麦わらの一味『占い師』マチカネフクキタル   作:赤葉忍

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巨人はなんかかませ役にされがちだけれど、私は好きです。エルバフちゃんと行ってくれるのかな⋯⋯?


まっすぐ!!

「おーい、フクどこだ~!! ⋯⋯って、おい、あそこに倒れているの、フクじゃねぇか!?」

 

「ホントだ!! フク、あんた大丈夫なの!?」

 

 フクキタルを探して走っていたナミとウソップは、地面に横たわるフクキタルの姿を見て慌てて傍に駆け寄る。その途中、ナミはフクキタルが倒れている場所の周りだけ草が生えていないことに一瞬違和感を覚えたが、フクキタルの安否の方が気がかりだったため、ゆさゆさと肩を揺らしながら声をかける。

 

「う、うう⋯⋯」

 

 すると、フクキタルはうなり声をあげつつ目を覚ます。かすり傷こそあれど、深刻なダメージは受けていない様子に、ナミはほっと息を吐いた。

 

「よかった。無事だったみたいね。ねぇ、あんた、バロックワークスの奴らに何かされて⋯⋯」

 

「そぉい!!」

 

「きゃーーー!!?」

 

 フクキタルは目を開けたとほぼ同時に、ナミの服を力任せに破いた。そのあまりの早業に、ナミは抵抗する暇もなく下着姿に剥かれてしまう。

 

「うおおお!? おいフク何やってんだ! いいぞぉ、もっとやれ!」

 

「何バカなこと言ってんのよ!? フクも正気に戻りなさい!!」

 

「私だけにチューする~♪」

 

 男の性として反射的にフクを応援してしまったウソップに対し、ナミの怒りの声が飛ぶ。そして、顔を赤くしながらナミは何とかフクを正気に戻そうとするが、フクキタルの目はハートマークを浮かべており、一向に元に戻る気配はない。それどころか無理矢理口づけしようと顔を近づけてくる始末だ。

 

「この⋯⋯いい加減にせんか!!」

 

「ふんぎゃろぉ!?」

 

 同性とはいえ無理矢理口づけされるのは嫌だったナミは、フクキタルの頭を思いっきり叩く。その力強い一撃に、フクキタルは奇声を上げてまた倒れてしまったが、正気を失っていたフクキタルへの対処としては正しい判断だっただろう。

 

 しかし、判断は正しかったものの、ナミ達はフクキタルに注意を向けすぎた。

 

「“キャンドルロック”!!」

 

 背後から声が聞こえたかと思いきや、ナミとウソップはろうによって両手足を拘束されてしまう。

 

 そして、2人とも完全に身動きが取れなくなったのを確認して、Mr.3が木の陰から姿を現した。

 

「フッハッハッハ! バカは扱いやすくて助かるガネ!! こんな見え透いた罠に引っかかってくれるとはな! さて、そこのウマ娘も含めて、お前達全員、私の華麗なる芸術作品になって貰おうカネ」

 

 ミス・ゴールデンウィークの“カラーズトラップ”の効果で洗脳したフクキタルを利用して、他の仲間を捕まえるというMr.3の作戦は、ほぼ完璧に成功した。文字通り手も足も出ない絶体絶命のピンチ⋯⋯にも関わらず、ナミは冷静にMr.3を見つめていた。

 

「バカはあんたの方よ。わたしたちが、たった2人で危険な敵地に殴り込めると思ってるの?」

 

 Mr.3は、ナミの言った言葉の意味が理解出来ずに眉をひそめる。そして、単なる負け犬の遠吠えかと無視して拘束を強めようとしたその時だった。

 

「ゴムゴムのぉ~、(ピストル)!!」

 

孔雀(クジャッキー)スラッシャー!!」

 

「きゃああああ!?」

 

 悲鳴を上げてMr.3の元にぶっ飛んできたのは、万が一に備えて木陰に潜んでいたミス・バレンタインデー。そして、彼女を倒したのは、Mr.3も知っている顔の人物であった。

 

「おっし、いっちょあがり! フク、ナミ、ウソップ、大丈夫か?」

 

「その髪型は⋯⋯Mr.3! あなたが黒幕だったのね!」

 

「くっ、“麦わら”に、ビビ王女⋯⋯! 貴様ら、既に合流していたのか! くそ、Mr.5! 貴様も早く出てこい!!」

 

 一気に人数差に不利が産まれたMr.3は、ミス・バレンタインデー同様姿を隠していたMr.5を慌てて呼ぶ。しかし、聞こえてきたのはまたしても悲鳴であった。

 

「鬼斬りぃ!!」

 

「ぐわああああ!?」

 

 ルフィ達とは反対側から、Mr.5を斬りながら姿を現したゾロ。これに驚いたのはMr.3だけではなかった。

 

「え、ゾロ!? あんた今までどこに居たの!?」

 

「いや、船に戻ろうとしてたら知った顔を見たんでとりあえず斬ったんだが⋯⋯お前らこそ何してんだ? 道にでも迷ったか?」

 

「「お前に言われたくないわ!!」」

 

 船を泊めている場所とは全く関係ない場所に居たゾロに対し、ナミとウソップのツッコミが同時にとぶ。

 

 しかし、これでサンジ以外の全員がこの場に揃った。フクキタルにナミ、ウソップは身動き出来ない状態とはいえ、前方にはルフィ、そしてカルーを連れたビビ。後方には刀を構えたゾロ。

 

 一転して不利な状況に陥ってしまったMr.3は、先程までの余裕はどこへやら、冷や汗を流して狼狽していた。

 

「こ、これは流石に予想外だガネ! 一旦逃げて態勢を整えなければ⋯⋯ごぼばぁ!?」

 

 慌てて逃走を図ろうとしたMr.3であったが、突如として頭上から降り注いだ液体によって溺れかける。自慢の髪型も一瞬でしおれ、まさかという思いで見上げた先に待っていたのは⋯⋯絶望であった。

 

「どうだ? 我らの酒は。貴様らは酒を渡そうとしていたようだからな。そのお返しだ」

 

「ああ、安心しろ。お返しはこれだけではない。我らの決闘の邪魔を企み、そして我らの誇りを守るために走った友を傷つけた罪⋯⋯これしきの“お返し”では、とてもじゃないが足りんからな」

 

「た、助け⋯⋯」

 

「「どりゃあああ!!!」」

 

 怒れるドリーとブロギー。2人の巨人を前にして、Mr.3は目に涙を浮かべて命乞いをする。しかし、その言葉を最後まで聞かず、雄叫びと共に放たれた一撃はMr.3を天高く吹き飛ばした。

 

 そして、その様子をこっそり見ていたミス・ゴールデンウィークはそろーっと気付かれないように逃亡を図る。

 

 しかし、その目の前にはいつの間にか回り込んでいたカルーが居た。びくっと身体を震わせたミス・ゴールデンウィークに向け、カルーは口を開け、大きく一声。

 

「クェーー!!」

 

「キャーーッ!?」

 

 ミス・ゴールデンウィークはカルーの鳴き声に恐怖し、戦うことなくジャングルの奥へと逃げ去っていく

 

 こうして、Mr.3の策略は失敗に終わり、リトルガーデンでの戦いはルフィ達の完全勝利で幕を下ろしたのであった。

 

 

〇〇〇〇

 

 

「いや~、なんか途中からの記憶がありませんが、無事に終わったようで何よりです! 一件落着、福福来ませり!! ⋯⋯ところで、ナミさんはなんでさっきから少し顔が赤いんですか?」

 

「うっさい! もう、あんたのせいだっていうのに、全くこの子ったら⋯⋯。はぁ、まあこの件はもういいわ。問題はログよ。ブロギーさんの話だとこの島は1年経たないとログがたまらないみたいだし⋯⋯」

 

「おいおっさん、何とかしてくれよ」

 

「バカ言え。ログばかりは我らにもどうすることもできん」

 

 一難去ってまた一難。急ぎアラバスタに向かわなければならないルフィ達にとって、1年拘束されてしまうことは到底許容出来る問題ではない。

 

 一体どうしたものか⋯⋯と皆で考え込んでいたその時、場の空気をぶちこわす呑気な声が聞こえてくる。

 

「っは~!! ナミさ~ん!! フクちゃ~ん!! ビビちゃ~ん!! あとオマケども。無事だったんだね~~!! よかった~~!!」

 

「よーサンジ!」

 

「あんにゃろ、助けにも来ねぇで今頃現れやがった」

 

 やって来たのは、戦いの場に唯一姿を見せなかったサンジであった。サンジは、ドリー達を見て驚いたり、フクキタルに服を破かれたせいで未だに下着姿なナミに目をハートマークにさせたりとしばらく騒々しかったが、1人で行動している間に彼はとんでもないファインプレーをしていた。

 

「え、この島から動けねぇ? まだ何か用でもあるのか? 折角こういうモンを手に入れたんだが⋯⋯」

 

 そう言ってサンジが取り出したのは、アラバスタへの永久指針(エターナルポース)。それを見てぎょっと驚愕した一同であったが、次の瞬間には歓喜で騒ぎ出していた。

 

「じゃあ丸いおっさんに巨人のおっさん、おれ達行くよっ!!」

 

 目的地への指針を手に入れたならば、急ぎアラバスタに向かう必要がある。別れを告げるルフィを、ドリーとブロギーは引き留めることはしなかった。

 

 そして、ルフィ達が姿を消した後、2人は武器を手に持ち、ゆっくりと立ち上がる。そして、自分たちの誇りを守ってくれた友を見送るべく、覚悟を決めたのであった。

 

 

 

「友の海賊旗(ほこり)は決して折らせぬ⋯⋯!!」

 

「我らを信じてまっすぐ進め!! たとえ何が起ころうとまっすぐにだ!!」

 

「⋯⋯わかった!! まっすぐ進むっ!!」

 

 ルフィ達を見送りに来たドリーとブロギーの謎の言葉。ルフィは、その意味は分からずとも、2人の強い意志を感じ、力強く頷いた。

 

 そして、島を離れたルフィ達の目の前には、巨大な金魚がその大きな口を開けて船ごと飲み込まんと襲ってくる。

 

「舵きって!! 急いで!! 食べられちゃう!!」

 

 巨大金魚を見たナミは、慌てて舵を切るように指示する。しかし、

 

「だ、ダメだ!! まっすぐ進む!! そうだろ? フク、ルフィ!!」

 

「は、はい! 私はお二方の言葉を信じますっ!!」

 

「うん、もちろんだ」

 

 ドリーとブロギー、2人の言葉を信じたルフィは、舵を切らずにまっすぐ進むことを選択した。

 

そして、まっすぐ進んだ船は、巨大金魚の口の中に突っ込んでいく。視界が暗くなり、このまま飲み込まれてしまうのかと思われたその時。

 

「「“覇国”っ!!」」

 

 巨人2人を100年以上支え続けた武器。それを犠牲にして放たれた渾身の一撃は、海ごと金魚の腹を斬り、大きな風穴を空ける。その穴から、ルフィ達は無事まっすぐ前へ進み続けることができた。

 

「でけぇ⋯⋯! なんてでっけぇんだ!!」

 

「海ごと斬った⋯⋯。これが、エルバフの、うう⋯⋯戦士の力⋯⋯!!」

 

「ふんぎゃろぉぉ!? 凄い、凄すぎますよエルバフパワー!! 運気が最高潮になっているのを肌で感じますぅ!!」

 

 そして、そんな離れ業をみせたドリーとブロギーは、ボロボロになった武器を掲げ、友の出航に激励の言葉を贈る。

 

「「さァ、行けぇ!!」」

 

 身体も心も大きな巨人。彼らの生まれ故郷、エルバフへと、いつか必ず向かうことを心に決めたルフィ達であった。

 

 

 そして、リトルガーデン出航から少し経った頃⋯⋯次なる大事件が、ルフィ達を襲う。

 

「ナミさん、やっぱり顔が赤くないですか? お休みした方が⋯⋯」

 

「進路なら私が見ているから、部屋でゆっくり休んで⋯⋯」

 

 島を出た後から、どことなく体調の悪そうなナミ。そんなナミを心配して声をかけたフクキタルとビビの目の前で、ナミが突然倒れる。

 

「み、皆来て! 大変っ!! ナミさんが⋯⋯酷い熱を!!」

 

「あわわわわ⋯⋯。どどど、どうしましょぉぉーー!?」

 

 リトルガーデンでバロックワークスを倒したと思いきや、ナミの突然の高熱。アラバスタへの航路は、やはり一筋縄ではいかないようであった。

 




次回から冬島編。早くフクキタルとあいつを絡ませたいですね
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