ここは、トレセン学園。
十人十色、多種多様なウマ娘が未来を志す場所。
そのウマ娘たちに関連する職業の者達も、学園内には多く存在する。
新しい逸材をスカウトしに来たトレーナー、有名ウマ娘への取材に来た新聞記者etc…………
今日も、変な人が多くいるトレセン学園に、一際異様な人物がいた。
「ここがトレセン学園…………ウマ娘達の宝庫か。いい研究材料が見つかりそうだ……!」
ウマ娘。
人間の数十倍の脚力と強度を持った下半身に、男性並の腕力とパワーを持った上半身。
しかし、性別は全員女性。
DNAにはXとYの他にUなんていう物があったそうな。
人間の祖が猿人なら、ウマ娘の祖はなんなのか。
彼、桐生戦兎の興味は尽きなかった。
「新世界になって、気になることなんて無いと思っていたけど、こんな生涯研究材料があるなんて!」
しかし、トレセン学園は許可のある者、または学生しか入れない。
なら、どうするべきか。
「ようこそ、トレセン学園へ!新しく赴任された、桐生トレーナーですね。学園案内を勤めさせていただきます、駿川たづなです。」
「桐生戦兎です。よろしく。」
そう、トレーナーになるのだ。
(この天っ才物理学者にかかれば、あの程度の試験どうってことないさ!)
「トラック、体育館、ジム、プール、カフェテリア、図書室、視聴覚室…………本当になんでもありますね。」
「ウマ娘に必要なものであれば、ここには全てあります。勿論、トレーナーにとって必要なものも。」
「半信半疑でしたが、これならその発言も頷けます。」
さて、トレーナーになったら必要なものは?
そう、担当ウマ娘だ。
「さぁーて、この天っ才物理学者のお眼鏡にかなうウマ娘はいるかな〜?」
春先、入学シーズンが過ぎ、今季のトゥインクルシリーズが始まろうとしている。
となれば、ウマ娘とトレーナーはバディを組み、トゥインクルシリーズの頂点を目指す。
「トレーナー室も貰ったし、実験に協力してくれるウマ娘、いるかな…………なーんつって〜。」
ガラッ
シュワァァァ…………
プスプス…………
「おやおや、ノックもしないとは、少々不躾ではないかい?」
もらった部屋にいたのは、栗毛に白衣を纏ったウマ娘だった。
「ここは俺の部屋では!?」
「何を言うか。ここは私が勝手に使用している空き部屋だ。現時点で私以外使用していない。つまり私の研究室だ。研究室で何をしようが私の勝手……それより、不法侵入だ。帰りたまえ。」
「不法侵入ではありませんよ。アグネスタキオンさん。退去願はもう出してある筈ですが?」
アグネスタキオン。
そう呼称されたウマ娘は、静かに鈍重な溜め息を吐く。
「すまないが、私はまだ研究の途中でね。書類は恐らくその机のどこかにある。」
「ですが、提出したのは事実です。トレーナーがついてる訳でもなく、レースにも出走していないなんて、このままでは退学になってしまいますよ。」
「………………」
レースに出ておらず、トレーナーもいない。
それはこのトレセン学園では致命的だった。
数多くのウマ娘がこの学園に入り、そして去ってゆく。
それは、本人のメンタルであり、実力でありと、理由は様々だが、こういったケースもある。
「…………わかった、わかりましたよ。研究資料も捨てられては敵わない。2日ほど空けてくれないかい?」
「その言葉、今度こそ信じていいんですか?」
「二言は無いとも。」
本人も、もうこの学園に用は無いのだろう。
肝の据わった返事をしていた。
しかし、この結果は予想出来なかっただろう。
「…………分かりました。桐生トレーナー、別の部屋を開けますね。ってあれ?桐生トレーナー?」
「へぇ〜、面白い研究だね。」
「ッ!?勝手に資料に触らないでくれ!」
「っとと。いやいや、ただ気になっただけだ。しかし、ここのとこだが…………」
戦兎は近くのペンをとり、書類に書き加える。
「どうよ。これの方が効率がいい。」
「これは……!?こんな数式が…………」
「でしょ?ヤバいでしょ?スゴいでしょ?天っ才でしょ?これが、俺が天っ才物理学者である理由って訳。」
「日本語が支離滅裂ですよ桐生トレーナー。」
食い入るように資料にのめり込むアグネスタキオン。
今まで見たことの無い『ナニカ』に直面しているのだ。
「いやいや、邪魔して悪かったよ。」
「もう……早く行きますよ。」
「こんなことが…………」
頭の中を混乱が埋め尽くす。
この難問を解決する術を、彼女は1つしか知らなかった。
「ちょ、ちょちょっと待ってくれ!」
「ん?どうした?」
「君、いや、先生!」
初めて科学というものを知った時のように。
ウマ娘に対する疑問に心を踊らされた時のように。
恥も躊躇いも捨て、1つの答えに縋り付く。
「私の、トレーナーになってくれ!いや、なってください!」
たった一つの、差し伸べられた
〜3ヶ月後〜
「タキオンさん。ここの所凄くいい成績ですね!やっぱり、トレーナーがついたからですか?」
「うーん、それもあるけどねぇ…………」
カフェテリアで後輩のダイワスカーレットと共に紅茶をすするアグネスタキオン。
「なんというか、問題は増えた気がするねぇ…………」
「え?どうして…………」
ヴヴヴヴ…………
「失礼、もしもし?」
『タキオン君!早く来てくれ!遂にアレができたんだ!!』
「は、はい先生!すぐ向かいます!」ピッ
珍しく焦るタキオン。
「すまないスカーレット君、お茶会は今度だ!また埋め合わせはするよ!」
「ちょっとタキオンさん!?」
「行かせてあげてください…………。彼女も、走る理由を掴めたんですから…………。」
「カフェさんまで?まあ、無理には止めないですけど…………」
理由を知っている様子のウマ娘は、マンハッタンカフェ。アグネスタキオンの同級であり、タキオンの事情を知るウマ娘。
「……?どうしたの?」
彼女は『お友達』なるものと心を通わすことが出来るらしい。
そのお友達がざわめいていた。
「え……?桐生トレーナーと、タキオンさんが?」
「どうだい、コレ!」
「これは…………!これは?」
「遂に完成したんだよ!前の設計図に改良を加え、人体に影響のないネビュラガスを元に作り上げた新!ビルドドライバー!」
「ビルド、ドライバー?先生、この造形品で何を……?」
「造形品とは何だね。このアイテムは、ものすっごいパワーと可能性を秘めており、3次元の物理法則をフル活用した変身装置なのさ!」
「ううむ…………薬品は幾らでも作ったことがありますが、流石の私もこんな発明品は…………。」
「まあ、まだ実験していないから、とりあえず外行こうか!」
〜トレセン学園 中庭 三女神像前〜
「神聖な女神像の前で実験ですか……。」
「成功確率が上がるかもしれないでしょ〜?こういう時こそ非科学的な虚数確率に頼ってみるもんだよ。」
戦兎が腰にベルトを当てると、格納式のベルトが発射され、装着される。
懐から赤と青のボトルを取り出す。
「また新しい発明品が…………」
「これはフルボトル。振れば振るほど、内部のトランジェルソリッドが増殖、活性化し、素材エネルギーが効果を発揮する。そして、この素材は…………!」
カシャカシャという音と共にベルトにボトルを装填する。
『Rabbit!』
「兎?」
『TANK!Best Match!』
「これがベストマッチ!兎と戦車のコンビネーションさ!」
そう叫んだ瞬間、学園に爆発音が響き渡る。
「なんだ……?こんな時に…………」
噴煙の中から異形の怪物が姿を現す。
「あれは…………!?」
「ッ!スマッシュだと!?」
スマッシュ。
かつて、戦兎達一行が殲滅した難波重工にて作られた。
人間の体内にネビュラガスを注入し、変質した姿。
それこそがスマッシュ。
「そんな…………馬鹿な!」
「先生、早く逃げましょう!ッ……先生?先生!」
「タキオン君は早く逃げてくれ!あいつは…………」
タキオンが向かうよりも素早く、彼は走り出した。
「スマッシュ…………。俺のネビュラガスで生まれたのか、難波重工の様なヤツらが出てきたのか。どちらにしろ…………フッ!」
「グァァ!?グウゥゥ!」
かつて、『桐生戦兎』が誕生する前の人格、『葛城巧』が研究し、作り出したものこそがネビュラガス。
その副産物こそ、スマッシュ。
「元々、お前たちを作ったのは俺だ。だからこそ……俺はまた戦う!」
「先生!」
「タキオン君…………」
何かを決心し、傍に近寄るタキオン。
「…………フッ。じゃあ、一緒に戦うかい?」
「私は、先生と共にいますよ。」
フルボトルを取り出し、ベルトを装着する。
「さあ…………」
「「実験を始めようか!」」
『ラビット!タンク!ベストマッチ!』
タキオンと戦兎の足元にパイプが広がる。
『
「
それは、かつて相棒の万丈龍我と合体した時のように。
スーツ内に物理法則は存在せず、1人の体に2人の精神が混同していた。
『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』
「勝利の法則は!」
『決まっているとも!』
人間を脅かす敵を倒す、科学の戦士!仮面ライダービルドの復活である!
「一気に決めるぞ!」
『Ready Go!』
戦車の力でスマッシュの足元を打ち上げ、兎の力で高く飛び上がる。
『そうそう、この位置が!』
「最も威力の高い位置!」
敵を物理曲線が掴み、拘束する。
「「はァァァァッ!」」
『Voltex!Finish!』
「「たァァァ!!」」
ドゴォォン!
軽く、しかし重い一撃で確実にスマッシュを屠ったのだ。
変身を解除し、元の2人に戻る。
「やったな、タキオン。俺たちの完全勝利だ!」
「科学者としては、あの姿のデータも取りたいところですが…………まあ、助かっただけ良しとしますか……」
「あ!またお二人ですか!今度こそ逃がしませんからねー!」
「ゲッ、たづなさんだ!逃げるぞタキオン!」
「ククッ♪戻ってまた実験ですね!」
〜数週間後〜
「今日は、お前の初公式戦だ。気張らず行けよ!」
「お任せ下さい先生。なに、実験と練習の成果を見せるだけですよ!」
限界のその先へ。共に果てを歩むウマ娘と仮面ライダーのコンビが誕生した瞬間だった。
「「さあ、実験を始めようか!」」