NEW GAME! ~omnibus love stories~ 作:黒ゴマアザラシ
八神視点
「おーい、ヨッシー、遊びに来た――ってどうしたぁ!?」
それはフェアリーズストーリー3が無事マスターアップした直後のことだった。青葉やりんは始発で私より先に帰ったこともあり、少し手持ち無沙汰になった私は、久しぶりに、あの警備員の彼のところに行こうと思った。ちょうど差し入れのおやつのあまりもあるし、多分そろそろ彼の仕事も終わる頃だろうと思っていた私は、明け方の静かなビルの経路をたどって、警備室に足を踏み入れたのだが、
「・・・・・・あ、八神さん」
彼、ヨッシーこと、吉田駿輔は、びっくりするほどやつれていた。
元々疲れ切っているような三白眼の据えた目のまわりには、さっきまで修羅場っていたプログラムチーム(敦さんを含める)人たちみたいにひどくなっている。
それ以上に、どんよりとした良くない雰囲気が、彼から漂っていた。
「な、なんかあったの?」
「いえ・・・八神さんが気にすることではないのですが」
「そんなこと言われても・・・って、なにそれ?」
気丈に振る舞っている彼が向かい合っているテーブルの上には、2~3枚ほどの冊子が並べられていた。
「あ、これはですね・・・その、模試の結果なんですが」
「見ても大丈夫?」
「・・・はい」
了承をもらって、テーブルの上の冊子を手に取る。右端に吉田駿輔と記されているその冊子には7教科ほどのテストの総合結果のような物が書かれていた。
当然、過去の成績も明記されている訳なのだが、それと今回の模試の結果を照らし合わせてみると、前の模試までBランクを維持できていた成績が、Cランクまで落ちていたのだ。
「・・・予備校の先生からは、大学のランクを落としたほうがいいと言われました」
「でもさ、今回はたまたま調子が悪かっただけかもしれないじゃん。まだ本番までは時間あるんだし、大丈夫だって」
「そうだと・・・いいのですが」
「・・・・・・」
う~ん。随分落ち込んでるなぁ。でも仕方ないかぁ。ここまで頑張ってきて、別の大学に行くってのも苦しい選択だと思うし。
でも、このまま引きずってたらそれこそ勉強に集中できなさそうだ。
――あ、そうだ。
「ねぇ、ヨッシーのバイトのシフトってそろそろ終わる頃だよね」
いいことを思いついた私は、ヨッシーに訪ねる。彼は少し考えながら答えてくれた。
「・・・そうですけど、それがどうかしましたか?」
「それなら、ちょっと寄り道していかない?」
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そのときの彼のきょとんとした顔は、ちょっと面白かったので、印象に残っている。
せっかく模試が終わって、バイトも終わったんだ。それでまた帰って勉強するなんて少しハードすぎると思う。だからどこか遊びに行かないかと切り出したんだ。
といっても、今は明け方だし、私もさっきまで仕事の追い込みで疲れているから、派手に遊ぶこともできない。
でもちょうどいいところを私は一度行ったことがある。
「ね-、ここのスパ、結構いいところでしょー?」
ここは、青葉が入社してきたころに、りんと一緒に来たスーパー銭湯。
あのときは私が初任給何に使ったかっていうのでりんと旅行に行ったことを忘れちゃって怒られちゃったからそのお詫びとして一度来たことがある。
そのあと、また怒ってたけどなんでだろう。せっかく教えてあげたのに。
「・・・」
と思っていながらとなりで隣で同じ岩盤浴を浴びているヨッシーに声をかけるけど返事が無い。
「・・・ヨッシー?」
彼がいる方に目を向けると、完全に寝落ちしていた。
青葉と同い年とは思えないもどの据わった目つきも、今は脱力して閉じきっている。
「やっぱり青葉と同い年なんだ、ちょっと可愛いかも」
ほほえましい気持ちになり、小さな寝息を立てる彼の頭を、2~3回ほど撫でてやる。
「・・・・・・」
こうしてみると、いろいろ懐かしいな。私も青葉やヨッシーと同い年の頃に『フェアリーズストーリー』のキャラデザに選ばれて、嬉しいこともあったし、辛いこともあったな。
そりゃ今思えば、単に私が生意気だっただけなんだけど、でも、そのせいでいろんな人に迷惑かけた。
りんや葉月さん、敦さん、私のせいで辞めていった人たち。
でも、それがあったから今の私があるわけで・・・正直、今の私もちゃんとできているか心配なんだけど。それでも、きっと今までよりマシになっている。
少なくともそれだけは、確信できる。
少しだけ、感傷みたいなのに浸りながら、隣で彼を眺めていると、やがて彼のまぶたがゆっくりと開いてきた。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「・・・・・・ぁ、すみません」
「いーよ。そのまま寝てて」
「・・・わかりました」
よほど疲れていたのか、また素直に岩盤浴に身をゆだねている。
熱を帯びた石のベッドが、布越しからほどよい熱気を体全身に浴びさせてくれる。私も相当疲れていたので、こうして横になるだけでも十分心が安まる。
もうしばらくこうして横になっていよう。家に帰るのは昼頃になるかもだけど、これからせっかく休みがもらえるんだからゆっくりしないともったいない。
「なんだか、すみません」
そのまま、石のベッドに身をゆだねていると、となりから彼の小さな声が聞こえた。普段から敬語のせいか、その声は随分自信がなさげだった。
「なんで謝るの?」
「いえ、なんというか・・・ここまで親切にされてるのに、結果をだせない自分が情けなくて・・・」
「・・・」
「同じ予備校の生徒は、どんどん成績が上がっていっていて、それを見てると思うんです。自分は、結局、中途半端で、努力すらしていなかったんだ・・・と思わされるんです」
「・・・」
「元々、最初に大学を落ちたとき、親からはもう就職しろと言われて、だから予備校のお金も、自力で稼ぐしか無くて」
「・・・」
「その上、今でもこうして八神さんの気を遣わせてしまっていて、それでもなんも成果も出せない自分が――」
――惨めで仕方が無い。
その声は、弱々しくて、とても辛そうだった。でも、それを必死に隠そうとしているような気がして、より一層、痛ましく思えた。
「・・・やめてよ」
不意に手が伸びた私は、そんな言葉が漏れてしまった。
「八神・・・さん?」
「なんの成果もなかったなんて、言わないでよ」
伸ばした手が彼の頬に触れる。りんや青葉と違って、肉質が堅い頬からは石のベッドから発せられた熱のせいかほんのり暖かい。
でも、触れていると、彼の気持ちがなんとなく伝わってくるような気がする。だから続けた。
「働きながら予備校に通って、勉強して、お金稼いで、学費とか払って、後輩に仕事教えたりして」
彼を見ていると昔を思い出す。
昔、私のせいで壊してしまったあの子のことを。
「私がね、初めて『フェアリーズストーリー』のキャラデザを任されたときとか、私ってもしかしてすごい奴なんじゃ無いかって調子に乗ってさ、生意気言ったり、先輩とか、友達とか、後輩とかからもガッカリされちゃってさ。今だって、正直ちゃんとやれているか不安なんだ」
要するに、何も知らなかったんだ。なのに自分はもう一人でなんでもできるって勘違いしていた。ホントは、一人じゃ何もできないくせに。
「私だって、今よりマシになりたいと思って頑張ってるつもりでいる。だけどたまに不安になるときはあるよ。でもさ、頑張ったことが、努力したことが結果に結びつかなかったとしても、それを自分が最初から頑張ってなかったみたいに言うのは、ダメだよ」
「・・・」
「頑張ってたよ。私は、ちゃんと見てたよ」
「っ・・・・・・」
そこまで言うと、彼の顔はあふれてくる何かを必死に押さえつけようとしているような顔になり、やがて石のベッドに備え付けられている枕にその顔を埋めた。
うん、いいんだ。辛いなら辛いことを我慢しなくていいんだ。たとえしっかりしていても、彼はまだ子供なんだ。
伸ばした手を戻した私は、そのまま彼と並んで石のベッドの上で目を閉じる。
「もう少しだけ、休んでこ。その方が、また頑張りたいって思えるから」
「・・・・・・はい」
一番面白いと思ったシーン
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敦さんと青葉の絡み
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敦さんとゆん先輩の絡み
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純君とひふみ先輩の絡み
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佐藤君とりんさんの絡み
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ゆずっちとねねっちの絡み
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ヨッシーと八神さんの絡み
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ななみんとうみこの絡み
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佐藤君と花男さんの絡み