ちなみにファインモーションは爆死しました。つらい。
「な、ナミさん、さっきの喋るタヌキさんは何ですか!?」
「あー、そういえばフクはまだ会ってなかったわね。ヒトヒトの実を食べて人間の言葉を話せるようになったトナカイってくれはさんは言ってたわ。ちなみに⋯⋯あの子が、わたしの言っていた解決策よ」
「? それはどういう⋯⋯?」
チョッパーに医術の知識があることを知らないフクキタルは、ナミの言葉の意味が分からずに首をかしげる。しかし、ナミがその疑問に答えるよりも先に、寒い寒いと腕を擦りながらルフィが部屋に入ってきた。
「おー、さみーさみー。あ、フク! お前やっと起きたんだな~!」
「はい! おかげさまでぐっすり熟睡。体力も100あるうちの70くらい一気に回復したような心地です!! むっふー!!」
「しししっ! やっぱフクはそれくらいうるせぇ方が似合うな!」
「ねえルフィ、外で今何やってるの? さっき誰かが来たみたいなこと言ってたけれど」
耳と尻尾を動かしながら、全身を使って回復をアピールするフクキタルを見て、ルフィは笑顔を浮かべる。ナミは、そんな上機嫌なルフィに対し、先程のチョッパーの言葉で若干気になっていたことを尋ねる。
「ああ、ケンカだよ。ここには服取りに来たんだ。ナミかフク、おれに服貸してくれねぇか?」
「私なら年中貸し出しおーけーです!! ルフィさんのためなら、えんやーこら!!」
「違う、フクじゃなくて“服”よ。ルフィ、わたしの使っていいわよ」
「え~っお前のカッコ悪ィじゃんか」
「あんたのよりかっこいいわよ」
ルフィは、「そうか?」とあまり納得していない様子だったが、あったかければいいという考えに至ったのか、ナミの服を借りることを決め、部屋から駆け足で出て行く。
「よーし、あんにゃろぶっ飛ばしてやる。邪魔口め!」
「あ、ルフィさん待ってください!!」
フクキタルは慌ててルフィを呼び止めようとしたが、その時には既にルフィは完全に姿を消していた。
「ルフィ達なら大丈夫よ。フクはさっき起きたばかりなんだし、無理する必要はないわ」
「むむむ、それは分かっているのですが⋯⋯」
フクキタルも、ナミと同様にルフィ達がどうこうなるといった心配はしていない。ただ、外に居るのはおそらく自分たちを何度も襲撃してきたあのカバみたいな男、ワポルだ。あの時ナミとサンジを狙ったワポルに対するモヤモヤとした感情は、フクキタルの気持ちをルフィが出て行った方向へと向けていた。
しかし、寝起きの自分が加勢しても足手まといになるかもという迷いもあり、ベッドの上でフクキタルはソワソワし出す。
そんなフクキタルの迷いを吹き飛ばすかのように、ゴウン!という爆音が聞こえてくる。その音にピィンと耳を逆立てたフクキタルは、たまらず立ち上がっていた。
「ごめんなさい、ナミさん。私、やっぱりルフィさん達のところに行きます!!」
「まあ、あんだけソワソワしてりゃあねぇ⋯⋯。別に止めないけれど、無茶だけはしちゃダメだからね?」
「はい、分かりました!!」
フクキタルは、ナミの言葉にビシッと敬礼を決めて答え、そしてそのまま部屋の外へと飛び出していく。
思った以上に広い城の内観や、そんな城のあちこちに雪が積もっているのに少し驚きつつ、フクキタルは声の聞こえる城の外へと向かう。
「お前なんかに折れるもんか。ドクロのマークは⋯⋯“信念”の象徴なんだぞォ!!」
城の外へと出た直後にフクキタルが聞いたのは、ルフィの大声と、再びの砲撃音だった。
「吹き飛べカバめ!!」
まっはっはと目の前で笑うのは、やはりあの時フクキタル達を襲ったワポルだった。そんなワポルの態度と、近くに居るサンジやくれは、チョッパーの表情から、一抹の不安を覚え、彼らの視線の先をフクキタルは追う。
「ほらな、折れねェ」
しかし、そこに居たのは、砲弾の直撃を受けながらも、手に持った海賊旗を放すことなく塔の上に立つルフィであった。その堂々とした立ち姿に、フクキタルはローグタウンで初めてルフィを見た時と同じ衝撃を感じた。
「これが海賊⋯⋯。すげぇ⋯⋯!!」
そして、チョッパーもまたフクキタルと同じような衝撃を感じたようで、そんなことを呟く声が聞こえた。そんなチョッパーに向け、塔の上からルフィはこう呼びかける。
「おいトナカイ!! おれは今からこいつらブッ飛ばすけれど、お前はどうする?」
「おれは⋯⋯?」
ルフィの言葉を受け、チョッパーは思った。自分も、恩師であるヒルルクの死を笑った目の前のこいつらを、ぶっ飛ばしたいと!
「やめろォ!!」
その思いのまま、チョッパーは再び砲弾を撃とうとしたワポルを殴りに行く。その拳はワポルの部下、チェスとクロマーリモがワポルの能力によって合体し産まれたチェスマーリモに止められてしまったが、チョッパーの根性は全員に伝わった。
『ムハハハハ。残念だったな。ワポル様にはこのおれが指1本触れさせん!! どうせ誰からも好かれねぇ人生を送ってきたんだろう、哀れな怪物よ。一人ぼっちのお前が何のためにこの国を救おうってんだ!! 笑わせるな!!』
「うるせェ!! 仲間なんかいなくたっておれは戦えるんだ!! ドクターの旗がある限りおれは⋯⋯!!」
チェスマーリモは、戦う覚悟を決めたチョッパーを滑稽だと笑う。しかし、チョッパーの覚悟を笑わず、共に戦うことを決めたものがここに2人居た。
「仲間ならいるさ!! おれが仲間だ!!」
「トナカイさん、私も一緒に戦います!!」
1人は、塔の上からゴムゴムのロケットで飛び降りて来たルフィ。そしてもう1人は、チョッパーの隣に駆け寄り、ふんにゃかはんにゃかと水晶玉を構えるポーズを取るフクキタルだ。
「麦わら帽子! お前大丈夫かっ!? あとお前はまだ寝てろよ! 何で起きてるんだよ!!」
「おれは平気さ。ゴムだから」
「私も平気です! ウマ娘ですので!!」
「ヒッヒッヒ。説得力あるねぇ」
背骨にまだダメージが残るサンジにドクターストップをかけたくれはが笑うのは、ウマ娘の中でもとびきり強くて破天荒な人物を知っているからこそだが、そのことはこの中ではくれは本人しか知らない。
「おいトナカイ、お前あいつを仕留められるか?」
「何てことねぇ!! あんな奴」
「じゃあ決まりだな。そっちはお前とフクに任せた!! おれの相手は邪魔口だ!!」
「はい、任されました!! トナカイさん、一緒に頑張りましょー!!」
チョッパーとフクキタル。まだお互いの名前すら知らない2人が、肩を並べて相対するのは、合体戦士チェスマーリモ。
ドラム王国の戦いは、一気に佳境を迎えるのであった。