に三秒だった。
だがそんな悲愴な確信を打ち破るように。
高らかに叫ぶ声は、隣から聞こえた。
「ようこそ、僕の世界へッ!!」
壮大で、異常な光景を背後に、落下しながら『少年』は腕を開いて笑う。
「ここが君達が夢見る理想郷【盤上の世界・ディスボード】ッ!この世のすべてが単純なゲームで決まる世界ッ!そう―――人の命も国境線さえもッ!」
空や零に遅れること十秒ほどだろうか。
ようやく状況を把握したのか、目を見開いて、泣きそうな顔で零に抱きつく白。
「……あ、あ、あなた―――誰―――っ」
精一杯の、しかし囁くような抗議の叫びをあげる白。
だが相変わらず楽しそうに笑って、少年が言う。
「僕? 僕はね~、あそこに住んでる」
言って、遠く――――地平線の彼方の巨大なチェスのコマを指差す少年。
「そうだね、君達の世界風に言うなら―――“神様”―――――かな?」
頬に人差し指を当てて、可愛げに、愛嬌を込めて言う、自称神。
――――だがそんなのは知ったことではなかった。
「それよりオイ、コレどうすんだよッ!地面が迫って――――うぉおおおお、零ぃぃ白ぉッ!」
「ちょっ、しろにそらぁ、くっつくなぁああああ、く、首しまってるぅぅうううう!!!」
「…………~~~~~~~~っ」
白と零の手を抱き込むように、意味があるのかわからないが、自分を下にする空。
そして声にならない声で、零の首を掴んで絶叫をあげる白。
空や白とは、別のことで絶叫をあげる零。
そんな三人に、神を名乗る少年は、楽しげに告げる。
「また会えることを期待してるよ。きっと、そう遠くないうちに、ね」
―――――そうして、三人の意識は暗転した。
――――――――…………
「ぅ………うーん……」
土の感触。草の香り―――気がつくと、空は、地面に倒れていた。
うめきながら起き上がる空。
「―――な、なんだったんだありゃ………?」
――――夢か?
そう思うが、空は口にしないでおいた。
「………うぅ………変な夢」
「………あぁ、変な夢だ」
と、空に遅れて目を覚ました妹と弟が、うめく。
――――わざわざ口にしなかったのに妹と弟よ。
嗚呼、愛しい妹と弟よ。
“夢じゃなかったフラグ”なんてたてないでおくれ。
そう思いながら起き上がるが、どう気づかぬふりをしても足場は土。
見慣れない高い空、そして――――
「うをああああ!」
自分が崖っぷちに立っていることに気づいて、慌てて後ずさる空。
――――崖から一望出来る景色を見渡す。
そこには、ありえない景色が広がっていた。
…………いや、違う、言い直そう。
空に島。龍。そして地平線の山々の向こうに、巨大なチェスのコマ。
つまり、夢オチは―――――なかった。
「なあ、弟と妹よ」
「………ああ」
「………ん」
それを、光ない目で眺めながら、兄弟妹は言う。
「“人生”なんて、無理ゲーだ、マゾゲーだと、何度となく思ったが」
「…………そうだな」
「………うん…………」
三人、声をハモらせて言う。
「「「ついに“バグった”………もう、なにこれ、超クソゲぇ…………」」」
そうして――――三人の意識は、再び暗転した。
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――――『こんな噂をきいたことあるだろうか』――――。
あまりにゲームが上手すぎる者のもとには、ある日、メールが届くという。
本文には――――短い文と、URLがはられているだけ。
そしてそのURLをクリックすると、あるゲームが始まる。
そのゲームをクリアすると―――――この世界から消えるという。
そして――――
異世界へと誘われるという、そんな『都市伝説』。
………あなたは、信じますか?