NEW GAME! ~omnibus love stories~ 作:黒ゴマアザラシ
ゆん視点
「そ、それでね。コウちゃんったらね。この土日にご飯作りに行ってたんだけど、洗濯物ずっと溜めっぱなしだったの。いつもちゃんとしなさいって言ってるのに、結局全部私がやってあげたの。もう、私がいないと本当にコウちゃんはだめなんだから」
「……」
あー、いつもの光景やな。
私は自分の席に座って隣のブースの様子を伺う。
八神さんの愚痴を話す遠山さんとそれを聞いてる佐藤さん、をニヤニヤ見ている花男さん、を見てる……ひふみ先輩!?
先日、彼氏との件で物議を醸したその人が、この状況に賢明な視線を送っていた。
イーグルジャンプでは見慣れたこの異様な連鎖に、またもや驚きの声を上げてしまった。
でもどないしたんや?
今日はそこにひふみ先輩まで加わっているのだ。
いや、ひふみ先輩と遠山さんはソコソコ長いつきあいやからわからなくはないけれど……。
「えっと、あの……」
私は恐る恐る声をかけることにした。
すると、こちらに気付いたのかひふみ先輩が振り向く。
「あ…ゆんちゃん」
「ひふみ先輩、何してとるんですか?」
「……ゆんちゃんは、気付いてる?」
「え?何をですか?」
「りんちゃんのこと……」
「はい、まぁだいたい察しはついてますけど……」
遠山さんが八神さんのことが好きで、それを佐藤さんに話しているという状況は知っとる。
ひふみ先輩も知っとるんやろう。
私も嫌なタイミングで盗み聞きしてしもうたんやけれど、しかも私が敦さんのこと好きなことバレとったし。
でも、ひふみ先輩が言いたいのはそういうことやないみたいやった。
「りんちゃん…佐藤君の事、好きになってる」
「へっ!?」
そっち!?
いや、佐藤さんが遠山さんの事好きって話じゃないん!?
ていうか、それ以上に……。
「い、いや…ひふみ先輩も知ってますよね? 遠山さんって、八神さんのことが好きなんじゃ……」
「…うん。だから、ね。りんちゃん…佐藤君も好きに、なってる」
…………はいぃぃ!?
遠山さんが八神さんのことを好きになっとるというのはわかる。
それと同時に佐藤さんのことも好きになっとる? どういうことやねんそれ!! わけわからん!
動揺する私を諭すように、ひふみ先輩は話し出した。
「りんちゃん、よく佐藤君のこと考えてて、それで仕事中ミスしたりすることがあったの。それに、この前は…うまく話せないって、言ってたし」
それは前に聞いたことがある。
でもそれとこれと一体なんの関係が……。
「それで…りんちゃん、そのことに気がついてないの」
……はい?
「えーっと……つまり、こういうことですか? 遠山さんは八神さんが好きやのに、同時に佐藤さんにも惹かれてしもうて、それが本人の中で処理しきれていない?」
「う、うん……そんな感じかな……」
整理しよう。
まず、遠山さんが八神さんの事を好きだということは確定事項やとして、そして佐藤さんの方だが……これはまだわからへんということらしい。
何故なら遠山さん自身が佐藤さんの事を意識し始めてしもうているからだという。
要するに両思いになっている状態に近いということだろう。
遠山さん自身も自分の気持ちがよくわかっていない状態で、この事態を招いてしまったということだ。
整理しても、理解しきれない。
でも改めて、ひふみ先輩と一緒に佐藤さんと遠山さんが話しているところを覗いてみる。
滅茶苦茶やけど、2人との付き合いが長いひふみ先輩が言うならホンマに……。
「それとね、コウちゃん。昨日なんてお風呂上がりパンツ一枚でウロチョロしてたんだよ。いくら私しかいないからって、女の子がなんだから少しは気にしてほしいよ。ほんと困っちゃうよね」
ホンマに………。
「あとね、最近コウちゃんってば、ひふみちゃんの肉じゃがが恋しいとか、それを食べられる増田くんが羨ましいとかごはん食べてるときに言ってくるの。なんでそういうこと私のご飯食べてるときに言うかなって思うんだよね」
……ホンマにぃ?
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佐藤視点
「それと、今度久しぶりにどこか遊びに行かないって言ったのに、コウちゃんったら眠いからいいって言って全然聞いてくれないの。せっかくいい天気だったのに……」
「そうか」
今日もいつも通り、八神の愚痴を話すりんに、それをニヤついた顔で眺める花男さん。
「……」
……なんかコミュ障が加わってる。