NEW GAME! ~omnibus love stories~   作:黒ゴマアザラシ

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鼎立会議

 敦視点

 

 「さて……敦君。はなちゃん、今日は良く集まってくれたね」

 

 電気が消えた会議室の中、スタンドライトがかろうじて俺達の顔を照らしている。

 その中心で、葉月の眼鏡が光と反射してキラリと輝いた気がした。

 部屋の中には葉月の他に、花男と俺。

 それぞれ対峙するように椅子に座っている。

 それはまるで、アニメや漫画でよく見かける敵対組織が一堂に会しているかの様な光景だった。

 異様な緊張感が支配するこの空間で、一体何が繰り広げられるかというと……。

 

 「八神と遠山君、そして佐藤君。この三角関係についてだが……」

 

 そう。この会社が抱えている最大の問題を議論する為に集まったのだ。

 光臨原理主義。

 シュガー党。

 7年前から始まったこの対立には未だ決着がついていないらしい。

 だが、この泥沼というか、八神一強だったこの状況に進展があった。

 あのヘタレの佐藤が、遠山を落とすために動き出した。

 それもかなり強気だ。

 なにせフラれたらこの会社を辞めるとまで言い出すほど。

 現に、佐藤は去年の社員旅行からかなり積極的に動く様になったし、遠山も満更でもない様子である。

 そんなこんなで、ここ最近,、各派閥は色めきだっている

 光臨原理主義筆頭の葉月の意見はというと……。

 

 「だが、やはり遠山君は八神のことが好きなんだよ? ならば、結果は見えているのではないかい?」

 

 ……まぁ、そうなるよな。

 

 「しずくちゃん。それは違うわ」

 

 しかし、それに反論するのは花男。

 

 「ここ最近、りんちゃんの心境の変化はかなり変わりつつあるわ。現に社員旅行から接し方も変わっている。これはもう、脈アリだと私は思うんだけど?」

 

 確かに。

 あれ以降、佐藤に対する態度が今までと違う。

 傍から見れば、いつも通り八神の愚痴を話しているようにしか見えないが、声の抑揚や仕草に落ち着きが無い。

 八神しか見えていなかった遠山の視界に、明確に佐藤という人物の度合いが広くなっているのは明白だ。

 花男はそれを見逃さなかったようだ。

 

 「埒があかないね。敦君。君はどう思うんだい?」

 

 今度は俺に議題が振られた。

 こうなることは予期していたため、俺もあらかじめ用意して置いた持論を展開することにした。

 

 「そうだな。客観的な心象から行くと佐藤を応援したくなる気持ちはある。だが、遠山本人の気持ちを優先するなら八神ってところだろうな」

 

 「ふむ……続けてくれ」

 

 葉月に促され、俺は続ける。

 

 「まず、この三角関係で一番問題なのは遠山本人が二人のことをどう思っているのかという点にあると思う」

 

 重要なのは、遠山が八神と佐藤、それぞれに対する想いが明確にしないといけないということだ。

 ここにいる三人だけでは必然的に情報が少なすぎる。

 こういう時、双方が暴走して対立の溝が深まりすぎないようにするのが俺の立場。

 楽にしてやれ派の公約だ。

 よって、俺は提案をした。

 

 「というわけでだ。とりあえず、遠山と八神と佐藤をよく知る人物からそれぞれ意見を聞くことにした。社内の人間関係を悪化させないため、全て匿名で声も加工してある。それを踏まえて聞いて欲しい」

 

 俺はプロジェクターを操作し、スクリーンに映像を映し出す。

 現れた人物達が、それぞれ自分たちの意見を述べた動画だ。

 映っている人物は、モザイクがかけられており、声も変わらないように編集を加えた。

 

 『そうですね。確かに遠山さんの気持ちには明確に変化があると思います。私個人としては佐藤さんを応援したいですね。八神さんは私のことを名字で呼ぶので』

 

 『わ…私は、まだどちらとも言われまへんね。その……佐藤さんには色々迷惑かけてしもうたんで』

 

 『……私、は…多分、りんちゃんは…もっと、自分の気持ちに正直に……なって、ほしいなって……思い、ます』

 

 『もうなんでもいいので決着ついてくださーい!!』

 

 

 「とこんな感じだ」

 

 「匿名である意味を感じられなかったのは私の気のせいなのかな?」

 

 葉月の質問に対し、俺は肩をすくめることで答えとする。

 実際、俺もそう思ったが、こうでもしないと話にならないと思ったからだ。

 

 「まぁ、これも所詮外野のやっかみにすぎない。重要なことはもっと他にある」

 

 俺の言葉に、皆が真剣な表情となる。

 葉月は眼鏡をかけなおし、花男は髪を手櫛で整え始める。

 

 「7年間。実に長かったが、この鼎立抗争もいよいよオーラスを迎えようとしているということだ」

 

 そう。

 この対立の決着がつく時が来たのだ。

 

 「敦君。君はどうするつもりだい?」

 

 「さぁな。俺は元々中立派だ。どっちかの味方をするなんてことはない。ただ……」

 

 「ただ?」

 

 俺が言葉を止めたので、葉月が続きを促す。

 俺は一度咳払いをし、会議室にいる二人に聞こえるような声で宣言した。

 今から言う一言は、ここ最近の俺の考えでもある。

 俺は胸を張って言った。

 堂々と言い放った。

 

 「願わくば、3人全員が笑って終えられる結末になって欲しいと思っているだけだ」

 

 光臨原理主義者筆頭の葉月とシュガー党筆頭の花男が、ニヤリと笑った。

 

 「ふっ……。君らしいね」

 

 「それが一番難しいことなのよ?」

 

 こうして、最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 「ところで葉月、さっきから気になってたんだが、お前なんでずっと縛られてんだ?」

 

 「あぁ、これはね。この前の増田君の件で遠山君にシメられたんだ」

 

 ●

 

 

 ひふみ視点

 

 「はぁ…リーダーって大変だな」

 

 先日のゆんちゃんの一件を思い出して、私は一人ため息をついた。

 ゆんちゃんが遅れている事や、その原因も含めてちゃんと解決できてよかった。

 敦さんが後から完成させてくれたからスケジュール的な遅れもなかったし。

 でもそれで、ゆんちゃんが、『ズルしたことを叱ってください』と言われるなんて思ってもいなかった。

 彼女を叱るイメージがわかなかったからコスプレしたキャラのマネをするのは失敗だった。

 敦さんだけじゃ無く、青葉ちゃんにまであの様子を見られてしまうなんて…恥ずかしいよ。

 もし純君にまで見られたら生きていけないよぉ……。

 と顔を真っ赤にしながら出社してきた私は給湯室の近くを通りかかった。

 

 「あれは…」

 

 給湯室の中には、りんちゃんがいた。

 電気もついていない給湯室で、一人立っている後ろ姿が見えた。

 

 「ふぅ……んん……」

 

 大きく深呼吸をしているようだ。

 大丈夫かな?

 この前、純君のことで話を聞いてもらったしなにか相談に乗れることがあるなら話を――

 

 「こここここここここここここここここここここここここここここここここっ!!」

 

 「!?」

 

 びくっとする私。

 今のって、りんちゃんの声だよね。

 なんかすごく大きな声を出し始めた。

 

 「り…りんちゃん?」

 

 今までにない奇行を見せるりんちゃんに、思わず声をかけてしまった。

 

 「ひゃあ!? ひ、ひふみちゃん!?」

 

 私が声をかけた瞬間にビクッとした様子で振り返ってきた。

 ……びっくりしてるのはこっちだよ。

 

 「ど、どうしたの? 何か…あった…の?」

 「えっと…これは…これは……」

 

 恥ずかしそうに両手で顔を隠すりんちゃんの言葉を待つ。

 その言葉に、私は耳を疑った。

 

 「コウちゃん発声練習なの!!」

 

 「コウちゃん発声練習!?」

 

 何言ってるの!?

 

 「あ…あのね、佐藤君にコウちゃんの話をするとき、噛まないように練習しようと思って」

 

 「なるほど…」

 

 「どしちゃったのかしら? 前は平気だったのに、緊張しちゃって…」

 

 真っ赤な顔のりんちゃんが、俯きながら言った。

 ……りんちゃん、やっぱり。

 この様子を見て改めて確信した。

 それに、私も人と話すのは苦手だ。

 今でも純君や青葉ちゃんと話すときだって、どもっちゃうこともあるくらいだし。

 それでいつも話のテンポを合わせて貰ってばかり。

 だから、りんちゃんが困ってる気持ちは私には痛いほどわかるんだ。

 

 「りんちゃん…元気、出して。練習するのは…いいこと…だから。私も…付き合う…よ」

 

 「ひふみちゃん…っ」

 

 私はそっと彼女の手を握る。

 彼女は少し驚いたようだけど、すぐに笑顔を見せてくれる。

 

 「ありがとうひふみちゃん!」

 

 「うん……!」

 

 私たちは二人で微笑みあう。

 

 そして……。

 

 「「せーの……こここここここここここここここここここここここここここここここここここここここ!!!!」」










会議室から出てきたばかりの敦さん:なにやってんだアイツら……?
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