NEW GAME! ~omnibus love stories~ 作:黒ゴマアザラシ
佐藤視点
昼休み。
昼食を取るために席を立った俺は、ふとブースの壁に立て掛けられているホワイトボードが目に入った。
それには、来週から行われる社員旅行を周知する内容がと書かれていた。
来週から俺たちはフェアリーズストーリー3開発チームの面々は4泊3日の北海道の旅が待っている。
当然俺も参加するわけなのだが……。
「スゥー、来週から北海道へ旅行か。チャンスだな。これを機に遠山をどこかに誘おうか」
実際、俺ら男性社員は少ないため、それぞれ個々で過ごす予定になると聞いている。俺も特に予定は立てていない。
「スゥー、ここでグッと距離を縮めて、八神とコーナーで差をつけてやるんだ。そうして遠山の心は俺のものに、そうだ。そうしよう」
「後ろでゴチャゴチャうるせぇんだよこのオカマ野郎!!」
さっきから聞こえる雑音の主の襟元を絞める。
あいも変わらず、花男さんはやかましい。面談以降、それが特に煩くなっている。
「くっ……でもやめないわ! 佐藤君がヘタレをやめるまで、私は嫌がらせをやめないわー!!」
今にも首を絞められそうになっているのに、まだ減らず口が静まらない。確かに、今回の開発が終わるまでに遠山に振られたらこの会社を辞めると言ったのは本当だ。
だからって調子に乗りすぎだろうが。
「それで、どうするの? 現実的な話、唯一のチャンスよ?」
俺からの拘束から脱した花男さんは、先ほどとはうってかわった態度を取る。
それは自分のチームにいる男性社員に見せる表情によく似ていた。
「開発が始まれば、プロデューサーになるりんちゃんは外に出る機会も多くなる。リーダーになったからって会える機会は今までより減るのよ? わかってる?」
「……」
珍しく出てきたまともな指摘に、手も足も出なくなってしまう。そこだけは花男さんの言う通り。
開発が進めば進むほど、遠山と個人的に関われる機会もなくなる。
ここは分水嶺そのものだ。
「いい? 別にこの社員旅行の間に告白して付き合えって言っているわけじゃないの。りんちゃんにとって、貴方を異性の対象として意識させればいいの。そう言うのは、非日常的な空間でそこできることなのよ!」
「なるほど……」
花男さんの言葉には説得力があった。普段ふざけているように見えても、やっぱり先輩なんだなって思う。
「大丈夫。不安なら私も一緒について行ってあげるわ。ディレクター権限で!」
「やめてください」
「それは! 邪魔しないでってこと!? 余計なことするなってこと!? 私と一緒に旅行したくないってこと!?」
「全部です」
●
とは言ったものの、どうしたものか。
俺は思考を巡らせながらカフェテリアに向かう。考えているのは遠山をどう誘うかについて。
おそらく遠山のことだ、そこら辺は前もって準備しているはずに違いない。
それも全て八神と過ごす予定なのだろう。
いや、八神も八神で予定があるはずだ。どこかに隙はあるはず。時間は限られている。
なんとかせねば……。
「いいですか! これは戦いです! 女の戦場です!」
カフェテリアに入ると、いきなり力強い演説が繰り広げられていた。
それもたった一人に対してだ。
「何してんだアイツら」
演説をしていたのはうみこ。それを聞いていたのは滝本だった。
本来、この二人は班も違えば話す機会もない。普段ならこうして話す機会すらないはずなのだが。
「あ」
ヤバい。滝本と目があった。
うみこの演説に気圧されているせいか、その視線からはSOSと訴えられているような気がした。
いや、マジでしてる。俺と似て、意外にも表情豊かな彼女は本当に俺に助けを求めていた。
「おや、佐藤さんですか」
滝本の視線に吊られて、うみこは俺の気配に気付き、射程にとらえた。
「…まあなんだ。俺は別のところで食べるから、お前らはご自由に」
「ーーいえ、良い機会です。貴方の話も聞きましょう」
いつの間にか回り込まれて唯一の逃げ道を塞がれる。
ほんの一瞬。俺が後ろを向いたその瞬間にはもう出入り口に立っており、壁に足をかけて道を阻んでいた。
「佐藤さん、遠山さんのことでお悩みなのでしょう? 滝本さんも彼氏さんことお悩みらしいので、彼氏持ちの私が相談に乗りますよ」
なるほど。合点がいった。
この二人、基本的に縁がないが一つだけ共通点ある。
それは彼氏がいるということだ。
俺がうみこに彼氏がいるのを知ったのは最近、祝賀会の帰りの時、一人颯爽と彼氏の車で帰っていったからだ。
となると話が見えてきた。
滝本が何か増田のことで悩んでいて、それをあまつさえうみこに相談してしまったのだろう。
だったら尚更帰してほしいところだが、実際のところ、味方は多い方がいい。
俺に時間がない以上、協力者の手を惜しむことなどできないからだ。
俺は事情を話すことにした。
「なるほど、この社員旅行の間に距離を縮めたいのですね。わかりました。ならば八神さんには私がベイトします。その間に遠山さんに詰めてください」
言ってる単語がFSP用語で全然意味がわからん。
八神は自分が引き付けておくから、その隙に遠山を誘え。
と言いたいのだろうが、そう言えばいいんじゃないのか?
それに……。
「ありがたいが、いいのか? 俺に協力してくれるなんて」
「えぇ、構いません。遠山さんの気持ちも気づいてはいますが、八神さんは私のことを名字で呼ぶので」
「…それが決め手なのはどうかと思うが」
いずれにしても行幸だ。思いがけない協力者ができた。
これでかなり動きやすくなる。遠山を誘う口実もできるだろう。
となると、後は俺の度胸だけか。
「つーか、滝本は一体何に悩んでいるんだよ? 発売日の時とか凄かったじゃないか」
「…それ、は」
先日のお熱い空間の話をされたせいか、顔を赤くして目を反らす。
が、どこか不安げな表情をしている。
「佐藤さん、滝本さんは今とても大事な時期なんです。ソッとしてあげてください」
「お前がそれを言うのか」
さっきまで高らかに演説していたお前が言っても説得力の欠片もないぞ。
まあ、男の俺が口を挟むなという意味なのだろうが。
「滝本さんは全ての恋人同士がぶつかる最初にして最大の壁にぶつかっているのです!」
拳を天井に突きだして高らかに叫ぶ。
「そう! 倦怠期に!」
「っ……」
「滝本は違うって言いたげだが」
滝本が違うっていう視線をひたすら送っている。
うみこは俺のツッコミも耳に入っておらず、演説を再開する。
「付き合う前と付き合った直後のドキドキ感! それが日常なってどこか冷めてしまう! ちょうど! このタイミングが! 一番危険な時期なのです!」
うみこは完全にヒートアップして、この場を止めることかできる人間はもはやいなくなる。
「いいですか! 滝本さん! これは決して貴女が彼のことを嫌いになったわけではありません! 状況の変化に貴女達2人が付いてこれていないだけです! 貴女が彼のことを想う気持ちも、彼が貴女を想う気持ちも本物です!」
「……」
「しかし、付き合いが長くなれば長くなる程、どうしてもマンネリ化してしまいます! それは仕方ありません! 誰だってそうなるでしょう! ですが! ここで問題なのは彼が飽きてしまわないかということです」
「……な、なる、ほど」
「彼はきっと、今まで通り接してくれていると思います! ですが、内心では少し、ほんの少しですけど、不満を持っているかもしれません。だから、ここで一歩踏み出す必要があるのですっ!」
「っ……」
「そこで、今回の社員旅行です! 旅先で彼と過ごすことで、普段とは違う一面を見ることで、彼にもっと自分のことを知ってほしいというアピールができるはずです!」
「……う、ん」
「そのために! 新しい下着を買いに行きましょう!!」
「・・・っ!」
コイツ!
なにとんでもないこと言い出してやがるんだ!
たまらず俺は肺に入っていた空気を吐き出してしまう。とんでもない勢いで。
一体何をどう考えればその結論に至るんだよお前は。
滝本も顔を真っ赤にして口を魚みたいにしている。
うみこはそんな俺たちの反応すら目に入っておらず、ただ熱弁するのみ。
「良いですか!? 滝本さん!! 大切なのはそのドキドキ感を思い出すことです! だからこそ、『飽き』を感じさせないように工夫が必要なのです! そこで今回おすすめしたいのがセクシーランジェリーです!」
「・・・せ、ぇ、え?」
「はい! この機会に是非買い揃えるべきです! 彼氏さんにも喜んでもらえること間違いなしですよ!」
「そ、その、あの」
「なので! 仕事終わりに一緒に行きましょう! 大丈夫、恥ずかしくなんてないですよ! 」
「……ぇ、えっと」
「よし、決まりですね!」
滝本はまったく了承していないのだが、勝手に決められてしまった。
「大丈夫です。私もサポートします。貴女達ならきっと乗り越えられます! 滝本さん、頑張ってください」
滝本の肩をポンと叩き、彼女は去って行った。
残されたのは滝本と俺だけ。
彼女の顔には汗が流れており、まるでマラソンを完走したかのように疲弊しきっていた。
「まぁなんだ。頑張れよ」
俺はそれだけ言い残し、その場を去った。正直、これ以上俺が彼女にできることは無い。
結局、最後まで滝本は何も言わなかった。
あの調子だと、どう行動するは彼女次第だろう。
まあ、俺が心配することではないだろう。
俺は俺の目的のために動けばいいだけだ。
結局ろくに昼飯にありつけなかったわけだが、ブースに戻って急いで食うか。
「ん?」
「あ、佐藤君」
ブースに戻る道中、俺は件の女性、遠山とばったりと会ってしまった。
「もうお昼は食べたの?」
「いや、ちょっとな」
俺は適当な言葉で濁す。
さっきまでうみこと滝本の3人で話していたことなど言えるわけがない。
「もう、ダメよ。今は余裕があるかもしれないけど、ご飯はちゃんと食べなきゃ」
「……すまん」
遠山が八神に見せるような、母親が叱りつけるような顔。彼女の代名詞のようなそれを見ると本当に申し訳ない気持ちになる。
完全にとばっちりなわけだが。
……これ、もしかしてチャンスじゃないのか?
少なくとも、今この瞬間は誰にも邪魔されない。社員旅行が始まるのは目と鼻の先。
誘うなら、今が好機だ。
ーーこれは戦いです!
ーーだから、ここで一歩踏み出す必要があるのです。
俺の脳内に、さっきのうみこの演説が反芻される。一見頭の可笑しい話にしか聞こえんが、確かにそれは、今俺に足りないものなのだから。
――そのために! 新しい下着を買いに行きましょう!!
「っ……」
「佐藤君、どうしたの? 顔色悪いよ?」
「い、いやなんでもない」
「そう……体調悪かったらすぐに言ってね?」
「あぁ……」
「うん。じゃあお大事に」
遠山はそのまま立ち去ろうとする。
ダメだ。このままだと唯一のチャンスを棒に振ってしまう。待ってくれ! 行くな! 心の中で叫ぶ。
そうだ。俺はやると決めたのだ。覚悟を決めたのだ。
これ以上躊躇うことなどあってはならない。
勇気を出すのだ。
「り、りん!」
「?」
思わず、呼び止めてしまった。
「どうかしたの?」
振り返った彼女は首を傾げていた。
「あ、いや……」
俺は口ごもる。
何を言うか決めていなかったからだ。でも、何も考えていないわけではない。
何度もシミュレーションしてきた。そして、成功した時のイメージもできている。
ただ、言葉にするのが難しいだけで。でも、言わなければ始まらない。
俺は一度深呼吸をして、彼女に向き直る。
「来週の…社員、旅行…二人で、どこか…行かない、か?」
「――やったわ! ついに佐藤君がやったわ! 若干片言だったけどやったわ-!!」
毎度毎度、恒例常時のごとく、どこからともなく現れた花男さんは、俺達の前で愉快な踊りを披露しながら通路の奥へ消えていった。
「花男さん、どうしたのかしら?」
「気にするな。……で、都合は?」
「え? えぇ、もちろん大丈夫よ」
「…………そうか」
(今、断ってくれても良かった的なオーラを感じたわ)
●
りん視点
帰り支度を済ませた私はオフィスを出る。
前からずっとやりたかったプロデューサーの仕事。皆の意見をまとめたりするのは得意だけど、今後は他の会社のスケジュールも考えなければならない。
責任は重大、不安が無いと言えばウソになる。だけど、やっとつかめたチャンスなんだ。絶対にモノにしなくちゃ。
「……」
だけど、一つだけまだ引っかかることがある。
それは佐藤君の事。
前に、この開発が終わるまでの思いが実らなかったら会社を辞めると。
それはつまり、佐藤君と働けるのは今回が最後になるかも知れないんだ。だから、私もちゃんと彼に誇れる仕事をしよう。
「でも、その前に来週の社員旅行ね」
これもチームを引っ張る私の仕事。
飛行機や旅行の手配、旅先のスケジュール。
自分の予定以外にも、他の子達のことも考えないといけない。良い予行演習になるだろうから、しっかりこなそう。
佐藤君にも誘われちゃったし。
「おや、遠山さんも帰りですか?」
「あ、うみこさん。それと…ひふみちゃん?」
「ぁ…りん、ちゃん」
エレベーターの入り口に、知り合いを見つけた。
うみこさんとひふみちゃん。
二人が仕事帰りに行動を共にすることなんて見たことが無い。
班も別で、話しているところもほとんど無かったのに。珍しい。でもひふみちゃんは相変わらず落ち着きが無い。やっぱりあんまり縁の無い人と話すのは緊張するようだ。
「……っ!」
何故か私をジッと見つめていたうみこさんは、急に目の色が変わった。まるで何か良いことを思いついたような顔だ。
「遠山さん、ちょうどよかったです。貴女もご一緒しませんか?」
「?」
うみこさんがひふみちゃんと行こうとしていた場所。
そこは、ランジェリーショップだった。
「うぅ…、なん…かスゴイ、ところ…きちゃった…ね」
「そ、そうね……。こんな所に入るの初めてかも……」
店に入った瞬間、独特の匂いに包まれた。こういった高級なお店に入ったのは初めてだ。店内には可愛らしい下着がたくさん並べられている。
男性のお客さんもちらほらと見える。
「あの人、女性用下着のコーナーにいるけど、何考えてるのかしら?」
「さ、さぁ……」
「それより、私たちも入りましょう。いつまでもここにいるわけにもいきませんから」
「そ、そうですね」
「は、はい……」
三人揃って、同じ棚の前に立つ。
「それで、どうして私まで?」
「そうですね。少し、頼まれ事がありまして」
「?」
「それって…どういうこと?」
「いえ、特に深い理由はありません。強いて言うなら、共同戦線のようなものです」
「……」
「わ、分かりました……じゃあ、一緒に選びましょうか。ね? ひふみちゃん」
「え!? う、うん……っ」
こうして私たちはそれぞれ好みのものを選んでいくことにした。だけど、しばらく経っても、一向に決まる気配がない。
普段は忙しいから通販で買うことが多かった。実際にこういう高級なお店で吟味する機会はほとんどない。コウちゃんもそういうのには疎いから一緒にいかなかったし。
私は手に取ったブラジャーを眺めながら、困っていた。
すると、横にいたひふみちゃんが声をかけてくる。
彼女は上下セットになった、淡いピンク色をした下着を手にしていた。
「りん、ちゃ……ん。これ、どうか……な?」
「え? どれのこと?」
「この、水色の……」
そう言って彼女が指差したのは、薄いブルーのレースがあしらわれた上下の下着だった。普段着ないデザインだから新鮮味があるけれど、それ以上に彼女に似合いそうだと思った。
「いいと思うよ! 可愛い」
「そ、そうかな……」
「えぇ、とてもよくお似合いですよ」
「うみこさん」
いつの間にか背後に来ていたうみこさんが、私達と同じデザインの下着を持って立っていた。
「この色は清楚な雰囲気でありながら、どこか妖艶さも兼ね備えています。この色合いは、きっと貴女の白い肌によく映えるでしょう」
「そ、そうですか?」
「はい。私も、貴女のような綺麗な人が付けていればさらに魅力的になると思います」
「……ぁ、ありがとう…ございます」
「どういたしまして」
「……あれ?」
ふと、ひふみちゃんの持つもう一つの下着を見る。
それは私が持っているものよりも若干色が濃く、胸元にリボンが付いている。
「ひふみちゃん、それもかわいいよね」
「……っ!」
「あら、そちらも素敵ですね。ひふみさんの髪の色ともよく合っていますし、ひふみさんの魅力を引き立ててくれることでしょう」
「ぁ、あり…がと…」
真っ赤になって俯いている彼女を見て、微笑ましく思った。いつも落ち着いていて大人っぽいと思っていただけに、こういう一面を見れて嬉しい。ひふみちゃんとは仲良くなれそうな気がした。
でも、うみこさんは何がしたいのだろう? ひふみちゃんを褒めることだけじゃない。
そもそも、どうして急にひふみちゃんを誘ったのだろうか。
二人になにか共通のことってあったかしら?
「っ!」
そうか。わかった。二人とも恋人がいるんだ。
なにかひふみちゃんがサウンドの増田君のことで悩んでいるのを、うみこさんに相談したのだろう。
だから、その悩みを解消するきっかけ作りとして、今日はここに連れてきたに違いない。
なるほど、確かに共同戦線だ。
うみこさん、やっぱり優しいところがあるのね。
たまにキツく言い過ぎちゃうところを気にしていると言っていたけれど、こんな風に相手を想って行動できる人なんだから、そんな心配はいらないんじゃないかしら。
ひふみちゃんもキャラ班のリーダーのこと、増田君のことで頑張ってるんだ。私も頑張らないと。
「そうね、私はこれにしようかしら」
「あっ、りんちゃん、も…決まった……?」
「ええ、なんとか」
「それで、うみこさんは何を選ばれたんですか?」
「あぁ、これですが」
「「「……」」」
2人揃って、固まってしまった。
「あ、あの……うみこさん。これは一体なんでしょうか?」
「見ての通りですが」
彼女の手にあったものは、紐パンと呼ばれるものだった。
しかも、色とりどりのラインナップがあった。
「どれも可愛らしくて選べなかったのですが、やはりここは無難なものが一番かと思いまして。あぁ、ちなみに私は黒が好みです。なので黒のこれが一番かと」
「「……」」
「では、失礼します」
「「あ、はい……」」
そのままレジに向かって行った彼女を、私たちは呆然と見送った。
「りんちゃ……ん。これ、どう思う?」
「わ、わからないわ……。とりあえず、私たちは私たちで選びましょうか」
「う、うん……」
結局、私たちは最初に吟味していた下着を購入してお店を出た。
「……」
だけど、ひふみちゃんの様子は少し変だった。
「ひふみちゃん?」
「…りん、ちゃん。ごめん、私…やっぱり、買って…くる…っ!」
「え!?︎ ちょっと、ひふみちゃん?」
そしてなにか決意を固めるように両手をギュッと握りしめてお店の中へ戻っていった。
彼女が何を買いに戻ったのか。気付かないほど鈍感では無かった。
ひ、ひふみちゃん、もしかして、アレ買うつもりなんだ。
さっきまで持っていたやつより過激なデザインのものを。
「無理よ…私には…」
あんなの、履けるわけがない。
私は自分の下着が入った袋を抱えながら、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
おまけ
納期との戦いで極限状態になったうみこさんの心の保ち方
阿波根うみこ
↓
名波
阿波根うみこ