史上最強の弟子ケンイチ 実績『達人としか呼ばれぬ者』獲得   作:秋の自由研究

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Episode MG4:抱かせろちゃん

「こういう事を言うのは悪いと思うけど……なんでこんな所に居るの!? アンタみたいなのが!?」

「えェー? いちゃァ悪いのォ?」

「悪いって言うか……! そ、そのドレスでこんな、大衆向けの!」

 

 そう言われ、ちらと自分のドレスを見てみる。

真っ赤な色、布一枚を体に巻き付けたようにも見えるデザイン。ザックリと横も切れていて、胸元も開いていて、露出度がかなりのモノ――彼女にとっては何時もの格好だ。

 

「んー……普通じゃなァい?」

「いやいやいやいや……っていうか、どうしてまだこの町に居るのよ!!」

「お気に入りィのォ、店がァあるから、ここは要チェックの町にィなったのよォ」

 

 この前ホームページをチェックしてみた店のアクセサリーは、中々の質だった。故にまたじっくりとその辺りを品定めしたいのでそりゃあもうこの辺りにも滞在する。心だけではなく体も磨いてこそ人生と言う物を楽しめる。

 そんな時に彼女と邂逅したのだ。偶然。

 

「でェ、どーぉ? その後はァ?」

 

 ――と言うのは半分冗談だが。半分と言うのは、当然ながら偶然の辺りだ。

 わざと会いに行ってるか、と問われれば、ジャックは『いいえ? ついでよ』と答えるだろう。お気に入りの店のアクセサリーを買いに行く『ついで』にこうして絡みに来たのだ。実に楽しい。

 

「……その、ここでのお買い物って何時になったら終わるのかしら」

「んゥ、結構ォ、数があるからァ……暫くはァ居るわよォ?」

「いっぺんに全部買ったら良いじゃないの」

「買わないわよォ。そんな事したらァ目立つでしょォ?」

 

 この場合の目立つ目立たない、というのは、見た目だとかそう言う意味ではなく……町の噂的な意味になってくる。

 彼女にとって、町に残る『足跡』というのは足かせになりかねない。裏の住人と言うのはそう言うのが残ると本当に苦しい。これでも、一般人が買い物をしている様に色々気を付けてやっているのだ。本当に。自分の見た目が整っているのは自覚しているので。

 

 目立ちはする。だが悪目立ちはしない。その辺りをしっかりしていたからこそ、この狂犬染みた女は生き残って来たのだ。

 

「ハァ。それで、貴方に紹介してもらったって、ホーク先生の事よね。良い先生よ。父上の事も、私の事も良くしてくださるし」

「あらァそう。なら紹介してよかったわァ。えェ、ホントォ」

「何? お礼でもして欲しいの?」

「――そうねェ。お礼ならァ……ちょっとお話しなァい?」

「また!?」

 

 

 

 何故、こうして再びお気に入りの店に連れ込むのか。

 何で話すのか? 本当に極端な話をすれば。暇つぶし以外の何物でもない。目の前の少女は将来の獲物だ。狩人も、狩る対象をよく観察してから仕留めに行く。それこそ、下手すれば感情移入してしまうほどに……それと、多分理屈は同じだと、彼女は思う。

 

「あらそォ。お父さん泣いてたのォ」

「そうよ! それで勤さんをどついて『ちゃんと幸せにしろよ』って何度も何度も……もう恥ずかしいったら!」

「そりゃあァ愛されてるゥ証拠じゃなァい」

 

 それはそれとして。

 女として会話できる相手がまぁ身近にいないというのも大きい。ガールズトークだってまだまだやりたいお年頃(自称)である。

 

 女性の武人がそもそもあまりに居ないのだ、闇には。彼女が知っている限りでは、一人有名な女武術家が居るには居るのだが……なんと言うか、アレには近寄らない方が良いと本能が告げているので、近寄らない様にしていた。

 まぁそんな訳で。折角の休みをどのように使うか等、別に誰が決めたわけでも無いのでこのように獲物にちょっかいをかける事にした。

 

「でもいーわねェ、子供ォ」

「……子供好きなの?」

「好きよォ? 普通にィ」

 

 こういう何でもない会話をするのも、ガールズトークの醍醐味か、等と思いつつ。怪訝な顔をされるのに些かと不満を感じてしまう。

 彼女は美しいと感じる者が好きだ。彼女にとって美しいのは『諦めず絶頂に向けて頑張る者』だ。子供など、がむしゃらに後先考えず努力するその純粋さなど、美しさでは一種最たるものだろう。

 彼等が成長した先に、彼女が越えるべき『絶頂』が待っているのだから。

 

 実際、子供が好きでなかったら、自分とハゲ医者の間に割り込もうとしていた若き助手にはそれこそ、一撃で重傷を負わせていても不思議ではない。

 あの時が仕事中で、プロとしてのプライドもあったとはいえ、アレとの間に入り込んで来る相手に流石にプロを保っていられたかどうか。

 

「……貴女の好き、って素直にそうって頷けないのだけど」

「えェ~? 酷くなァい? 心配し過ぎじゃなァい? メンタル雑魚なのォ?」

 

 故に、ジャックは子供は割と好きだし。こうやって子供みたいに素直な反応を返してくれる子も結構好きな方ではある。ちょっと煽ったら顔を真っ赤にして拳をプルプル。揶揄い甲斐があって非常に顔がニヤついてしまう。

 

「アンタねぇ……!」

「だって、ねェ? 普通にィ、子供抱いたりとかァしたいだけなのにィ、変な想像するゥそっちが悪いんじゃなァい?」

「ぐぬ」

「うふふふふふゥ、冗談よォ」

 

 ――ふと。

 

「ねェ。その子ォ。無事に生まれたらァ抱かせてくれなァい?」

「えっ」

「折角ゥ良いお医者をォ紹介したんだしィ……それくらいはァ良いんじゃないのォ?」

 

 そんな反応を見て居たら、魔が差した。これだけ輝く女性が生む子供なのだ。さぞかし見事な子が生まれるのであろう――そう思って、ちょっと踏み込んで見る。

 彼女にとっては今の趣味の時間で何をするのも自由だ。武人だからと言って、何時だって武術や何やらを極める為に自分の時間を割いている訳でもないし、その時間を、子の獲物が生む子を見るのに充てたって良い。

 

 彼女にとって、美しい物は幾らだって見て良い、目の保養になるものだ。そして良い武人の子ならば、そりゃあ宝石の様に輝く子になるだろう――という打算の下に、彼女は趣味に走った。

 

 とはいえ、了承されるとは初めから思っていない。

 活人拳連中は、長く太平の世で落ち着いた生活をしている所為か、平和ボケしている者も多い(弱くなったとは言っていない)。とはいえ流石に殺人拳と分かっている危険人物相手に、自分の子供を抱かせるような真似はしないだろう。

 いきなりかましてきたのに驚いた所で『冗談なのに~』などと揶揄って楽しむのが関の山だろうと考えて……

 

「…………」

「ねーねー、どうなのォ?」

「一つ、約束して」

「?」

「抱く時は、べっとり付いてるその血の匂いを落としてきて。赤ちゃんって、そう言うのに凄い敏感らしいから。そうしたら……別に」

 

 今度は、こっちが目を丸くする番となった。

 明らかに断られる流れだと思っていたのが、これは想像の範囲外だ。無理難題を吹っかけて、自分の要求を通す。積りだった。

積りだったのが、なんと無理難題の方が通ってしまった時にどうすればいいのか……

 

「――じゃあ、念入りに体磨いて来るわねぇ」

 

 こういう時、動揺せず強欲に行くのが彼女だ。と言う事でオッケーなら貰いに行くことにした。貰うというか、抱きに行くというべきか。

 

「そうして」

「でもォ、ホントに良いのォ?」

「……別に、そんな難しい事じゃないわよ。貴女には一つ貰ったから、それを返すだけ」

 

 それに関しては、自分はお礼の為に呼んだ、と言っているのだが。それでも尚『返す』と言った目の前の少女に思わず、笑みが零れた……『ニッコリ』というよりは『ニマァ』という言い方が似合う笑顔を。

 

「律儀ねェ」

「悪いかしら?」

「いいえ? ちょっとォ不思議なだけェ」

「……殺人拳の使い手だからって言って、良くしてもらった人を邪険にするような母親にはなりたくないの。この子にも、旦那様にも誇れるようでありたい」

 

 ――あぁ、そう言うのだ。とジャックは笑みを深める。

 そう言う真っ直ぐで、活人拳染みた物言いは、大好物だ。これこそ正しい『誇り高い』武人だ。実に輝いているじゃないか。自分の目の前で。体が強いだけでもない、心が強いだけでもない。今ですら、もう自分がしゃぶりつくしたい程に美しいではないか。

 狙いを付けたのは、きっと間違いではなかった。ずっと『輝く人物』を狩って来た自分の嗅覚に狂いはない。

 

「良い母親になるわねェ、貴女ァ」

「え、そう?」

「うん。保証して上げるわァ……根拠も何もないけどォ」

「なによそれ」

 

 きっと、彼女が絶頂に至った時。今までで、最高の戦いが出来るだろう。

 その時がとても、とっても楽しみになってくる。子供を抱けるのも実にラッキーだ。自分が満たされている事を、何よりも実感できていて……

 分かり合えなくても、今きっと。ジャックは、彼女と話せて幸せだった。

 

 

 

「あー……美味しかったァ」

 

 幸せな日は、幸せなご飯を、と言う事で、今回はホテルのリストランテでのお高いステーキである。別に高い物が食いたかったわけではない。偶々食いたい物が高かった。彼女にとってはその程度の認識だ。

 彼女的にはもうちょっとボリュームが欲しかったところではある。とはいえ味は結構ゴツめな物で、好みではあった。日本の食事はボリュームと言うただ一点以外はすべて高水準で、大満足。

 

 今日は最高の気分で寝れるな。と席を立とうとした時。

 

「――探したぞ」

 

 その声で、一気に機嫌は急転直下。

 ギギギ、と潤滑油不足満点の動きで声の方向を見れば。居る。ハゲと白衣の、あの男。昔に言われた事を思い出す。自分に対するド派手なストーカー宣言。

 アレを、今になって実行しようとでも思ったのか。そう思うと……げんなりとする表情を抑えきれなかったのである。

 




タイトルは勢いだけです。

本当にワンカットしか出てない田中真結さんのキャラを掴むのが大変ですがもう割り切ってオリキャラ書く勢いで行くべきか……
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