中高一貫『キメツ学園』。春、桜舞い散る入学式。
誰もが、ため息一つ吐かず前を見て、これからの学園生活に明るさと楽しさを期待し、校門を潜る。その景色は誰もが微笑みを浮かべる光景だ。
「「「はぁ」」」
……そんな光景、のはずである。
「「「はあ〜」」」
そんな光景であるはずなのだが、校門の前でため息をつく三人の姿があった。
「ああ、友達百人できるだろうか……」
そんな呟きを漏らす国継一勝。
「えっ、何言ってんのこの人、小学生? 小学生なの?」
自身がため息を吐く理由などそこらにほっぽり出し
「くっそっ! あの男、朝っぱらから現れやがってぇ〜」
「えっ、何この女の人、こわい! 怖いよ! やめてよぉ〜」
苛立ちを露わにし、顔をどうとは言わないが歪ませる胡蝶しのぶ。その顔を見て一気に恐怖に陥り初対面の一勝にすがりつく情けない姿を見せる善一の姿が校門の脇にて行われていた。
遡ること、数分前。
「結婚してください」
校門の前でそんなプロポージが行われていた。
「やめてください」
そう笑顔で、そのプロポーズをぶった斬るしのぶ。
「そ、そんなぁ〜、結婚してよぉ〜。だって明日には俺死ぬもん。絶対死ぬもん! 最後の日くらいいい思いしたいんだよぉ〜」
「やめてください」
「いいじゃんかよぉ〜」
「やめてください」
苛立ちからか、はたまたそのウザさにだろうか額に青筋が出来るのがはっきりと見えた。
「やあやあ、しのぶちゃん元気ぃ〜」
そんな声が聞こえて来た時、血管がちぎれる様な音が聞こえた。彼女はこう思っただろう。無理、と。
「あれぇ、どうしたのぉ? そんんな人を殺しそうな目しちゃってさぁ。もしかして結婚したくなっちゃった?」
「やめてください。気色悪い」
そう言いながら笑顔を保つ彼女。はっきり言って不気味である。そして、完全に怒り心頭のご様子である。その様子を聞き取ったのだろう。求婚を申し込んでいた善一はコソコソとその場を離れようとしていた。
「どこに行こうというのですかぁ〜」
しのぶはそんな事を言いながら逃げようとした善一の首をがっしりと掴む。表情はあくまで笑顔だ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
汚い濁声で叫び声を上げる。その様は狂乱している様にしか見えない。
「わたし、この人と付き合ってるんです〜。だから、消えてくれませんか〜?」
平坦。声は平坦である。しかし、その心の内にある怒り、その他もろもろの感情は善一の耳に届いている。それでも見た目きれいな笑みを浮かべる彼女に完全に善一は恐怖を埋め込まれていた。
「へぇ〜、そうなんだ〜。で、どうなの? 本当なのかな?」
さらに追い討ちをかける様に彼、童磨は善一にその感情をぶつける。嫉妬の怒りである。
「そうなんですよぉ〜、ねえ?」
横の狼、前の虎。捕食生物に捕まった草食動物の気持ちが彼には分かった気がした。
(誰か助けて!)
切実に、そう切実にそう願った時だ。彼は現れた。
「あの〜、すみません」
彼の名前は継国一勝。とある人物の息子である。彼は誰もが声をかけず我関せずとスルーしていた現場にそう声をかけた。
「ああ、ちょっと後にしてくれる」
「ああ、すみません。すぐに退きますので、ねえ?」
「っ!……っ!」
邪魔そうに一勝を見る童磨。その場を去り感情の全てを名も知らぬ少年にぶつけようとしているしのぶ。それを察した助けの目を向ける善一。そんな彼らを見て彼はこう言った。
「キメツ学園ってどこですか?」
その場の誰もが転けそうになった。古いリアクションだが、彼等は確かにそのリアクションを取りそうになったのだった。
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