オカマとの出会い
「ナミさん来て!! 正面に何かあるみたい!!」
「海の上でこんなモクモクした煙が出るなんて、不吉な予兆です!! ぎゃーー!!」
冬島を離れ、アラバスタへと向かう航路。その進行方向に不意に現れた煙に、慌てた様子でナミにそのことを伝えるビビとフクキタル。しかし、顔を真っ青にして悲鳴を上げているフクキタルとは対照的に、ナミはいたって冷静であった。
「ああ、大丈夫。何もないわ。ただの蒸気よ。そういう煙が出来る原因は、その下に海底火山があるからなの」
「海底に火山が!? 私初めて知りました!!」
「そうよ。火山なんてむしろ地上より海底の方にたくさんあるんだから」
ナミの解説に、へーと感心した表情を浮かべるのは、チョッパーとフクキタル。一方食べ物にしか興味のないルフィは、ウソップと2人でカルーを餌にして何か釣れないかと釣竿の糸を海へと垂らしていた。
「どうでもいいや、食えねぇんじゃ。うわ、ウェホッ、エホッ! なんも見えねえ! 湯気だらけだ!!」
「うぐっ! 硫黄くせぇぞ!! おれ鼻がいいからダメだこの臭い⋯⋯」
「我慢して、すぐに抜けるから」
そしてそのまま煙の中に船は突っ込んでいき、視界が真っ白に染まる。煙と臭いでむせるルフィ達であったが、ナミの言葉通りすぐに煙の中から抜け出すことが出来た。
しかし、その短い時間の中で、ルフィとウソップは煙の中からとんでもないものを釣りあげていた。
「「お、オカマが釣れたああああ!!!」」
カルーにがっしとしがみつく奇抜な格好をしたオカマを見て、思わず絶叫するルフィとウソップ。
「シィ~まったァ!! あちしったらなに出会いがしらのカルガモに飛びついたりしてたのかしらん!!」
そして、オカマにとってもこの状況は予想外だったらしく、驚いてぱっと手を離してしまう。そしてそのまま海に落ちてしまったオカマは、泳げないのか浮かび上がってこない。
「うわぁー!! オカマが海に落ちて溺れたぞぉ!!」
「と、とりあえず助けるぞ!」
見知らぬオカマとはいえ、流石に溺れているのを見捨てるほどルフィ達は人でなしではない。能力者ではないウソップが海に入り、そのオカマを救助したのであった。
「いやーホントにスワンスワン。見ず知らずの海賊さんたちに命を助けてもらうなんて、この御恩一生忘れません。あと温かいスープを一杯頂けるかしら」
「「ねェよ!!」」
厚かましくもスープをねだるオカマに、この場に居るフクキタルを除いた全員からのツッコミが飛ぶ。ちなみに、フクキタルは初めて見るオカマに衝撃を受けてわなわなと身体を震わせていた。
「お前、泳げねぇんだな~」
「そうよう! あちしは悪魔の実を食べたのよう。⋯⋯あちしの船が来るまで慌ててもなんだしい。余興代わりに見せてあげるわ。これがあちしの能力よーう!!」
オカマは、そう言ってルフィの顔面をバンっと力強く突く。突然手を出してきたオカマに対し、皆が警戒を強める中、そのオカマはがーはっはっはと豪快に笑う。
「待ーって待って待ってよ~う!! 余興だって言ったじゃなーいのよーっ!! ジョ~ダンじゃなーいわよーう!!」
「どどど、どういうことですか!? オカマさんが突然ルフィさんにぃ!?」
フクキタルの驚きは、この場に居る皆も感じているものであった。なんと、そのオカマは、先程ルフィに触れた一瞬で、顔や声、体格までもルフィと全く同じになっていたのだ。
「がーはっは!! これがあちしの食べた“マネマネの実”の能力よーう!! まァもっとも、さっきみたいに殴る必要性はないんだけどねーいっ」
オカマは、驚くルフィ達の顔に軽く触れていく。そして、ウソップやゾロ、チョッパーにフクキタル、そしてナミの順番で次々に姿を変えていった。
「この右手で顔にさえ触れれば、この通り誰のマネでもで~きるってわけよう!! さ~ら~に~!! メモリー機能つきぃ!! 過去に触れた顔は決して、忘れな~い!!」
「「「「うおおおっ!!」」」」
マネマネの実の能力にすっかり虜になっているルフィとウソップとフクキタル、そしてチョッパーは、4人そろって歓声をあげる。
「⋯⋯え」
ビビは、オカマがメモリーしたという顔の中に予想外の顔を見て、思わず声を漏らす。しかし、そんなビビの様子は知らないルフィ達は、オカマと楽し気に肩を組んでいた。
「「「ジョーダンじゃなーいわよおーうっ! ジョーダンじゃなーいわよーうっ!!」」」
「もう、フクまで一緒になってはしゃいじゃって⋯⋯。あ、なんか船がこっちに来るわよ。あれあんたの船じゃないの?」
そう言ってナミが指さす方向からは、目立つ白鳥の船首の船がこちらへと近づいてきていた。
「アラ! もうお別れの時間!? 残念ねい」
「「「「えーーっ!!!」」」」
「悲しむんじゃないわよう。旅に別れはつきもの!! でも、これだけは忘れないで⋯⋯。友情ってヤツァ⋯⋯つきあった時間とは関係ナッスィング!!」
目にキラリと涙を浮かべたオカマは、そう言ってぐっと親指を立てる。
「また会おうぜ~!!」
そんなオカマとの別れを惜しみながらも、笑顔で見送るルフィ達。しかし、オカマが船に戻ろうとしたその時、そのオカマの横にトンっと身軽な身のこなしで船から1人飛び降りてくる。
「⋯⋯君1人だけずるいじゃないか、ボン。こんな華麗な花たちを独り占めするなんてさ。俺にも紹介してくれよ」
「がーはっは!! そうねーい!! 折角だしカポちんもご挨拶したらいいわ!!」
オカマに“カポちん”と呼ばれたその人物は、タキシードを身に纏ったいかにも紳士的な風貌をしている。しかし、その顔の右半分はマスクで隠されており、シルクハットを深くかぶっているせいで顔はよく見えない。
さらに言えば、タキシードに包まれた胸元はそれでも隠し切れないほどの膨らみを帯びており、その風貌や口調とは対照的に彼女が女性であることが分かる。
そんな、オカマとは正反対な容姿をした女性は、優雅に一礼すると、胸元のポケットから一輪の薔薇を取り出し、こう名乗った。
「俺の名前はダカーポ。フィーネ・ダカーポだ。相棒のボンを助けてくれたこと、礼を言うよ。もし機会があればまた遭おう。可憐な花たちよ」
バチンと目くばせする先は、ナミやビビ、フクキタルといった女性陣のみで、男性陣には見向きもせず、ダカーポはオカマの手を取り、今度こそ船へと戻っていく。
「がーはっは!! エスコートありがとね、カポちん!! さあ、今度こそ行くのよ、お前達!!」
「はっ!! ボン・クレー様!! Mr.2様!!」
「「「「Mr.2!!!?」」」」
ルフィ達は、バロックワークスのオフィサーエージェントの呼び名である“Mr.2”という名前に反応するも、その時には既に彼らの乗る船は離れていってしまっていた。
「あいつが⋯⋯ボン・クレー!! そして、Mr.2!!」
「ビビ、お前顔知らなかったのか!?」
「ええ⋯⋯。私Mr.2とMr.1のペアには会ったことがなかったの。能力も知らないし⋯⋯。噂にだけは聞いていたのよ。Mr.2がペアになったのはごく最近のこと。それまではMr.2はMr.2とボン・クレー、2つの呼び名を持つ唯一の存在⋯⋯。彼は、大柄のオカマでオカマ口調、白鳥のコートを愛用していて背中には“おかま
「「「気づけよ」」」
その分かりやすすぎる特徴に、あのルフィまでも一緒になってツッコミを入れる。
⋯⋯海の上で偶然見つけた小さな友情。しかしながらその相手は、敵対するバロックワークスの幹部だった上に、姿をマネできるという厄介な能力持ち。その上その相方に至っては全くの未知数。必然的に、ルフィ達は対策をすることを余儀なくされたのであった。
オリジナルキャラはボンちゃんの相棒枠。対決相手は察しのよい方ならわかるはず。
次回更新は来年になるかもしれません。もしかしたらあと一話くらい更新できるかも?