史上最強の弟子ケンイチ 実績『達人としか呼ばれぬ者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:雨舞う電流マッチ

「――ろ、ロキが七人も!?」

「いや一番左の奴は違うんじゃねぇかな……」

 

 ……コイツなんというか、天然な所あるよなぁ。

いや今はそれを気にするよりも、先ずは目の前の奴ら――『七人のロキ達』を蹴散らさないと、誘拐された白浜の妹が危ない。集中しろ。

 

――ジャキンッ! ジャキンジャキンッ! ジャキンッ!

 

「へへっ……スタンロッドを味わいな!」

 

しかし、ラグナレクに居た時から、『戦う参謀』のロキの噂は聞いていたが、白浜をおびき寄せる為に奴の妹を攫うとか……いや、聞きしに勝る外道ぶりだ。

 

ラグナレクに居る奴らは基本ただのチンピラだが――アイツだけは、そんな生半可な奴らと違って、筋金入りの『本物』の悪党。

ラグナレクが一端に不良集団として成り立っているのは奴の手腕である所もデカく。噂じゃ裏社会の極道共向けに、活きの良い不良を若衆として紹介したり、カチコミの為の人員を用立てたりと、相当にヤバイ事にも手を出していると聞く。

 

……そう考えると華麗なステップを踏みつつ、真っ先に安全圏に逃げてる後ろの宇宙人とかの洗脳話術なんざ可愛いものに見えてくるが。

 

「――来ますよ!」

 

 兎も角。そんなクソみたいな野郎だ。俺達と白浜を確実に分断して始末するつもりなんだろう。こんな念入りな待ち伏せまでして。となりゃあ――迷ってる暇もねぇ。

 

「向こうから突っ込んで来てくれるなら、寧ろ好都合ってもんだ!」

「来たまえよロキ諸君!」

 

 スタンロッドを構え、向かって来る七人のロキに向けて、構えを取る。

 先ず向かって来るのは三人。俺、武田、風林寺にそれぞれ一人ずつが、スタンロッドを構えて距離を詰め――その後ろから、残りの四人がスタンロッドを構えて後ろを詰めて来ている。

 

 三人を足止めした所で、乱戦って感じか――舐められたもんだ。

 

「――武田ぁ! 悪いが先行くぜ!」

「おぅっ――いや宇喜多突出したらマズいんじゃない!?」

 

 二人から先駆けて一歩前へと踏み出す。俺の方へ来ていた一人へ。突出してたら叩かれるのは覚悟の上だ。それでも、無駄に時間はかけてられない。一人一人叩き潰してちゃ時間の無駄だ。だったら――!

 

「はっ、たかがキサラ隊の一兵隊が、第四拳豪に敵うと思うな!」

 

 ロキがスタンロッドを振りかぶる。

 

 それを確認してさらに前へ一歩。獲物が向こうから突っ込んで来て、満面の笑みを浮かべるロキ。やる気まんまんって感じで握り直し、振り下ろされるスタンロッド。片手を盾にして受け止めた。

腕から奔る電流が、痛い、痺れる、筋肉が痙攣する――が。

 

「そんな玩具で止まるかってんだよぉ!!」

 

 更にもう一歩、先へ。痛いけど、痺れるけど。それでも身体は問題なく動く。

 

「――なんだとっ!?」

「お゛ぉ゛ぉ゛お゛オ゛ア゛ア゛ァ゛ッ!!!!」

 

 一瞬、怯んだ。さらに一歩、身体を低くして前進して。全体重のせて衝突。

鈍い音と共に、ゲロでも吐きそうな声出してロキの体がくの字に折れ曲がった。

 

 態勢は崩れた、体幹もボロボロ、もう踏ん張りも利かねぇだろう――そのまま一気に体を担ぎ上げる。楽なもんだ。このまま叩きつけるなりなんなりすれば、もうコイツは立ち上がれないだろうが、しかし。

 もっといいプレゼント先がある。視線を、突っ込んで来ていた残りの四人へ。

 

「オラ喰らえ、投げの宇喜多の『肩車』だぁ!!」

「うわぁあああっ!?」

 

 担ぎ上げた奴は弾丸だ。踏み込んで、突進の勢いも乗せて、そのまま一気に投げ飛ばしてやる――お仲間が『飛んで来る』とは思ってなかったのか、四人の反応は遅れた。

 その一瞬が致命的だ。避けれねぇ。人一人分の質量が、一気呵成って感じで徒党組んでた四人組の網眼鏡と、その身体を弾き飛ばす。まるでボウリングだ。

 

「へっ、気分爽快ってなぁ! いてて……」

「ちょ、宇喜多、大丈夫かい君!?」

「す、スタンロッドを真正面からなんて無茶を!」

 

 振り返れば武田と風林寺も、自分の方に向かって来た奴らを無事に仕留めたようで、直ぐに隣に並んでくれる。両側からかけられた心配の言葉に大丈夫だ、と受けた方の腕を敢えてぐるぐると回しながら回答する。

 

「痛かったけどな。そんだけだ。もう全然動くし、なんともねぇや」

「……宇喜多、君ってそんなタフだったっけか?」

「あいつ等のスタンロッドだかがそこまで大した事ないだけじゃねぇのか?」

 

 まぁ確かに金属でぶん殴られるのは痛いけど、言っても鉄パイプよりちょっと痛い位だろうし、腕で受けられるレベルだろうとは思う。実際受けられたし。平気だし。そんな信じられないモノを見られる様な顔で見られる様な事をしたつもりもねぇんだが。

 

「……あれ結構バチバチいってなかったかい?」

「私でも身体に当たったら痺れて動けなくなってしまうかもしれない位には……」

「だよねぇ……宇喜多のガタイがデカいから耐えられた……?」

「何喋ってんだ! まだ残ってんだ、来るぞ!」

 

 つっても、さっきので頭数は三人は減った。残りは四人。武田と俺で一人ずつ、風林寺が居れば残り二人も余裕だとは思うが。油断は出来ねぇ。

 改めて構えを取る。さっきので一人は余裕でやれる事は分かった。第四拳豪ってのがどれだけのモンだってんだ。サシなら負けねぇ――

 

「――分かってるなお前ら、武田と女には取り敢えず一人ずつ! 投げの宇喜多には二人で当たるぞ! 覚悟決めろ!」

「ってなんでだぁオイ!?」

 

 オイ待てそりゃあ話がちげぇ、サシならやれるって話なんだよ、なんで俺に二人向かって来てんだよ!? 明らかに風林寺だろうが一番ヤベェのは! 戦う参謀とか抜かしておいてこいつらの眼は節穴か!?

 ち、畜生ホントに俺に二人向かって来てやがる! くそっ……取り敢えず、引き受けるしかねぇか!

 

「化け物めぇ!」

「流石にスタンロッド二本なら耐え切れまい!」

 

 く、クソがっ! 実際そうだよ! 多分二本は無理だよ! さっきみたいな無茶も利かねぇだろうし……一対一に持ち込めるか!? いやダメだ、向こうも馬鹿じゃねぇ、タイミング合わせて挟み撃ちみたいな態勢とってやがる……どうする!?

 

 ……いや、風林寺も武田も、俺より十分つええ。風林寺は言わずもがな、武田は取り戻した幻の左のキレが戻って来て、めきめき強くなってやがる。

 

 ちらり、と。雨に濡れた服を見る。

なら、俺がやるべきは、一つか。まぁ今の俺は先生に教えてもらって完璧な健康体そのものだ。多少の無茶位なら耐えてくれるだろうさ……!

 

「――っしゃこいやぁあああああ!!」

 

 ――敢えて。

 

 デカく両腕を広げる。相手を威嚇するように。んで同時に……懐をガラ空きにしてやる。

 ロッドを構えて二人のロキが突っ込んで来る。思った通りに動いてくれてありがたい。少なくとも、今一番ヤバいのは、俺がやられて隣の二人にコイツらが行っちまう事。二対一ってのは、やっぱりこうして真っ向から相手すると思うが、きつい。

 

 なら、俺がやるべきは――っ!

 

「「喰らえっ!!」」

 

 突き出されるスタンロッド。狙いは胴体か。気にしねぇ。こっちも突っ込む。上等だ。我慢比べとしゃれこもうじゃねぇか第四拳豪っ!

 

 ――ばちばちばちぃっ!!!

 

「ごぁああああっ!?」

「う、宇喜多ァっ!!」

「宇喜多さん!?」

 

 直撃。電流。強烈……っ!!

 しびっ、痺れる、やべ、意識飛ぶ。ロキが笑ってる。へへ、笑ってられるか。抵抗は出来やしねぇが……お前ら、こんな悪天候の中で、よくもまぁスタンロッドなんざ持ってきたもんだ。

 

 スパークする一瞬の中――それでも尚、両腕を伸ばして、触れている間に、伸ばされたロキ二人の腕――その袖口から覗く、素肌に両腕が触れた。

 

「「――あっ、ばばあばばばああばばばばあばぁっ!?」」

 

 ……雨は、不純物をたくさん含む。電流をよく通す。流石に手袋は絶縁体、とかなんだろうが、素肌に直で触れりゃあ感電位するだろうがってんだ……っ!

 その一瞬で、二人がスタンロッドを取り落とす。チャンス。

 

 盛大に身体は痺れた。意識はスパーク寸前だ。それでもなぁ……まだ、まだ。俺の体はなんとか動くってんだよこの野郎がっ……!!!

 

「なげ、られなく、ても……逃がさねぇ……っ!」

 

 突っ込んで、俺の間合いに入っていたロキ二人の身体を――ガッチリとホールド。気が付いて抜け出そうとするが……へっ、同じ痺れてる条件なら、お前らの細腕の力に、負けるかってんだこの野郎が!!

 

「ば、ばかなななっ……!?」

「し、しびれっ、てなっ!?」

「しびれっ、てんだよっ! でも、に、がさ、ねぇ!」

 

 お前らと違って、それでも無理矢理動くだけのやる気があるってだけだ。へっ、こうして逃がさなけりゃあ――ちゃんとカバーしてくれるっていう確信がある。

 

「――君はホント、無茶をするな!」

「そのまま離さないでくださいな!」

 

 三人そろって顔を上げる。にやりと笑う。ロキ達は――顔を青ざめさせた。哀れだがしかしながら、逃がさねぇよ。

 既にロキを沈めた二人の――武田の幻の左、風林寺の蹴り――渾身の一発が直撃するまでは、絶対にな。

 

 

 

 

 

 

「あーいてて……まだどっか痺れてる気がすんなぁ」

 

 首をゴキゴキ鳴らす。幾らアイツらのスタンロッドが玩具みたいなもんにしたって、二本分はなぁ。あー、関節とか痛い。軋むような音とかしてねぇかコレ。こりゃあ後で先生に診察受けねぇとなぁこりゃ……

 

「「「……」」」

「おら、早く行こうぜお前ら……って、なんだよこっち見て」

 

 風林寺と武田は……まぁ心配してくれてるだけか。問題は新島だ、テメェ明らかにドン引きしたような顔しやがって。なんだその化け物見るみたいな顔は。

 

「なぁ宇喜多、お前絶縁体とか体に仕込んでるのか?」

「あぁ? んなもんしてねぇよ。お前と違ってバカなもんでな、そんな備えなんざねぇってんだ。おら、無駄話してる暇があったらさっさと行くぞ」

 

 ったく……今は一刻を争う事態だってのに。どいつもこいつも呑気しやがって。白浜の妹が危ないってのに、ロキの影武者(七人全員偽物だった。クソが)相手にまんまと時間稼がれちまったんだ。

 もしもこういうスタンロッドとかで痺れさせられたならケガとかしてるかもしれない。ガキにこういう電流は良くねぇんだ。先生に診せる事になるかもしれねぇんだ。

 

「オラ行くぞ! 武田、ぼーっとしてんな!」

「……あぁ、うん。平気……ではなさそうだけど、元気そうだね宇喜多」

「あぁ!? 元気でもねぇよ関節痛いしクソほど怠いわ!」

 

 こんな時に天然発揮してんじゃねぇ!!

 

 

 

 

 

 

「……なぁ美羽ちゃん。スタンガンとかでバチッてやられただけでも、普通はもうちょっと疲れたようにするよな? オレ様の常識が壊れた訳じゃないよな? なんでスタンロッドでバチられて普通に走ってんだアイツ」

「うーん……鍛えてる、というよりは、身体を頑強に『作っている』のではないかと。痛みも、疲労も一見する限り確かにあるみたいですし……恐らく、本当にただ単純に体力的に余裕があるのかと」

「宇喜多の奴、何時の間にあんなに『タフ』になったんだろうな。最近は髪もバッチリ刈り込んでるし、気合いの入り方とか、ノリとか違うし……もしかして、アイツもケンイチ君みたいに誰かに師事してるのか……?」

 




ケンイチ君→防御力特化。
ジークフリート→回避力特化。

この二人とは別方向で、宇喜多は伸ばして行こうと思います。
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