データ保存、大事。
「何だい、チョッパー。そいつらは」
ドラム王国唯一の医者、Dr.くれは(御年139歳)は、自分が医術を叩き込んだ『ヒトヒトの実』を食べたトナカイ、チョッパーが連れてきた4人を見て、そう尋ねた。
「こいつら、山を素手で登ってきたみたいなんだ」
「この山を素手で登ってきた!? 標高5000メートルのこのドラムロックを!?」
あまりにも常識外れな行為に、驚いて目を丸くするくれは。しかし、経験豊富な彼女は、患者の容体を診て、それが真実であることがすぐに分かった。
「この麦わら帽子の小僧は全身凍傷になりかけてる。こんな格好で何のつもりだ!! こっちの娘は⋯⋯おや、ウマ娘かい。この子は小僧ほど酷くはないがそれでも危険な状態に変わりない。すぐに湯を沸かしてぶち込んどきな!!」
「こっちは出血が酷いんだ。アバラ6本と背骨にヒビ。おれが
「1番ヤバいのはどうやらこの娘だね。死にかけてる。チョッパー、フェニコールと強心剤、それにチアルシリン用意しときな!!」
手際よく4人の診察を終え、チョッパーに指示を出すくれは。そんな彼女の腕を掴んだのは、いつの間にか意識を取り戻していたルフィだった。
「
「分かったよ助ける⋯⋯。チョッパー、治療だ!!」
「う、うん!!」
寒さで歯の根が合わず、言葉をちゃんと話せないルフィだったが、何を言いたいかは十分に伝わった。くれはとチョッパーは、急いで4人の治療にとりかかるのであった。
〇〇〇〇
「あ、フク起きた?」
フクキタルが目を覚ますと、それに気付いたナミが声をかけてきた。視線を声の聞こえた方向へ向けると、ナミはにっこりと微笑んで手を振っていた。
「え、ナミさんが元気になってる⋯⋯? は、まさかここは天国なのですか!?」
「こら、勝手に殺すな。フクのおかげで助かったわ。ありがとっ!」
そう言うとナミは、ベッドから立ち上がり、フクキタルと軽くハグをする。すると、柔らかい感触と共に心臓の鼓動が伝わり、フクキタルはナミが生きていることを肌で感じた。その瞬間、フクキタルの瞳からは自然と涙が溢れ出していた。
「う、うう⋯⋯。ホントに良かったです⋯⋯!!」
「もぉ、あんま泣くんじゃないわよ。折角の美人が台無しよ?」
泣きじゃくるフクキタルの頭を優しく撫でるナミの目にも、僅かに涙が浮かんでいる。自分のために涙を流してくれるフクキタルの優しさが、ナミにはとても温かく感じたのだ。
「ヒーッヒッヒッヒ! 他人の住処で乳繰りあってるんじゃないよ、小娘ども」
「ち、ちちちちちち!?」
開いていたドアからおもむろに部屋に入ってきたくれは。そのからかうような言葉に、フクキタルは顔を真っ赤にさせて慌てふためく。
「ちょっと、この子純情なんだから、あんまりからかわないであげてよね」
「ヒーッヒッヒッヒ!! あたしが居ない間にトナカイを誘惑していた小娘には言われたくないね」
ナミの方は多少からかわれた程度では動じることはなく、自然な態度でくれはと会話する。その様子を見て多少落ち着きを取り戻したフクキタルは、当然と言えば当然の疑問をくれはに対し投げかけた。
「え、えっと⋯⋯あなたは、どちら様です?」
「おや、そういえばアンタには名乗ってなかったかね? あたしゃ医者さ。“Dr.くれは”。『ドクトリーヌ』と呼びな。ヒーッヒッヒッヒ!!」
ナミに名乗った時と同様の名乗り文句で、自らの名を名乗るくれは。フクキタルは、その名前を聞いて目をキラリと輝かせた。
「え、Dr.くれは⋯⋯ということは、あなたが“魔女”さんですか!?」
「若さの秘訣かい!?」
「若さの秘訣!? 確かに聞いていた年齢以上にお若い見た目⋯⋯!! それもまさか魔女の奇跡によるものだというのですか!? 是非、是非とも教えてください!! むっふー!! 魔女の占いなども教えて貰えるとさらにベリーグーです!!」
先程まで自分がベッドで寝ていた患者だったということも忘れ、キラキラと目を輝かせてくれはに迫るフクキタル。その勢いは予想外だったのか、流石のくれはも少々引き気味であった。
「ヒッヒッヒ!! まったく、ウマ娘ってのはこんなのばっかなのかい?」
「え、魔女さん、ウマ娘のお知り合いがいるのですか?」
「ああ、とびっきり変な奴がね。アンタもあいつ程じゃないが相当な変人だね」
「いやあ、それほどでも~」
「フク、それ褒め言葉じゃないわよ」
何故か照れるフクキタルに、冷静にツッコむナミ。すっかりいつも通りの調子であった。
「ナミさんが治ったなら、すぐに出航できますね! これでアラバスタにも迎えます! 運勢最高潮です!!」
「それが、3日はここに居ろって言われてるのよ。まあ、解決策は考えてあるんだけれど⋯⋯」
そう言いながら、ちらりとドアの外を見るナミ。既にチョッパーと面識があるナミに対し、フクキタルはその時まだ起きていなかったため、言葉の意味が分からずに首をかしげる。
しかし、フクキタルもすぐにチョッパーの存在を知ることとなる。何故なら、その時既に、ワポルの匂いを嗅いだチョッパーが、くれはの元にそのことを伝えるために走っていたからだ。
「大変だよドクトリーヌ!! ワポルが⋯⋯帰ってきた!!」
「⋯⋯そうかい。お前達はそこでまだ安静にしときな」
チョッパーが告げた事実に、端的にそう答えた後、ナミとフクキタルに安静にするよう告げ、部屋を出て行く。
そして、突然表れた人語を話すトナカイに呆然としていたフクキタルは、チョッパーが去った後もしばらくその場所をぽかんと口を開けながら凝視していたのであった。