反乱を止めるため、反乱軍の町“ユバ”へと向かうルフィ達一向。道中でクンフージュゴンを弟子にしたり、鳥に荷物を奪われたり、ルフィがサボテンを食べて幻覚を見たりと様々なトラブルがあったが、何とか目的地まであと一歩というところまで迫っていた。
ちなみに、この道中で助けた女好きのラクダ、“マツゲ”(ナミ命名)はフクキタルも背中に乗せたがっていたが、常人よりスタミナの多いウマ娘であるフクキタルは遠慮して自力で歩いている。
「あそこ!! 明かりが見える!?」
「うーん、砂が舞っててよくわかんねぇや⋯⋯」
ルフィはビビが指さす方向を見てみるも、砂のせいではっきりと見えない。それに、視界はどんどん悪くなっていき、地響きと共に“ユバ”を襲っている災害の正体が明らかになった。
「町の様子がおかしい⋯⋯! “ユバ”の町が、砂嵐に襲われている!!」
砂嵐が“ユバ”の町を襲ったのは、遠目で見るとわずかな時間であった。しかしながら、ルフィ達を待ち受けていたのは、かつてオアシスだった姿は見る影もなく、砂に埋もれ、干からびた“ユバ”であった。
「そんな⋯⋯!! 砂で地層が干上がったんだ。オアシスが、飲み込まれている⋯⋯」
「そ、そんなぁ!! それじゃあ水はどうすればいいんですかぁ!?」
砂漠の旅路で喉がカラカラだったフクキタルは、期待していた水が出に入らないことに頭を抱える。そして、元のオアシスの姿を知る分、余計にショックを隠せないビビは、呆然と立ち尽くしていた。
「旅の人かね⋯⋯。砂漠の旅は疲れたろう。すまんな、この町は少々枯れている⋯⋯。だが、ゆっくり休んでいくといい。宿ならいくらでもある。それがこの町の自慢だからな⋯⋯」
そんなビビ達に対し、シャベルで地面を掘る手を止めないまま話しかけるのは、痩せた老人であった。王女という身分を隠しておきたいビビは、顔をさっとフードで隠しつつ、先程から気になっていたことを尋ねる。
「あの⋯⋯この町には反乱軍がいると聞いてきたのですが⋯⋯」
しかし、ビビが“反乱軍”という言葉を口にしたとたん、先程までの優し気な態度を一変させ、老人は目を吊り上げて怒鳴りだした。
「反乱軍だと⋯⋯!! 貴様らまさか、反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな!! ⋯⋯あのバカ共なら、もうこの町にはいないぞ⋯⋯!!」
「「「「な、なんだと~!!?」」」
「そ、そんな!!」
「び、ビビさんどうしましょう!! 反乱軍が居ないんじゃ、反乱を止めることも出来ませんよぉ!!」
反乱を止めることが目的だったのに、その反乱軍が“ユバ”に居なくてはここまで来た意味がない。その動揺からか、フクキタルはついビビの名前を呼んでしまう。そして、フクキタルの口から出た“ビビ”という名前に、老人は反応し目を見開いた。
「ビビ⋯⋯!? 今、ビビと⋯⋯!?」
「おいおっさん!! ビビは王女じゃねえぞ!!」
「いや、言うなよ!!」
老人に尋ねられてあっさりビビの正体をばらしてしまったルフィに、ゾロが砂漠でへばったウソップをハリセン代わりにしてツッコミを入れる。しかし、老人はそんな2人のことは目に入っていない様子で、ビビを見て目を潤ませていた。
「ビビちゃん! 生きてたんだなよかった⋯⋯! 私だよ!! 分からないか!? ⋯⋯無理もないか。少しやせらからな」
ビビの肩を掴み、間近でビビの顔を見つめる老人。その老人の顔に、ビビは懐かしい人物の面影を見た。
「まさか、トトおじさん⋯⋯?」
「ああ、そうさ⋯⋯」
「そんな⋯⋯!!」
ビビが知るトトおじさんは、どちらかと言えばふくよかな体系をしていたのだ。それが、今では風が吹けば飛ばされそうな程やせ細っている。その残酷な変化に、ビビはショックを受けて口元を押さえる。
「私はね⋯⋯ビビちゃん!! 国王様を信じてるよ⋯⋯!! あの人は決して国を裏切るような人じゃない⋯⋯!! 何度もねェ⋯⋯何度も、止めたんだ!! だが何を言っても無駄だ⋯⋯。反乱は止まらない。あいつらは次の攻撃で決着をつけるハラさ。もう追い詰められているんだ⋯⋯!! 死ぬ気なんだ!! 頼むビビちゃん、あの
涙を流しながら地面に蹲るトトおじさんからは、切実な思いを感じられた。そんなトトおじさんに、ビビはすっと布を手渡し、笑顔でこう言った。
「トトおじさん、心配しないで。反乱はきっと止めるから!!」
「ああ、ありがとう⋯⋯」
トトおじさんは、受け取った布をぎゅっと胸のあたりで握りしめ、噛みしめるように礼を言う。そんな2人の様子を見て、改めてこの国に起ころうとしている惨状の深刻さを実感したルフィ達の表情は、自然と引き締まっていた。
「⋯⋯そうだ、ビビちゃん。さっきはああ言ったけれどね。あいつらに付いていかずに残ってくれた子も居るんだ。ビビちゃんも知ってる子さ」
「私が知っている子? それって⋯⋯」
「おーい、トトおじさーん!! こっちはだいぶ掘り進んだよっ☆」
先程よりもいくらか落ち着いたトトおじさんから、知り合いが居ると告げられ、首をかしげるビビ。そんなビビの疑問に答えるようなタイミングで、こちらへと駆けてくる影があった。
「あ、あの耳は⋯⋯まさか、ウマ娘!?」
そして、ぴょこぴょこ揺れる耳に敏感に反応したのは、同じウマ娘であるフクキタルだ。それを聞いてますます首を傾げるのはビビだ。少なくとも、ビビはウマ娘をちゃんと見たのは、フクキタルが初めてだった。
しかし、顔が分かるくらいの距離までそのウマ娘が近づいてくると、ビビはその子の名前がようやくわかったのであった。
「え、もしかして⋯⋯あなた、ファル子? ファル子なの!?」
「大当たり~☆ そういえば、ファル子がウマ娘だってこと、ビビちゃんには言ってなかったっけ!」
ビビに名前を当てられ、笑顔を浮かべて腕で大きく丸を作るポーズをきめるウマ娘、その名はスマートファルコン。通称ファル子。
ビビが幼いころの記憶を掘り返すと、そういえばファル子はいつも布で頭を覆っていた気がする。その理由など当時は深く考えたことはなかったが、まさかウマ娘だったとは驚きだった。
「ファル子がウマ娘だったなんてびっくりした⋯⋯。あなたは、反乱軍には加わらなかったの?」
「えへへ⋯⋯。あの頃はウマ娘って知られて変に仲間外れになるのが嫌だったから隠してたんだ。それと、ファル子が反乱軍に加わらなかった理由は⋯⋯戦いなんてしたくなかったから。ファル子は戦いなんかより、歌の方が好き。だから、トトおじさんと一緒にコーザを説得したんだけれど、あいつ頑固だから全然聞いてくれないの! 酷いよね!!」
「ふふっ。ファル子は全然変わらないね⋯⋯」
ぷりぷりと頬を膨らませて起こるファル子の姿を見て、ビビはコーザやファル子たちと共に“砂砂団”として一緒に居た時のことを思い出し、懐かしくて笑みがこぼれた。
「後ろに居るのは、ビビちゃんのおともだち? え、ウマ娘もいるじゃん!? ねえねえ、ファル子と一緒に歌手目指さない?」
「ええ!? わ、私は歌はそんなに⋯⋯。占いくらいしかできないですし⋯⋯。お言葉は大変ありがたいですが、ごめんなさい!!」
「ありゃりゃ、振られちゃった☆ ⋯⋯まあいっか! とりあえず、宿に案内するね。その感じじゃ、皆疲れているみたいだし! それじゃ、ファル子のあとに付いてきて~☆」
「⋯⋯ウマ娘ってのはこういう元気な奴しかいねぇのか?」
ルンルンとスキップで駆けだすファル子の背中を見て、既にフクキタル以外にバクシンオーというウマ娘に会っているゾロからはそんな呟きが漏れる。フクキタルはゾロの言葉を否定しようとしたが、ドトウとデジタルを思い出しても特に反論の言葉も見つからなかったので、何も言わずにそそくさとファル子を追いかけることにしたのであった。
砂→ダート→ファル子という安直な連想ゲーム。
ファル子はアラバスタの臨時加入枠という形でこれからの道中も同行する予定です。