「ふんぎゃああ!! 雪崩なんて聞いてないですよぉーー!?」
「あのうさぎ共、絶対許さねぇぞ畜生ォ!!」
「どうしたらいい!? どうしたらいいんだサンジ!?」
「知るかよ!! とにかくナミさんとフクちゃんの安全第一だ! 死んでも守れ!!」
ゴゴゴゴと轟音を立てながら迫ってくる雪崩から必死で逃げる3人であったが、追い付かれるのは時間の問題であった。少しでも高い所へ逃げようと崖の上に登るも、高さが足りず、ついに雪崩にのまれかける。
「ひぃぃぃ!! お助けをシラオキ様ぁぁぁぁ!!!」
ナミを守りたい一心でフクキタルは崖の上から決死のジャンプをしたものの、重力には逆らうことが出来ず、涙目でシラオキ様に助けを求める。
「フク、サンジ、掴まれ!!」
シラオキ様からの救いはなかったが、文字通りに自らの目の前に伸ばされた手を無我夢中で掴むと、倒れた木をそり代わりにしたルフィのおかげで何とか雪崩には飲み込まれずにすんだ。
「ふぃー、死ぬかと思いました。ありがとうございます、ルフィさん」
「うん、でもな。これ、雪には沈まねぇけど⋯⋯このままじゃ一直線に山下りちまうんだ!!」
「冗談じゃねぇよ⋯⋯!! せっかくあのえんとつ山の麓までたどり着くとこだったのに!! もう一歩で医者だったんだ。何とか止まる方法を考えるんだ!!」
サンジは、ナミを救うまでの道のりがさらに遠くなったことに悔し気に唸る。しかし、そうは言ってもこの状況では止まる手段などない。それどころか、事態はさらに悪化しようとしていた。
「ぎゃぼぉぉぉぉ!!? あのうさぎさん達追っかけてきてますよぉ!? うさぎは幸運の象徴のはずではなかったのですかぁ!?」
フクキタルが奇声を上げた原因は、ルフィ同様に木をそりのようにして雪の上を滑り、こちらに向かってくるラパーンの群れを見たからであった。流石雪国の猛獣というべきか、雪に呑まれるどころか逆に活き活きしているようにも見える。
「やべぇ!! 前見ろ!!」
木の上という不安定な足場で何とかラパーンの攻撃を避けていたルフィ達であったが、サンジがいち早く進路に岩があることに気が付いた。
「うわ、岩だ!! ぶつかるぞ!?」
「どどど、どうしましょう!?」
もちろん木にはブレーキなどなく、このままでは衝突は避けられない。そのことを悟ったサンジは、ルフィとフクキタルを木の上から放り投げた。
「⋯⋯んじゃ、ナミさんのことは頼んだぜ」
そして、サンジは雪の上を滑っていた勢いそのままに岩に激突し、血を飛び散らせて宙に舞う。
「サンジ!!!」
「サンジさん!!?」
サンジに救われる形となったルフィとフクキタルは、サンジの名前を叫ぶ。宙に舞ったサンジは、先頭のラパーンにぶつかり、バランスを崩したラパーンが転んだことで、後続のラパーンも次々と転んで雪に埋もれていく。
しかし、当然ながらサンジもまた雪に埋もれ、そのまま流されそうになってしまっていた。
「バカお前っ!! そういう勝手なことするなァ!!!」
ルフィはサンジに手を伸ばすが、その手はサンジの手袋しか掴まえることは出来なかった。
「ルフィさん、私が棒みくじを投げます!! その方向にサンジさんは埋まっているはずです!!」
「ああ、助かるフク!! ナミは任せたぞ!!」
先程ぶつかりそうになった岩の上に避難していたフクキタルは、雪の上に向かいクジクジの実の能力で産み出した棒みくじを投げる。そしてルフィは、サンジを救出すべく迷わず雪の中へと飛び込んでいった。
「ああ、どうかお二人ともご無事でありますように⋯⋯!!」
背中のナミを雪に触れさせないようにしながら、フクキタルは両手を組んでルフィとサンジの無事を祈る。
フクキタルは1秒がまるで数日にも感じられる時間の中、ルフィが雪の中から姿を現すのを待ち続けた。びゅううという冷たい風が吹き荒れ、耳と尻尾の毛が凍り始めた頃、ぼこっという音と共に、見慣れた麦わら帽子が雪の中から飛び出てきた。
「⋯⋯悪ぃ、フク。ちょっと待たせた」
「いいえ!! ルフィさんを信じてました!!」
ルフィの背中には、しっかりとサンジが背負われている。フクキタルは、自分の祈りが通じたことをシラオキ様に感謝したのであった。
〇〇〇〇
「ガルルル!! ガルルル!!」
子供のラパーンが、雪に埋もれた大人のラパーンを救うため、必死に雪を掻きだしている。
「ふんぬっ!!」
そのすぐそばを通りがかったフクキタルは、そんな掛け声と共にラパーンの身体を雪から引きずりだした。その近くにいたラパーンは、ルフィが片腕で持ち上げて救い出す。
ルフィ達に助けられたラパーンは、じっと2人を見ていたが、先を急ぐ2人はそれ以上ラパーンには関わらずに雪道を歩く。
「必ず連れてくからな。死ぬんじゃねぇぞ、2人とも⋯⋯!!」
背中の上でぐったりと動かない2人に、ルフィは激励の言葉をかける。
「⋯⋯大丈夫です。私の占いによれば、運勢は大吉。2人は必ず助かります⋯⋯!!」
わちゃわちゃと手を動かすフクキタルの腕の中には、水晶玉はない。クジクジの実でくじを出したわけでもないため、フクキタルは今占いを行ってはいなかった。
「おれは占いはそんなに信じてねぇけれどよ。フクの言うことなら信じられる気がするな!」
ルフィは、そう言ってにっと笑う。再び歩き出した足取りは心なしかさっきよりも力強い。『占い師』は、決して占うだけが役目ではない。こうして仲間を鼓舞し、勇気づけることもまた役目の1つなのだ。
もっとも、この時のフクキタルは意図してそうしたわけではなかったのだが、この経験はフクキタルにちょっぴり自信を付けることになるのであった。