麦わらの一味『占い師』マチカネフクキタル   作:赤葉忍

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今日から遊郭編始まりますね。そんなわけで最新話投稿です。


”ラパーン”

「じっとしててね、フクさん。ナミさんが落ちないようにしっかり縛っておくから⋯⋯あの、じっとしてて?」

 

「いいですかウソップさん! にゃーさんは私にとって福を引き寄せてくれる存在、本当は片時も離したくはないのですが、これを背負ったままだとナミさんは背負えないので、泣く泣く貴方にお預けします⋯⋯。ぜったい、ぜーったいに落としたりしないでくださいね!!」

 

「分かった、分かったからじっとしとけ! ビビが困ってるだろうが!!」

 

 にゃーさんを預けることに未だ不安が残るフクキタルは、何度もウソップに念押しする。ナミを背負う上では間違いなく邪魔となってしまうので仕方ないのだが、ラッキーアイテムを自ら手放すことにはどうしても抵抗があるフクキタルであった。

 

「本気なら止めるつもりはないが⋯⋯せめて反対側の山から登るといい。ここからのコースにはラパーンがいる。肉食の凶暴なうさぎだ。集団に出くわしたら命はないぞ!!」

 

「うさぎ? でも急いでるんだ。平気だろ。おれとサンジがいるし」

 

「ああ、ナミさんとフクちゃんには傷一つ付けねぇ!!」

 

 一方、ルフィとサンジはドルトンから忠告を受けるも、問題はないと最短ルートを進むことを選択する。もしフクキタルがこの時占っていれば別のルートを進むことを提案したのだろうが、占いに使う水晶玉は既ににゃーさんごとウソップに預けてしまったため、助言がなされることはなかったのであった。

 

「⋯⋯よし、これでいいわ。私はかえって足を引っ張っちゃうから残るけれど⋯⋯気を付けてね、フクさん」

 

「ありがとうございます、ビビさん! ナミさんと一緒に、無事に帰ってみせます!!」

 

 ビビは、ナミの身体を布で縛り、フクキタルの腰のあたりで固定する。これで、出発準備は整った。

 

「じゃ、行くか。フク、サンジ!! ナミが死ぬ前にっ!!」

 

「ぎゃあああ!? 縁起でもないこと言わないでくださいよぉ!!」

 

「そうだ、何言ってんだこのクソ野郎!!」

 

 ぎゃーぎゃーと騒ぎながら走り出した3人の顔には、焦りや悲壮感といったものは見られない。その様子に、3人を見送るビビとウソップは、逆に安心感を覚えたのであった。

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

「ううう、だいぶ寒くなってきましたね⋯⋯。足元が雪というのも慣れないので、なかなか走りにくいです」

 

「足元と言えばルフィ、なんでお前は下素足なんだよ。見てるこっちが痛ぇだろ」

 

「これはおれのポリスーだ!!」

 

「ポリスーってなんだよ。ポリシーだろ」

 

 ピュオオオと凍える風が吹き荒れるが、3人はまだまだそんな会話をする余裕があった。そんな3人の目の前に、やけに牙の鋭いうさぎが現れ、ガルルルルと威嚇する。

 

「おい知ってるか? 雪国の人たちは寝ねぇんだぞ」

 

「あ? 何で」

 

「だって寝たら死ぬんだもんよ」

 

「えええ!? ホントですか!? 雪国の人たちは凄いんですねぇ」

 

「いやいや、そんな人間いるかよ!!」

 

「本当だよ。昔人から聞いたんだ」

 

 しかし、先を急ぐ3人は、うさぎは無視して走り続ける。そんな3人に何とか襲い掛かろうと、連続して飛びつき、噛みつこうとするうさぎであったが、3人とも身体能力が高いため、ひょいとかわされてしまう。

 

「ガァルルァア!!」

 

 さんざん攻撃をよけられたことで痺れを切らしたうさぎは、ひと際大きな唸り声をあげて襲い掛かる。しかし、痺れを切らしたのはお互い様であった。

 

「うっとうしいんだよさっきから!!!」

 

 とうとう無視できなくなったサンジが、うさぎをドゴォンと蹴り飛ばす。

 

「なんだったんでしょうねあのうさぎ⋯⋯見た目は、ちょっと可愛かったですけれど」

 

「あれ、食えんのかなぁ」

 

 フクキタルもルフィも、あのうさぎが何だったのかは気になっていたものの、どうやらその興味の方向は違うようだった。

 

 それからしばらくは、何事もなく雪道を進んでいた3人であったが、そんな3人の目の前に、突如として巨大な白熊のような生き物が立ちふさがった。

 

「な、なんだよこいつら⋯⋯!!」

 

「白くてデケェから白熊だよ。間違いねぇ!!」

 

「あ!! よく見たら先頭の熊さんの肩にさっきのうさぎさんがいますよ!!」

 

 フクキタルが指さす方向を見ると、確かに、先程サンジが蹴り飛ばしたうさぎが肩のあたりにしがみついていた。

 

「なるほど、これがドルトンの言ってたラパーンって奴か。⋯⋯うさぎってデカさじゃねぇだろ!!」

 

「うおっ! しかもめっちゃいるぞこのうさぎ!!」

 

 一匹でもこの巨体ではかなり厄介に思われるのに、ドルトンが忠告した通り、ラパーンは集団で3人の前に立ちふさがっていた。しかも、先程サンジが子供を蹴り飛ばしたからか、やけに好戦的だ。

 

「いいか、フクちゃん。あのうさぎはおれとルフィで何とかする。フクちゃんはナミさんを守ることだけを考えてくれ!!」

 

「わ、分かりました!!」

 

「よっしやるぞぉ! ゴムゴムのぉ~“(ピストル)”!!」

 

 早速ルフィが腕を伸ばし、一匹を殴り飛ばす。しかし、一匹がやられたことでさらに怒りを買ったのか、ラパーン達はますます激しく3人を襲う。

 

「『腹肉(フランシェ)シュート』!! ⋯⋯くそっ、こいつら全部と戦っていたら流石に日が暮れちまう。何とか逃げ切るんだ!」

 

「フク、お前は先に走れ!」

 

「はい! 脱兎のごとく、逃げることだけ考えます!!」

 

 雪で足を取られながらの戦いはなかなか苦戦するものがあったが、幸いにも戦える人物が二人いるので、フクキタルは回避にだけ専念することができた。

 

 それこそ文字通り脱兎のごとく足を動かし走っていた3人だったが、急にラパーン達は追跡の足を止め、雪山の上の方で何やら飛び跳ね始める。

 

「何やってんだ? あいつら」

 

「あ、諦めてくれたんでしょうか⋯⋯」

 

「⋯⋯ちょっと待てよ。あいつらまさか!!」

 

 突然意味不明の行動を始めるラパーン達に困惑する3人であったが、サンジがいち早くその行動の意図に気づき、目を見開く。

 

 しかし、気づいたところで、どうする手段もなかった。

 

「やりやがったあのクソうさぎ共⋯⋯!! ウソだろ」

 

「おいサンジ、どうしたんだ」

 

「な、なんか揺れてませんか? これってまさか⋯⋯」

 

「そのまさかだ。フクちゃん。とにかく逃げるぞ。どっか遠くへ⋯⋯! 雪崩が来るぞォ!!!」

 

 雪山における最大級の災害。怒れるうさぎ達の手によって巻き起こった自然の驚異が、3人に襲い掛かるのであった。

 

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