NEW GAME! ~omnibus love stories~ 作:黒ゴマアザラシ
八神視点
「さてと──」
私ははじめとゆんに追加の仕事の準備をする。
入社して一週間の青葉は、渡してた参考書が思っていた以上に進んでいたので、さっき仕事を振ってあげたところだ。
初仕事の内容は町のモブキャラの作成。
初心者にしては妥当なところだろう。
だけど、この仕事はできれば青葉一人でやってもらいたい。
そのために、先輩の二人には追加で仕事を作っている。
あとは、敦さんだ。
あの人をなんとかしないと。
敦さんはただでさえ仕事で忙しいのに追加の仕事を出すわけにはいかない。
青葉はまじめな子だから、人に頼りっきりなんて情けないマネはしないとは思うけど、とりあえず、青葉には余計に手を加えないでと頼む必要がある。
なので私は、他の人にバレないように社内メッセで敦さんに連絡した。
コウ@定時で帰りたい 『敦さん、ちょっといいですか?』
しばらくすると、敦さんから返信が来る。
敦@働きたくない 『どうした?』
コウ@定時で帰りたい 『さっき青葉に仕事を振ってあげたんですよね。それですこしお願いがあって』
敦@働きたくない 『お願い?』
コウ@定時で帰りたい 『青葉には、あんまり手を貸してあげないでほしいんです。そりゃ軽いアドバイスくらいならいいですけど』
敦@働きたくない 『ふーん。わかった』
敦さんは私の意図を察してくれたのか、すぐに了承してくれた。
やっぱりこの人も人をちゃんと見てくれてるから助かる。
私よりも倍以上働いてるし、仕事の腕も私よりすごい。なのになんでこの人は出世してないんだろう。
敦@働きたくない 『まあ、今は俺が部下でお前がリーダーだ。お前の好きなように使えばいいさ』
「……」
敦さんのこの言葉にすこしだけ嫌な感じがした。
まるでそれは──
コウ@定時で帰りたい 『そんな言い方ないんじゃないですか? まるでそれは、『青葉にはなにも期待してない』そう言ってるように聞こえますよ?』
青葉は才能はあると思う。それをまるでいてもいなくても困らないような言い方をする敦さんに対して私は、食ってかかってしまう。
敦@働きたくない 『お前は、入社して一週間のド素人に何を期待しろと?』
しかし、敦さんは冷静で、冷静すぎるほど淡々していた。
敦@働きたくない 『八神、お前は涼風に期待しすぎだ。誰しもお前みたいにこなせるわけないだろう。一週間でモデリングの仕事?そりゃすげぇよ。でも、仕事ができることと、仕事ができ続けれるかはまた別の話だ』
「……」
敦@働きたくない 『正直、今は仕事を覚えることよりも、他の社員と交友を深めて信頼関係を作る方がいい。仕事はそこから少しずつ覚えるもんだ。そりゃ実力があるから信頼させるってのもあるのだろうが、実力があっても信頼されてなきゃ誰も付いてこない。それはお前が一番よくわかってるだろ?』
コウ@定時帰りたい 『でもそれは、実力を正当に評価されないってことですよね?』
そんなの嫌だ。信頼とは、要するにコネだ。
実力があるのに正しい評価をされないのは間違ってる。
敦@働きたくない 『そうかも知れんがね。俺とてぶり返したくないが──』
画面に出てきた文字に私は奥歯を噛み締めた。
『くれぐれも間違えるなよ』
その文字を私は見つめる。
私は一度、後輩にムチャをさせて辞めさせてしまったことがある。
敦さんは次はそうなるなよ。
と言っている。
「……わかってるよ。それくらい」
確かに、敦さんの言ってることは正しいと思う。
少なくとも、それは私が一番よく理解してる。
だけど、それでも私は敦さんが考えてること、信じてるものは間違ってると思う。
だって敦さんには、ゲームを作る人間として──いや、モノを作る人間としての一番大切な物を持っていない。
そんな気がした。