NEW GAME! ~omnibus love stories~ 作:黒ゴマアザラシ
佐藤視点
──それでね、聞いて佐藤君。コウちゃんったら──
「……はぁ」
目が覚めた途端、すぐさまついたのはため息だった。
まさか夢にまで出てくるなんて。
しかもよりにもよってなんで八神の話してるんだよお前は……。
俺は自分の部屋を見渡す。
八時四十五分を差した目覚まし時計を見て思わず出勤しなければと思ってしまったがなんとか思いとどまった。
……そうだ。今日は休みなんだ。
ついこの間『フェアリーズストーリー3』をマスターアップしてやってきた有休。
うちの社長はマスターアップした直後に今までたまった有休を一気に消費する方針にしてるため、今日から長期間の休暇が保証される。
しかし、それだけ長くもあるとその間なにするか逆に決めかねて困るな。
「……その前に飯だな」
一通りの身だしなみを整えた俺は、キッチンへ向かった。
食パンをトーストに放り込んだ俺は、コンロで熱したフライパンに油をひいて馴染ませる。
卵を2つ。片手で割って熱いフライパンの上に乗せれば心地よい音が踊り始める。あらかじめ用意しておいた水を少量注いで蓋を閉めて1~2分待てば目玉焼きは完成だ。
その間に、サラダを作る。と言っても、レタスを軽く割いたものにプチトマトを添えてドレッシングをかけただけの簡単なものだが、一人暮らしで朝飯なんてこんなもんでいいだろう。
そろそろ目玉焼きも半熟になったころだろう。コンロの火を止めて、半熟の目玉焼きをサラダと一緒に皿に乗せれば、それと同時にトーストがチンッと焼きあがった。
トーストと目玉焼き&サラダが乗った二つの皿をテーブルに置く。
眠気覚ましのブラックコーヒーを添えて。
と言っても、これはインスタントなんだがな。欲を言えば、もっとちゃんとしたコーヒーも飲んでみたいものだが贅沢言ってられないしな。
それよりも飯だ飯だ。
自分で作った朝飯を食べ始めた俺は、テーブルの目の前に置いてあるテレビの電源を入れて適当にニュース番組でも見ようとする。
しかし、よく見てるはニュース番組もうとっくに放送時間を過ぎてるので個人的にめぼしいものがない。
あれ結構見てておもしろいんだよな。やたら貝に詳しいアナウンサーとか、番組の最後にはイケメンがなんか料理作ってるし。
たまにまねするし。
いや、別に高いところからオリーブオイルかけねぇよ?
とは言え、飯を食うときに静かすぎるのもいかんせんもので、こうして無理やり音を作ってるわけだ。ボーッと飯を食べながら番組を見ていれば、ちょっと面白そうなのが目に入ってきた。
「……市場か」
それは、風景からして生放送のそれは、朝の市場を紹介してる番組で、どうやら俺んちから車でそう遠くない距離らしい。
ていうか、前にもここには行ったことがある。そうか、あそこって市場とかしてるんだ。
……最近、働きつめてて飯を手抜きが多かったから野菜とかあんま食えてねぇんだよな。
行ってみるのも悪くないかもな。スーパーで買うよりも、安くてうまそうだし。
それと、コーヒーもインスタントじゃなくて本格的なの買ってみようか。
……なんだ、結構やりたいことあるじゃねぇか、俺。
朝飯を食べ終えた俺は、タバコに火をつけながら時計を見れば、九時半を指している。
市場は昼過ぎまで行っているようなので今から出かけても十分間に合うだろう。
適当に一服を終えた俺は、私服に着替えて支度をする。
家を出た俺は、親から借りている車に乗って、その市場の会場へと車を走らせた。
「……」
車を走らせながら、手元にあるシガーソケットで新しいタバコに火をつける。
最近は職場だけでなく、色んなところで禁煙が進んでるから家か、車の中、会社の屋上くらいしか吸える場所がない。
それこそ、体に良いものではないし、百害あって一利無しというのもあるからやめておいた方がいいのは山々だが、こんな仕事してたらタバコ吸わねーとやってらんねぇよ。
やがて、赤を示す信号が見えたのでブレーキを踏んで交差点の前で停車させる。
吸い殻を灰皿に落としたかった頃なのでちょうどいい。
しかし、停車してると手持ち無沙汰になってふと周囲を見渡してしまう。
「?」
すると、向こうの歩道で見たことのある人影を見つけた。
……遠山だった。
アイツ、なにやってんだ?
こんな朝っぱらから散歩でもしてるのだろうか。それにしては見るからに挙動不審だ。
手元に持ってる紙を何度も確認しながら辺りをキョロキョロと見渡している。
「!」
あ、目があった。
「……!!」
すると、遠山の表情は目に涙を浮かばせながらパァッと明るくなった。
「……え?」
●
「よかった~あんなところで知り合いに会えて」
どう言うわけか知らんが、何故か俺を見つけた遠山は、俺の車の助手席に乗せてほしいと頼み込んできた。
あまりに突然のことだったので訳が分からないまま車に乗せたわけだが。
ふと遠山の持っていた紙を見ると、それは俺が行こうとしてる市場のチラシだった。
そんなわけで、俺は道に迷っていた遠山を乗せて市場にたどり着いたわけだ。
駐車場で車から降りた遠山は、先ほど見せた涙目とは打って変わって機嫌が良さそうだ。
「それにしても、佐藤君もこういうところ来るのね」
「……まぁな」
いつも通りぶっきらぼうに答えてしまう。涼風や桜あたりならもっとちゃんと接しられるのだが、そもそも今日会えるとは思わなかった。
今朝みた夢は正夢か?
幸先がいいのか不吉なのかわからなくなってきた。そもそも、先日妙なことを言ってしまった手前、少々顔を合わせずらい。
「それにしても、ちゃんと地図見てたはずなのに……変ねぇ」
と不思議がりながら、遠山は地図が書いてあるチラシを車のハンドルのようにクルクルと回しながら眺めている。
「……遠山、地図を回すな。それだと余計迷う」
「えっ……そうなの!?」
驚いている遠山を見て、少し心配になった俺は、一つ聞いてみることにした。
「なぁ遠山。……お前、北ってどっちだ?」
「北? もー佐藤君。それくらいわかるわよ」
……と、自信満々に言い張る遠山だが──
「えっと……今、朝だから日があるほうが東よね。だから……えーっと……あっち!」
「……遠山。残念だがそっちは南だ」
「あ、あれぇ~?」
「……」
いやさっき明らかに迷ってたよな。
コイツ、方向音痴なのか。初めて知ったなそんなこと。職場でしか会ったことないからこういう部分は見たことがなかった。普段のしっかりした様子とは大きなギャップを感じさせた。
「まぁ、とりあえず目的地には着いたわけだし、サッサと買い物済まそうぜ」
「そうね。この季節だと、どんな野菜があるのかしら? コウちゃんの口に合えばいいけど」
遠山の口から、八神の名前が出た途端、俺の肩が一瞬すくむ。
……まあ、こうなるよな。
「実際、マジで立て込んでたもんな」
「そうなの。コウちゃん、最近偏ったモノばかり食べてたから」
「……ふーん。ま、仲良きことは美しきことだな」
俺は遠山の頭に手をおいて、キチンと整っていた髪の毛をワシャワシャ。
「……は、発言と行動が一致してないわ佐藤君っ!」
いや別に、遠山が休みの日にわざわざ八神の飯作りに行って、それで一緒に食べて仲むつまじくしてるところを思い浮かべて嫉妬しているわけではない。
そんなやましい感情など微塵もない。
そうだ。そんなものない。
これはあくまで本人がやりたくてやっていることで、それに対して俺がいちいち口を出すほどのものじゃない。そう、そうに来まっいている。
「それより、サッサと行こうぜ。良いヤツ売り切れちまうかもしんねぇしよ」
「そ、そうね」
遠山のワシャワシャとした髪の毛を元に戻してから、俺たちは市場の会場に向かうため、歩き始めた。
つまり、俺は今、遠山と肩を並べて歩いてるわけだが──
「──それでね、聞いて佐藤君。コウちゃんったらね、前からこの市場楽しみにしてたから行こうって離してたのに、『今日は眠いからヤダー』って言ってドタキャンしたの。せっかく二人で色々見て回れるかなって思ってたのに、少しくらい付き合ってもいいのに。ホント、困っちゃうわ。この前のマスターのときだって、ひふみちゃんの寝顔撮ろうとして色々騒いじゃったし、この間だって――」
「……」
やっぱり今朝のは正夢のようだった。
コイツと会った時点で覚悟はしてたが、まさか休みの日まで八神の話しを聞くことになるとは。
……俺、遠山のことは何にも知らねーのに、八神のことばっか詳しくなってきたよ。
「遠山。お前、まさか涼風とかにも八神の話してたりしてんのか?」
気になったと言うか、ちょっと心配になってそんなことを聞いてみた。
「えっ? もー佐藤君。コウちゃんの愚痴話せる相手なんて、佐藤君ぐらいしかいないわよ」
「……そうか」
一点の曇りもない笑顔で応える遠山に、俺は、最低限の返事しかできなかった。
……これは、喜んでいいのか?
いや、多分違うんだろうな。
でもなんで俺だけなんだよ。俺が同期だからか?
この前だって、『男の子の中では』とか言ってたけど、コイツはその意味ちゃんとわかって言ってんのか?
……わかってないんだろうな。
「佐藤君、どうしたの? 顔色悪いよ。疲れてるの?」
「……なんでだろうなぁ」
その原因そのものに心配されたせいか、ため息交じりの声で答えてしまう。実際、自分の気色がどんどん悪くなっている。正直、働いているほうがマシかもしれん。
「あ、見えてきた」
視線を前に向ければ、様々な出店を構えた大通りがたくさんの人だかりで賑わっている。実際、色んな種類の農作物以外にも、パンやお菓子、軽い軽食なんかも売っていた。
駐車場も多少込んでたから、やはりこれくらい人が集まるのだろう。
「こういう朝市みたいなのって、結構人が来たりするのね」
「なんか、縁日みたいだな」
「コウちゃんも来ればよかったのにね」
……また八神が出てくんのかよ。好きだな。
もういろいろ開き直って内心楽になっちまってる節がある中、出店に囲まれた大通りを歩いているわけだが、ふと農作物の出店を見つける。
何があるのかと見てみれば、カゴやバスケットに並べられていたのはキノコだった。
「いらっしゃいませー。キノコは今が一番おいしい時期ですよ。あ、彼女さんおきれいですね」
「違うんで」
と、俺たちを見つけた出店の店員が声をかけてきた。
黒い髪をおかっぱにして、大きくて丸い縁無しのメガネの女性だ。
俺のじいちゃんばあちゃんが子供の頃の格好を彷彿される容姿だ。
農業をやってるのか、農家っぽい格好がより一層ほれを引き立ててしまっている。
「……」
なにより、そこでふと変なデジャヴを感じた俺は、思わず店員に訪ねてしまった。
「……なぁアンタ、前に別の仕事してなかったか?」
「はい?」
「佐藤君、知り合い?」
「いや……健康診断のときの看護士に似てたような……」
「えっ? 私は高校卒業してからずっとこの仕事してますけど?」
キョトンとした顔で訪ね返されてしまい、こっちまで首を傾げてしまう。
あれ? なんかやたら似てたような気がするぞ?
あのめちゃくちゃ危なっかしい新人看護士に。
あれか? ポケ●ンでいうジョー●さんやジュン●ーさんと同じ類のあれか?
「よかったら、ご試食になられますか?」
と、話をそらしたかったのか、出店の奥でホットプレートで調理していたキノコを紙皿に乗せてこちらに差し出してきた。
「あら、良い香り」
「彼氏さんもどうぞ」
「彼氏じゃねぇよ」
即座に否定しながら試食のキノコを頂く。
……ふむ、この芳ばしい香りは醤油バターか。定番だな。
肝心の味の方は……
「うん、キノコも美味しいわね」
「そうだな」
遠山の言うとおり、旬のものだからか旨いな。キノコは年中生えてるイメージがあったからこれは面白い。
「今日のお昼ご飯はキノコ料理にしましょっ。コウちゃん、どんなのが好きかな。多分直接聞いても、『なんでもいい』っていうのよ。そういうのが一番困るのにね。でも、最後に『りんが作るならなんでもおいしいから』って、そういうこと言われるとやっぱりうれしくなっちゃって』
……こうして八神の話を聞いていると、本当に今までコイツのことなんにも知らない自分が、自分のヘタレさが嫌になってくるな。
参考がてらにこの前、葉月さんが勝手に開いた闇鍋大会で知り合った増田に聞いてみたわけだが、勢いで押し切ったと。
……無理だ。それができたら苦労せん。
「じゃあ、これとこれをください。佐藤君はどうするの?」
「んじゃ、これをもらおうかな」
適当に吟味したキノコを二つほど手にとって、会計を済ます。
「あ、彼女さん、よかったら――」
「違うっつってんだろうが」
釣り銭を渡す合間に、そんなことを言われたので即座に否定する。下手に勘ぐられるのも、本人に悟られるのもたまったものではないからだ。
その後も、俺と遠山はこれから作る料理の献立を話し合いながら、市場を回ることにした。本人の口から出てくるのはどれも八神の話題ばかり。
当然、今話している料理の内容もすべて八神が口に合うもので、なおかつバランスの取れた食事にできるかというのが肝になってる。
「佐藤君は他に、何か探すつもりなの?」
「そうだな。あとは野菜とか、コーヒーとかあればいいな」
「わかったわ、じゃあ、あの辺りから順番に回りましょ」
こういう段取りの組み立てを考えるは彼女がとても得意なことの一つだ。共に働いている過程で、それはなんども見てきたし助けられてきた。
自分が知り得る限りでも、わずかに捉えることができた彼女の個人のこと。だけどそれは、本当の遠山りんとは少し違うのだろう。あくまでこれは、自分がやらなきゃとおもってかぶっている仮面の一つ。自分のやりたいとこととは違うのかも知れない。
それでも、それが彼女にとって俺に見せたい自分と言うことは、それを本当の彼女の一部なんだろう。
「ふふっ、さっきの店員さんも言ってたけど、これってまるでデートみたいね」
共に出店に並べられた数々の旬の食材の中から吟味したモノを買い、車に戻る道中、不意に彼女はそんなことを言い出した。思わず、反応してしまう。
まさか、悟られてしまったのか?
と思ったが違うらしい。
「やっぱり、八神の方がよかったか?」
変に踏み込まれたせいで、俺は妙にひねくれた返しをしてしまった。俺に対してそういうことを言うことは、俺をそもそもそう言う目で見ていないと言っているようなものだからだ。
無論、彼女はそんな気で言っているわけじゃ無い。というか、多分言っている意味を分かっていない。それでも俺が気を悪くしたと感じたのか、少しだけ困った笑みを浮かべた
「もー、そんなこと言わないの。でも、こういうの憧れてないわけじゃないから」
「…そうか。なぁ、遠山?」
「何?」
「この間はすまなかった。変に水を差すようなこと言って」
俺はなぜかこのタイミングで、この間の非礼を詫びた。
彼女の困った顔を見ると、先日言ってしまった夢の無い話を思い出してしまう。自分も疲れがたまっていたのもあったが、あそこであからさまな態度を取るなんて大人げなかったと後悔している。
「ううん、気にしないで。私も考え無しだったと思うから」
「……」
「さぁ、それよりも早く行きましょ。コウちゃんもお腹空いているだろうし」
また八神かよ。と内心ため息をつくが、こうして八神に健気に尽くしているところも、一周回って愛らしいと思うときがあるのだ。
だから、この前彼女が話していたことも、俺は案外悪くないとは思うのだ。
と、そこまで考えたあたりでふと思う。
「まさか、今から八神の家に行くのか?」
「うん。佐藤君も来る?」
「……」
一瞬、断りたいとも思ったが、ここまで来るのに道に迷っていた彼女を置いて帰る訳にもいかない。それに手にはたくさんの買った食材達。これをもって歩くのも、電車やバスに乗るのも大変だろう。
あぁ、覚悟を決めるしか無いか。
「わかったよ」
「じゃあ決まり。せっかくだから三人で食べましょ」
俺がうなずくと、目に見えて嬉しそうな様子を見せる。こういう顔をするから、俺は断れなくなるのだ。
彼女を助手席に、荷物は後部座席に乗せてからエンジンをかける。行き先は八神の家。きっと俺の顔を見たら嫌がるのが目に浮かぶ。この際だ。俺がいつも感じている居心地の悪さを味わってもらおう。きっとそれを彼女が諫めるのだろう。そしてなんやかんやで俺の目の前でイチャつくのだ。
……まぁ、こういうのも俺らしくていいか。
一番面白いと思ったシーン
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敦さんと青葉の絡み
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敦さんとゆん先輩の絡み
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純君とひふみ先輩の絡み
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佐藤君とりんさんの絡み
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ゆずっちとねねっちの絡み
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ヨッシーと八神さんの絡み
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ななみんとうみこの絡み
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佐藤君と花男さんの絡み