「こうみょうなわなだ」
「ああ、しょうがなかった」
「どうするんですか~!! 私達閉じ込められてしまいましたよぉぉぉ!!?」
檻の中で頭を抱えて絶叫するフクキタル。檻の中には、他にもルフィやウソップ、ナミとゾロに加えて、何故か海軍のスモーカーもいる。
何故このような状況にあるのか。それは、レインベースに到着したルフィ達が、スモーカーと再び遭遇したことが始まりであった。
スモーカーから逃げるために、3手に別れたルフィ達は、逃げ込むようにしてそのままクロコダイルの経営するカジノ、“レインディナーズ”へと駆け込んだ。
そんなルフィ達をVIPルームへと誘導するスタッフに従い、その途中の『海賊』と書かれた看板の方へと進んだ結果、落とし穴に落ち、そして今、仲良く檻の中に閉じ込められてしまったのであった。
「この檻はおれの“十手”に仕込んであるものと同じ“
同じように檻の中に閉じ込められているにも関わらず、敵意を剥き出しにして十手を構えるスモーカー。その敵意に反応するようにゾロも刀を構え、狭い檻の中は一気にひりついた空気へと変わる。
「クハハ。やめたまえ。共に死にゆく仲間同士、仲良くやればいいじゃないか⋯⋯!」
そんな空気も、檻の外から投げかけられた言葉で一瞬にして変わる。全員が声のした方に顔を向けると、そこにはコートを羽織った男が椅子に座って優雅にくつろいでいた。
「クロコダイル⋯⋯!!」
その男の顔を見たスモーカーは、険しい顔でその名前を口にする。そう、この男こそ、バロックワークスのボスでありアラバスタを乗っ取ろうとしている黒幕、“八武海”の1人、サー・クロコダイルであった。
「お前がクロコダイルか⋯⋯!! おいお前ェ!! 勝負しホ⋯⋯」
「ふんぎゃー!? ルフィさん、その檻に触っちゃダメですよぉ!!」
目の前にいるのがクロコダイルだと分かったルフィは、早速飛びかかろうとするも、海楼石の檻に触れてしまい力が抜け、フクキタルが悲鳴を上げる。
「“麦わらのルフィ”。よくここまで辿りついたもんだ。ちゃんと消してやるからもう少し待て⋯⋯。まだ主賓が到着してねェ。今おれのパートナーに迎えにいかせたところだ」
クハハ⋯⋯とそんなルフィ達の様子を見ても余裕の笑みを浮かべるクロコダイルは、優雅にワイングラスを傾けるのであった。
〇〇〇〇
「クロコダイル!!」
ルフィ達が檻に掴まってしばらく時間がたち、ヒマを持てあましたルフィがサンジのマネをし始めた頃、ビビがミス・オールサンデーによって連れてこられた。
「ビビ!!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ビビの姿を見て名前を呼ぶルフィ達。そしてそんなルフィとビビを見て、何事か考え込むスモーカー。
「やぁ、ようこそアラバスタの王女ビビ。⋯⋯いや、ミス・ウェンズデー。よくぞ我が社の刺客をかいくぐってここまで来たな」
「来るわよどこまでだって⋯⋯! あなたに死んでほしいから⋯⋯!! Mr.0!!」
「死ぬのはこのくだらねェ王国さ⋯⋯。ミス・ウェンズデー」
「⋯⋯!! お前さえこの国に来なければ、アラバスタはずっと平和でいられたんだ!! “
愛するアラバスタをくだらない国と笑われたビビは、怒りを露にクロコダイルへと攻撃を仕掛ける。
「⋯⋯気が済んだか、ミス・ウェンズデー。この国に住む者なら⋯⋯知ってるハズだぞ。おれの“スナスナの実”の能力くらいな⋯⋯」
しかしながら、悪魔の実“
「⋯⋯クソッ!」
「クハハ。そう睨むな。ちょうど頃合⋯⋯。パーティーの始まる時間だ。違うか? ミス・オールサンデー」
「ええ、7時を回ったわ」
「一体何を⋯⋯!!」
クロコダイルを睨み付けるビビ。クロコダイルは、クハハと笑いながら、ビビに今からアラバスタで実行されようとしている作戦について語った。
それは、アラバスタの王であるコブラの姿を偽り、国民を騙して反乱のうねりを大きくするというとんでもないものであった。しかも、その作戦は既に決行されており、バロックワークスの手で武器を渡される形となった反乱軍は、国王軍に対し総攻撃を仕掛けようとしているのであった。
「クハハハハハ!! どうだ、気に入ったかねミス・ウェンズデー。耳を澄ませばアラバスタのうねり声が聞こえてきそうだ!! ⋯⋯そして、心にみんなこう思っているのさ。おれ達がアラバスタを守るんだ⋯⋯!! アラバスタを守るんだとな!! クハハハ!!」
「やめて!! なんて非道いことを⋯⋯!!」
「ハハハ⋯⋯!! 泣かせるじゃねえか⋯⋯! 国を想う気持ちが国を滅ぼすんだ⋯⋯!!」
あまりにも非道なクロコダイルの作戦に、ビビの悲痛な叫びが響く。そんなビビの声を聞いて愉快そうに笑うクロコダイルは、まさに外道としか言えなかった。
「⋯⋯外道って言葉はこいつにぴったりだな」
「そんなことシラオキ様が許しません!! 地獄に落ちますよ!!」
「あの野郎ォ~っ!! この檻さえなけりゃ⋯⋯!!」
クロコダイルに対し、檻の中の面々も憤りを隠せない。しかし、檻の中から出れず、どうすることもできない。
「くっ⋯⋯!! まだ間に合う⋯⋯!! ここから東へ出て“アルバーナ”に向かえば、まだ反乱軍を止められる可能性はある⋯⋯!!」
そんな中、唯一檻の外に居るビビは、椅子に体を縛り付けられた体勢から必死で縄をほどき、這ってでも動こうともがく。
クロコダイルは、そんなビビを邪魔することも無く、馬鹿にしたような目で見下すと、懐から鍵を取り出して下の水槽へと落とした。
「クハハハ⋯⋯。反乱を止めたきゃ今すぐにここを出るべきだ。ミス・ウェンズデー。無論、こいつらを助けてやるのもお前の自由。この檻を開けてやるといい。もっとも⋯⋯ウッカリおれが鍵をこの床の下に落としちまったがな」
そして、落とした鍵は、下にいる猛獣のバナナワニが食べてしまい、動揺するビビ。クロコダイルは、そんなビビに追い打ちをかけるように、さらにとんでもない事実を告げた。
「⋯⋯なお、この部屋はこれから1時間かけて、自動的に消滅する。罪なき100万人の国民か、未来のねェたった5人の小者海賊団か⋯⋯。救えて1つ、可能性はいずれも低いがな。まったく、一国の王女もこうなっちまうと非力なもんだな。この国は実にバカが多くて仕事しやすかった⋯⋯。若い反乱軍やユバの穴掘りジジイしかりだ」
「何だと!? カラカラのおっさんのことか!!」
クロコダイルの言葉に反応したのはルフィだ。ここに来る途中で出会った、ユバのトトおじさん。クロコダイルの言葉は彼を指していると思われた。
「⋯⋯クハハ。“砂嵐”ってやつがそう何度もうまく町を襲うと思うか⋯⋯?」
そして、そんなルフィの問いかけに、クロコダイルはにっと口角を上げ、掌の上に小さな砂嵐を作り出す。
それだけで、ユバの町を襲う砂嵐がクロコダイルの仕業であると理解するには十分であった。
「殺してやる⋯⋯!!」
ビビは、すっかり痩せてしまったトトおじさんの姿を思い出し、涙を浮かべてクロコダイルに武器を構えるが、それをクロコダイルへと向けることはなく、力なく肩を落としてしまう。先程の攻撃で、自分が攻撃してもクロコダイルに通用しないことを思い知らされたからだ。
「ビビ!! おれ達をここから出せ!! おれ達がここで死んだら、誰があいつをぶっ飛ばすんだ!!」
そんなビビに、ルフィが檻の中から声をかける。ルフィの言葉にビビは顔を上げ、そしてぶっ飛ばすと言われたクロコダイルも、ピクリと反応を示した。
「⋯⋯自惚れるなよ。小物が⋯⋯!」
「お前の方が、小物だろ⋯⋯!!」
クロコダイルを挑発するようなルフィの言葉に、ウソップとフクキタルはひょえー! と跳び上がるが、クロコダイル本人は特に反応を示さず、バナナワニを水槽から出し、ビビにけしかける。
「よし、ビビ倒せ!!」
「頑張ってくださいビビさーん!! 運勢は末吉!! チャンスはありますよぉ!!」
「いやいや無茶言うなよ!! それにフク! その運勢なんか心元ねぇな!?」
檻の中からルフィ達の声援が飛ぶも、バナナワニの巨体の前ではビビだけではどうしようもなく、逃げ回るので精一杯だ。
『プルルルル、プルルルル』
そんな絶望的な空気の中、ミス・オールサンデーの持つ電伝虫の着信音が、ルフィ達まで聞こえてくる。連絡かと思いミス・オールサンデーが電伝虫の通信を入れると、その着信を入れた2人の声もまた、ルフィ達まで聞こえてきた。
「もしもし、もしもし? これ通じてるのか? おれ子電伝虫使ったことねぇんだよな」
「大丈夫だよサンジさん! それで使い方はあってると思う!!」
「ファル子ちゃんがそう言うなら間違いねぇな! ホント優しいし強いし頼りになるぜ~♡」
「おい、さっさと用件を言え!!」
なかなか用件を伝えてこない相手に痺れを切らしたクロコダイルが声を荒げると、それに反応し、通信相手⋯⋯サンジはこう答えたのであった。
「ああその声、聞いたことあるぜ⋯⋯。え~こちら⋯⋯クソレストラン」