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一週間後。
キュウとの生活はすっかり慣れてきて、日常となり始めていた。
部屋は一週間前と比べ豚小屋と称される状態からすっかりキレイになっており、テレビの音を流しながら、隆一はキッチンで夕飯を作っている。
『また殺害事件です。今日午後04時頃、連絡がつかず不審に思った親戚が発見……亡くなったのは……警察はその猟奇的な手口から同一犯断定し、連続殺害事件として事件を追っていたます。』
一方キュウは、ベットに寝っ転がりながら先日に買って貰ったスマホに夢中になっていた。
服装は和服から現代的になっていて半袖に短パンと、現代文明の心地よさの沼にどっぷりハマったその姿は出会った当初の威厳のある姿かけ離れ、また子供の姿であるため子供がいないはずの隆一は、そんな彼女に父性的なものを感じ始めていた。
当時世界に絶望しいっそ滅びろと願っていた隆一は、今幸福感に包まれてこの生活が永久に続けば良いと願っている。
「隆一! 良い匂いが伝わってくるぞ、ご飯はまだかっ?」
キュウはスマホから目線を離さず、隆一に聞いた。
本来ならば妖怪である彼女に十分の妖力があれば、食事という妖力の回復に効率が悪い行動をとる必要はないのだが、現在その妖力が十分ではないプラス現代食の美味に震撼したキュウは、別の意味の食事中毒になっていた。
「はいはい。ちょっとまって、今皿に移している途中だから」
そう言って隆一は出来た青椒肉絲を鍋から皿に移し替え、テレビとベットの間にある背の高くない小さい机に持って行った。続いて箸やご飯も持ってベットと机の間にあぐらをかいて座った。料理は1品のみだが2人なので事足りる。
「ほら、出来たよ。食べよ」
「やっとか!」
キュウは素早く体を起こして、同じようにあぐらをかいて隆一の隣に座った。あと10cmで肌と肌が触れ合う距離に、隆一の体がこわばりいつまでたっても慣れる事が出来なかった。
この緊張した状態から逃げたいゆえに彼女から体を遠くにズラしたかったが、彼女から離れたくもないため隆一は現状維持を選んだ。
「おっ! おぉー! うまい! うまいぞ隆一!」
キュウは隣で茶碗を持ち、目を輝かせながら箸を動かす。
「そうか、ありがとう。そう言ってくれて作りがいがあったよ」
『この事について世間の声を聞いてみました。
Mさん:いやー、怖いですね。今週だけでもう3回目でしょう? もう怖くて夜も眠れないですよ。私は妻共々共働きなんですが、代わり番こして睡眠をとっているから、もう睡眠不足がヤバいんですよ。頼む犯人! 早く捕まってくれ!
Fさん:犯人は金品とかべつに盗んでいないんですよね!? ただ人殺しを楽しんでいるにしか思えません! 警察には一刻も早く犯人を逮捕して、正義の鉄槌を下してほしいですっ!
Sさん:どんでもねぇサイコキラーだよこいつはッー! くせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ──ッ!! こんな悪には出会ったことがねえほどなァ──ッ! 吐き気を催す邪悪とは正しくこの事たぜッーー! よし! 一度は言ってみたかったんだよなっ! つーかっ! 警察はなにやってんだよ! こんなクズ早く捕まえろ! そして犯人は一日も早く死刑判決されろ!
Nさん:この人は一体何がしたいんですか? 人を殺して何が面白いんですか? いいえ、全然面白くありません。人殺しは悪です。あなたは悪です。つまり正義は必ず勝ちます。因果応報をご存知ですか? 今はまだ逃げおおせてはいますが、この先何年何十年そうしているつもりですか? あなた今これを見ていますよね? なので早々に自首をおすすめします。』
「くっくっくっ、くっふふふふ、あはははっははっはっーー!」
いつも通り食事をとっていたら、キュウが急に腹を抱えて笑っていた件について。それも涙が出るほど。
「うわっ、びっくりした。どうしたんだ?」
「くっくっくっ、うふふふふぅ……くっくっいや、いや。なんでもない。ただの思い出し笑いだ」
思い出し笑いだけで、そんなに笑えるのだからどれほどの面白い話なのだろう。
「なあ、キュウ。それってどんなお話?」
隆一は興味があって聞いてみた。しかし返事はなく、キュウは視線をまっすぐにしていた。
彼女の視線を追ってテレビを見てみると、さっきキュウの隣で緊張して見てない上耳にも入って来なかったが、どうやら連続殺人事件のニュースだった。しかも、この町でらしい。
自分には関係ない世界の話。と普段はニュースにあまり関心はなく、テレビのニュース番組が出たら直ぐに変えるなどと、している隆一は無意識的にニュースをいらない情報として、シャットアウトするようになっていた。例えニュースの情報が耳に伝わったとしても、音は聞こえるが、内容は1秒足らずで忘れたという感じである。
そう言う風に生活して来た隆一は自分の町に起こったニュースにはじめて認識してびっくりする。
「……ん? ああ」
キュウは1拍おいて意識を戻し、さっき隆一が質問したキュウを思い出し笑いをさせた話をご飯を食べながら語った。
その内容は、紂王がどれほどの馬鹿で、キュウがどんな手段で誑かし、見事のまでに彼女の思惑通りに行った話だった。
「ふふふ、いやはや、あの傑物は今思い出しても滑稽で面白いわい」
やはり人と妖怪では笑いのツボが違うようで、所々理解出来ない箇所はあったが、彼女は面白かったらしいから、いっか。
とはいえキュウはそう笑いながら語ったが、どうも、この思い出話は先ほど彼女を腹を抱えさせて笑わせた原因とは違っている。確証はないがそんな気がした。
「うーん。なんか羨ましいな」
「ん? それはなぜだ?」
「だって何千年以上たっても、未だに君に覚えてもらえてるんだよ?」
「うっ、馬鹿者。お主なら妾は何千年、何万年もっ……! そもそも妾の協力者であるお主を死なせんわい!」
「そう、なのか、ありがとう」
キュウは耳を赤くさせてそっぽ向いた。それは協力者である隆一を離心させないための、計算尽くされた嘘の言葉かもしれないが、それでも隆一は嬉しかった。