「ふんにゃかハッピー! はんにゃかラッキー! センキューシラオキ! はい、リピートアフターミー!」
「ガバババ!! 変わったまじないだなぁそりゃ。教えてもらったところ悪いが、我ら巨人はエルバフの神以外には祈らねぇ」
「おぉ、流石の信仰心! いやぁ、初めて見た時は大きすぎてびっくりしちゃいましたけれど、私だって耳と尻尾がありますし。それに、占いの結果もちゃんと聞いてくれますから、ブロギーさんは良い人ですね!」
和気あいあいと会話するフクキタルとブロギー。そんな二人の様子を、少し離れたところから見守るのは、一緒にブロギーの寝床まで連れてこられたナミとウソップだ。
「⋯⋯ちょっと、なんであの子巨人とあんな打ち解けてるの?」
「おれに聞くなよ! ⋯⋯話を聞く感じ、信仰心があつい奴どうし気が合ったって感じか?」
「いや、それにしたっておかしいでしょ! あの子、恐怖心とかないのかしら?」
「まあ、突然海賊船に乗り込んでくるような奴だからなぁ⋯⋯」
確かに、そう考えるとフクキタルは最初からなかなかにぶっ飛んだ行動をしていたなぁと、ナミは若干目の前のウマ娘の少女に対する認識を改める。そして、そのフクキタルはというと、ブロギーの掌の上にのせてもらいながら、むっふー! と得意げに水晶玉を見せびらかしていた。
「あなたのような体も心も大きな人に会えた奇跡! これぞまさにシラオキ様の思し召しに違いありません! あ、せっかくなので運勢を占いいたしましょうか?」
「ガバババ!! そいつはいいな!! ⋯⋯ん、だが、決闘の合図が鳴った」
爆音と共に島の真ん中にある火山が噴火し、ブロギーはフクキタルを地面に下ろし、その代わりに斧を拾い上げる。
「け、決闘ですか? いったいどういった理由で⋯⋯?」
「理由か。理由など⋯⋯とうに忘れた!!」
ブロギーが火山の方へと歩いていくと、その反対側から同じく巨人のドリーが、剣を持って現れる。
「「おおおおおおおお!!!!」」
そして、ドリーとブロギーの二人の巨人は、お互いに雄たけびを上げ、そして武器をぶつけ合った。
お互いに全く遠慮のない、全て急所狙いの攻撃。100年続く決闘に最早なぜ戦うのかなどという理由など必要なく、お互いの誇りのため、全力でぶつかり合うのだ。
そんな二人の姿に感銘を受けたウソップは、先程までのビクビクした態度から打って変わって、目を輝かせてその決闘を見上げていた。
「すげぇ⋯⋯。これこそまさに、戦士たちの誇り高き決闘だ! おれの目指す“勇敢なる海の戦士”ってのは、これなんだ!! おれは、こういう誇り高い男になりてぇ!!」
「私も、なんとなくウソップさんの言っていること分かるかもしれません! なんていうか⋯⋯あの決闘を見ていると、ウマ娘としての私の闘争本能が刺激されるような、そんな不思議な感覚に⋯⋯! ふおおおおお!! なんだか興奮してきました!! ちょっと走ってきます!!」
ドリーとブロギーの決闘を見てテンションが上がったフクキタルは、自らの興奮を鎮めるためにも走り出す。
「ふんぎゃーー!!?」
しかしながら、興奮して前を見ていなかったフクキタルは、船から持ってきた酒樽にぶつかって転んでしまった。
「もぉ、ちょっとフク。はしゃいで怪我したらどうすんのよ。少し落ち着きなさい」
「は、はい。申し訳ありません⋯⋯。あ、お酒の樽があんなところまで転がって⋯⋯」
フクキタルがぶつかった酒樽は、ころころと転がって、岩場にごつんと激突した。そしてその瞬間、どごぉんという爆音と共に酒樽が爆発する。
「⋯⋯え? わわわ、私のせいで酒樽がぁぁぁぁ!?」
「いや、それで爆発するのはおかしいだろ!? あの酒に爆薬かなんかが入ってたんだ!!」
「まさか、バロックワークスの仕業!? でも、一体なんでこんなことを⋯⋯」
酒が爆発するという突然のハプニングに混乱する三人。その頭上では巨人たちの決闘が7万3千466戦目の引き分けに終わっていたが、この事態に対する対処のことで頭がいっぱいで、その様子は目に入っていなかった。
「とりあえず、悪意を持った誰かがこの島にいるのは確定だわ。わたしたちだけじゃ対処できるか怪しいし、先に島に入ったルフィ達と合流しないと⋯⋯」
「ああ、そうだな。これはブロギー師匠が渡そうとしていた酒なんだ。これをもし相手の巨人が飲んだらと思うと、ぞっとするぜ! おいフク、お前も一緒に⋯⋯って、どうした?」
フクキタルに声をかけたウソップは、何やら様子がおかしいことに気が付いた。フクキタルの手はゆらゆらと怪しげな軌道を描き、その瞳は怒りに燃えていた。
「こ、こんなことをしたら皆アンラッキーになってしまうじゃないですか! 運気を下げるような鬼畜の所業、占い師として許せません!!」
鼻息荒く、ふんす! と全身で怒りを表現するフクキタルは、クジクジの実の能力で“棒みくじ”を産み出し、それを地面に投げる。
「福を掴みとるために、卑劣な外道さんの下まで開運ダーーッシュ!!」
「ちょっとフク、一人で行ったら危ない⋯⋯って、もう行っちゃった。あの子やっぱり足早いわ⋯⋯」
「おいおい、どうする!? フクを先に追った方がいいか!?」
おそらく、酒に爆薬を仕込んだ犯人のいる方向へと走っていったと思われるフクキタルを、呆然と見送る二人。先にルフィ達と合流するべきか、それともフクキタルを追うべきか⋯⋯そう悩む二人に声をかけたのは、先程決闘を終えて帰ってきたばかりのブロギーであった。
「どうした客人よ。そんなに困った顔をして。ところで、あの耳の娘はどこに行ったんだ?」
──こうして、本来仕掛けられた罠によって傷つくはずだったドリーは、その罠にかかることはなく、ブロギーは何者かが自分たちの決闘に水を差そうとしていたことを知ることになる。
決闘に水を差す行為。それは、巨人の誇りを馬鹿にする行為に等しい。怒れる二人の巨人が、フクキタルの下に助太刀にやって来るまで⋯⋯あと数刻。