リトルガーデンの鬱蒼と生い茂る木々の中で、異彩を放つ正方形の白い建造物。その建物の中へと入っていったのは、Mr.5とミス・バレンタインデーのコンビ。
「やぁ、戻ったカネ⋯⋯Mr.5」
そして、そんな2人に声をかけたのは、この建造物を建てた張本人であり、オフィサーエージェントの1人でもある男⋯⋯コードネームは、“Mr.3”。
コードネームを主張するかのような『3』の形をした髪型が特徴的な彼は、ルフィ達にやられたMr.5達を非難した後、テーブルの上に古びた手配書を広げた。
「この島にいる巨人⋯⋯通称、『青鬼のドリー』と『赤鬼のブロギー』は、100年前世界を震撼させた『巨兵海賊団』の2人の船長。最早昔話の怪物とされていたそいつらが、今私達のいるこの島に生きている⋯⋯!! 奴らの首に懸けられていた懸賞金は、当時の金額で1人頭1億ベリー! 2人で2億だ!!」
「「2億っ!!?」」
予想以上の額に驚愕する2人に対し、Mr.3は落ち着いた様子で、優雅に紅茶をすすっている。
「やっと事の重大さがわかってきたカネ。任務完了報告に加え手土産に2億の首をとって帰りゃあ、まず我らの昇格は間違いあるまい」
「それであの巨人の酒に爆弾をと⋯⋯」
「そういうことだ。まともにぶつかってはおよそ我々に勝ち目はないガネ。ちょっと工夫すれば、どんな山でも切り崩すことはできる⋯⋯。さて、巨人に対する対処はこれでいいとして、あと警戒するべきは⋯⋯こいつだガネ」
そう言って、Mr.3はドリーとブロギーの手配書の隣に、アンラッキーズから渡された麦わらの一味の似顔絵を置く。その中で、Mr.3はフクキタルの絵を指さした。
「こいつが⋯⋯? 警戒するなら船長じゃないのか?」
「はぁ⋯⋯これだから馬鹿は救いようがないガネ。3千万の賞金首など私からすれば敵じゃないガネ。この耳と尻尾⋯⋯こいつは間違いなく“ウマ娘”。危険度なら圧倒的にこっちが上だガネ」
Mr.3は、机の上に置いてあった新聞を広げる。そこには、『“覇王海賊団”、聖地マリージョアにて前代未聞の8時間ぶっ通しオペラ公演』という見出しがデカデカと書かれてあった。
「この新聞に載っている大事件を引き起こした海賊団、その船長のテイエムオペラオーに、副船長のメイショウドトウ⋯⋯さらには、船員含め全員がウマ娘だガネ。他にも有名なところで言えば王下八武海の“
「え、ええ。海軍四皇って確か、中将にして三大将にも劣らない実力の持ち主って言われている奴らのことだったかしら?」
「ああ、『
ずず⋯⋯と、Mr.3はカップに残っていた紅茶を飲み干す。警戒しろと言いつつも、その表情からは自分が負けるなどとは考えていない、絶対的な余裕が感じられる。さらに、そのペアであるミス・ゴールデンウィークなどは、先程から我関せずといった様子で眠っている。
「⋯⋯とはいえ、策さえきちんと練れば、ウマ娘とて対処は可能だガネ。既にこのジャングルには、私のキャンドルトラップを仕掛けてある。その罠で奴らを分断し、ウマ娘が1人になったところを狙えば、人数差で押し切れる。私の計画に狂いはないガネ⋯⋯!!」
これが、『3』の名を与えられたペアの余裕なのか⋯⋯と、Mr.5とミス・バレンタインデーの2人は、自分たちとの実力の差を感じ、ごくりと喉を鳴らす。
しかし、Mr.3のたてた完璧な計画、それが崩壊する足音は、すぐそこまで迫ってきていた。
「⋯⋯む? おい貴様ら、何か声が聞こえないカネ?」
「確かに、何か聞こえてくるな。またあのトカゲか?」
ここに来る前に大きなトカゲを倒してきていたMr.5は、また同じような生物がやって来たのかと疑ったが、耳を澄ましてみると人間の声と足音のように聞こえる。しかも、それはもの凄いスピードでこちらへと近づいて来ていた。
「こ、この速さは⋯⋯まさか!?」
Mr.3が目を見開くと同時に、その声が今度は全員の耳にはっきりと届く。
「うおおおおっ! かしこみかしこみぃーー!! 厄敵退散、開運ダーーッシュ!!!」
その大声にミス・ゴールデンウィークも目を覚まし、バロックワークスの4人全員が身構える中、バァン! とドアを勢いよく開けて飛び込んできたのは、まさに先程まで話題に出していたウマ娘、その人であった。
「到着です!! って、ギャーー!? なんか4人もいますぅ!? それは聞いてませんよシラオキ様ぁ!!?」
「⋯⋯これはこれは、どうやら、わざわざ探す無駄が省けたようだガネ」
この遭遇自体は予期せぬハプニングであったが、状況的には理想に近い。Mr.3は、狼狽えるフクキタルを見て勝利を確信し、口角を吊り上げたのであった。