ノーゲームノーライフ【ゲーマ兄妹とバグチートな弟がファンタジー世界を征服するそうです】   作:misogi

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ノーゲームノーライフ【六話】

 

 

 

 

 

__昔々の、さらに大昔。

 

 

 

 

神霊種は、唯一神の覇権をかけ、その眷属・被造物たちと共に争った。

 

 

 

 

それはそれは、気の遠くなるほどの永きに渡って、戦は続いた。

 

 

 

流血の染みない大地はなく、悲鳴の響かぬ空はなかった。

 

 

 

 

知性あるものたちは憎み合い、お互いを滅ぼさんと凄惨な殺し合いを繰り返した。

 

 

 

森精種たちは小さな集落を拠点に、魔法を駆り、敵を狩り。

 

 

 

龍精種は本能のままに殺戮に身を委ね、獣人種たちは獣同然に獲物を喰らった。

 

 

 

 

荒地とか黄昏に呑まれた大地は、さらに神々の戦乱によってなお深い闇に呑まれ。

 

 

 

 

幻想種の突然変異である魔王、そしてその同胞たる怪物どもは世に跋扈した。

 

 

 

 

そんな世に、いくたの王家も、あまたの美姫も、まして勇者など、いやしなかった。

 

 

 

 

人類種は、ただ儚き存在で。

 

 

 

 

国を作り徒党を組み、ただ生き残ることにそのすべてをとした。

 

 

 

 

吟遊詩人たちが謡うべき英雄譚も未だない―――そんな、血塗られた時代。

 

 

 

 

この空と海と大地が――――『ディスボード』と名付けられる、遙か以前の話……。

 

 

 

 

だが、そんな永久とも思われた戦乱は、衝突にその幕を閉じる。

 

 

 

 

空が、海が、大地が星そのはものが。

 

 

 

 

憔悴し疲弊し切り、共倒れ同然に争いの継続を断念させられた。

 

 

 

 

かくして――――その時点で、最も力を残していた一柱の神が、唯一神の座についた。

 

 

 

 

それは、最後まで戦乱に関与せず。

 

 

 

 

傍観を貫いた、神だった。

 

 

 

 

唯一神の座についた神は、地上の有様を見回し。

 

 

 

 

地上をうろつき回るすべてのものたちに語りかけた。

 

 

 

 

―――腕力と暴力と武力と死力の限りをつくし、屍の塔を築く、知性ありしものを自称する汝ら証明せよ。

 

 

 

汝らと知性な聞けものの群れの差違や、如何に?

 

 

 

 

すべて種族が、口々に己の知性を証明せんとした。

 

 

 

 

だが荒れ果てた世界を前にその言葉はあまりに虚しく響き。

 

 

 

 

ついぞ、神に納得いく解を示たものはいなかった。

 

 

 

 

神はいった。

 

 

 

 

 

―――この天地における一切の殺傷・略奪を禁ずる。

 

 

 

 

言葉は盟約となり、絶対不変の世界のルールとなった。

 

 

 

 

隠してその日、世界から戦いはなくなった。

 

 

 

 

しかし知性ありものたちは、口々に神に訴えた。

 

 

 

 

戦いはなくなっても、争いはなくなりませぬ―――と。

 

 

 

 

ならばと、神はいった。

 

 

 

 

――――知性ありしものと主張するイクシードたちよ。

 

 

 

知性と知力と才力と資力の限りを尽くし知性の塔を築き上げ、汝自らの知性を――――

 

 

 

 

 

 

「証明せよ!」

 

 

 

 

「なるほど、それ十の盟約によってすべてがゲームで決められる世界ってとこか」

 

 

 

 

「そうだ、ところで」

 

 

 

 

「あ、なに?」

 

 

 

 

「何とか、ズボン一枚ぐらい残して行っていただけますわけには?」

 

 

 

 

そう、今盗賊達は、ゲームで負け、空と零それと白に服を取られふんどし一枚の状態なのだ。

 

 

 

 

「その六、盟約に誓って行われたかけは、絶対遵守される。俺たちはこの体すべてをかける代わりに、あんたらは持ち物すべてをかけた。だろっ?」

 

 

 

 

「それはそうですが、こんな格好でここに放り出されては…」

 

 

 

 

「いくぞ、零、白」

 

 

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

「……お、ー……」

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

「待って、くださぁーい!」

 

 

 

 

「すみません、お願いします!」

 

 

 

 

盗賊達の叫び、悲鳴を無視してそのまま進む。

 

 

 

 

「くそぅ!」

 

 

 

「せめて一発殴らせろぅ!」

 

 

 

 

といい地面を叩く。

 

 

 

「どうやら盗賊でも殺傷、略奪の類はできないんだな」

 

 

 

 

「……多分、したくても、できない」

 

 

 

 

「くくく、つまり、すべてがゲームで決まる、ってことだろ」

 

 

 

 

弟――――零が不敵に笑って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ■■■    ■■■    ■■■

 

 

 

 

 

 

ルーシア大陸、エルキア王国――――首都エルキア。

 

 

神話時代においては、大陸の半分をもその領土とした国も、今や見る影もなく。

 

 

 

現在、最後の都――――その首都を残すのみとなっている小国であり。

 

 

 

――――もっと正確にいえば。

 

 

 

 

人類種の最後の国でもある。

 

 

 

 

そんな都市の、中央から少し外れた郊外。

 

 

 

酒場を兼ねている宿屋という、如何にもRPGにありそうな建物の一階。

 

 

 

 

 

 

「うぅ……うぅぅぅぅ」

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、早くしてくれない?」

 

 

 

 

 

 

「や、やかましいですわね。今考えてるんですのぉ…!」

 

 

 

 

 

 

「いくら考えても手は変わらないわよ?」

 

 

 

一人は十代中頃と思しき赤い髪の毛の、仕草や服装に上品さを感じられる少女。

 

 

 

そしてもう一人は――――。

 

 

 

赤毛の少女と同い年だろうが、その雰囲気と服装から随分年上に感じられた。

 

 

 

葬式のような黒いベールとケープに身を包んだ―――黒髪の少女。

 

 

行われいるゲームは………ポーカーらしい。

 

 

 

 

そんな二人を空たちは店の外から眺めていた。

 

 

 

 

 

「…………もり、あがってる………なに?」

 

 

 

 

「あ?知らないのか、あんたら異国人――――って、人間の異国なんてもうねぇか」

 

 

 

窓を覗きこむ少女の隣の席には、同じくテーブルを挟んでゲームをしている一組がいた。

 

 

 

幼い少女とその少女より少し年上の少年そして少年少女と同じフードを被った青年と、ヒゲを生やしてビールっ腹の中年の男。

 

 

 

青年が答える。

 

 

 

「あー。ちと田舎から出て来たとこでな、都市の事情に詳しくないんだわ」

 

 

奇しくもやっているゲームは、中と同じ…………『ポーカー』。

 

 

――――ただし、こっちはビンのキャップを使って。

 

 

 

青年の言葉に、訝しげに中年の男性が答える。

 

 

 

 

「人類種に残されている領土で田舎って…………そりゃもう世捨人じゃねぇのか」

 

 

 

「はは、そうだな。で、こりゃ何の騒ぎ?」

 

 

 

適当にはぐらかすように言う青年に、ヒゲの男は言う。

 

 

「今、エルキアでは『次期国王選出』の大ギャンブル大会が行われてんだよ」

 

 

 

酒場の様子を眺めながら、フードの少年が問う。

 

 

 

「あ?……次期国王選出?」

 

 

 

「おうよ。前国王崩御の際の遺言でな」

 

 

 

 

 

『次期国王は余の血縁からでなく“人類最強のギャンブラー”に戴冠させよ』

 

 

 

 

なおもヒゲの男、ビンのキャップを上乗せしながらいう。

 

 

 

「国盗りギャンブルで人類種が負けが込んで、いまやこのエルキア、しかもその首都を残すだけだからな――――なりふり構わなくもなるさぁなぁ」

 

 

 

「へ~、『国盗りギャンブル』かぁ………結構面白そうなことやってんだな、こっち」

 

 

そう答えたのはフードの少年。

 

 

フードの少女に倣って、青年も少年も酒場の中が気になる様子で覗きこむ。

 

 

 

「―――なら、何、あの嬢ちゃん達も次期国王候補?」

 

 

 

「んー?『候補』ってのは違うかもな、参加資格は人類種なら誰にでもあるからな」

 

 

 

ただ―――と付け加えて、酒場に視線を移す男。

 

 

 

―――ポーカーやってるのに“ポーカーフェイス”という言葉を知らないのか。

 

 

 

むぅぅぅと声が聞こえて来そうな顔で手札を睨む赤毛の少女を一瞥して、男が言う。

 

 

 

「あの赤毛のほう“ステファニー・ドーラ”―――前国王の血筋だ。遺言の通り、王族の血筋じゃない奴が国王になったら何もかも失うから自分が次の国王に、って狙いさな」

 

 

 

ここまで人類を負けこませた奴の血族が、全く必死なこって………と。

 

 

 

付け加えて、男はため息ひとつ。中の盛り上がりを端的に語る。

 

 

 

「……ふぅ、ん………」

 

 

 

「…………へぇ~」

 

 

 

「ふむ………『国盗りギャンブル』―――国境線さえゲームで決まる、か」

 

 

 

フードの少年少女と青年が互いに感想をこぼす。

 

 

 

 

少女は感心そうに。

 

 

 

少年と青年は面白そうに。

 

 

 

 

「ま、そんなわけで総当たりギャンブル大会が開催中なのさ」

 

 

 

 

「………総当たり?」

 

 

 

 

「次期国王に立候補する奴は、人類種なら誰でもよく、名乗り上げてどんな方法でもいい、ゲームで勝負し、負ければ資格剥奪、最後まで勝ち残った奴が国王って寸法だ」

 

 

 

―――なるほど、単純なルールだ。分かりやすくて結構だ。

 

 

 

だが、フードの少年は訝しげに言う。

 

 

 

 

「………結構適当だな。それでいいのか」

 

 

 

 

「『十の盟約』に従い、相互が対等と判断すれば賭けるもの、勝負方法は問わない―――誰と、何で、どのタイミングで戦うかまで込みで、国盗りギャンブルだからな 」

 

 

 

「………いや、別にそのことを言っているんじゃないんだがな」

 

 

 

そう、意味深に呟くフードの青年が再び酒場の中を覗き込む。

 

 

 

その青年に、少年少女が呟く。

 

 

 

「ありゃ、負けるのは当たり前だな」

 

 

 

「………うん負け込むの、当然」

 

 

 

「ああ、全くの同感だわ」

 

 

 

お互いに言い合う二人、青年がポケットから四角いものを取り出し。

 

 

酒場の中に向け、ナニかを操作すると、パシャッ、と。音が鳴った。

 

 

 

――――と中年男性がにやりと笑う。

 

 

 

「で、兄ちゃん?他人の勝負気にしてる場合なのか?」

 

 

言って、さっと札をオープンする、男。

 

 

 

 

「フルハウス。悪ぃな」

 

 

 

勝利を確信し―――その先の目当てのものを思い、下卑た笑みを浮かべる男。

 

 

―――が、フードの青年。

 

 

 

最初から興味がなかったかのように。

 

 

たった今、思い出したかのように応じる。

 

 

 

「え?あー、うん、すまん、そうだったな」

 

 

 

そう言って、無造作に札を開く青年に、中年男の目が見開く。

 

 

「ロ、ロイヤルストレートフラッシュだぁーーーッ!?」

 

 

 

最強の手札を、おくびに出すこともなく揃えた青年に、男が立ち上がり吠える。

 

 

 

「て、てめぇ、イカサマじゃねぇかっ!?」

 

 

 

「えーおいおい失敬な………何を根拠に?」

 

 

 

ヘラヘラと、椅子を引いて立ち上がる青年に、あおも追いすがる男。

 

 

 

「ロイヤルストレートフラッシュなんて、65万分の1の確率、そうそう出るかっ!」

 

 

 

「今日がたまたまその65万回目のアタリ日だったんだろ、運が悪かったね、おっさん」

 

 

 

飄々と言い放って、手を差し出す青年。

 

 

 

「じゃ、約束通り“賭けた”もの頂こっか?」

 

 

 

「――――くそっ」

 

 

 

舌打ちして男が財布、そして巾着を差し出す。

 

 

 

「『十の盟約』その六、盟約に誓った賭けは、絶対遵守される―――はい、こっそさん」

 

 

 

 

「………ありがと………おじさん」

 

 

 

 

「………強く生きろよ、おっさん」

 

 

 

 

言って悠々と椅子を立つフードの青年とペコリと頭を下げて青年の背中を追う少女と哀れみの視線を一瞬向けた少年。

 

 

そうして酒場に入っていく三人を見送るヒゲの男に、友人らしき人物が近づく。

 

 

 

 

「ヨォ、一部始終見てたけど、なにおまえ“手持ち全部”賭けてたのかよ」

 

 

 

「あァ………やれやれ、生活費どうしたもんかねぇ」

 

 

 

「いや、それより。生活費まで賭けて………相手は一体何を賭けてたんだ?」

 

 

溜息ついて、つまらなそうな顔で答えるヒゲ男。

 

 

 

「“自分達三人を自由にしていい”だとよ」

 

 

 

「なっ――――」

 

 

 

「話がウマすぎるとは思ったが………田舎もんっぽかったし行けるかと………どうした?」

 

 

 

「いや…………つか、おまえ、どれだ?」

 

 

 

 

「――――はん?」

 

 

 

 

「いや………ホモかロリコンか、それともショタコンか、どれもアウトだな………」

 

 

 

 

「な、あ、おいちょっと待て!」

 

 

 

「なーに安心しろ、カミさんには黙っててやるよ。そのかわり奢りな♪」

 

 

 

 

「ち、ちげぇ!しかも今、有り金巻き上げられただろうが!それより――――」

 

 

 

 

 

「あの条件だと、連れの女の子の貞操どころか『三人の命まで賭かんのに』余所見しながら、平然とロイヤルストレートフラッシュだぁ?なにもんだあいつら……………」

 

 

 

 

 

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