2人ともネタにされることは多いけれど、私は結構好きですよ。
ただ今回の話には出番はありません。2人のファンの方々、すみません!
「すっごく美味しいですねここの料理!! ドトウさんも一緒に食べませんか?」
「私は先程食べたばかりなので、遠慮しておきますぅ。あ、そういえば⋯⋯」
ルフィと同じくお腹を空かせていたフクキタルは、ところどころ破壊のあとが目立つ店の中で、ニコニコと楽しそうに食事を続けていた。それもこれも、同じウマ娘に出会えたという偶然を喜んでいたからであり、この時のフクキタルの頭からは先に店に来ているはずのルフィのことはすっかり抜け落ちていた。
そして、そんなフクキタルの勢いに押され隣の席に座っていたドトウは、フクキタルの言葉を聞いて自分がまだ食事の代金を支払っていなかったことを思い出した。
「どど、どうしましょう。そういえば私、まだ食事の代金を払っていなかったんでした。かくなる上は、私の首を差し出して⋯⋯」
「いや、俺としてはもう代金とかいいから早く店から出ていってほしいんだが⋯⋯」
「なな、なんですとぉ!? それは大変ですね。とはいえ、私も自分の食事の代金分くらいしか手持ちはないですし⋯⋯」
ドトウがあの“覇王海賊団”の副船長であると知った店長の心からの願いは、フクキタルによってかき消されてしまった。どうやらすぐに店を出る意志はないらしい。この時のストレスから、店長は以降胃痛に悩まされることになる。
しかし、そんな店長の胃の調子など知らないウマ娘2人は、どうしたものかと頭を悩ませていた。
「うう、救いはないのでしょうか⋯⋯」
「むむむ、私の占いでもすぐにお金は湧いてきませんし⋯⋯。人や物ならすぐに探すことはできるのですが⋯⋯」
「そ、それは本当ですかぁ!?」
もはや打つ手はないのかと項垂れていたドトウは、フクキタルの言葉を聞きばっと顔を上げる。
「実は、一緒にこの国に来ている仲間が居まして⋯⋯。その子の居場所が分かれば代金も払えると思うんです」
「なんと!! それは不幸中の幸いですね!! それでは早速、その方の居場所を占うことにいたしましょう!!」
「す、救いはあったのですねぇ⋯⋯!!」
やっと掴んだ希望に、目を輝かせるドトウは、背中のカバンから水晶玉を取り出したフクキタルを食い入るように見つめる。当然ながら、「だから代金はもういいって!」という店長の叫びは聞こえていない。
「ではさっそく、占ってまいりますよ~! うんぎゃら~、もんぎゃら~⋯⋯。かしこみ~、まきこみ~⋯⋯キエエエエエエイ!!!!」
「ひょえええええ~~!!!!」
占いに力を込めている証拠か、かなり特徴的な奇声を上げたフクキタルに驚き、悲鳴を上げるドトウ。そんな2人に先程エースと2人で居た時とは別の種類の視線が集まる。
「占い結果、出ませり!! あちらの方角から、もうすぐ私たちの前に待ち人は現れるそうです!!」
占いの結果を告げ、ビシィっと店の外を力強く指さすフクキタル。そしてその指の先には、何故かワナワナと全身を震わせている少女が居た。
「あ、あれは⋯⋯! デジタルさん!! ホントにすぐ来てくれましたぁ!!」
安心した様子でほっと息を吐くドトウの様子を見るに、どうやらデジタルと呼ばれたこの少女がドトウの仲間らしい。ただ、どうにも様子がおかしい。少女は、全身を震わせながらゆっくりとフクキタルたちへと近づき、そして、フクキタルとばっちり目があった瞬間⋯⋯いきなり倒れた。
「ふぎゃあああ!! お目目キラキラウマ娘ちゃん可愛すぎりゅぅぅぅ!!!!」
「えええええ!? どうして倒れちゃったんですか待ち人ウマ娘さんんんん!?」
「やっぱり救いはないのですかぁぁぁ!?」
ウマ娘3人、全員が絶叫する地獄絵図と化した店内。店長はさらに痛む胃を押さえながら、明日は休業することを心に決めたのであった。
〇〇〇〇
「ホント、何から何までありがとうございますぅ⋯⋯。占ってくださったのみならず、デジタルさんの介抱まで手伝ってくださるなんて⋯⋯」
「いえいえ、旅は道連れ世は情け。困っていることがあればお手伝いするのは当然のことです! こうして出会えたのもきっとシラオキ様のお導きでしょうし!!」
「はぁ、はぁ⋯⋯。み、見知らぬウマ娘ちゃんに手当してもらえるなんてここは天国⋯⋯? デジたんの生涯に一片の悔いなし⋯⋯!」
今にも昇天しそうな程幸せそうな表情を浮かべるウマ娘は、アグネスデジタル。先程フクキタルを見て鼻血を出して倒れたドトウの仲間である。
あれから、倒れたデジタルの懐から何とか財布を取り出し、代金の支払いを済ませて店を出たフクキタルとドトウの2人は、あまり人の居ない小道にデジタルを運び、そこで意識が戻るのを待っていたのであった。
デジタルは意識を取り戻しそうになる度に、ドトウの膝枕や間近で見るフクキタルの顔によって意識を失うことを繰り返し、先程ようやく落ち着くことができたのであった。
「ではでは改めまして⋯⋯あたしの名前はアグネスデジタルと申します。“覇王海賊団”の船員、役職は⋯⋯あれ? デジたんの役職って何なのでしょう?」
「デジタルさんは諜報に記録、資金の管理調達、そして治療に戦闘⋯⋯。色々やってもらってますからね⋯⋯。本当にいつもお世話になっていますぅ」
「いえいえ!! デジたんの方こそ、可愛いウマ娘ちゃんに囲まれて頼られて日々快感⋯⋯じゃなくって、やりがいを感じていますので!! 特に船長と副船長の絡みは⋯⋯むふふ」
「な、なんだか個性的な方ですね⋯⋯」
フクキタルは、じゅるりと口元に垂れたよだれを拭き取るデジタルを見て、ウマ娘にも変わった子が居るんだなぁなどと思っていた。もちろん、自分も他人から見れば十分変人であることなどは全く理解していない。
「それでは、お2人も無事合流出来たことですし、私もそろそろ行きますね。実は、この国でやらなくてはならないことがありまして⋯⋯」
そして、ひと段落ついたことで、2人に別れを告げて立ち去ろうとしたフクキタルであったが、はっと正気に戻ったデジタルがそれを引き留めた。
「あ、ちょっとお待ちください! 副船長もあたしもお世話になったお礼に、一つ教えておきたいことがあるんです。フクキタルさんも海賊のようですし、見たところ
「はい、私もフクキタルさんにはお礼をしたいと思っていましたし⋯⋯」
「?? 教えるって、一体何を教えてくださるのですか?」
唐突に“教える”と言われても意味が分からず、首を傾げるフクキタル。その動きにときめいて胸を押さえるデジタルだったが、何とか気絶はせずに、フクキタルにこう告げた。
「教えたいのは、ウマ娘の“本格化”と、その方法についてです。ウマ娘は、“本格化”を果たしているか否かによって、大きく戦闘能力が変わるんですよ」
ウマ娘が増えると書いているこっちも楽しくなってきます。