彼、泊進ノ介は燻っていた。
特状科はほぼ解散となったのだが、みんなが何故か集う憩いの場となっていた。
そんな中で、警視庁一科の刑事まで大出世し、愛する妻、霧子と共に警察官として働いていた。
しかし悲しいかな、彼は出世し過ぎたあまり、事件が回ってこなくなったのだ。
日常の事件を担当するのはもっと下の刑事のやる事で、彼には重大な事件しか任されないのだ。
なので、今日も彼は河原にスーツで寝そべり、刑事らしからぬ格好で寝ているのだった。
「平和なのは有難いんだがな··········暇だな」
これといって趣味もなく、仕事も終わってしまった。
警視庁の道場にいても、もう自分より剣道も柔道も強い者はいなかった。
まあ、半年以上命の危機と隣り合わせだった彼に平々凡々の一般警察官が挑んでも勝てる訳ない。
「··········そういえば、そろそろ日本ダービーか」
彼はスマホを立ち上げ、トップニュースを眺める。
仮面ライダーを辞めて、ベルトさんと話さなくなり、熱血刑事バカだった彼は様々な事に興味を持つようになった。
その1つがウマ娘だ。
ドライブの最高速度をもってすればどうってことないが、その脚には青春とロマンが詰まっている。
テレビでは毎日のようにウマ娘の特番が出され、アイドルとして祭り上げられる。
でもまあ、あまり気にしてなかった。
「今年は誰が勝つかな。ま、俺はよく知らんけど」
「サクラチヨノオーに振ってみない?」
「うぉっと!!?」
横から急に話しかけられる。
どうやらウマ娘のようだ。
「··········君、ウマ娘か。まだ授業中じゃないのか?」
「ザンネーン、私はもう単位とって自由奔放でーす。今は愛車のフェラーリでドライブ中よ」
「ムムム···············」
「貴方こそ、ここで何やってるのかしら?サボり?」
「俺ももう仕事終わったんだよ。というか、学生なのにフェラーリ?一応俺刑事だから、免許証見して」
「ウッソ刑事さん!?そんな人がサボりとか、結構お偉いさんなのかしら?」
「お偉いさん··········なのか?まあいいけど。それより、サクラチヨノオーって?」
「アタシの後輩よ。あの子なら、必ず勝つわ。ダービーを取れるウマ娘の大目玉だもの」
「ふーん、そうか」
正直、見に行こうかどうかも考えていなかった。
あまり興味もなかった。
しかし、話を聞いている以上、1つの疑問が浮かんだ。
「君は出ないのか?」
「···············アタシ?」
正直意味のわからない質問だった。
ウマ娘には距離適性というものがあり、得意不得意で出れるレースも決まってくるのだ。
まだ相手の得意距離も聞いていないのに、出ないのか、など、本当に意味のわからない質問だった。
しかし、彼女はポツポツと話し始めた。
「··········そうね。私は、もう一線を退いているのだけど、少し前の話よ」
『勝ったのはマルゼンスキー!レコードを記録し1着でゴールイン!』
『申し訳ないが、君をレースに出すことは出来ない。諦めてくれたまえ』
『君程の才能が潰れるなどあってはならない!私を倒すのでは無かったのか!』
『私は、やるぞ。マルゼンスキー。全てのウマ娘が、平等に戦えるレースを、学園を作るぞ!』
「ゲートは大外でいい。人気は最下位でいい。他のウマ娘の邪魔はしない。賞金も要らない。だから、だからどうか··········日本ダービーに出させてって··········」
「·························」
いつの間にか、過去のことを話しきっていた。
「皮肉よね。私のお陰で海外バは重賞レースに出れるようになったのよ」
「··········そうか。嫌なこと聞いちゃったな」
「私としては、もうなんにも出来ないからね··········だから、未来に託すことにしたのよ」
そんな彼女の目は未来を見ていた。
まだ未熟な若者の彼女を見て、進ノ介は見とれていた。
「今度の日本ダービー。サクラチヨノオーよ。忘れないでね?」
「ああ、覚えておくよ。あ、そうだ。君、名前は?」
聞いていなかった。彼女の名前を。
「マルゼンスキーよ。お巡りさん」
「泊進ノ介だ」
マルゼンスキーが端に停めたフェラーリに向かったのを見て、去ろうとした。
次の瞬間、
「えーーーーッ!?何コレ!」
マルゼンスキーの悲鳴が聞こえた。
「どうした!?」
進ノ介が駆け付けてみると、
「何このナウい車!チョベリグじゃない!」
赤い車体、黒のライン、厳ついライト。
「トライドロンだ··········」
「あら?進ノ介さんの車?」
「いや、なんでこいつがここに··········」
そう。マシントライドロンはベルトさんと一緒に消えた筈だった。
『話している暇は無いぞシンノスケ!』
何処か懐かしい声。
いつも聞こえていた口うるさい声。
進ノ介は泣いていた。
「ベルトさん··········クソッ··········」
『久しぶりだなシンノスケ。いきなり消えてすまない。私には、やる事があったのでな』
「いいよ、もう··········それで、どうしたんだよ」
『ロイミュードが復活した模様だ。恐らく、蛮野が作った109体目のロイミュードだろう』
「109体目!?アイツ、まだそんなことを··········」
『剛に破壊されてなお研究を続けていたとは、恐れ入るよ。とにかく現場に向かうぞ!』
「おうよ!」
「あの〜··········?」
2人のやり取りを見て少し混乱した様子のマルゼンスキーが話し始める。
「そのベルト、さん?の事は聞かないでおくわ。でも、一つだけお願いがあるの」
「なんだ?今は急いでるんだが」
「その車、運転させてちょうだい?」
『ダメに決まっているだろう!トライドロンは、色々重要なのが詰まっているんだ!』
少し文がおかしくなるベルトさん。
「えー、じゃあお巡りさんの事、出版社にリークしちゃおっと。刑事がサボりとか、かなりニュースになるわよ〜?」
「う〜〜··········わかった!1回だけだぞ!」
『シンノスケ!彼女は見たところまだ学生だぞ!日本には学生が車に乗れない法律があるんじゃないのかね!?刑事がそれで良いのかね!?』
「まあ、彼女、免許証持ってるし、良いかなって」
『··········まあ、しょうがないだろう』
「やった♪それじゃお願いね!」
運転席にマルゼンスキー、助手席に進ノ介と、あまり見ない光景だった。
「さ、フルスロットルよ!」
その先はまさにフルスロットル、と言うより火車だった。
進ノ介は勿論、三半規管を持たないベルトさんも吐き気を催していた。
「フゥー!!やっぱり新車はテンションアゲアゲね!」
「し、死ぬかと思った··········」
『マルゼン助手に、車の運転をさせてはいけないな··········』
トライドロンから降りると、もう既にロイミュードが数体確認できた。
「野郎!許せねぇ!市民の平和は、俺が守る!」
『OK進ノ介!Start your ENGINE!』
久々の変身でキーを回すが、
「なんでだ!?キーが回らない!」
『おかしいな··········故障でもしたか?』
「そんな訳ねぇだろ!クッソ、動けこの野郎!」
四苦八苦していると、トライドロンからクラクションがなった。
『トライドロンが反応している··········まさか!』
「え?どうしたんだよベルトさん!」
『進ノ介!ライダーシステムがマルゼン助手に反応しているんだ!彼女と共に変身するのだ!』
「何言ってんだよベルトさん!民間人を巻き込めない!それに、マルゼンスキーの分のベルトは!?」
すると、トライドロンの中からマルゼンスキーが出てくる。
「ちょっと!なんか変なベルト着けちゃったんだけど!?」
「なんで、ベルトさんがもう1人!?」
『進ノ介、あれはドライブベルトではない。あれは、トライドロンによって造られた我々の記憶と想いが、トライドロンの人工知能によって形にされたのだ!さあ早く!彼女と息を合わせて変身するのだ!』
「あぁもう!考えるのは辞めた!マルゼン!」
「合点承知の助!真似をすればいいのね!」
「じゃあとりあえず、」
ひとっ走り付き合えよ(付き合いなさい)!
『DRIVE!TYPE SPEED!!』
市民を守る正義の戦士、仮面ライダードライブの復活だ。
「見せてやる!俺達のオーバードライブを!」
『アタシ達のフルスロットルで勝つわよ!』
『任せたまえ!ヒッサーツ!』
ドライブの脚に装着された車輪が高速回転し、ロイミュードの周りを走り回る。
「決める!」
『フルスロットール!スピード!』
「ハァァァァッ!」
『Gaaaaa!!!?』
高速で敵を撃破し、マルゼンと進ノ介の2人に戻る。
『Nice Driveだったぞ2人共!』
「ありがとうマルゼン!まさか合体するとは思わなかったけどな!」
「いいのよ!困った時にはお互い様ってね?」
「いやーこんな所、霧子に見られたらヤバいけどな。刑事が昼から高校生と話してるとか、蹴られること間違いなしだよ」
『進ノ介、それはフラグという物では··········』
ベルトさんの予言通り、
「進ノ介さ〜ん?何をしているのかな〜?」
「ゲッ!霧子!?なんでここに!?」
「重加速が起こったらシフトカーが真っ先に気付くでしょうが。それより、ちょーっと署までご同行願いますからね!」
「いや俺刑ゴッ!待って!首は!首はヤメテ·····!」
「新婚さんね!ほーらさっさと歩くのよこの浮気者!」
「マルゼン·····!お前まで··········クッ··········」
『やれやれ、痴話喧嘩はみっともないぞ進ノ介』
「うるせーよベルトさん!」
泊進ノ介の止まりかけていた
それは、マルゼンスキーとの出会いか、ベルトさんとの再会か。理由はどうであれ、彼のフルスロットルな日常が戻ったのだ。
彼は、ここからまた走り出す。
「さあ、ひとっ走り付き合えよ!」
変身したあとは、マルゼンスキーがベルトさんから話しています。わかりにくくてすみません。